2006.9.1(Fri)

起床

 ねっとりと白い霧がかかったような意識の中で、遠くから名前を呼ばれたような気がした。それがみこりんの声だとわかるまでに、数分を要したような気がする。猛烈な眠気で、体がとてつもなく重く感じた。

 今日は、みこりんの新学期始まりの日。学校はお昼までなので、学童保育に行くことになるみこりんにはお弁当が必要だった。
 お、起きなくては…。みこりんのお弁当、作らねば…。あぁでも昨日Licが何か買い物してたような気もする。お弁当の案を考えているかもしれないな。Licに任せておけば安心だ。そんな都合のよいことを朦朧とした頭で瞬時に思いつき、隣で熟睡中のLicに声をかけた。

 「なぁ、お弁当、何か作るもの決まってる?」

 3度目の問いかけで、ようやくLicから反応があった。しかしその答えは「うん」という肯定のはずだったが、まったく目覚める気配がない。
 い、いかん。このままではみこりんのお弁当が…。
 意を決して、私は起き上がった。頭からすぅっと血の気が引いてゆくのがわかり、しばし機能停止状態になる。……ぎゅっと瞼を強く閉じた後、ばしっと開いた。カーテンの外が何やら薄暗い。雨が降っているらしい。ずしっと気が滅入る気がした。
 それでもどうにか立ち上がり、みこりんと共に階下へと降りてゆく。ちらと枕元の時計を確認したら、午前6時15分。…くぅ、みこりん気合入りすぎ。

 朝食は、昨日買ってきたパンで。私は冷蔵庫をあさり、お弁当のネタになりそうな食材を探す。
 野菜はLicが作り置きしてくれているアスパラの煮物と、かぼちゃの煮物があった。みこりんに「どっちがよい?」と確認してみると、「んー、かぼちゃ」との答えだったので、凍ったままレンジでチン。あとは適当に冷凍食品やらミニトマトなどでおかず入れを満たし、8分ほどで完成した。
 時計の針は、今、ようやく6時半にさしかかったところだ。みこりんを送り出すまで、まだ30分以上もある。

 ぜんぜん余裕、なんて思っていたが、雨が降っているせいで、みこりんの持ち物を入れてゆく防水機能のあるバッグを探し出すのに手間取ったり、ゴミの日だったので家中のゴミ箱からゴミを回収したりしてる間に、いつのまにか午前7時。
 ダッシュでゴミステーションまでゴミ袋を出しに行った帰り道、集団登校の集合場所へと向かうみこりんに出会う。もちろんまだ誰も集合場所には来ていなかった。

 「まだ10分くらいあるよ?」と言ってみたが、みこりんは「だいじょうぶ!」と傘を片手にしゃきっとしている。始業式なので荷物が多い。雨が降ってるから大物は来週にしたらとも言ったのだが、この程度の雨ではみこりんの強い意志を挫くことはできないようだ。
 今朝のみこりんは、いつもの3倍くらいはたくましく感じられた。

 溢れ出すエネルギーで輝いて見えるほどのみこりんに比べて、私は睡魔に今にも意識をもっていかれそうで、へろんへろんだった。眠い、眠すぎる。このまま布団にどうとこの身をあずけることができたなら、どんなにか気持ちよいことだろう。その甘美な考えは、おそるべき誘惑光線を放っていたが、私はどうにかぎりぎりのところで耐えることができたらしい。

 定時、出勤。でも毎日6時15分起きはちょっときついので、6時半にしてねと、みこりんには言っておかねばなるまい。来週からは給食も始まるので、6時45分でもいいかもしれない。まぁ、あれだ、苦痛にならない程度にしておかないと、長くは続けられないし。
 来週、月曜日、みこりんが何時に起きてくるのか、そこに注目。


2006.9.2(Sat)

ピアノでまどろみん

 みこりんのエレクトーン発表会の日。朝からということもあり、やや慌ただしく会場に到着。何か忘れモノをしそうな気はしていたのだが、当日のプログラムを置いてきてしまっていた。今回も、みこりんが撮っておいて欲しい曲に丸印を付けておいてくれていたのだが、さてどうしたものか。
 「会場でプログラムもらえるよ」と、みこりんは楽観していたが、あいにくそのようなサービスは行われておらず、受付に貼り出してあった大きなプログラムを見て記憶するしかなさそうな予感…

 ところがLicは自分のケータイを取り出すと、さくっとカメラ起動、プログラムを撮影した。
 そうだった。いつでもどこでもカメラがあるのを忘れていた。カメラのついていないケータイを長く持ちすぎたせいで、まだまだ感覚的にそのことについていけてないようだ。
 こうしてプログラムはゲットできた。でも、どの曲に丸印が入っていたのか?演奏者と保護者の席は離れている。みこりんに確認するにも、方法が…、なんて焦っていたら、さらさらとLicが紙に数字で番号の一覧を書いて渡してくれた。おぉぉ。

 ビデオカメラを3脚に固定し、ズームの調整。しかしコレ(SONYのハンディカム)も9年モノということもあり、周囲で同じようにセッティングされている最近のビデオカメラに比べると、ずいぶん不恰好な印象は否めない。外観だけでなく、性能の方も比較にならないし(特に解像度が低すぎる)。そろそろ買い替え時なのかもしれない。

 ところで今回は座席を4つ分確保するように言われていたのだが、あとの2つは誰が?Licによれば、義妹夫婦もみこりんの演奏を聴きにきてくれるらしい。この夏、近隣に引っ越してきたので、こうして気軽に会えるようになった次第。でも、姉妹だけあり、Licに似て朝は弱いっぽい(私も朝は超苦手)。到着は遅れているもようだ。
 そうこうしてるまに、一番目の演奏が始まっていた。はたして間に合うのだろうか。

 小さい子から順番に演奏してゆくので、みこりんの出番はだいたい真ん中あたり。Licがケータイで何かメールしてたみたいだが、間に合ったのだろうか。そんなことを思いつつ…。
 そしてついに、みこりんの順番が回ってきた。
 曲は『君をのせて』(『天空の城ラピュタ』より)。最初、曲データを読み出すのに手間取っていて、ちょっとどきどきしたりもしたが、演奏が始まると、うんうん、いつもの練習通りだなと、やや安心。
 そろそろ足鍵盤の補助具もいらなくなりそうだ。

 演奏は無難に終了した。ところで今回『君をのせて』は、もう1人エントリーしていて、こちらの方はみこりんよりも大きい子ということもあり、より難易度の増したアレンジになっていた。みこりんの曲データでは自動演奏になっている部分が、手動による演奏になってたりして、同じ曲でもずいぶん印象が変わって聞こえた。

 プログラムも後半に入ると、エレクトーンよりもピアノによる演奏が増え始め、いつのまにか私は、意識を失っていたようだ。でも演奏の終わりには、きちんと拍手は忘れなかったらしい。奇怪な。それにしてもピアノ曲になると眠くなるのは、昔からの癖のようなものかもしれない。みこりんは最近、エレクトーンよりもピアノの方がいいな、なんて言う事もあり、この癖なんとかしておかないとまずいかもしれん。

 発表会は午前中で終了した。席を立ち、出口に向かって歩いていると、後ろの方の席に見知った顔が。
 義妹夫婦だった。間に合って何より…、え?着いたのは、みこりんの演奏が終わったあと?…、じつに惜しい。でもまぁクルマで30分ほどで到着できたらしいので、思ったよりも近そうな感じ。次回の発表会にもぜひ。

 みこりんお気に入りのパスタ&ピザ屋にて、一緒にランチなど。
 お腹ぽんぽこりんになったみこりんと、胎内にみこりんの従妹(or 従弟)を宿した義妹が並んで、ちょっとお腹の出具合など比較する。みこりんの方がぽんぽこりんだった。一緒に写真撮ってあげると言ったのだが、みこりんは「いや、いい」と照れモード。こんな機会なかなかないのに、もったいない。

 別れ際、米と、干し椎茸(3年分、いや5年分くらいありそうな)をもらってしまった。ありがたやありがたや。これだけ大量に干し椎茸があると、お茶とかにも使えそうだ(実際、干し椎茸の粉末ってのは売り物になってるらしい)。いろいろ椎茸料理の研究になるかも。


2006.9.3(Sun)

探し物

 月の初めには、地元の本屋さんに出向くことになっている。みこりんが毎月楽しみにしている『小学3年生』の新刊を買うためだ。それともう1つ、みこりん用に定期購読している『たくさんのふしぎ』を受け取るために。
 でも今日はその前に、寄る所があった。例の古本屋(というか古モノ屋)だ。

 その本と出会ったのは、先月のこと。新刊置き場に積んであったその表紙に、ぐぐっと魂を吸い寄せられた。だが、表紙につられて衝動買いして後悔したことは数知れず。散々迷った末に、結局、その本は買わずにおいた。
 しかしその後も気にはなっていたので、bk1やAmazonの書評など参考にしつつ、機が熟すのを待った。買っても後悔しない。たとえ失敗したとしても、それはそれでよい。そう思えるようになるまで待った。
 そしていよいよ買う決心がつき、Amazonで検索してみたところ、無常にも表示される『在庫切れ』の文字。bk1には在庫があった。でも、送料がかかるので1冊だけの注文は避けたい。そこで地元の本屋を数軒回ってみたのだが、あの表紙には二度と出会うことはなかった。

 古本屋の広大な駐車場は、ほぼ満車状態になっていた。誘導員が“満車”の看板を手に持って移動している。なんて数だ。こんなマニアックな店に、これほどの需要があるというのか。衝撃を受けつつも、ようやく駐車スペースを探し当て、停車。みこりんの手を引き、入店する。

 店内は人でごった返していた。私のもっとも苦手とする人ごみだ。それでなくとも週末は疲れた体でエネルギーも消耗気味なのだから、とっとと本を探し当てなければ。
 みこりんは『たまカップ』のカードをチェックしている。レアカードの値段が半額ほどに下がっていると指摘していた。ふむ、たしかに。供給量が増えたか、あるいは買い手がつかなかったか。その両方かもしれない。
 持参してきていた『たまカップ』の重複カードを、みこりんは売ってみたいらしい。100円で売られているノーマルなカードばかり、3枚。「たぶん売っても1枚10円くらいだよ」と念を押したが、それでもいいと言う。ま、こういう体験もいいか、というわけで、人ごみをかき分けつつ買取カウンターへ移動。

 買取カウンターのお兄さんにカードを3枚渡した。
 他の買取希望の人が、すごい量の本やら古着やら持ってきてるのとは、あまりに対照的な図。はたしていくらになるのか。

 「こちら1枚、5円になりますが、よろしいでしょうか?」

 5円かー。3枚で15円。でもまぁそんなもんだろうなぁ。というわけでOKする。身分証を手渡し、書類に必要事項を記入し、受け取り欄にサイン。ん?受け取り額が20円になってるけど?
 「こちら端数になりますので、5円サービスとなっております」
 なるほど。
 書類を受け取り、店内レジへと向かう。だがそこには長蛇の列が。見ただけで、頭がくらっとしてしまう。そこで、先に目的の本を探すことにした。でも、みこりんは本コーナーには行きたくないらしい。天井まである高い本棚に挟まれた、狭い空間が苦手なんだろうか。みこりんはゲームコーナー、カードコーナーと見て回り、最後にフィギュアコーナーで落ち着いた。ここなら飽きそうにないから、ここで待つのだとみこりんは言った。

 私はダッシュで本棚の間を駆け抜けつつ、ずらっと並んだ本のタイトルを高速に瞳でサーチする。ところどころ興味を惹かれるタイトルに誘惑されつつも、今は目的の本だけを探し当てるのが最優先事項。
 …しかし、なかった。私の求める本は、ここにも置いていないようだ。

 みこりんの元へと引き返し、いまだ列の途切れないレジに並んだ。意外に子供連れが多い。ラブ&ベリーのカードも売ってるので、それ目当てなのかもしれない(おしゃれな子供にはわりと興味を示すみこりんだったが、なぜかラブ&ベリーはまったく気にならないらしい。みこりん7不思議の1つである)。
 ようやく順番が回ってきて、書類と引き換えに20円ゲット。一瞬みこりんに20円渡そうかな、と思ったけれど、『たまカップ』のゲーム代は全部私かLicの財布から出てるので、そのまま財布に20円ちゃりん。みこりんに特に不服そうな様子も見られない。なるほど、重複カードがカードフォルダに入ってるのが邪魔だったんだな。

 古本屋を出た。どっと疲れがのしかかる。
 太陽はかなり西へと傾き、夕暮れの気配。昼間の暑さが急速に冷めていっているのがわかる。
 さて、次は本屋さんだ。駐車場を出て100mほどの場所にある。こちらはさきほどの古本屋とはまったく対照的に、閑散とした雰囲気。あぁ、この静けさに癒される。でもこんなに閑散としてて大丈夫なのか、という不安も少々。

 私とみこりん、それぞれに目的の棚へと散り、本を探す。
 新刊コーナーには、やはりなかった。既刊コーナーに、新刊がたまに混ざってることもあるが、探している本は第1巻、しかも(ほぼ)新人。やはり既刊コーナーにも、なし。
 探している途中で、1冊の本に目が留まった。『リーンの翼 (1)』、カバーイラストにちょっと惹かれるものを感じる(ちなみに絵は大森倖三という人の作)。背景に描かれているオーラバトラーのデザインは気に食わなかったものの、人物の方はけっこういい感じかも。本自体はビニールで包まれており、中を確認することはできない。しかし、これのルーツたる『ダンバイン』に、はるか昔少なからずはまった身としては、押さえておいてもいいんでは…
 また在庫切れになってもなんだし。というわけで、買い。みこりんを呼びに行く。

 みこりんは『小学3年生』の10月号を小脇に抱え、子供の本コーナーを彷徨っていた。何かを探しているようなのだが、まだ見つかっていないらしい。「もう少し待って」というので、小説コーナーをしばし散策。

 やがてみこりんが両手に本を持って、駈けて来た。探していた本が見つかったらしい。1つは『小学3年生』、もう1つは…、『新 花子さんがきた!! (2)』。これか。怪談系好きだな、みこりん。怖がりなのに。怖いもの見たさってやつだろうか。
 レジでピッしてもらい、帰宅。
 体の不調を訴え、寝ていたLicは、やや復活した感じ。私も本屋さんで癒されて、古本屋で消耗したエネルギーはかなり取り戻せた感じ。

 夜、『リーンの翼 (1)』、読了。………、かなり微妙。昔、初めてバイストンウェルから地上界に出たオーラバトラーに感じた、震えがくるほどの戦慄は、そこにはなかった。『ダンバイン』体験のない今の人なら、これに何か感じるものはあるのかもしれないが…、うーん。
 みこりんはみこりんで『花子さん』に夢中のようだ。こっちは“当たり”だったらしい。あとでこっそり読ませてもらうとしよう。


2006.9.4(Mon)

沈黙の朝

 土日を挟んで、新学期2日目の朝。目覚まし時計よりも先に、目が覚めた。
 午前6時40分。そっとみこりんの部屋を覗いてみると、すぅすぅと熟睡中。
 「みこりん、朝だよー」と、揺すってみたが、なかなか目覚めず。

 先に朝食の準備でも、と思い、リビングにて冷蔵庫を探っていると、とたとたと階段を下りてくる音がして、みこりん登場。
 「おはよー」と声を掛けてみたのだが、どうもみこりんの様子がおかしい。“どよーん”とした黒い影みたいなのが顔に張り付いており、元気がない。

 どこか調子が悪いのだろうか。そう聞いてみても、特にしんどいとか、痛いとかいうのはなさそうな具合。ふむ…。
 いつもなら元気におしゃべりしてくれるみこりんが、沈んだ表情で、もそもそと朝食を食べ。一応完食はしたので、体調は悪くはないようだが。
 とても気になる。先週の新学期初日の気合の入りようとは、えらいギャップが…

 午前7時5分、みこりん登校班の待ち合わせ場所に出発。
 しかし、3分ほどして、がちゃっと玄関ドアが開き、みこりんが戻ってきた。すでに登校班は出発したあとだったらしい。
 私の出勤時刻をちょっと早めて、みこりんを助手席に乗せ、登校班を追いかける。団地の入り口付近で追いつき、みこりんが登校班に合流したのを見届け、出勤。
 しかし、仕事中も、ずっとみこりんの沈んだ表情が思い出されてきて、気に掛かっていた。

 学校で何かあったんだろうか。あるいは学童保育で…
 そんなことを心配しつつ、退社時刻となり、帰宅。

 「ただいまー」と戻ってみると、みこりんはいつものみこりんになっていた。
 んー、もしかして朝は単に眠かっただけとか?それでもやっぱりちょっと心配ではある。要観察。


2006.9.5(Tue)

妖怪退治今昔

 昨夜は機嫌よく眠りについたみこりんだったが、今朝もまた、“どよーん”とした黒い影をしょって起きてきた。朝になると不調ってことは、もしかして…。
 気になりつつも、出勤。

 *

 そして夜、仕事から戻ってみると、みこりんは、いつものみこりんだった。
 Licによれば、特に学校がイヤとか、そういうのはないらしい。ふむ、するとやはり寝起きが悪いだけなのかも?

 たしかに、朝とは打って変わって明るい表情のみこりんである。嬉々として日曜に買ってきた花子さんの本について、しゃべってくれている。
 「花子さん、強いよねぇ」と言うので、「そうやねー。でも昔は妖怪退治といったら、鬼太郎か、どろろんえん魔くんだったんやけどねー」なんて答えると、みこりんは一瞬真顔になって「鬼太郎って、げげげの鬼太郎?」と聞いていた。
 いかにもその鬼太郎のことだと答えると、みこりんは言った。「おとーさん、妖怪ポストに手紙出したことある?」

 鬼太郎とコンタクトを取りたい場合には、おもに妖怪ポストが使用される。しかし、そのような事をなぜみこりんが知っているのか。ひょっとして今も鬼太郎って現役ばりばりなんだろうか。そんなことを思いつつ、「いや、それはないなぁ。とーさんが知ってる頃の鬼太郎って、ちょっと怖い感じだったから」
 そう言うと、みこりんはたいそう驚いた様子だった。たぶん、みこりんが知ってる鬼太郎っていうのは、リメイクされた方の鬼太郎なんだろうなぁ…。私がはじめて鬼太郎をTVで見たときは、まだ白黒で、おどろおどろしい雰囲気が漂っていたものだ(単に私が幼すぎただけかもしれないが)。

 花子さんを呼びたい時にも、何か作法のようなものがあるらしい。そして謎の存在、やみ子さん。やみ子さんは、花子さんより強いらしいのだが…、やはりみこりんとの会話を成立させるには、私も『花子さん』シリーズを読破せねばならないようだ。


2006.9.6(Wed)

ニンジンとミミズ

 収穫の時が来た。
 リアル菜園の方では、もはやこぼれ種で育ちまくっているゴーヤしか実ってはいないが、ヴァナディールにおける栽培隊第2陣の鉢植えでは、きらきらと青白く輝く花(というか実?)が今が盛りと美しく育っている。

 栽培隊第2陣は、全部で3人。1人10鉢だから、都合30鉢分の収穫だ。
 順番に鉢を調べて“収穫”実行。

 収穫可能だからといっても、必ず目的の野菜が出来るわけではない。今回は、30鉢で約4ダースちょいのニンジンが採れた。外れアイテムのミミズは、その約2倍強獲れた。カバンがミミズでぱんぱんだ。
 第1陣の薬草の収穫率より少し悪いが、このあたりは誤差の範囲か。

 ちなみに第1陣が収穫してくれた薬草は、自分で使う分を残してあとは全部売りに出していたのだが、初日こそ高値でぽんぽん売れたものの、あっというまに価格は下落し、いまではリーズナブルなところで落ち着いている。明らかに供給過剰気味。
 今回のニンジンも、今はまだそこそこの値段が付いているが、おそらくこれも来週には無難なところで安定するにちがいあるまい。
 こちらも自分用に必要な分だけ残して、あとはバザーに出しておこう。旬なものは旬なうちに。

 夜、Licに調理してもらった餌をヒナチョコに与えていると、その様子を見ていたみこりんが「たまごっちみたいねー」と言った。たしかに、餌を与え、散歩に連れ出し、見守り、お世話する様はいわゆる育成系ゲームそのまんま。いずれこのヒナチョコがオトナになったあかつきには、交配も可能になるとされているし、みこりんがたまごっちに似ていると感じたのも無理はあるまい。
 ケータイでチョコボ育成なんてのも、あり得るかも。

 ちなみに、今朝のみこりんは、普通に元気だった。ふむふむ。


2006.9.7(Thr)

深夜の爆発

 何かとてつもない爆発音がしたような気がして、目が覚めた。意識は半ば覚醒したものの、体の方がいまだ眠りの中にあり、起き上がることが出来ない。
 リビングで起動させたままのPCが(FFXIでバザー中のため)、ショートしたのではないかという不安。早く起きねば…、燃えてたら大変だ。

 手足に意識を集中して、なんとか起き上がることに成功した。時計の針は、今が真夜中であることを示している。
 まだ頭が少しくらっとする。隣でLicが目覚めたような気配がしたので、「何か爆発したかもしれんので、見てくる」と言い残し、階段を下りていった。

 真っ暗闇のリビングでは、PCが正常に起動中であることを示す緑色のLEDの灯りが、やけに眩しく感じられた。時折、ハードディスクにアクセスしにいくしゃりしゃりっという音と、赤いLEDの明滅。先週、みこりん用に買ってきたタブレットが発する青いLEDの灯り。USBハブのカラフルなLEDの灯り。スイッチングハブのせわしなく点滅するLEDの灯り。
 どこも異常はなさそうだった。

 あの爆発音は何だったのか。もしかして夢?
 そんなことをぼんやりと考えていると、窓の外が一瞬、真昼のように明るく輝き、直後に猛烈な炸裂音が来た。

 …、雷だ。

 びりびりと大気が激しく振動し、地鳴りまでしてくるような猛烈な一撃。雷様は、ちょうどこの団地の真上あたりに滞空している模様。雷光と雷鳴が、ほとんど間髪入れずに落ちてくる。
 今更ながら、外が激しい雨になっていることに気が付いた。土砂降りだ。明日も雨なんだろうか。急に寒気を感じて、布団が恋しく思えた。
 戻ろう。

 階段を上がっていくと、なにやら奇妙な唸り声が聞こえてきた。…よ、妖怪?
 いや、みこりんの部屋からだ。そっと覗いてみると、みこりんが棒のようにまっすぐにベッドの上で寝ているのが見えた。何か悪い夢でも見ているのだろうか。うなされているようだ。みこりんの名を呼んでみたが、特に反応はなかった。
 とりあえず、寝なおそう。布団に戻り、目を閉じる。
 ところが、雷鳴に呼応するかのように、みこりんの唸り声が聞こえてくるような気がして、もう一度、みこりんの部屋まで見に行った。開いたままのドアから中に入り、みこりんの様子を確認。さっきは気が付かなかったが、みこりんは両手で耳を押さえているようだ。「みこりん!」と声をかけつつ、揺すってみる。
 はっと目を開けたみこりんが、私を確認すると、いきなり抱きついてきた。

 そうか、雷が怖かったんだね。みこりんを抱っこするのも、なんだかずいぶん久しぶりのような気もしたが、こうしていると保育園な頃のみこりんとあまり変わっていないような。

 そのまま寝室へと戻り、Licと私の間に挟むようにして、みこりんを降ろす。みこりんはLicの方にぎゅっと抱きついたまま、泣いていた。よほど心細かったとみえる。たしかに今宵の雷は超ド級だ。

 そういえばPCの電源落としてこなかったけど、大丈夫かな。なんて思ったりもしたが、すでに眠りの中に戻りつつあったのでそのままに。やがて雷鳴も遠くなり、雨音が単調なメトロノームのように催眠術をかけてくる。
 眠ろう。夜明けまであと数時間…


2006.9.8(Fri)

届け物

とかげ 1 探していた本は、結局bk1で買った。送料が本体価格(580円)の約半分したというのは、とりあえず見なかった事に……。Amazonには未だ在庫はなく、ユーズド商品の価格が1280円(!)というのに比べたら、ぜんぜん安いし。

 『とかげ (1)』(作:灰原 薬)、これだ。
 う、うつくしい表紙。素手で触るのがためらわれるほどに、つややかな黒。そして、もっとも惹かれるのが、その魅惑的な瞳。このカバーだけ取り外して飾っておきたいほどに。

 さて、中味はどうだろうか。表紙倒れなんてことは、できれば勘弁願いたいところだが…。

 霊の視える少年。死ねない“とかげ”。そしてまたしても環境省の特務機関か。近頃は環境省が定番なんだろうか。まぁそれはそれとして、中味の方もわりといい感じ。少女の死体に入り込んだ“とかげ”は、不気味というよりは、それとは正反対の雰囲気を醸し出していて、憎めないヤツ。重い呪いを背負っているのだが、そこはこの表紙キャラが外観なので、無問題。寺の住職も飄々としていて、よいアクセントになっている。

 どことなく夢枕獏の伝奇モノな雰囲気が漂っているような気もする。菊池秀行的な伝奇モノとは双璧をなす、どっちかというと静かな感じの。

 表紙中味ともにOK。買ってよかった。


2006.9.9(Sat)

ときおり、すっと見えるモノ

 週末はたまった疲れが一気に爆発するのか、単に歳のせいなのかはわからないが、とにかく猛烈に眠い。だるい。そんなこんなで昼まで爆睡。
 Licとみこりんは昼から臨時の音楽教室があるので、お出かけ中。

 ひとりだ。
 あぁ、にゃんちくんがいたな。おいで、一緒に遊ぼう。
 猫はきまぐれ。一緒に遊ぶどころか、てーっとどこかに駆けていってしまった。
 鉢植えに水などやりつつ、伸びてきた雑草を眺め、いかにも秋っぽい匂いのする空気を胸いっぱいに吸い、部屋に戻る。さて、今日の世界情勢は、と…。PC起動。ふむふむ(注:我が家に紙媒体の新聞はない)。
 で、忘れた頃に、にゃんちくんが背後から急に擦り寄ってきて、ひざの上に乗っかるのでちょっとどきっとする。

 ところで私のPCは、旧みこりん部屋と、リビングとのちょうど境目のリビング側にある。その前に座ると、体の右側が旧みこりん部屋に向く感じだ。
 その位置に座ると、近頃、ちょっと奇妙なモノが視えるようになった。右目の視野の端っこを、ぎりぎりかすめるかどうかというくらい微妙な部分に、すぅっと上から下(あるいは下から上)へ、何か白い布のようなものが動くのだ。
 その間、0.5秒くらいしかないので、気付いたときにはその存在は消えていて、それがいったいなんだったのかわからずじまい。

 といっても、そこにはそれに該当するような白い物体は置いていないのだけれど…。
 ひざの上のにゃんちくんは、その瞬間もなんら変わることなく心地良さそうに寝そべっている。怖がりのにゃんちくんが何も感じていないのだから、たぶん、そこには何もないのだろう。おかしいのは、おそらく私の目だ。
 視力はあいかわらずやや下降気味、疲れ目でモノが二重に見えるのも治っていない。またしても眼科で診てもらった方がいいのかもしれない。気のせいにしては、あまりにはっきりと白い布(あるいは白い光線みたいな?)が動いて見えるので、何か原因があるはずだ。

 ただ…、この現象、この位置にいるときにしか発生しない。他に原因となる何かを見落としているようないないような…。

『水惑星年代記』

水惑星年代記 表紙に惹かれて買った本、もう1品。『水惑星年代記』(作:大石まさる)、こちらは出版されてちょっと日が経っていたので、Amazonにて入手。

 この本には、登場人物がリンクしている前作があり、そちらの題名は『空からこぼれた物語』という。残念ながら、すでに絶版。しかし、どうしてもこれは読んでおかねばならないであろうという確信のようなものがあったので、ネット古本屋にてこちらも入手した。

 宇宙が好き、星空を見上げてるといつのまにか時間を忘れてる、そんな症状のある人には、たぶんこれはツボにはまると思われる。ちなみに個人的には『空からこぼれた物語』の方が、なんというか“若さ”を感じてよかったかな。『水惑星年代記』も、もちろん悪くはないのだけれど、やや洗練されちゃったなーみたいなところが、ちょっと気になったくらい。
 続巻が出るようなので、今後にも期待。


2006.9.10(Sun)

新DVD鑑賞環境設定

 みこりんも寝静まった日曜の夜、先週買ってきておいたケーブルを2本、パッケージから出して、くにくにと触り具合などチェック。1本はオーディオケーブル、もう1本はS端子ケーブルだ。
 これを何に使うかと言えば、PCの映像&オーディオ出力をそれぞれTVとアンプにつなぎ、まともにDVDを鑑賞できる環境を整えようという作戦なのであった。

 我が家には専用のDVDプレーヤーはなく、これまでゲームマシンのプレステ2を使ってもっぱら再生していたのだが、これだと画角の調整ができず、妙に縦に細い画面になってしまうという現象が起きていた。それでもPCのモニタよりは大きな29インチ画面なので我慢していたのだが、そろそろ限界。狐顔の草薙素子とか、もう勘弁して。
 幸い、私のPCのビデオカードにはS端子出力もついているタイプ。こいつと、TVのS端子入力をつなげば、PCでDVDを再生しても29インチ画面で見られるじゃん、と。

 オーディオ出力は、アンプにつないだ。こっちの方がサラウンド効くし、専用機だから当然TVの内蔵スピーカーよりも音はいい。というか、うちのTV、数年前から右側のスピーカー壊れてて使い物にならないので、つないでも意味ないし。

 音はこれでOK。S端子ケーブルも、接続完了。
 さっそくTVの入力を、さっきつないだ外部入力に合わせてみた。

 ……………。
 えーっと、画面黒いままなんですが orz...

 ここで、はたと思い出す。ビデオカードの設定をしていなかったことに。
 モニタとTVの2系統出力を選択してみたところ、おぉ、無事にTVの方にもPCの画面が表示されるようになった。でも、なぜかTVの方だけ白黒画面。んー……、しばらくプロパティをなぶってみたが、いまひとつ該当しそうなものを見つけることができず、結局、サーチエンジンで同様のトラブルがないか探してみると…、あった。

 “グラボのバージョン上げたら白黒になった”、ここのコメント欄に書かれている方法が、まさに探していた答えだった。

【PCモニタとTVをつないだ時に、カラー画面にする方法】

  • TVをプライマリに設定
  • TVを選択
  • デバイス設定を開き、TVフォーマットを“NTSC-J”に設定
  • さらに詳細メニューのビデオ出力形式を“Sビデオ”に設定

 以上で、無事、TV画面の方もカラーになった。プライマリをPCのモニタに戻しておくのを忘れずに。あとはフルスクリーンデバイスを、セカンダリ(つまりTV側)に設定すればOK。

 さっそくPCにDVDをセットして、DVDプレーヤー起動。目論見通り、TV側はフルスクリーン状態のDVD再生画面になった。アンプの音量を上げ、しばし鑑賞。
 あぁ、登場人物が細くない!めっちゃ自然。か、感動である。
 くぅ、もっと早くからこうしておけば…。


2006.9.11(Mon)

“首シーソー”

 夜、『新 花子さんがきた!! (2)』を読んでいたみこりんが、「これ、こわいやろう?」と言うので、何気に見てみると……

 半端じゃなく、ぞくりときた。「み、みこりん、それ怖すぎ…」
 そのシーンは、“首シーソー”という題名の短いお話(漫画形式)の中に出てくる。

 宵闇迫る学校で、先生が校庭で遊んでいる二人の子供の姿を見かける。早く帰るように声を掛ける先生。以前、同じように夕暮れまで遊んでいて急いで帰ろうとした子供が二人、急いで道に飛び出し、車にはねられ…。
 説明口調の先生。
 その時の子供は死んだ。一人は腕が取れ、もう一人は頭が取れ。

 「先生、とってー」と、飛んできた物体。両手でキャッチする先生。
 「ナーイスキャッチ」声は、その物体から…。
 展開はものすごいわかりやすい。次は絶対あれだ。その物体が、じつは“頭”だったりするのだろう。
 そう事前に予想でき、心の準備もできているというのに、次のページにどどんと描かれている“頭”というか“顔の表情”は、果てしなく不気味だった。一瞬、両腕の体毛がぶわっと逆立ったくらいに。

 こういう系統のビジュアルにはある程度、耐性が出来ていると思っていたのだが、今回はすっかりしてやられてしまった。
 でも、みこりんは「こわいやろう〜」と、なんだか楽しそうである。みこりんはぜんぜん怖くないんだろうか。とても気になったので聞いてみたのだが、「こわい〜」とは言うものの、なんかちょっと“怖い”ニュアンスが違うような気がしないでもない。怖いのを楽しんでいるというかなんというか、気色悪い怖さじゃなくて、興味深い怖さ、みたいな。

 あとでさらに詳しく聞いてみたところによれば、「本に書いてある事は本当のことじゃないから怖くない」とのこと。うーん、そういえば、以前にも同じようなことを言っていたな。
 本当のことじゃないとわかってても、怖い絵とか写真とかはあるように思うのだが、みこりんの場合は、怖いのを楽しむ余裕みたいなものがあるらしい。現実世界ではすごい怖がりのみこりんなのに。
 ちなみに、“首シーソー”を描いた青木智子さんは、この手の子供向け怪談本で結構名前が出てくるようなので、怪談本愛読者のみこりんにはある程度“耐性”が出来ていたのかも?(その次のお話“ブザーが鳴る曲がり角”の挿絵も、かなり怖かったのだが、やはりみこりんは「こわいやろう?」と、ぜんぜん余裕っぽかった)


2006.9.12(Tue)

子チョコボ

 ヴァナディールにて育成中のヒナチョコが少し育って、子チョコボになった。ニワトリの若鶏風で、どことなくアンバランスな感じなのだが、ヒナの愛らしさは抜け、代わりに逞しさが魅力みたいな具合。みこりんは最初こそ「ちょっとこわい」と怪訝そうな表情をしていたが、お世話モードの“中距離お出かけ”で出会った他の子チョコボとレースしてみたりしているうちに、だんだん慣れてきたようで、「早く大きくならんかなぁ」と言っていた。

 そう、大きくなると、いつでもこのチョコボを呼び出せるようになるし、乗れるのだ。みこりん用に育てているヒナも、子チョコボに育っており、みこりんもこのチョコボに乗れる日を待ち遠しく思っているらしいのだが、残念ながらチョコボに乗るには免許がいる。その免許を取るには、少なくともレベルを20まで上げる必要があった。
 しかし、みこりん用チョコボを育てているキャラはLicの倉庫キャラなので、レベルは1のままだ。
 はたしてみこりんがチョコボに乗れる日は来るのであろうか。たぶんLicが本気モードでレベル上げをやったら、今週末には乗れるレベルにまで達してそうな予感もするが…、今後に期待。


2006.9.13(Wed)

“お墓”

 例えば明日、私が交差点で死んだとする。すると、このサイトがどうなるのかというと………、1年分のドメイン維持費とサーバレンタル代は夏に払い済みなので、少なくとも来年の夏まではこのまま存在し続けるのだろう。
 そのあとは、Licが亡き私に代わって代金を振り込み続けてくれる限り、存続する。もちろん更新の止まった完全なる静的コンテンツとして。まぁ静的コンテンツとはいっても、過去何千年にも渡って人類が蓄積してきた膨大な書物も、いってみれば静的コンテンツの代表みたいなものなのだから、“静的”が悪いわけじゃない。

 まぁそれはそれとして、何年か後にレンタルサーバ屋さんが廃業したりなんかした日には、移管手続きやらで面倒な作業が発生するかもしれない。そこまでして死んだ人間のサイトを維持するのは、結構大変な予感。
 死んだらとっととサイト閉鎖というのが、妥当かな。しかし…

 近頃はブログツールの普及で、殺人事件の被害者が自分のサイトを持ってたりすることが多くなった。ああしたサイトは、その後、どうなってるのだろう。
 子供を失った親は、我が子の生きた証として、そのサイトを残したいと思うんじゃないだろうか。少なくとも、もしみこりんが自分のサイトを持ってて、ある日突然いなくなったとしたら…、私ならば自分が死ぬまで維持し続けるような気がする。

 前世紀、インターネットが徐々に一般に普及してゆく過程で、ネット上に“お墓”が作られていた時期がある。死んだ人のプロフォールとかが載ってるんだったような…、詳細は忘れたけれど。
 今でもそのようなサービスが残っているのかどうか不明だが(探せば見つかりそうな)、故人のサイトというのは、まさに“お墓”としては申し分のないものではなかろうか。そう考えると、以前あった“お墓”とはまた違った意味での、“お墓”サービスが生まれるのかもしれない。故人に代わって、サイトの永遠なる維持管理をすべて引き受ける、そんなサービスだ。

 インターネットが、インターネット2になり、宇宙規模(内惑星規模)のネットワークが構築される日もそう遠くない将来、現実のものとなるだろう。そうした時代、“お墓”サービスの膨大なるストレージ空間がどこに置かれるかと考えると、やっぱりあれかな、月とかになるかもしれない。地球上の天変地異を避けようと思えば、やはり地球以外が妥当なところ。あるいはすでに固有のストレージ空間という概念すら消滅していて、ネットワーク全体で分散しながら保持し続ける可能性もある。

 そんな時代になっても、HTML(XHTML)を解釈できるリーダーが残ってるだろうかという疑問もあったりするのだが、案外、100年経ってもHTML(XHTML)は生き残ってそうな気が。シンプルなものは、結構強いし。


2006.9.14(Thr)

ノロウイルス

 市内の学校(もしくは幼稚園、保育園)でノロウイルスによる食中毒が発生したとかで、みこりんは明日から水筒持参ということになった。
 ノロウイルス…、どこかで聞いた様な名だ。

 厚生労働省の食中毒・食品監視関連情報から、“ノロウイルスに関するQ&A”によると、こんなことが書いてあった。

 カンピロバクター・ジェジュニ/コリ(491件)、サルモネラ属菌(350件)に次いで発生件数が多く、患者数では第1位となっています。

厚生労働省“ノロウイルスに関するQ&A”より

 そんなメジャーなウイルスだったのか。だが、このウイルスによる食中毒の発症は冬季が最多で、8月9月のような夏場は極端に少なくなっているようだ。
 それがなぜこの時期に…。

 ちなみに、今現在、みこりんも私も、少々お腹を壊し気味(Licも?)。でもこれは食中毒とは関係ないっぽい。


2006.9.15(Fri)

季節外れなもの

 「いってきまーす」と、元気良く玄関ドアを開け、外に出て行ったみこりん。登校班の集合時間には、十分余裕があった。今週は、“どよーん”とした影もなく、比較的順調のようだ。
 よしよし、なんて思ってると、「おとーさん、ちょっときてみー」、外からみこりんの声がする。何を見つけたのだろうか。また猫の死体とかじゃないだろうな…

 玄関ドアを開けると、みこりんは門扉の前に立っていた。「そこ、みてー」と指差してる先は、門扉の脇に植えてある海老根(エビネ)の一群。夏の暑さで、かなり葉焼けしてしまい、ひどい有様になってしまった海老根だったが、はたしてそこに何があるのか。

 みこりんの指先から視線をたどってゆくと…、「おぉ!」
 ちょっと意表をつかれてしまった。海老根の群れの中に、葉っぱが青紫蘇そっくりな雑草が混じっていたのだが、その広い葉っぱの上に、ぽつんと乗っかっていたのは、セミの抜け殻だった。
 な、なにゆえ、このような場所に。玄関側で育っている木は、小さなサルスベリ、屋根まで届くサイズの月桂樹とコニファー、山椒、そしてみこりんの木“ハリエンジュ”。この程度の木でも、セミの幼虫が育つには十分なんだろうか。

 セミの抜け殻は、ちょっと小振りだった。先月、庭の方で見つけたやつ(たぶんアブラゼミ)の半分程度しかない。しかも夏も終わり、そろそろ秋本番を控えたこの季節。…、ツクツクボウシ、かな?それでもちょっと遅すぎる登場のような気もするが。

 みこりんは、「そのままにしといてね」と言い残し、登校班の集合場所へと歩いていった。またセミブローチにするつもりなのだろう。
 少々季節外れなセミの抜け殻は、どことなく寂しそうに見えた。葉っぱは、秋風に揺られ、小刻みに震えていた。


2006.9.16(Sat)

待ち時間

 あらかじめ予想されていたことではあったが、土曜日の病院はとてもとても混んでいた。午前中までしかやってないし、来週の月曜は祭日で休診とくれば、どっと押し寄せてきても無理はない。私も普段は平日の夕方からしか来ないようにしていたが、今週はどうにも都合がつかず、このようなありさまに。

 みこりんも私にくっついて来ていた。なぜならば、ここの待合室には本棚が据え付けられており、そこにはみこりんの好きな『ドラえもん』が取り揃えられていたのだ。
 私は私で『冬物語』なぞ読みふける。春から細切れに読み進めて、先月、ようやく3巻目に突入したところだったが、今日だけでいきなり2冊ほど完読してしまっていた。時計の針は、そろそろお昼にさしかかりつつある。でも、待合室の人の数は、あまり減っていないような…。みこりんもさすがに3時間待ちはちょっと堪えてるようで、『ドラえもん』にも飽きたらしく、迷路の本など開いてみている様子。

 そろそろ限界か。そう思い始めた頃、ようやく名前を呼ばれた。
 ほとんど薬の処方箋を書いてもらうだけみたいなものなので、診察はものの数分で終了。会計もすぐに終わり、あとはこの処方箋持って、併設されている薬局で薬をもらうだけだ。みこりんも、ほっとしたような表情をしていた。

 薬局でさらに40分ほど待ちが入ったものの、3時間待ちに比べればどうということはない。支払いを終え、店を出る。
 家まではクルマで、わずか3分。それにしても、疲れた。頭の奥のほうが、なんだかぼーっとしてるような気がする。

 *

 午後、ちょっと横になったつもりが、はっと意識が戻ったときにはすでに夕暮れ。起き上がると、体の節々が痛む。堅い床の上で寝たりすれば、まぁこうなっても仕方ないかな…
 とても寒い。体の芯から冷えきったように、震えが止まらなかった。真夏の格好で寝転んでたのがまずかったか。

 Licとみこりんの気配がない。妙に静まり返ったリビングに、私はいた。

 ひとときの静寂は、やがて現れたLicとみこりんによって一気に打ち破られる。
 あぁ、そこにいたのか。とても、とても安心した。


2006.9.17(Sun)

毛繕い

 今にも雨が滴り落ちてきそうなけだるい午後のこと、にゃんちくんが私の傍らで眠りこけている。ちょうどお手ごろサイズのクッションの上で、気持ちよさげに丸まって。
 その姿があんまり心地よさそうなので、私もその隣に寝転んでみた。あぁ、背骨が伸びる。

 いつのまにか思いっきり眠っていたらしい。何かが後頭部をすりすりしているので、目覚めたようだ。耳元で“ぐるるるるる”と低い音がする。姿は視界に入ってはいなかったが、それがにゃんちくんであることは容易に想像がついた。みこりんは“ぐるるるる”なんて喉を鳴らさないし。
 私の後頭部に体を擦り付けていたにゃんちくんは、やがて辛抱たまらなくなったのか、がじがじと髪の毛を齧り始めた。べろんべろん舐められつつ、時折、頭皮に牙が当たる。その様子を、みこりんが「きゃっきゃ」と喜んで観察中。

 平日はなかなかこういう機会もないので、しばらく好きなようにさせていたら、次第に、にゃんちくんの噛み付きが本格的になってきた。興奮して我を忘れつつあるような気がしてきたので、私は体を起こした。
 「ぐふー」と、にゃんちくんが喉を鳴らしている。まだ齧り足りないようだ。でもこれ以上齧られたら、髪の毛が根こそぎ舐め取られそうな気がする。「はい、今日はここまで」そう言って、にゃんちくんの体を逆に撫で撫でしてやった。

 それにしても、にゃんちくんは私が寝転んでいると、必ず頭に擦り寄ってくる。他の部位はまるで眼中にないかのように、頭だけを狙ってくるのだ。
 「いったい何故だろう?」そう言う私に、Licは事も無げにさらっとこう答えた。
 「毛繕いしてくれてるんじゃないの?」

 「………、なるほど」目から鱗が10枚ほど剥がれたような気がした。
 ネコは綺麗好きだ。食事のあととか、機嫌の良い時には、自分の毛並みを整えるのに余念がない。
 他の生物に対して親愛の情を示すために毛繕いをするというのは、たしかによく聞く話である。ところがヒトには体毛が他の生物に比べて非常に少ない。唯一、頭を除いては。
 だから、にゃんちくんは頭の毛繕いをしてくれていたのか。

 にゃんちくんにがじがじされたあとの髪の毛は、時間が経つと、まるで“寝癖直しスプレー”を使用したあとのように、ぱさぱさとしなやかストレートヘアになる。ネコの毛繕い、おそるべし。でも、時々にゃんちくんの白い毛が混ざっちゃうのが珠に傷かな。

おまじない

 夕方、最寄のスーパーにみこりんのノートを買いに出かけた。
 国語と算数は、毎日ドリルの宿題があるので、ノートのページもすぐに足りなくなってしまうのだった。

 文房具コーナーにて、ノートを物色。いつもはジャポニカ学習帳みたいな派手な表紙のを買ってたように思ったのだが、今日はシンプルな、いかにも“ノート”っていう感じの素朴なタイプをチョイスしていた。しかもバラで買うと割高なので、3冊セットになってるやつを。
 うんうん、そういうノートの方がお姉さんぽくていいぞ。

 目的の品をゲットしたので、夕食をはさみ、適宜自由行動へ。みこりんはもちろん『たまカップ』狙いだ。そろそろ秋仕様のカードが登場しているかもしれないと言っていたのだが、残念ながら夏仕様のままだった。
 はじめてみこりんと対戦モードでやってみた。…が、惨敗を喫してしまった。ゲームそのものの難易度は子供用ということもあり、わりと容易な部類に入ると思われるのだが、どうもカードスキャンで使用する“応援”と“アイテム”に秘密がありそうな感じ。その組み合わせを日々研究しているみこりんと、適当に選んだ私との違いかもしれない。

 続いて本コーナーに行きたいというみこりんを護衛するため、一緒に移動。
 子供向けの本を集めた棚のところで、『学校のコワイうわさ 新花子さんがきた!!〈3〉』を発見。この前買ったのが2巻なので、こっちの方が新しい。てっきりみこりんはそれを買うだろうと思ったのだが、「買わない」と言う。なぜか?
 みこりんは言った。
 「…怖い夢を見るから」

 やはり、あれは怖すぎたらしい。
 いや、なんというか、ちょっと安心した。

 替わりにみこりんが買ったのは、『おまじない』の本だった。“見たい夢を見る方法”とか、いろいろ載っているらしい。よほど怖い夢を見たのだろう。

 帰宅後、さっそく本のとおりに、おまじないの紙を準備しているようす。これを枕の下に入れて寝れば、自分の見たい夢が見られるのだそうな。
 おまじないの効果は如何に。


2006.9.18(Mon)

台風の夜

 眠りの中にいた私の意識を呼び覚ましたのは、何かの“声”だった。
 奇妙な唸り声。いや、赤ん坊が泣いているような、引絞るような声だ。
 覚醒してゆく意識の中で、窓ガラスがガタゴトと揺れているのに気が付いた。風が唸りをあげて、吹きすぎてゆく。あぁ、台風が通過しているのだなと、思い出していた。

 目が覚めてゆくにつれて、泣き声はリアルに聞こえ始めた。
 この声、誰が泣いているのだろう…

 ……………

 …そうだ、みこりん!がばっと起き上がり、隣のみこりんの部屋に急行する。

 みこりんは、両手両足を硬直させて、ベッドの上で泣いていた。

 先日の雷の夜の時と同じように、みこりんを抱き上げ、Licと私の間に寝かせ、落ち着かせる。
 自力で私達の方まで移動できないくらい、怖かったらしい。雷に、台風に。みこりんの怖いものが続く9月の夜の、出来事である。

特需

 ヴァナディールの地における私の栽培隊は、今や全部で7人(本体キャラ+倉庫キャラ6人分)に増えていた。システムの制限で1キャラあたり10鉢がMAXのため、都合70鉢で日々栽培に励んでいる。
 といっても毎日様子を見て、適宜必要な時にアイテムを投与するだけというお手軽さ。この“手軽”というところが、私にとってポイントかもしれない。強敵を倒し、宝箱からレアアイテムが出てくる瞬間の興奮に比べれば微々たるものだが、栽培も、収穫時のプチどきどき感は、ほどよく心地よい。

 栽培している植物は、もっぱらチョコボ用のニンジン2種と、チョコボ用の特殊なミミズ2種(これを栽培というのも、なにやら妙な感じだが)のみ。まさに“チョコボ育成”をターゲットとした布陣である。

 収穫物は、自分用のを常に一定量キープしつつ、余剰品を深夜から次の日の夕方近くまで、売り子(倉庫キャラの一人)に託してバザーする。競売で売るという手もあるのだが、競売は一人あたり7つ分しか枠がないので、手持ちをすべて販売対象にできるバザーが効果的。

 “チョコボ育成”が実装されて、もうじき1ヶ月になるが、栽培隊の売上は、おそるべきことに、本体キャラが何年にもわたって稼いできた金額を、あっというまに抜き去っていたのだった。もともとあまり金策に熱心ではなかったというのも大いに影響してるとはいえ、1ヶ月にも満たないのに、こんなに稼いでいいのだろうかと、ちょっと怖くなるほどの額である(もっとも、一攫千金狙いで大当たりを出して得られる額ほどではない)。
 逆に言えば、それだけ他のみんなも金を持ってるってことなのだろう。買う人がいなけりゃ、モノは売れない。

 この1ヶ月というもの、栽培と合成だけやってたようなものだが、今日は久しぶりにLicのキャラと、荒涼とした山間まで狩りに出かけた。チョコボの怪我に効く薬草を、ここいら一帯に生息しているトンボが持っているのだ。

 ひたすらトンボを狩る。みこりんも狩りたいらしいので、ちょっと交代。
 似たような光景の続く荒地でも、みこりんは迷うことはない。みこりんの方向感覚の鋭さは、Lic譲りだということが先日発覚したばかりなので(私が何度行っても迷ってしまう複雑な地形を、みこりんは事も無げに突破したのだ)、私も安心して任せられる。

 それぞれ薬草を2ダースちょい集めたところで終了。これも自分のを少しキープして、残りはバザーに。チョコボ育成特需は、もうしばらく続きそうだ。


2006.9.19(Tue)

黒の生き物

 火曜日はゴミの日。慌ただしい朝のこと、ダッシュで家中の可燃ゴミをゴミ袋に詰め、最後は庭に置いてあるどでかいバケツに保管しておいたゴミを取り出すのみとなった。

 固定式の蓋を、かちゃりと回して、ロック解除。
 蓋を傍らに置き、中のゴミを手早くゴミ袋に詰め、蓋を閉じる。この間、およそ3秒半くらい。この中に入っているゴミは、おもににゃんちくん系のものなので、呼吸を止めておかないと大変なことになってしまうのだった。ゆえに、可能な限り、手早く済ませるのが吉。

 ふぅ。呼吸再開。
 さきほど蓋を置いた場所に、何気なく視線がいったその瞬間、私は見た。黒光りする、愛らしい生き物の姿を。

 小さな1対の顎。体長およそ2cmちょい。うるうると濡れたように光る、つぶらな目玉。ピンと伸びた可愛らしい触角。
 おそらくこれは、コクワガタのメスであろう。夏も足早に過ぎ去ってしまったこんな時期になって、今年初めての遭遇である。例年ならば、暑い夏のうちに、風呂場とか網戸とかで出会いがあり、そのままみこりんの飼育ケース行きとなることが常だったが、今年はぜんぜん姿を見せなかったので、少し心配していたのだ。

 弱っているかと思いきや、コクワガタのメスは、しっかりした足取りでさかさかと地面を歩き始めた。ものすごい元気そうだ。
 みこりんにも見せてやりたかったが、残念ながら今は時間がない。でも、この分なら来年もまた、ここで出会えそうな予感がする。

 コクワガタがホースリールの下に消えるのを見届け、ゴミステーションまで走る。
 空は、あいかわらずくすんだ灰色をしていた。


2006.9.20(Wed)

MS IGLOO

 PCからTVに映像を出せるようになり、ようやく正しい画角で楽にDVDを見ることが出来るようになった(PCの液晶モニタで視聴すると目が近すぎて疲れる)。というわけで、『MS IGLOOシリーズ』などをちびちびと見始めているのだが…。

 個人的にはなかなかツボを突いた作品のように思えた。ガンダム世界の設定ではあるものの、谷甲州の『航空宇宙軍史シリーズ』に類似した独特な“匂い”がぷんぷんと漂っている。欲を言えば、女士官は邪魔。むさい男どもだけで十分OK。というかむしろ男だけの汗臭い、いまにもツンと匂ってきそうな情景のほうがぴったりなんじゃあるまいか。

 細かい部分では、大質量の戦艦が粒子砲食らってくるんくるん跳ね回る図にはかなり違和感を覚えたものの、そういうのを差し引いてもなお、時代遅れの試作(もしくはボツ、あるいは奇抜)兵器で立ち向かわなくてはならない哀愁がしみじみと感じられて、寝る前のひとときの安らぎにはちょうどよい作品だった。


2006.9.21(Thr)

子チョコボ→チョコボ

 ヴァナディールの地において育成中の子チョコボが、ついに成鳥になった。足腰もたくましく、立派に騎乗可能とトレーナーからもお墨付きをもらうことができた。
 Licやみこりんのチョコボ達は、育成途中で風邪ひいたり、怪我したり、昏睡スパイラルに陥ったり、なかなか大変のようだが、私のチョコボは、真夜中でも容赦なく散歩に連れ出したりしていたというのに(夜間散歩に行くと風邪をひきやすいらしい)、現在まで何のトラブルも起きていない。順調すぎて、あとでおそるべき罠が待っているんじゃないかと、少々怖いくらいだ。

 ところで成鳥になったとはいうものの、外見はレンタルチョコボ屋さんにいる成鳥に比べて、まだちょっと何かが足りないような…。さらなる成長があるのかもしれない。

 はやく実際に騎乗してみたいところだが、それに必要なアイテムがなかなか見つからないので、もうしばらくおあずけ。

ほんとは怖い…

 Licの隣に寝転んで、眠りに落ちてゆく。時刻は1時ちょっと前。起床まであと5時間ちょいだが、近頃では目覚ましが鳴るより先に目が覚める日々が続いている。でも休日は昼まで熟睡。みこりんとちょうど逆なパターンだ。

 そろそろ意識が朦朧とし始めた時、異変は起こった。
 隣で寝ていたはずのLicに、何かが起きたらしい。
 うつ伏せになり、固まっている。

 最初は何かの冗談かと思ったのだが、どうやらこれは本気で苦しんでいるようだ。苦痛で動くに動けない状態、みたいな感じらしい。
 ちょっと焦りつつ、「…えと、救急車とか、いる、かな?」などと口走っていた。

 クルマで病院まで運んでいくには、まずこの朦朧とし始めていた意識をどうにかしないと…。
 Licの背中のあたりをさすりつつ、だんだん不安になってくる。胸の奥(というか胃?)が痛むらしい。胃から食道あるいは喉にかけて、痛みがはしる。というのは過去、時折Licにみられた症状だったが、今夜のはかなりきてるっぽい。

 5分、あるいは10分ほど経った頃、痛みは去っていったようだ。
 以前病院で診て貰った時には、胃薬が出たそうだが、なんだか普通の胃炎じゃないような気もするのだが…。
 『この時、すでに病魔は彼女の全身に拡がりつつあったのです!』とかナレーション入りそうで、とても怖い。


2006.9.22(Fri)

みこりんとにゃんちくん

 みこりんが赤子だった頃、にゃんちくんを拾ってきた。つまり、かれこれ8年くらいは一緒に暮らしていることになるのだが、みこりんはにゃんちくんがちょっと苦手だった。

 にゃんちくんが親愛の情を込めて、前脚をにゅーっと伸ばしてくるのが、みこりんは怖い。
 にゃんちくんがすりすりと体を擦り付けてくるのが、みこりんは怖い。
 それでも、私が寝転んだにゃんちくんをブラッシングしていると、一緒に撫でたりはするので、完璧に嫌っているというわけでもないらしい。
 可愛いんだけど、ちょっとその爪とか牙が怖い、みたいな?

 そんなみこりんが、昨日はにゃんちくんの餌を、自力でやってくれたらしい。近頃、私が餌をやってるのを見て、「みこりんもやりたい」というので、少し手伝ってはもらっていたのだが、にゃんちくんが餌の匂いにつられて寄って来ると「こわいー!」と私にタッチ交代してしまっていたので、まだまだかなぁ、なんて思っていたのだが。
 そして今日、私が仕事から戻ってくると、にゃんちくんはすでに食事を終え、ご機嫌で毛繕いなんかしていたのであった。昨日に引き続き、みこりんが餌をやってくれていたのだ。

 「怖くなかった?」と聞いてみたところ、「ぜんぜんへいき!」と自信たっぷりに答えるみこりん。
 ふむ、もしかすると、今回はホンモノかもしれない。みこりんは、にゃんちくんの爪や牙が、本気で繰り出されることはないと理解できたのだろう。もっとも、にゃんちくんがじゃれるのに夢中になりすぎると、ちょっと本気モードになってしまう時はあるので、そこらへんはまだまだ気をつけてないといけないのだけれど。

 にゃんちくん、メス、推定8歳。ネコの寿命的には、おそらく折り返し地点を過ぎた頃だ。一緒にいられる時間は、そんなに長くは残っていない。
 みこりんがにゃんちくんと普通に触れ合えるようになって、本当によかった。


2006.9.23(Sat)

“Twilight”

 Electric Light Orchestra、略してELO。彼等のアルバム『TIME』を初めて聴いたのは、私が中学か、高校の頃だったかと思う。レンタルレコード屋で、たまたま目に留まって借りてみたのだが…。
 アルバム全体が1つの作品としてプロローグからエピローグまで、きっちり作りこまれているのもすごかったが、SFちっくな歌詞とメロディに、私は大いに衝撃を受けていた。これはすごい。なんかしらんが、ぞくぞくする。
 そして私は、生まれて初めて洋盤を買ったのだった。

 大学に入り、CDがまたたくまにレコードを駆逐していくのを見て、私も『TIME』を、CDで再度買いなおしていた。『TIME』の中でも特にお気に入りだったのは、“プロローグ”から流れるように続く、“Twilight”という曲だった。
 どのくらいこの曲を気に入っていたかというと、私とLicの結婚式の時にBGMとして流そうかと思うほどに(ちょっとノリノリすぎるということで、この案はボツになったのだが→9/25 Licから、ボツにはなってなくてちゃんと使ったとの指摘あり。…うーん、記憶が曖昧)。

 あれから歳月はぎゅんぎゅんと流れ、現代、今日。みこりんも9歳になり、夜のTVで『電車男DX』なるものを見て、興味津々の様子だ。そのオープニングを一緒に見ていたLicが、「ねぇ、これって…」と言った。そう、知っている人は知っている、あの『DAICON IV オープニングアニメーション』の真似っこだ。曲はもちろんELOの“Twilight”。『DAICON IV』を知らない(と言い張っている)Licでも、この曲は知っている。なにしろ結婚式のBGM候補だったのだから。
 しかし昔はSFモノにしか通用しなかったネタが、いまでは一般人にフツーに通用するようになるとは…。なんとおそろしい世の中になったものよのぅ。

 それはそれとして、『DAICON III&IV オープニングアニメーション』は、私が大学生の頃(はるか遠い昔のこと…)、レンタルビデオ屋に並んでいたのを見つけ、ダビングしていたのだが、βテープに録画していたため、βの再生装置が故障して廃棄処分になってしまった現在、もはや見ることは叶わず。というかたぶんテープそのものも、経年劣化でダメになってそうな予感(きっとカビカビ)。なにしろ20年前のものだし。

 見られないとなると、なんだか猛烈に見たくなる。こんなときには、YouTube。キーワード“DAICON”で検索をかけると、あったあった。さっそく再生。懐かしさに心を奪われ、しばし陶酔。

 同人作品ではあるものの、作った人達が、現在あまりにメジャーになりすぎたものだから、とても微妙な位置にあるのだろうなぁ…。オリジナルキャラがメインとはいえ、他は(ほとんど)2次利用だし。でも、なんとか再販にならないものか。和モノはともかく、洋モノも出てくるから無理かな…


2006.9.24(Sun)

みこりんの疑問

 お昼過ぎ、「買い物に行くけど、来る?」と、みこりんを誘ってみたところ、行き先の1つにレンタルビデオ屋があると知ったみこりんは、ダッシュでお出かけの準備を整え、くっついてくることになった。
 みこりんがお出かけに持ち歩いている小さな手提げバッグの中には、ハンカチ&ティッシュは当然として、たまごっちが4つと『たまカップ』のカードフォルダ、それにDSが1つ、入っている。用意周到だ。おそるべき子供の勘で、私が『たまカップ』方面にも寄り道しそうなことを察知していたのかもしれない。

 まず最初の寄り道先であるホームセンターに、クルマで向かう。道中、みこりんが突然「とーさんと、かーさんって、どうやって知り合ったの?」と聞いてきた。
 1ヶ月ほど前にも、似たような質問をされたような気もしつつ、再度みこりんに説明を試みた。そう、あれは前世紀、まだインターネットが一般に普及する以前、パソコン通信、略してパソ通が流行っていた頃の話だ。

 パソ通がほぼ壊滅状態の現代においては、それがどのようなものかイメージするのは困難かもしれない。でも、“パソ通”が築いていたコミュニティの場は、時を越え、現代に転生している。mixiに代表される、SNSと名を変えて。
 みこりんも、掲示板(BBS)やオンラインチャット、コメント付け可能な日記がどういうものかというのはだいたい理解しているようだ。パソ通の場合、それぞれ専門分野に分かれたフォーラム(Niftyにおける呼び名)というものが存在し、そのコミュニティ内でチャットや会議室(掲示板とコメント付け可能な日記を合わせたみたいな感じのもの)等があり、アクティブメンバーは日々、会議室に些細な日常の事とか、専門分野での質問とか回答とかを書き込みあい、夜な夜なチャットで延々と会話に興じたものだ。
 現在のように通信費が固定料金制で、24時間接続なんてありえなかった時代。それでもチャットの魅力はおそるべきものがあり、チャット仲間は皆、NTTとパソ通運営会社に月々10万円近くの通信費+利用料を支払っていたものだ。独身ゆえの身軽さがなければ到底できない芸当である。

 そんなチャット仲間の一人に、Licがいた。この辺は、みこりんも前回の私の回答で知ってはいたはずだったが、みこりんが謎に思っているのは、そこからどうやって二人は付き合い始めたのかということらしい。
 チャットは、ネットワーク越しに、通常、文字だけでやりとりされる。相手の姿は見えないのである。なのに、どうやって?というのが、みこりんが不思議に思っていることのようだ。

 その当時、私は岐阜付近に、Licは大阪付近にいた。みこりんも、それぞれの場所が距離的にもかなり離れていることはわかっている。そこでみこりんは考えた。
 「場所とか時間を決めて、どこかで会ってみたの?」
 ちょっとびっくり。みこりん正解。これをオフラインミーティングと呼ぶ。今でも、オフ会と称されているアレである。

 さらにみこりんの質問は続く。「どうして会ってみようと思ったの?」
 んー、そうねぇ、チャットで気が合ったからかな。Licのチャットには、独特の癖があった。なんというか、とても“可愛らしい”感じ?といっても女の子女の子した可愛らしさというんじゃなくて(むしろ知らない人が見たら女とは思わないかもしれない)、一種独特のツボをついた顔文字の使い方とか、打てば響くようなところとか…。こっそりSFモノであるらしいところとか…。言葉で説明するのがちょっと難しい。

 「ふぅん…」みこりんは、なにやら思案中。

 付き合い始めてから、どうやって結婚に至るのか、という部分が、目下のところみこりんの最大関心事っぽい。9歳になって、みこりんもいろいろとそういう方面で考えることが多くなったようだ。道理で『電車男DX』に、妙に興味を示していたわけだ。
 ちなみに、パソコン通信を通じて知り合い結婚に至ることを、当時は“パソ婚”と称していた。1995年あたりで、そういうのはすでに周囲でもそんなに珍しいことではなくなりつつあり、映画『(ハル)』なんてのも作られたりしてたわけで。
 一度みこりんに『(ハル)』を見せてみるのもいいかもしれない。

 *

 ホームセンター着。
 園芸コーナーでは、すでにパンジーやら、ビオラやら、ガーデンシクラメンやらが売られていた。思いっきり冬仕様だ。冬の花はもうちょっと涼しくなってから買うとして、今日は秋植え球根を物色。やはりチューリップは欠かせないところだ。
 みこりんはミッキーマウスの絵が描かれたパッケージに、とても惹かれているようだ。こういうのはキャラクター使用料も入ってるから、ちょっと高い。でもまぁ中身が変り種みたいだから、買ってみることにする。蕾から開花の間に、花びらの色彩が変化するところが売りのようだ。
 私はユリ咲きチューリップの袋詰を1つ。お気に入りの“バレリーナ”単品がなかったので、数で勝負。30球くらい入ってるやつにした。
 ついでにチオノドクサの青花タイプがあったら買おうと思っていたのに、売られていなかった。通販に頼ると送料が痛いので、できれば地元で揃えたかったのだが…

 ホームセンターから、レンタルビデオ屋、スーパー(『たまカップ』あり)、本屋と順に巡り、帰宅。
 みこりんはレンタルビデオ屋で、猿と犬の“お使い”を撮ったやつをようやくレンタルすることができて、満足げだ(いつ来ても貸し出し中だったらしい)。私も古本の『鉄腕バーディー』(2003年版)を1巻から4巻までゲットしたので、ほぼ目的は達した。残る巻もいずれ古本で揃えようと思う。

 来週末は、みこりんの運動会。台風来ませんように。


2006.9.25(Mon)

交通事故

 極悪殺人犯が人を二人殺しても、なかなか死刑にならない犯罪者天国“日本”のこと、ましてや交通事故で何人殺しても、危険運転致死傷罪が適用されない限り、せいぜい軽い懲役刑だ。
 日本における一年間の交通事故における死者数は平成17年で6,871人(年齢層別・状態別死者数(平成17年)より)。日本の平成15年における自殺者32,109人(総死亡数・死亡率(人口10万対)・自殺死亡数・死亡率(人口10万対)の年次推移)に比べると少なく感じてしまうが、これは近年の自殺者の増加が異常なせい。
 6800人っていったら、みこりんの学校の全校生徒が約600人だから、その約11倍ってとこか。身近な数字で確認してみれば、この数字がいかに多いかが改めてわかる。

 最近の飲酒運転による死亡事故やら、飲酒ではないものの重大な死亡事故が相次いでいることを考えると、現行の危険運転致死傷罪の適用範囲をさらに拡大し、死刑を最高刑にすべきであろう。
 もし、みこりんが交通事故にあい、この世からいなくなってしまったら…。私は運転者を生かしておく自信がない。だがせめて死刑になるのであれば、自制できるかもしれない。……、あるいは、死刑にするだけでは、まだ甘いのかもしれない。生きているのが辛くなるほどの重労働を、犯人に死ぬまで続けさせる。そうでもしなければ、私は人間であり続けることができないかもしれない。

 次に、自動車メーカーと国。どう考えても、クルマの速度が180km/hまで出る必要はない。道路の制限速度に応じて、適切な速度制限を自動的にかけるエンジンを搭載すべし。最高速度50km/hの道路では、50km/h以上出せないように。高速道路では100km/h程度まで上げても良い。細い道なら30km/hだ。道路に発信機埋め込んでおけば、速度制限を可変にするのなんて簡単だろう。
 ついでに前方監視用のレーダー類の搭載義務付け。ヒトの運転だけでは、どうしても間違いを犯す可能性を捨てきれない。ならば、機械がヒトに変わって危険を検出し、制動をかければよい。これも現在の技術ならば、さして困難ではない。ただ100%を保証するのは無理だろう。実際、ミリ波レーダーを使った障害物検出の研究はずっと以前から続けられているが、現在一部の車種にしか搭載されてはいない。だが、50%でも作動すれば、それだけでもずいぶんと助かる命があるのではないか。たしかに高価な装置だから、ほいほいと装備できないのだろうとは思うが、やり方はいろいろあるはずだ。ミリ波レーダーに限らずとも、さほど高性能ではないレーザー・レンジ・ファインダーあたりを使ってみるとか。

 航空機や電車、船には、当然のように搭載されている安全装置が、なぜかクルマにはほとんどない。こうしたところから、改めていかねばなるまい。


2006.9.26(Tue)

死刑判決

死刑にガッツポーズ 小林被告にんまり 奈良女児誘拐殺人

 口ひげをたくわえた男は、これまでの公判と同じように、無表情でふてぶてしい態度に終始した。奈良小1女児誘拐殺人事件で奈良地裁は26日、小林薫被告(37)に死刑判決を言い渡した。「主文は後回しにします」。厳刑をうかがわせた奥田哲也裁判長の冒頭の言葉には、ガッツポーズをするように右手の拳を小さく数回振り、にんまりと笑みまで浮かべた。一方、被害者の有山楓ちゃん=当時(7)=の両親は、楓ちゃんの遺影を持って傍聴。かけがえのない娘の命を奪った被告をにらみつけ、泣き崩れた。

産経新聞 2006.9.26 の記事より

奈良女児誘拐殺人 小林被告に死刑判決 「矯正余地なし」

 平成16年11月に起きた奈良小1女児誘拐殺人事件で、殺人やわいせつ目的誘拐など8つの罪に問われ、死刑を求刑された元新聞販売店員、小林薫被告(37)に対する判決公判が26日、奈良地裁で開かれた。奥田哲也裁判長は「被害者が1人であることは死刑を回避する理由にはならない。被告を懲役刑にする余地は認められない」として、死刑を言い渡した。弁護側は控訴する。

 子供をねらった犯罪が全国で続発するなか、被害者が1人の殺人事件に対する死刑選択の適否が最大の争点だった。地裁の判断は、従来の量刑基準よりも凶悪犯罪への厳罰化の傾向に沿ったものとなった。

産経新聞 2006.9.26 の記事より

 女の子をもつ父親としては、至極当然の判決だと思う。広島における同様な事件では、死刑判決とはならなかったが、控訴審以後、少なからず影響が出ることを期待する。

 一人や二人殺したくらいじゃ、せいぜい無期懲役(終身刑ではないので、途中で出てくる)なんてのが甘すぎたのだ。自分の命がとられる危険がないとわかれば、犯罪者は増長する。
 一人殺したら、死刑。この流れを定着させねばなるまい。


2006.9.27(Wed)

メッセージ

 あれはそう、私が今のみこりんと同じくらいの歳の頃…。
 母と私、そして小学校に上がったばかりの真ん中の弟と3人で、ひなびた食堂に入り、お昼ご飯を食べていた時のことだ。
 たしか病院からの帰りだったように記憶している。一番下の弟は、すでに生まれていたはずだが、なぜかこのシーンには登場しない。

 妙に薄暗い食堂だった。床は土がむき出しで、今にも崩れそうな細い足のテーブルで、がたごと揺れる不安定な椅子に座り、うどんを食べていた。温かいうどんだったので、季節は春か秋だったのだろう。
 テーブルが4つほど並んだ、狭い店。そう、狭かったはずなのだが、私の記憶では空間がぐっと拡張されたイメージが残っている。
 客は、他に男の二人連れが、店の隅でもそもそと何かを食べていた。

 私は、その男たちのことがどうにも気になっていた。何事か彼らは小声でぼそぼそとしゃべっている。時折、こちらの方を覗うような気配さえあった。
 低い声でしゃべっていたので、会話の内容を聞き取るのは困難に思われた。でも、その時の私には、彼らの声がなぜかはっきりと聞こえていたのだ。目の前にいる男たちとは別の、姿のはっきりしない何かが、頭の中に囁きかけているかのように。

 会話の内容はほとんど覚えていない。しかし、漠然と“危険”を伝えているらしいことは“何故か”わかった。
 ぜんぜん知らない人が、どうして私たち家族のことを話題にしているのかと、不思議に思った。正直、怖かったのだが、母も弟も、まるでそんな客などいないかのように気にしていなさそうだったので、私も黙ってうどんを食べた。

 いったい何が“危険”なのか。漠然とした不安があった。

 店を出て、家まで自転車で帰っているシーンが、次に来る。母を先頭に、私、最後尾に弟が、一列に並んでゆっくりと走っている。
 そして団地の入り口に差し掛かった頃、母が私に弟をちゃんと連れ帰ってくるように言い、母だけが先に道路を渡って行ってしまったのだ。

 私は母を追った。自転車をこいで、道路を渡った。
 弟は、よたよたとあぶなかしそうについてきていたが、私が道路を渡りきった直後くらいに、背後で“がちゃん”という鈍い音を聞いた。

 道路の真ん中で、弟が倒れている。その前には赤いクルマが止まっていた。
 クルマにはねられたのだ。クルマを運転していた女の人や、近所の人たちが集まってくる。私は、どうしていいかわからずにいた。大人の人から、「この子の兄ちゃんか?」と聞かれた時、母を呼びにいかなくちゃと思い出し、ダッシュで家に向かった。

 すでに母は家に着いており、私はかすれる声で「弟が交通事故にあった」と、言った。母が何も言わずに、家を出て行ってから先の記憶は曖昧だ。

 幸い弟の怪我はたいしたことはなかったのだが、私にはどうも食堂にいたあの男たちの事が頭から離れなかった。彼らの伝えたかった“危険”とは、弟の交通事故のことだったのではないだろうか。そう思えたからだ。
 でも、そんなことがあり得るのか。ただの幻聴か、あるいは…

 *

 近頃、みこりんがこんなことを言うようになった。
 「ねえ、おとーさん、みこりんねー、夢でみたことが本当になる時があるんよ」

 あの男たちは、いったい誰だったのか。みこりんにもやはり何かが視え、聴こえるのだろうか。それともただの偶然の一致か。

 30年経った今でも、ふっと思い出す、昔の記憶だ。


2006.9.28(Thr)

ダイヤモンド&パール

 気がつけば9月も終わろうとしている。夜ともなると、窓の外からは秋の虫たちのどこか哀しげな“声”が、二重三重に重なって届いてくる。廊下に置いてあるみこりんのスズムシ達も、オスはすべて死に絶え、残ったメスが5匹ばかりキュウリに取り付いて、静かに噛り付いている。
 すっかり季節は秋だ。

 はやいものよのぅ、なんて思っていたら、みこりんが「今年のクリスマスにサンタさんからもらうプレゼント、もう決まったんよ」と言うではないか。なんと気の早い、と一瞬思いかけたが、そうかわかった、今日はあれだ、例のヤツの発売日だったな。

 『ポケットモンスター ダイヤモンド』&『ポケットモンスター パール』

 ゲームのポケモン・シリーズは昔から複数タイトルが同時に発売されて、子供のコレクション欲を巧妙についた商売してるなぁ、と思っていたが、みこりんは『パール』の方にはぜんぜん興味がないのだという。何故かと問うに、「ダイヤモンドの方がカッコいいから」なんだそうな。
 学校の友達の意見も、ほぼ「ダイヤモンドのがカッコいい!」ということで一致しているらしい。より正確に言えば、ゲームパッケージにも描かれている『ダイヤモンド』に登場するポケモン“ディアルガ”が、カッコいいということのようだ。『パール』の方の“パルキア”は、かなり不人気っぽい。

 ダイヤモンドの方がカッコいいというその理由だが、その“色彩”に重要な要素が含まれているもよう。
 ダイヤモンドは、ブルー。パール、はピンク。
 ピンクより、ブルーの方がカッコいい。というのが、みこりん周辺の子供達に共通した意見らしい。
 みこりんは小さい頃から青色が好きだったな、なんてことを思い出す。

 ところで今年の春からみこりんの部屋が2階に移動し、寝るのも別々になった。だからみこりんには、ちょっと心配なことがある。それは…、「サンタさんに部屋が変わったことをどうやって教えてあげればいいの?」
 昨年はサンタさんにお願いしていた『どうぶつの森』が、クリスマス当日に間に合わず、引換券になってしまったことをみこりんはよく覚えていて、「1週間前にはサンタさんに教えてあげないと、去年みたいに間に合わないよねぇ」と心配していた。そこでやはり「ガラス窓に、サンタさんへのお願いを書いた紙を貼っておく」のがよさそうだと、みこりんは考えているようだ。

 うん、たぶんそのお願いはサンタさんにきっと届くだろう。
 というわけで、早めに『ダイヤモンド』ゲットしておかねば。


2006.9.29(Fri)

通り魔

 お昼前、Licからメールが届いていた。学校からの緊急連絡網で届いたメールを、転送したものだ。
 それによれば、今朝方、市内で通り魔事件が発生したとのこと。女性がカッターナイフで脚を切られたらしい。

 犯人は男。いまだ逃走中。
 物騒なことである。みこりんは今日も学童保育なので、一人で下校というシーンはない。が、学童保育の教室には校外から容易に侵入可能なので、不安はぬぐえない。

 進捗があれば続報が来る手はずになっていたが、定時までに新たなメールはなかった。

 ちなみに、みこりんの学校では事実上子供にケータイは禁止されているらしいのだが、田舎町で通学路上にほとんど人家がない場所も結構あり、親から子供にケータイを持たせたいという意見がそこそこあるようで、学校でも前向きに検討中のようだ。ケータイ持ってるからといってすべてが安全になるわけではないが、GPS搭載のケータイを子供が持つ事で、現在位置を常に把握できるし、緊急時の連絡手段を確保できるという利点は大きい。
 みこりんも来年からは学童保育には入れなくなるため(対象学年が1年〜3年だから)、子供用ケータイの購入は現実的な検討課題である。

 *

 夜、窓の外に雨の気配。
 天気予報では思いっきり晴れマークになっていたのに。明日の運動会がちょっと心配。


2006.9.30(Sat)

運動会

 運動会当日、幸いにして外は晴れ。みこりんも定刻で集団登校に間に合った。
 Licはお弁当作りに、私は場所取りに、それぞれに散ってゆく。

 場所はぎりぎりで確保できた。毎年のことだが、1家族でテントの半分以上を占めるでかいシートを持ってくる家があり(人数が多いわけでもないのに)、今回もあやういところで弾き出されるところだったが、隅っこではみ出すように我が家のシートを広げることができた。
 でも自治会のテントに入らず、自前のテント(というかタープ)を設営してる家庭も結構あり。こちらはこちらで場所取り問題はありそうだが、自治会ごとにテントを決められているわけではないので、自由度は高そうだ。我が家でも検討の余地あり。
 いったん、家に戻る。クルマの駐車スペースの関係で、一人一台というわけにもいかないので。

 運動会開始は8時半。みこりんの最初の出番は3番目。でもお弁当の方がちょっと間に合いそうにない。というわけで、Licに運転してもらって私だけ再度学校に。
 昨夜の雨模様が幻であったかのような、猛烈な晴れだ。テントからはみ出すようにしてシートを確保しているため、日陰はどこにもなく、じりじりと太陽に炙られてゆく。半端じゃなく、暑い。まるで夏のよう。
 汗で視界がぼんやりとしつつも、みこりんの最初の競技をビデオに収めることに成功した。とはいっても50m走なので、録画時間わずか20秒あまり。ファインダーの画素が粗過ぎて、遠距離からみこりんの姿を捉えるのは困難を極め、もう少しで撮り逃すところだった。あぶないあぶない。ビデオカメラの高性能化も、来年の検討課題だ。

 みこりんの競技が終わったあたりで、Lic到着。お弁当とクーラーボックスを確保した。
 Licは体調が思わしくないため、いったん病院に向かうことになった。風邪っぽいのだが、どうもそれだけではなさそうな感じもあり、ちょっと心配。

 それにしても帽子を被ってきて正解だった。これがなかったら、たぶん午前中だけでダウンしていたことだろう。熱射から後頭部を守りつつ、ようやく午前の部、終了。
 みこりんと共にお弁当をひろげていると、Licが病院から戻ってきた。事前にメールで「持ってきて」と頼んであった団扇も無事到着。あぁ、生き返る。

 *

 午後の部は、6年生全員(2クラスしかないので)による鼓笛で始まる。これがこの学校に伝わる代々の伝統行事ということになっていたが、それも今年で終わり。鼓笛はこの演奏を最後に廃止が決まっている。
 練習に時間を取られすぎて、6年生の活動が多大に制約されるからというのがその理由だった。たしかにこの学校では事あるごとに6年生の鼓笛が登場し、えらく力が入っているなとは思っていたのだが、何事もやりすぎはどこかに無理を生じるものなのだろう。

 じつは私も小学生の頃は、鼓笛をやっていた。当時は1学年5クラスくらいは当たり前にあったから、全員参加というのではなく、希望者や先生による推薦で頭数は揃えられていた。私は特に希望してたわけではなかったが、いつのまにか選ばれていた口。担当楽器は小太鼓だった。
 練習は主に夏休みが当てられ、放課後に練習があったのは運動会前くらいなもので、普段の生活の中に、鼓笛の練習はほとんど組み込まれていたわけではなかった。それでも特に支障はなかった。もっとも、トランペット系になると、いきなり吹くのは無理なのでマウスピースからの練習となるため、結構大変そうではあったけれど。それでも毎日遅くまで、なんて雰囲気ではなかった。

 みこりんの学校の場合、たぶん全員参加にこだわってしまったのが、まずかったんじゃなかろうか。楽器には得意不得意があるものだ。それを無理やり克服しようとすると、どうしても時間がかかる。希望者とか選抜にしておけば、まだ救いがあったかもしれない。
 最後の演奏は、あまり切れのよいものとはいい難く、練習不足はありありと見て取れた。廃止もやむなしであろう。

 午後3時過ぎ、運動会終了。みこりんの赤組は、今年も白組に敗れた。この3年間、なぜかずっと赤組のみこりんは、次こそは白組になりたいと言っている。過去、白組の方が優勝回数が多いからのようだ。といっても1クラス2組しかないのでは、白か赤しか選択肢はなく、勝ち負けもくっきりと分かれてしまうのはある意味仕方がない。

 むき出しだった両腕が、思いっきり日焼けしてしまっていた。太陽に長く当たっていると、なんだか眠くなる…

 いつのまにか眠りこけていたらしい。目覚めた時には、すっかり陽は落ち、薄暗いリビングにいた。親子競技は2年生までなので、今回は特に運動したとかはないのだけれど、肩や腰が妙に痛い。狭いシートに不自然な格好で、ずーっと座っていたのが響いたか。
 なんだか長い一日だった。


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