2000.10.1(Sun)

種まき&種採り

 昨日の雨が嘘のように晴れ渡った日曜日。菜園1号に今日こそ大根の種を播こうと思う。大根の品種は去年と同じく“満月聖護院大根”だ。前回の種まきは1999年10月17と日記には記録してあるので、今年はまぁまぁのペースといえる。でも本当なら9月下旬には準備しておきたかったところ。菜園1号2号ともに、まだ夏野菜が元気に茂っているので、空きを待っているうちに10月に入ってしまったのだが、やはりLicの言うように菜園はもっと拡張せねばならないようだ。東側すべてを菜園化しようというのがLic案。歩行スペースは畝の間を使おうと言うのだけれど……私が迷っている理由は、屋外設置の水槽配管が、ちょうどその東側の軒下に設置されていることにある。いずれここには濾過槽までも屋外仕様にする予定なので、菜園化してしまうと何かと工事に不都合が出そうな予感がしているからだった。でもその工事がいったいいつになったら着手できるのかってことは、当の私自身も予定が立てられないでいるのだから、とっとと菜園化してしまっても別段困ることはないかもしれない。菜園化するのも私だし、水槽工事するのも私なのだから。

 さて大根の種まきだが、空きがあまりなかったので6箇所分しか確保することができなかった。すぐそばまで伏見甘長やらカラーピーマンなどが迫ってきている領域で、6箇所というのはかなり無理した状態である。大根の葉っぱが大きくなるころには、それらの野菜が終わっていることを期待しての見切り発車ともいえる(今年栽培した植物の生長データが出そろう来年には、こういう菜園のサイクルもうまく調節できるようになるはずだ)。

 種まきが終わると、今度は種採りに挑戦。昨日の雨で湿気が気になったけど、晴れ具合が素晴らしいので大丈夫そうだった。種を採るのはバジル3種(“スイート”“アフログリーン”“ダークオパール”)と、葉げいとう“エロースプレンダー”である。どの種もゴマ粒より小さいため、細心の注意が必要だ。うっかりくしゃみなぞしようものなら、種は永遠に戻っては来ない…。
 ヨーグルトカップ片手に、ちまちま種をむいていたら、みこりんが案の定やってきた。これが朝顔の種とか風船葛の種なら迷わず手伝ってもらうところだが、さすがに今回は一瞬だけ迷ってしまった。みこりんにはまだこんな小さな種は早すぎるのではないか、と。でも、そんな心配は無用であった。みこりんはそれが種だということもわかっていたし、どうやったら種をほじくりだせるのかも見よう見まねですぐに覚えてしまったのだった。みこりんは小さいものが大好き。このくらい朝飯まえらしい。
 それにしてもこのバジル達、今年は少し育てすぎたようだ。鉢植え1つあれば、3人家族には十分すぎる。余ったのは、ひたすらバジルペーストにして冷凍保存しておくのがいいかな。手動でやったら手首が腱鞘炎になりそうだけど。フードプロセッサが使えれば吉。

 来年の課題。
 “適量の栽培を心がけること。”

炭火焼き

 週末雨が続いていたので延び延びになっていたが、今日こそ実行すべく焚き火台を用意した。今回は牛の肉ではなく、羊の肉を炭火焼きにしようというのである。世間でいうところの“ジンギスカン”だ。しかし我が家にはジンギスカン鍋は常備されていない。そこでパエリア鍋で代用することにした。にしても平らな鍋だから、肉が野菜の汁に埋もれて煮物になってしまうおそれはあるのだが、まぁいい、その時は焼き網にのっけてダイレクトに焼き肉にしてしまえばいいし。
 いつも焚き火台での着火に貢献してくれていた剪定枝が、雨で湿気てなかなか火が回らずやきもきする。住宅街では煙というのはあまりたてないほうがいい…。それでもようやく炭がチンチン小気味よくはぜるようになってきた。ここまでくれば大丈夫。あとは団扇で空気を送って燃やしに燃やせば完成だ。やや火力は強めにしておこう。

 パエリア鍋が到着する前に、Licがアルミホイルで包んだ物体を抱えてやってきた。どうやらサツマイモが内包されているらしい。火力の余韻で焼き芋をしようというのか。焼き芋のどこにそれほどの魅力があるのか私には理解できないのだが、みこりんも好きらしいので、たぶん私の味覚が普通ではないのだろう。いや、味覚というより、私の焼き芋に対する哀しい思い出が邪魔してるというべきか。そうあれは、私がまだ小学3年くらいの児童だったときのこと。季節は冬、隣りの空地で枯れ草など燃やして初めて焼きイモに挑戦したのだ。少々火力が足りず、サツマイモは生焼けで、ヘンな味がしたのを今でも克明に思い出すことができる。そしてその直後、私を襲った高熱と関節の痛み。あまりにタイミングの良すぎるインフルエンザの来襲であった。以来、私の中では焼きイモと高熱の苦しみがダイレクトにリンクしてしまっている。神経回路を人類が直に制御できる日が来ない限り、このリンクは消えないだろう。

 パエリア鍋の中で野菜と肉が渾然一体となり、かぐわしい香りを放っている。でもそれ以上に炭の焼ける匂いは大好きだ。なんかこう胸いっぱいに吸い込んだなら、そのまま完全脱力してしまいそうなくらいに甘美である。……あぁ、秋も、いいもんだ。


2000.10.2(Mon)

ペットいろいろ

 新しいスーパーができたというので、さっそくLicが偵察に行って来たもよう。報告によれば、ペット売場では意外に豊富な種類の“ちゅー”達がいたのだという。パールにサファイアブルーにノーマルに、それに忘れちゃいけないロボロフスキー。残念ながら砂ねずみはいなかったようだが、パールが1匹1980円というのはなかなか魅力的だ。我が家の“ちゅー”は、あかねちゃんただ1匹になってしまっているので、そろそろ新しい仲間を迎え入れてもいいかなと思う。
 “ちゅー”の他には、チンチラなどもいたらしい。これの手触りは格別に素晴らしいと聞くので、資金に余裕があればぜひともお連れしたいところだ。そしてウズラ。数年前、Licが私の誕生日プレゼントにウズラ(メス2羽)と飼育小屋一式を贈ってくれたことがある。新鮮なウズラ卵が期待されたが、あろうことかわずか数日のうちに野良猫に全滅させられてしまったのだった。現在、野良猫は減るどころか増えているが、飼育小屋を頑強なものにしさえすれば、大丈夫なんじゃないかと思っている(前回のは、少し隙間が大きすぎたのだろう)。なによりウズラの餌はたいへんに安価なため、卵を2個/日のペースで産んでくれれば家計にも安全だ。まずは飼育小屋の設計図を引くところから始めねばなぁ(すっかり飼う気らしい)。
 週末、ぜひとも自分の目で確かめてこようと思う。


2000.10.3(Tue)

曇りガラスの怪

 いったいいつからそうなっていたのか分からないが、腕時計が微妙にヤバイことになっている。文字盤を覆うガラスが、まるで磨りガラスのように曇っているのだ。表面を拭いてみてもまったく効果がないことから、これは内部に発生しているものと推測される。
 モノは TAG HEUER 2000 で、学生時代からの愛用品だ。かれこれ13年ほどになるだろうか。これまでバンド部分を1回交換しただけで、現在も時を刻むという機能については特に不都合はない。しかしガラス面が白濁してしまっては、肝心の文字盤を見ることができなくなる。ゆゆしき事態であった。

 ところで白濁は常に起きているわけではないらしい。変わりやすい山の天気のように、あるときは真っ白にガスっていたかと思えば、次の瞬間には“さぁぁっ”と天窓が開くように透明度が回復する。それが何の条件によって変動しているのかは、突き止めることができなかった。ただ、発生したり消滅したりという現象から、白濁の原因は水蒸気(あるいは何らかの気体)であろうという予測はできる。気圧、湿度、温度などの変動で、曇りが発生してしまうのではなかろうか。
 しかしこの時計は名前に 2000 の文字が入っているとおり、200メートル防水仕様だ。そうそう内部に水分が混じるとは思えない…。もしシールが完全ではなくなったのだとしたら、何かの拍子に湿気が混入してしまう可能性はあるかもしれないが。

 なんだか最近立て続けに身近なモノが故障しているような気がする。プレステに始まり、水槽用クーラー、PCのモニタときて、この腕時計。……不吉な前兆でなければよいが。


2000.10.4(Wed)

図鑑登場

 昨日はバッタ飼育にはまったらしいみこりんのために、本屋で図鑑を買ってきてやった。『ふしぎをためすかがく図鑑 いきもののしいく』(フレーベル館)というものだ。昆虫図鑑そのものではないが、飼育例が豊富だったのでこれに決めた。昆虫以外にも、鳥類、魚類、は虫類、ほ乳類、両生類と、ほぼ身近な生物を網羅しているので心強い。これで、みこりんがいつヒキガエルの卵を持って帰ってこようが、ミノムシの着せ替えに取り憑かれようが、大丈夫。
 まだ字の読めないみこりんだけれど、図鑑の利点は文字通り図で示されているところにある。わき起こる好奇心のままに、図鑑を愛読してほしいと思う。


2000.10.5(Thr)

『Octave』

 実験で取得したデータの解析が必要になり、CSVデータファイルを Excel 2000 で読もうとしたところ、エラーが出て読み込みが異常終了してしまった。ワークシートには最初の1行しか表示されていない。わずか5MB、行数にして3800足らず、読めないわけがない。試しに別のマシンの Excel97 でやってみたところ、問題なく読み込めたのだった。バグにしても、こんなすぐわかるようなのが残っていることに納得できず、数台のマシンでそれぞれ同様に Excel 2000 と Excel 97 で比較してみたのだが、どれも同じ結果となった。これはいよいよ本物の不具合らしい。カラム数が256個を超えていたのも影響していたりして。

 Office2000 のサービスパックで対処されている可能性もあるが、あいにく今日はそのディスクが見あたらなかったので、Excel 97 をインストールし直して作業を続けることにした。しかし、なんとなく Excel でやるより、自分でデータ処理プログラムを作った方が早そうな予感もする。だいたいカラム数256超がNGでは、どうしてもデータファイルに対して前処理が必要になってしまうし。
 しかしながら上司は Excel で簡単に出来ると単純に考えているらしいので、それを否定するにはある程度の理由付けが必要だ。どこまでが Excel で出来て、どんなことが出来ないのか示さねばならない。カラム数が足りないのはとりあえず置いておくとして、さっそく数式を入力、データ処理を試みるも、やはりグラフの描画能力が貧弱すぎた。MATLAB等の専用ソフトウェアを使うべきケースだろうと思う。がしかし、専用ソフトを常用するほど解析ばかりやってる職場ではないので、インストールされたマシンはない。やはり自分で解析&グラフ描画プログラムを書かねばならないようだ。このまま Excel で本質じゃない部分に苦労するよりは早く済むだろう。

 ところで、こんなものがあるらしい。『Octave』か、試す価値ありかも。


2000.10.6(Fri)

写真

 みこりんがいつのまにか食器棚の中を覗き込めるほどになっていた。これはその結果起きた哀しい事件の報告である。

 食器棚のグラス類を置いてある場所に、私とLicの結婚式の写真が飾ってあったりする。それをみこりんが見つけた。
 「これ、おとーさん」と、みこりんは“私”を指さして言った。よしよし、ではその隣にいるのは、誰?みこりんに問うてみたところ…

 「しらないおばちゃん…」

 おねーちゃんではなくて?

 「おばちゃん」

 な、なんてこった……


2000.10.7(Sat)

気になる曲

 正確には金曜深夜のこと。たまたまつけてた地上波で流れたPV(プロモーション・ビデオ)に、危ない予兆を感じていた。これは、きっと“はまる”。halの『オートバイ』という曲だった。
 日記によれば、私の“気になる曲”変遷は、Cocco『強く儚い者たち』倉木麻衣『Love,Day after tomorrow』矢井田瞳『How?』鬼束ちひろ『月光』ということになっている。そして今夜のhalによる『オートバイ』。なんとなく雰囲気は似通っているようないないような。

 今回は歌詞よりも先にイメージが強烈だった。高速に横たわるバイク。車体と路面に脚を挟まれた女。抜こうにも抜けない脚。そのもどかしさが、問答無用で心を鷲掴みにした。PV最後に入ったテロップで歌い手と題名を記憶したが、生憎と心当たりがない。で、例によってサーチエンジンで調べたところ、halの公式サイトを発見することができた。hal本人の企画による“裏”公式サイト「hal's Home Page」には、日記(のようなもの)などもあり、生々しくて大変よい。ファンサイト「My First hal」も、利用価値高そう。
 それらによれば、『オートバイ』は、つい最近シングルが発売されたばかりとわかった(ジャケット写真紹介文歌詞撮影風景)。買っておかねば。

じじばばの到着

 明日はみこりんの保育園で運動会。それに合わせて今日、うちの両親がはるばるやって来ることになっている。空いてれば6時間、混んでれば10時間超の道のりを、クルマで来るというので、到着まで安心できない。でもその分、家の片づけはたっぷりできる。
 Licが風呂場の掃除をやってるあいだ、私はみこりんと二人でガレージにいた。今、ここにはクルマが1台、バイクが1台、そしてウッドデッキの登場とともに使われなくなった縁台が1台ある。それぞれ横に並べてあるので、ここにさらに一台のクルマを停めるには、どうしたらよいだろうか。みこりんの見解を聞いてみようと思う。「どうすればよい?みこりん」

 Dr.みこりん 「これをねー、どけるといいんじゃない?」

 彼女の指さすそれは、縁台である。奥行き60cm、幅2mの縁台を撤去すれば、たしかにクルマの1台くらいは余裕のように思える。さらにバイクは奥の方に移動させれば完璧だ。3ナンバーではちょっと無理だが、幸い我が家のクルマもじじばばのクルマもエコノミーな1000cc(百の位を四捨五入)。問題あるまい。3歳の知能は、チンパンジーをとうに凌駕していることに満足する。
 縁台は組立式なので、撤去も容易だ。……む!ならば普段から撤去しておればよかったような気もするが、細かいことは気にしないでおこう。左右の脚をつないだ梁を取っ払い、折り畳み式の脚を収納すれば、戸板のような物体に早変わり。縁台以外の使い道を、ふっと思いついたりもし(ガレージ菜園の囲いに良さげ)。

 準備万端整ったころ、じじばばから付近までたどり着いたと公衆電話から連絡があった。ケータイを装備していない点が、今後の検討課題である。ケータイがあれば遠隔誘導も不可能ではないのだが、仕方あるまい。Lic隊員に迎撃に出てもらうことにした。むろんDr.みこりんもセットである。一人残った私は、緊急連絡に備えつつ、室内を見渡し最後のチェック。必要以上にテーブルを磨いてみたり。

 やがて表が騒がしくなり、後部音波レーダーの発信音も聞こえてきた。かなり苦労していたようだが、無事ガレージに車体を格納できたらしい。じじばばが玄関を開ける。ささっと身構えるにゃんちくん(メス猫、3歳)。しまった。一番人見知りなにゃんちくんに、今日何が起きるのか話していなかった。自分のソファにこれ以上ないくらい引っ込んで、にゃんちくんが上目遣いにじじばばを見上げている。はたしてにゃんちくんは、じじばばが帰るまでになつくことができるか、それが問題だ。

フローレンスラウンド

 じじばばを迎えての夕餉。庭から美味そうに太った茄子を収穫しておいた。フローレンスラウンドを2つと、久留米大長を1つ。今夜はフローレンスラウンドを焼き茄子にしよう。
 “フローレンスラウンド”。丸々っとしていて、艶々の表面は明るい紫に白いグラデーションがメッシュで入る美しい茄子。
 輪切りにされた断面は、淡雪のように純白で、透き通るほどに繊細だ。箸でつまめばとろりととろけ、そのまま口中へと投じるのも難しいほどに柔軟に。舌の上で転がせば、調味料のいらない甘味が広がった。こいつを育てたのは正解だった。とてつもなく美味いじゃないか。来年は、この茄子をメインに据えてみようかな。


2000.10.8(Sun)

運動会

 みこりんの運動会。未満児クラスでは、今回が最後、来年からはみこりんも年少組さんだ。天気は曇り。午後から雨の確率は50%。昨年までの2回はとてつもなくいい天気だったのだが、やはり10日じゃないのが影響していたりして(ちなみに去年の運動会は、こんな感じ)。

 あ、先生の衣装がお揃いになっている!背中にローマ字で保育園の名前が入ったTシャツだった。若草色というか萌葱色というか、緑系な色彩がカントリー調っぽくてよい。
 今年初めてというのは、他にもあった。地元の和太鼓チームによる演奏だけでなく、先生チームも和太鼓の演奏に加わっていた。かなり練習のあとがうかがえる出来だったことを記録しておこう。ここ2ヶ月ほどは、おそらく土日返上で準備していたものと思われる。

 で、みこりん。かけっこ、ぶっちぎりで一等賞!!…と思ったら、前の列につられてスタートしてしまったらしい。来年の課題である。でも、速かったことを記録しておこう。スタートダッシュの順番さえ間違わなければ、上位入賞は確実だ。
 そして我々。保護者競技は、昨年までのような筋肉を酷使するものではなかった。縦に並んで、でっかいボールを後ろにパスしてくという、人数さえ確保できれば一歩も動くことなく競技が終了する(規定長に足りなければ、先頭から順に末尾に並び直さねばならない。もっとも、最後尾の人は、いずれにしてもゴール目指して走っていかねばならないが)。例年、みこりんクラスの保護者は人数が少なくて苦労しているのに、なぜか今年はあちこちから湧いてくる湧いてくる。やはり競技がラクそうなところがポイントなのだろう。そのおかげで2回戦まで勝ち残ることが出来た。

 雨は、すこーしだけぱらついたものの、最後まで本降りになることなく運動会は無事、終了した。
 撤収。
 使用したテントは、自分達で片づけるのが掟である。我々の地区ではテント1つが割り当てだ。撤収は速やかに、粛々と行うべし。学生時代、ドームテントではなく大型の家型テントで山歩きをやっていた上、イベント用テントの撤収もサークル活動の一環で鍛えられていたので、こういう作業には抵抗がない。それに、“撤収”は、“設営”以上に面白いのだから、言われなくても“撤収”してしまうだろう。あぁ、このシートのたたみ心地が、た、たまらん…。

怖い音

 じぃじと寝るのだと張り切っていたみこりん。でも、じぃじには、1つ秘密があった。それは、“いびき”。我が家では、コンスタントに“いびき”をかく人はいないので、みこりんにとっては“いびき”初体験である。

 絵本を読み終えたじぃじは、昨日の疲れが出たのかみこりんよりも先に爆睡してしまったのだった。もぞもぞしているみこりんに、突然襲いかかる異様な音!びくっと固まるみこりんりん。不規則に、唐突に襲い来る“いびき”の怪。みこりんの瞳は暗がりで真ん丸に見開かれ、しきりと親指を吸っているようす。

 なかなか“いびき”は止まらなかった。今度こそと期待するものの、突然生き返ったようにうなりをあげるので、よけいに怖い。みこりんはまんじりともせず小一時間ほどを過ごした。でも、やがて眠気が勝ったか小さな寝息が聞こえてくるようになった。
 明日、じぃじとはもう寝ないと言い出さないか、心配だ。


2000.10.9(Mon)

秋植え球根

 今日を逃せば手遅れになる。私は秋植え球根のネットを手に、庭に出た。
 みこりんに手伝ってもらうつもりだ。球根ならば、みこりんにも簡単に植えることができるだろうから。

 ピンク色のチオノドクサ“ピンクジャイアント”8球は、本当は今年移植した門扉脇の花桃の根元に植える予定だったけれど、どうも雰囲気が合いそうにないことがわかったので、取りやめた。代わりに、青のチオノドクサが植わっている西南の花桃の下を選んだ。やはり広葉樹の足元というのはポイント高い。
 この花桃は晩夏、たくさんの桃の実をつけてくれた木だった。今も土の上には大量の青い実のなれの果てが散らばっていて、これが数年続けばいい土になりそうな光景だった。土に混ぜ込んでしまえばいいような気もしたが、球根に接触してはまずそうな予感があったので、一度どけておいて植え床を確保した。みこりんはネットを握りしめて準備万端整っている。では、植えよう。
 まずはチオノドクサから。みこりんと分け分けして一並べ。みこりんのは天地が逆になってるのが見受けられたので、若干修正が必要だった。
 その隣にはアリウム“ローゼアム”を10球を並べる。ビー玉みたいな真ん丸の球根が、みこりんの興味をかき立てているらしい。遊ばれそうになるのを制御しつつ、植え込んでゆく。
 最後にミニ水仙“リップバンウインクル”5球。今年の変わり咲き水仙は、買おうと思っていたのは軒並みカタログの締め切りを過ぎてしまっていて、生協で注文していたコレだけになってしまった。こつこつ揃えなさいという戒めであろう。
 以上で桃の足元は完了。土をかぶせて、さらに抜いた草で表面を覆っておく。来年の春、2色のチオノドクサが、どう対比を見せてくれるか興味深い。

 *

 チューリップ用のテラコッタでは、今もまだバジルとトマト“レモンボーイ”が元気だった。でも、今日は覚悟を決めた。根元からじょきじょきハサミを入れる。バジルの香りが辺りを染めた。
 根っこを取り去り、土を足し、石灰など混ぜていると、みこりんが小さなプランタを手に戻ってきた。どうやらこれに自分用のチューリップを植えたいらしい。よしよし、土を入れてあげよう。
 Licの指摘により、ちっこいプランタではなく、ほどほどの植木鉢に格上げとなったみこりん用チューリップは、“クリスマスマーベル”という品種が2球だけ植えてある。ピンク色の花を咲かせるチューリップだ。私の方にはその残りの5球、そして7球の“バレリーナ”。これはオレンジ色。しかもユリ咲き。ピンクと揃って咲いてくれればいいのだが、たぶんダメだろうなぁ。

 *

 夜、じじばばに我が家の種ストックを見せて、リクエストを聞いてみた。うちでは使い切れないほど、まだ残っているうえ、別の場所で育てていてもらえれば、万一のバックアップにもなるので、盛大に放出だ。それでもまだまだ余っている。予定どおり、あと2〜3年は野菜の種を買わなくてもよさそうだ。

久留米大長

 土曜日に収穫しておいた久留米大長に、さらに今日1つ追加して合計2本をLicに料理してもらった。今回はスパゲティソース用として、油炒めのあと若干の煮込みが加わる。皮を剥くところから見ていたが、じつに固そうだった。肉は黄緑色で、茄子というより瓜か何かのような外観だ。肉も固く締まっていて、鍋に投入すると“からんからん”音がした。…もしやこれは煮物用なのかもしれない。長く煮ても型くずれしない茄子…という説明書きを、どこかで見たような見ないような。ま、まぁいい、若干とはいえ煮込むわけだし。

 実際食べてみると、肉はかなり軟らかく食べ頃になっていた。フローレンスとはまたひと味ちがった歯ごたえである。舌に乗せてもとろけないので、味を染み込ませる料理に向いているようだ。ソースのせいかもしれないが、若干の酸味がほどよくあり、じつに爽快な味覚を与えてくれる。この茄子も来年は一等地に植えてやらねば。

秋の夜長は『ヴォイジャー』で

 昨日から始まっている SuperChannelの『スタートレックまるごと2000』、今回も『ヴォイジャー』だ。これで75話までの補完が完了する……はずだったのに、2話ほど失敗してしまった。1つは昨日の運動会の時間帯にかぶってしまったためだが、もう1つは意外なアクシデントで録り損ねてしまったのだった。

 あと4時間ほどですべてが終わるという時のこと。ニュースの時間となったので、TVの入力を切り替え、地上波へ。そこで50分ほど世界情勢のおさらいをしたあと、再び SkyPerfecTV!に戻ってくると、画面にはSuperChannel とは全然別のチャンネルが映っていた…。な、な、な、なんじゃこりゃぁ!
 ちょうどみこりんの手元に SkyPerfecTV! のリモコンがあったので、咄嗟に「みこりん、チャンネルいじった?」と聞いてしまったが、普段からみこりんはあまりチャンネルはいじらないのだ。お気に入りは赤い電源ボタンなので、もしみこりんが触っていたら、もっと違う光景となっていただろう。では誰か?Licも違うと言っている。もしや私が自分で触れてしまったとか…と考え始めたころ、じじが白状した。じじにとって不幸だったのは、実家には SkyPerfecTV! なるものは導入されていないので、それ用のリモコンは初めてだったということだ。地上波のリモコンと同じように数字ボタンを適当に押してしまったらしい。
 普通なら録画予約をかけるので SkyPerfecTV! 側は大丈夫なのだが、今回は丸一日以上という長時間のため、いちいちセットしていなかったのもまずかった。さらに、うかつにリモコンを放置してしまったことが主たる原因。
 気長に再放送を待つしかないが、何年後になることやら。こういうときに限ってレギュラー放送で録画していないっていうのは、ある種の法則に従っているのかもしれん。

 来月には76話以降の、一挙放送がある。録り逃さないようにせねば。


2000.10.10(Tue)

おんぶバッタ

 じじばば帰還。にゃんちくんがようやく慣れて来つつあったのだが、これでまた振り出しに。私はどうも風邪がこじれつつある気配だったので、休暇にした。
 気候も良いので、菜園1号2号の空きスペースに、人参“黒田五寸”と長ネギ“福だるま葱”の種をまいてみた。
 みこりんには、昨日にひきつづき手伝ってもらったのだが、細かな種を筋まきするのは今回が初めてだ。うまくやってくれるだろうか。畝を作ってその真ん中に指で線を引き、「ここにぱらぱらしてね」と指示してみたところ…。
 人参の種は一箇所に“どばっ”と集中してしまっていた。やはりお手本を示さねば。固まっている種を土ごと指でつまむと、端から端までまんべんなく“ぱらぱら”して見せた。なんとか理解してもらえたような?

 葱の畝にも同様に指で筋を作ってやったところ、今度はみこりん、じつに器用にぱらぱらしてくれたのだった。さっきとは格段の進歩である。もはや私の修正も不要なほどに、まんべんなく筋まきが完了していた。
 みこりんの緑の指にかかれば、すべてうまくいきそうな気がするから不思議だ。

 種まきのあと、みこりんは菜園の向かいで育っているパイナップルセージで遊び始めていた。ちょうど開花時期を迎えつつあって、真っ赤な花がみっつよっついつつむっつ…。みこりんは小さな筒状の花を“すぽっ”と抜き取り、根元を口にくわえて、吸っている。そういえば去年、こんな遊びを教えてやったような気もする。甘い蜜の味がするので、当時まだ2歳だったみこりんの記憶にも残りやすかったのだろう。

 花茎をよじ登ってくるものがいる。おんぶバッタだった。仲良くおんぶしたまま、にじりにじりと我々に接近してくる。柔らかな花びらでも食べに出てきたのだろうか。彼等の陣取ったのは、みこりんがまさにいま摘み取ろうとした花びらの真上。みこりんとバッタとの間に、目に見えぬ電光が走った……。
 でもみこりんはまだ自分でバッタに触るのは怖いらしく、手が出せない。私は、バッタをよく観察するように言った。幸いバッタはメスのお腹が大きいようで、動作も俊敏ではなく、観察するには絶好の機会。みこりんも、“おんぶ”している様子に興味を惹かれたらしく、自分なりにおんぶしているのがお母さんで、されているのが赤ちゃんだと思ったようだ。正解じゃないけど、いずれ正解は図鑑で知ることになるだろう。それまでは想像力で遊ぶといい。
 みこりんが花びらを2つちぎって、私に手渡してくれた。バッタに食べさせてあげてということのようだ。大きいのがお母さんに。小さいのを赤ちゃんに。そろりと花びらを口元に持っていってやったのだが、バッタにしてみれば脅威でしかなかっただろう。でも、少し後ずさりしただけで止まった。何か変だなと思ったら、メスの後ろ脚が両方とも無くなっていたのだった。

 なおも見守っていると、バッタ達は再びもと来た枝をたどって帰っていった。パイナップルセージが満開になるのは、来週か再来週か。今年は少し開花が遅れているような気配。暖冬になるのかもしれない。


2000.10.11(Wed)

本の注文

 オンライン書店“bk1”。その送料無料キャンペーンは先月で終わった。もちろん私もそれに間に合うように注文していた本がある。ところが今に至っても出荷ステータスは“出荷準備中”のままだった。約2ヶ月あまり、なんの音沙汰もなしというありさま。
 送料無料はどうでもいいから、とにかく注文した本がこうしている間にも入手不能になってしまうことが怖い。bk1ではないが、この春、会社の図書室に注文した書籍は、待つこと2ヶ月の間に入手不能になってしまって二度と買えなくなってしまったし。まったく書籍というのは奇怪なものである。版元在庫切れというのが判明するまでに、なにゆえ2ヵ月もかかってしまうのか…。今回のbk1のは、システムの不具合、もしくは担当者のミスだろうけれど。

 試しに他のオンライン書店 bol.com で検索してみたところ、在庫あり!同じく、紀伊国屋 Web でも在庫あり!これはもうbk1のはキャンセルするほうがよかろう。規約によれば3週間以上“出荷準備中”ならば、注文はなかったことにできるようだし問題あるまい(本当ならその3週間経過時点でbk1から連絡があってしかるべきだったのだが)。
 で、そのように書いたメールを送信したのが昨日の深夜。返事は今日の正午くらいにあった。注文は無事取り消された。
 新しい注文先だが、紀伊国屋では何度か買ったことがあるので、今回は bol.com を試すことにした。検索して、ヒットしたら、買い物かごに入れて…。システムはどこもだいたい同じ。不便かなと思ったところは、買い物かごと買いたい本リストへの相互移動が簡単ではないこと。それに出荷ステータスを見るのに注文番号が必要なこと。でも、メニューはケバケバしくなくて私の趣味には十分合う。“青”というのは、私の大好きな色の筆頭でもあるし。送料は190円(ただいまキャンペーン中)。本屋への配送などが選べたらなぁ。

 他に在庫がなくてどうしてもというのでなければ、たぶんもうbk1は使わないだろう。出荷ステータスの管理という基礎的な部分で不備があるようでは、いまいち信用に値しない。


2000.10.12(Thr)

ITって

 ジャパンネット銀行が本日オープン。でも旧サイトからたどって行ってみると無限ループの罠が…。な、なにゆえに(夜にもう一度アクセスしてみると、この現象は解消していた)。

 でもこの他行口座振り込み手数料の安さは魅力的。小額送金のときには、いつも理不尽な思いをしているのだが、ここならばそんなストレスも半減しそう。問題は、さくら銀行が近くには一件もないことと、am/pmも見あたらないこと。郵便局のATMは、ある意味“公共財”なのだから、あれを全面的に開放すりゃいいのに。ITなんて浮かれている間に、身近な不便をちゃかちゃか解消するのが吉。それにしても“IT技術”ってな単語を最近よく見かけるような気がする…。気色悪いったらもぅ。


2000.10.13(Fri)

やっぱりマグビュー

 我が家のPCのモニタが故障して数週間になる。ずいぶん不便な思いをしてきたが、ようやく修理すべきか新規購入か結論が出た。“新規購入”だ。
 故障したモニタはマグビューの 17S 。マグビューのサイトによれば、すでに製造中止になっていた。で、修理費は基本金額だけで1万7千円らしい。新型は最近値下げされて約3万。
 置き場所の関係から、今回もやはり17インチにした。786FD、トリニトロン管仕様。消費電力最大120Wというのが気になるが、液晶モニタはまだまだ高い。電気代を相殺しようと思えば、十年以上かかりそうなので今はやめておく。この事情も2〜3年で変化しそうだけど。
 購入先は、ソフマップのオンラインショップに決定した。どこも値引きのほとんどない状態だったので、どこで買ってもよかったのだが、一番サイトの反応が早かったという理由で決めた。できれば日曜には届けばいいのだけれど…

 あ、ついでにキーボードも注文すればよかったな、と気づいたのは夕方になってからのことだった。


2000.10.14(Sat)

複葉機

 土曜だが今日は振り替え出勤日。案の定、職場は人影もまばらで閑散としている。ここ数年は工数が慢性的に不足しているので、休暇取得が奨励されているのだった。

 天気もよいので、屋外で“特殊車輌”の“実験”をする。開けた場所だと、空も広く見える。まるで天の川のように真っ白な鱗雲が、空の果てまで横たわっていた。いまにも雲海を割って、“何か”がゆっくりと降下してきそうなシチュエーションだ。
 遠くから小さくエンジン音が響いていた。南の方向に、オモチャみたいに可愛らしい飛行機が、一生懸命舞っているのが見える。白いスモークを引きながら、木の葉のように錐揉み落下、そして急上昇。いつものジェット戦闘機の機動とはまったく違った軌跡が大空に描かれていた。
 飛んでいるのは複葉機だった。明日、航空自衛隊の基地祭があるので、その練習をしているのだろう。複葉機のアクロバットは映像でしか見た事はなかったが、こうしてじかに見ているうちに、ひょっとしたらジェット機のアクロよりも面白いかもしれないと思うようになっていた。
 たとえばT-4ブルーインパルスの演技だと、旋回半径などの大きさもあり、常に上空で舞っているわけではない。時々どこから進入してくるのか見失ってしまうこともある(マニアはきっちり把握できてるらしいが)。まぁそのスピード感が“迫力”に寄与しているので、これはいたしかたない点ではあるけれど。その点、複葉機のアクロだと、ずぅっと演技を見ていられる利点がある。スピードもそれほど速くはないので、一瞬で“技”が終ってしまうこともなく、ある程度ゆとりを持って眺めていられるのがいい。

 複葉機の練習は続いている。機体の軽さを活かして、空中で失速させて急転回。さらに急上昇、しかし途中で複葉機は真上を向いたまま静止した。重力とエンジンパワーとをバランスさせての“ホバリング”らしい。この技には正直、びっくりさせられた。それにしても気持ち良さそうに飛ぶものだ。つい仕事を忘れて見入ってしまう。
 たっぷり15分以上は飛んでいただろうか。明日、ブルーインパルスは飛ばない。その代役の複葉機。自衛隊の機体とは思えないけど、そのへんの事情はきっとマニアな人達が解説してくれるに違いない。


2000.10.15(Sun)

朝の散歩

 少しだけ早起きした日曜の朝。みこりんとともにタイムレンジャーを堪能したあと、お散歩にでかけた。
 みこりんは“ぽぽちゃん人形”を専用のベビーカーに乗せて、押して歩いている。どことなく冬の気配さえ感じさせる空模様だった。
 しばらくすると、道路脇にぽつんと1本、柿の木(たぶん野生)が見えてくる。誰も採らないのが不思議なくらいの鈴なりの実。もしや渋柿か?そういえばこの辺りでは、軒下に干し柿吊ってる家が少ないような。
 意外なところにドングリの木なども発見して、しばし木の実拾いに興じてしまう。落ちている数でいえば、栗のイガの方が多かった。でも中身はどれも空っぽだ。みこりんは足で“にじにじ”したくて、片っ端から試していたけど、戦果なし。でもよくよく地面を探してみれば、イガから外れた栗の実が、そこここに転がっているのを見つけることが出来た。ぴかぴかの栗色の実は、丸々と太ってじつに美味そうだ。ひとつ、ふたつ、みっつ…、みこりんの小さなポケットには入りきらずに、私のポケットも動員しながら集めていくと、あっというまに両手一杯ほどになっていた。
 だがしかし、私は重大なことを忘れていた。この歩道は、犬の散歩道にもなっていて、マナーの悪い飼い主が放置したとみられる大量のブツがあちらこちらに残っているのだ。あやうく私も被害にあってしまうところであった。歩道が古くて、草ぼうぼうなのがブツの放置に拍車をかけているのだろう。草刈りしたくても、このありさまではちょっと手が出せないに違いない。
 栗…。せっかく拾ったが、気分的に食べようという気が失せてしまった。ちょっと悔しい。

 みこりんが本来の目的地である川を目指して歩みを再開したときである。ぽつり、と冷たいものが落ちてきた。ついに雨が降ってくるのだろうか。急いで戻ろう。みこりんの手を引き、Uターン。しかしみこりん、いつもの悪い癖が出てしまった。
 「おうち、とおいで、かえれん〜」
 暗に抱っこ、もしくはおんぶを要求しているようだが、今日は“ぽぽちゃん人形”のベビーカーもある。そう簡単にはいかない。なんとか歩かせようとしていたら、坂道を下りてきたクルマが1台。
 Licの登場だった。では、行こう。このまま航空祭へ。

航空祭

 雨はだんだんと激しさを増し、フロントガラスを容赦なく叩く。これから複葉機のアクロが始まる時間だが、もしや中止になってしまうかもしれない。
 あぁよかった、昨日、たっぷり見ておいて。天気も最高に良かったし。そんな私を、Licは「ずるい」と言った。昨日Licはみこりんと家で留守番していたので暇していたのだという。アクロを発見した時点で、呼ぶべきだったというのだ。やはりケータイは常に持ってないといかんらしい。

 さて気になる雨だが、基地に近づくにつれて、降りが弱くなってきた。路面もほとんど濡れていなくて、ひとやま越えただけなのにその違いに唖然とする。
 遠くに複葉機のスモークが見えた。すでに始まっているらしい。視力2.0、しかも遠視気味の私にとっては、この距離(おそらく5〜6キロ)でも堪能可能だったが、Licに却下されてしまった。みこりんもチャイルドシートからぶーぶー不平を言っている。後部座席からでは、まったく見えないということだった。やはりもっと接近せねば。

 最寄りの駐車場は、毎年混雑しているのだが、今回ブルーインパルスが来ないということもあり、いつになく空いていた。複葉機の演技時間も残り10分。今回はこの駐車場で見ていくことに決めた。
 複葉機は相変わらず軽々と空を舞っている。ぐるんぐるん、よくもまぁ30分も激しい操縦ができるものだ。
 10分はあっという間に過ぎ、しばらくは静かな空が戻ってくる。次の異機種編隊飛行まで、15分。お昼まで、まだ一時間以上もある。

 C130のずんぐりした機体から離陸が始まった。続いてF15。そしてT4。なんと3種類だけらしい。ここの基地祭の目玉は、どこよりも種類の豊富な機体にあるといっても過言ではないというのに、時代の流れには逆らえないということか。もはやF4もT2もF1も、航空祭では飛んでくれないのかもしれない。できれば来年はここにF2が加わることを期待しつつ。
 それにしてもさっきの複葉機と違って、今度のは上空に現われる時間よりも、どこかに消えている時間の方が長い。待って待って待ちくたびれたころにようやく出現したかと思えば、あっというまに消えて行く。機体性能などが違いすぎるので、編隊を組むのも大変なのだろう。みこりんはF15の爆音に、「かみなりみたい」と怖がって、ずっと私に貼りついていた。大きな音に、めっぽう弱いみこりんであった。
 個人的には、C130の重そうな機体が、うんせうんせとバンクしていく図が見られたのが良かった。ここ数年、見逃してしまっていたから、今回はひさびさであった。それでもさすがに時間いっぱい見ていくのは、ちょっと耐えられない。というわけで正午を待たずに撤収開始。

 帰りに新装オープンした例のスーパーに寄り、ペットコーナーをチェックした。わらわら状態のロボロフスキー。懐かしい小鳥達。幼少のころ飼っていた種類の小鳥に出会えたのも、ずいぶん久しぶりだ。小動物用のペットヒーターが1800円と手ごろだったので、1つ買った。あかねちゃん(ロボロフスキー)のケージに入れてあげようと思う。

 帰宅。さっそくあかねちゃんにペットヒーターを装着してやった。しばらくして、そぉっと覗き込んでみると、「あぁもう離れない!」という感じに横抱き状態になっていた。見ているこっちまで幸せな気分に浸れてしまう。ほのぼの気分の午後の始まり。

『神戸在住』

 『神戸在住』(木村紺 アフタヌーンKC 講談社)の1巻、2巻をひたすら読む。
 こ、これは不思議な作品だ。あまりに普通っぽすぎて、ノンフィクションでは?と思ってしまうほどに。震災のネタも、かなり生々しかった。なんというか、思わずあの瞬間を思い出してしまったほどに。このへん、神戸っこのLicには、もっと思うところがありそうな…。
 金城和歌子ちゃん、いいコだねぇ。学祭の回とか、『時には昔の話しを』(加藤登紀子)が自動的に頭の中で再生されてしまったよ。もう5年ほど昔にこれを読んでたら、かなりやばかったかもしれない(そのころこの本はなかったけど)。今はそんなに激しくぐぐっとくることもなく、穏やかに懐かしく過ぎ去りし学生時代を思うだけ。じつに秋向きな作品であった。
 そうそう、不思議だったのは、作中、登場人物らがTOM CATを車内のBGMにしてるとこかな。


2000.10.16(Mon)

青い紫蘭と吹き詰め咲きアネモネ

 そろそろ来年春用の植物などを注文せねばということで、いろいろカタログを眺めては取捨選択を繰り返していたのだけれど、昨夜、一応の決着を見ることができた。時期がすでに遅くなってしまったということもあり、今回は品数も2品だけと、少数である。選んだ先はタキイ種苗株式会社の「タキイの花ガイド」から。ここのは送料無料、手数料も無料というので、ちょびっとだけ買うには適している。
 注文の内訳は以下のような感じ。

  • ブルー紫蘭 1株1200円
     すでに薄紅色の口紅紫蘭と、普通の紫色の紫蘭は育てているので、青花に弱い私としてはこいつはぜひとも育てておきたい。
  • 吹き詰め咲きアネモネ 3球1500円
     “おしべが弁化して完全な丁字咲きとなる”変わったアネモネというところに惹かれた。普通のアネモネも好きなのだが、この“吹き詰め咲き”の豪華さは素晴らしい。

 そろそろコタツ園芸の季節でもある。初春から撮りためた植物の画像と、観察記録のまとめでもしておかなくては。来年にまで持ち越したら、たぶんきっとすべてがお蔵入りしそうな予感がするし……。


2000.10.17(Tue)

見慣れぬ物体

 いつものようにLicの運転で仕事に向かう朝。まっすぐ伸びた農道は、これまた何の変哲もなく長々と横たわるのみ。ありふれた一日の始まりだ。車窓の向こうに流れる風景を、ぼんやり眺めていたときのこと。
 休耕田の草原の中に、見慣れぬ物体が、いた。慌てて焦点をそこに合せると、そいつは“毛皮”だとわかった。しかも、生きている“毛皮”だ。色は、こげ茶。何かの動物が、そこにうずくまっているのだった。

 こちらから見ると、ちょうど後ろ姿になってしまって、決定的な特徴というものを見出すことはできなかった。その少ない情報をもとに、過去の記憶を探ってみたが、今しがた目撃したばかりの生物に該当するものは思い当たらないのだった。犬ではない、猫でもない、たぬきでも、いたちでも、カピパラでもない。後ろ脚は発達しているように見えた。だからお尻のあたりだけは、ウサギに見えなくもない。しかし前脚のへんから背中にかけてが、骨張りすぎだ。そのあたりだけ見ると肉食獣のよう。不思議なのは顔に相当する部分が見あたらなかったことだ。よほど小さな頭部を持つのか、それとも単にうずくまっていて見えなかっただけなのか……。

 Licは「引き返してみる?」と言ってくれたが、出勤時刻に余裕はなかったので行き過ぎることにした。なんとなく、明日もそこにいそうに思ったから。
 あとになって思い返してみると、あの座り方というかうずくまり方は、ワラビーに似ていなくもない。ちょっと色彩が違うような気もするのだけど、ワラビーならば、かなり特徴が似ているような気がする。どこかから逃げ出してきた迷いワラビーだったりして。
 ここしばらくは田んぼから目が離せなくなりそうだ。


2000.10.18(Wed)

幻の…

 唐突にみこりんが言った。「おとーさん、みこりんねー、きょう、たがめつかまえたよ」
 “たがめ”……タガメ(Lehtocerus deyrollei)カメムシ目コオイムシ科、今や絶滅の危機に瀕しているのではないかと思われる水棲昆虫……そのタガメを、みこりんが捕まえたとな!?
 9割9分9厘ほどはみこりんの誤認であろうと思いつつも、わずかな可能性に、つい緊張してしまう。もしも本物だったらどえらいことだ。平静を装いつつ、どこで捕まえたのか聞いてみたところ、保育園でお散歩に出ているときに見つけたのだという。
 私の知らない場所で、とてつもなく水のキレイな太古の自然そのままにとどめた区域でもあるというのだろうか。まるで時間が永遠に停止したかのような…。もしやみこりんは失われた地底世界への入り口を“抜けて”しまったのではあるまいか。子供の時代は、オトナになってしまうと見えないモノが見えるのだと、我が家の古い伝承にはある。みこりんにその素質が100%ないとは限らない。

 その捕まえたタガメが今、どこにいるのかは不明である。みこりんが、それ以上タガメについて話すのを意図的に避けているようなので、聞き出せなかったのだ。タガメのことに話題を向けても、みこりんは保育園で習ってきた「タガメの歌」のことに話をすり替えてしまっていた。
 この「タガメの歌」と、元になった絵本によって、みこりんは初めてタガメなる生物の存在を知ったと思われる。そのような歌があるとは私が知らなかった頃、図鑑のタガメのページで、「これなーんだ?」と聞いてみたら、「たがめー!」とズバッと答えたのでおおいに驚いたものだ。
 それほど正確に“タガメ”の姿を知っているみこりんなので、「つかまえた」という話にも信憑性が出てくるわけである。いつかみこりんから経過を報告してくれる日が来るだろう。その日を楽しみに待っていようと思う。


2000.10.19(Thr)

こおろぎ、ばった、仮面ライダー

 唐突にみこりんが言った。「おとーさん、みこりんねー、きのう、これつかまえたよー」
 “これ”……もちろん、“これ”というのは代名詞である。みこりんが手にしたカップの中に、問題の物体があった。小石の下に隠れていたのは……コオロギ、エンマコオロギだ。しかも“ぺたっ”と半分つぶれさしの干からびつつある死体であった。
 大事そうにカップを手にするみこりん。生きてるエンマコオロギは、とてもみこりんの手には負えないだろう。死体だったので捕獲することができた。みこりんにとって生きてるか死んでるかは、あまり問題ではないらしい。
 エンマコオロギか…。バッタの次はエンマコオロギ。着実に虫になじんでゆくみこりんである。

 ところでみこりんが昨日から思い出したように、気になることを言う。なんでも「かめんらいだー」がいたんだそうな。おそらく仮面ライダーのことだろう。先日も日曜日、仮面ライダー“クウガ”を見せたばかりなので、ああいう形態のものだというのは理解しているはずだ。
 どこにいたのかと聞くと、やはりタガメのときと同じく保育園でお散歩に出たときに見つけたのだという。しかし今朝、みこりんを保育園に送っていく途中で、さらに場所が特定された。とある学生寮の門の前らしい。そこに仮面ライダーがいたというのだ。
 しかも「手や足やお腹や頭がとれて、また直って、しゃべった」(漢字変換は私の手による)というではないか。最初はライダー人形でも落ちていたのかと想像していたのだが、“しゃべった”というのがひっかかる。みこりんの口振りからは、どうも等身大の人間のようなものを想像してしまうのだが…。

 いったい何者だろうか。
 かぶりものをかぶった趣味の人、の可能性はある。学生寮の前だし。
 今度、見せてくれるというので、その日を楽しみに待つとしよう。

たがめ続報

 みこりんが昨日「つかまえた」と言っていた“たがめ”だが、どうやら正体が判明したようだ。
 今夜みこりんは、“たがめ”について再び口を開いてくれたのだが…、それによると“今”タガメは家の階段の横にいるのだという。階段とは、ガレージの小さな階段のことと思われる。ここで私は1つの可能性に思い至ったのである。
 今朝、みこりんが「これ、つかまえた!」と言って見せてくれたコオロギ。アレもまた、ガレージの階段横に置いてあった。ここはみこりんの秘密の宝物がよく置いてある場所なのだ。私に見せるのを楽しみにしているらしい。問題は、現在階段横に置いてあるのは、そのコオロギだけのように思えることだ。“可能性”は、徐々に“確信”に変わりつつあった。

 あぁ、みこりん…、あれほど自信たっぷりに図鑑でタガメを指差してくれたのに…。いつか本物のタガメを探しに連れていってあげようね。


2000.10.20(Fri)

AIRock Aerobatic Team

 'Rock'岩崎こと岩崎貴弘。彼が先日の複葉機のパイロットだった。
 1996年11月にデビューした日本で唯一のプロ曲技飛行展示チーム“AIRock Aerobatic Team(エアロック・エアロバティックチーム)”の主催者である(公式ページ『AIRock Official Homepage』)。岐阜で飛んだのは今回が初めてということだったが、他の航空祭などではかなりお馴染みだったらしい。これまで岐阜で飛ばなかったのは何故だろう……と思ってみたり。スケジュールの都合かな、やっぱり。この時期は航空祭が目白押しだし。
 プロフィールによれば、元空自パイロットで、F15に乗っていたという。戦闘機からアクロバットへの転身…、その昔、コミック『エリア88』(新谷かおる)のエピソードの1つに、こんなシーンがあった。アクロバットのパイロットが、外人部隊の戦闘機乗りとして登場する。操縦テクニックは優れていたが、ミサイル回避のループで限界を超えられずに撃墜された(と記憶している)。戦場で必要とされるものと、アクロバットで必要とされる技能の違い。実際どうなのかは分からないが、岩崎氏が転身を決意したのが41歳のとき。新しい事に挑戦するには、普通、かなり困難を伴う時期ではないかと思う。なんというバイタリティ、いや、熱意であろうか。やはり自衛官は常人よりも逞しくあるのだろう。
 飛行機酔いしやすい体質というのにも驚いた。それであの30分間をよく大丈夫でいられるものだ。もう休むことなく“ぐるんぐるん”やってるというのに。
 またいつか実際に飛んでいるところを見たいと思う。来年も岐阜に来てくれれば……。


2000.10.21(Sat)

散策の一日

 保育園から戻ってきたみこりんは、一息入れるとさっそく“お散歩”を所望した。今日のお供は“うさぎさん”。ぽぽちゃん人形用のベビーカーに、ちんまりと着席して遙か虚空を見つめていた。
 ぽぽちゃん人形と、この“うさぎさん”と、どっちが好きなのか?この問いにみこりんは、毎回違う答えを返してくれる。「どっちも好き」とは言わないのが謎だ。

 心地よい秋空の下、我々は川を目指して出発した。少し行くと、道が二手に分かれた場所がある。どちらのルートを通っても川には行けるが、これまではもっぱら直進する方を選んでいた。でも今回はみこりんからルート変更の申し出があった。
 左折ルートに入ってすぐのところに、赤い小さな実を無数につけた木があった。広がった枝は、歩道の上を覆い尽くし、いい感じの木陰になっている。みこりんは“赤い小さな”実に、もちろん興味を示したのだった。
 その木は少し小高い空き地に立っていたので、みこりんが手を伸ばしても、とうてい届くわけがない。空き地の高さは約1m。よくある長方形のブロックで壁面が構成されている。わずかなためらいのあと、みこりんはそこに手をかけていた。よじ登るつもりらしい。しかし身長80cmちょいのみこりんにとって、1mの高さは容易には攻略できなかった。いや、けっこうイイ線はいってるので、思い切りが足りないだけかもしれない。両手の力だけで己の全体重を支えるという経験が、未知の怖さを生んでいるように私には思えた。

 「ここにあしをかけて…」と自分で呟きながら、ブロックの境目に足を食い込ませようとしているのを見て、ちょっとばかり感心してしまった。まるっきり初めてでもないようだが、どうすれば足場を確保できるか少ない経験ながらも理解しているらしい。でもやっぱり怖いのか、片足は地面から離れなかった。じつに惜しい。
 あきらめて「だっこ」と言い出したので、ちょっとだけサポートしてやることにした。こんな面白い経験をさせずにおくものか。もう一度みこりんによじ登るように言い、私はそのお尻を軽く押すようにして支えてやる。ほとんど力は加えていない、にもかかわらず、今度はみこりんの体は嘘のように上がっていった。足場もうまく探して確保しているようだし、このまま手を離してもたぶんみこりんは上って行ってしまうだろう。でも急に放したらそれこそ逆効果になるのは目に見えているので、最後まで押してやることにする。

 無事、みこりんは壁面を制覇した。
 でも、今度は上で立つことができない。そこはゆるい斜面になっていたので、滑りそうに感じたのだろう。座ったまま手を伸ばして、なんとか赤い実を採ろうとするのだが、どうしても届かないのだった。だんだん焦れてくるみこりん。じつは頭上に低い位置まで垂れている枝があるのだが、座った姿勢では真上を見るのは難しい。なかなか気づかないみこりんのために、そぉっと教えてやることにする。
 頭上に手がかりを得ると、みこりんはなんとか立ち上がることができた。体重を支えきるにはとても足りないか細い枝だが、触れているだけで安心できてしまうらしい。
 赤い実を数粒採ると、満足したのか、降りると言う。今度はいきなり“抱っこ”と来た。たしかにこういう場合、上るよりも、降りるほうが難しい。みこりんは本能的にそのことを察知しているのだろうか。でもやっぱりここは自力で降りてもらうことにする。何事も経験第一。いちおう手順をアドバイスしてやった。

 Step1.まず腹這いになり
 Step2.足をひっかける場所を確保し
 Step3.徐々に降下する

 のだが、Step1でつまづいているもよう。四つん這い状態から身動きとれなくなっていた。高所恐怖症の人が、断崖絶壁の手前で固まってる状況に似ているかもしれない。では、軽くサポートしてやって、と。
 足の裏を支えてやって、どうにかこうにかStep2をこなし、ついにStep3へと入っていくみこりん。状況に慣れてきたのか、足場を確保しつつ降りてくるスピードも上がった。やはり幼児の物覚えはオトナのそれよりも柔軟なのかもしれない。今まさに、みこりんのシナプスは新たなネットワークを形成したのであろう。“上り”の経験を上手に利用している感触だ。
 いずれみこりんも“崖上り遊び”に夢中になって、落っこちたりするようになるのだろう。私も数回は落ちたような記憶がある。私の末の弟など、高さ3mほどの崖から転落してしまい、さすがにこれにはびびったが、ちょうど運良く下が小川というか用水路になっていて、惨事に至らなかったなんてこともある。……親的には、相当スリリングではあるなぁ。

 再び川を目指して歩き始めた我々の前に、今度はイガ栗の罠が待っていた。さっきから10mも歩んではいない。もちろんみこりんは栗に夢中だ。イガから栗をはずしたくて丹念に探し始めていた。が、どれもこれも空っぽばかり。ここにも先客がいたらしい。だが見よ。草の根本に隠れるようにして転がるイガの中に、渋く光る栗色の実。ついにみこりんは念願のイガ外しに成功した。
 これでもう我々の邪魔をするものはない。行こう、川へ!

 ……みこりんが立ち止まっていた。そこにあるのは、“くっつきむし”。植物が子孫を拡散させるために選んだ特徴的機能の1つに、種子を獣などに付着させて運搬させるというものがある。子供時代は、それらの種子を総称して“くっつきむし”と呼んでいたが、みこりんが興味を惹かれているのはまさにそれだった。私が子供時代を過ごした地方とここでは、植生にも違いがあって、その“くっつきむし”は私がこちらに来て初めて見たタイプだったのだが、くっつき力は、これまでのどの“くっつきむし”よりも強力だった。豆の鞘にも似た小さな三角形が3つほど並んだ形態をしていて、ぱりっと貼り付いてしまえば、剥がすのも容易ではなかった。歩いているうちに落ちてしまうなんてこともない。それほど強烈なやつなので、この一帯では一大勢力を誇っている。

 みこりんは“くっつきむし”の群生に自ら突進していき、服にくっつくさまを堪能しているようだった。そしてある程度くっついたら1つ1つ手で剥がし、再び突進。それを何度も何度も繰り返す。“くっつく”という性質は、子供心を鷲掴みにする魅力を持っているに違いない。それを応用したのが、“シール”遊びだ。
 そうやって“くっつきむし”遊びに興じていたみこりんだったが、ふと思い出したように顔を上げた。何事?と思う間もなく、一台のクルマが傍らを通り過ぎ……って、それはうちのクルマだった。そろそろみこりんが、いつもの「おうちとおいでかえれん」と言ってるのではないかと、Licが出撃してくれていたのだった。
 だがしかし、我々はまだ家を出てからほとんど進んではいなかった。にもかかわらず、一時間以上が経過していたことに、私も気づいていなかった。“時間を忘れて遊ぶ”、なんと懐かしいフレーズであることか。
 Licの登場により、みこりんも帰ることにしたらしい。はじめはさっさとクルマに乗り込んでいったみこりんだが、私が歩きなのを見て、大慌てで降りてきた。今日はお散歩日和である。

 帰り道、ちょっと遠回りしていくことにした。といってもせいぜい200mほどなんだけど、そこにも新たな発見が待っていた。“くっつきむし”2号の登場である。栗のイガ、あるいはウニの棘のように、無数に半球状に拡がったタイプのやつ。これは私も遊んだことがある。あまり“くっつき力”は強くないが、手裏剣のように投げつけて遊ぶことができるので人気があったやつだ(投げて遊ぶということなら、オナモミの種が最適なのだが、残念ながらここいらでは見たことがない)。ではさっそくみこりんにくっつけてやろう。
 これにはみこりんもおおいに喜んでくれたようだ。そしてついには家まで持ち帰ることにしたらしい。Licにくっつけるのだと意気込んでいる。

 そしてようやく家まで到着。でもすんなりとは玄関をくぐれない。みこりんは、隣の空き地で芋虫を捕まえていたのだった。自然溢れる秋の山になぞ連れ出そうモノなら、一日経っても帰れないかもしれないなぁ。

収穫の一日

 白ズッキーニ収穫!
 枝葉はいつのまにか枯れつつあった。あれほど庭を覆っていたズッキーニの葉っぱは、すっかり姿を消している。結局、ここまで大きくなったのはこれ1つ。直径18cm。貴重な一個だ。
 ずしっと重い…。やはりカボチャのようにして食べるのだろうか。カタチがカタチなので、丸ごと蒸すというのも面白いかもしれない。って、それじゃ種が採れないしなぁ。丸ごと蒸し焼きは、来年のお楽しみにとっておこう。

 トマト“レモンボーイ”&“カゴメ77”が、すさまじい枝振りになっている。うねうねと、まるで樹海の奥でとぐろを巻く奇怪な植物のように…。トマトは本来の生育環境では多年草なのだ。どんどんどんどん巨大化していっても不思議ではない。だがこのままでは、隣に植えたタマネギの苗が、日照不足になってしまう。それにこの地では、トマトは冬を越すことは出来ない。そろそろ実のほうもおしまいのはずだ。
 というわけで、大胆に枝打ちした。落とした枝は、細かく切って、土の上に敷き詰めておく。辺り一面にトマトの青臭い匂いが充満して、まるで夏草の中に埋もれているかのよう。いい匂いだ。
 青い実が無数についていたが、色づく気配はなさそうなのでこれも収穫。たしか青いトマトのおいしい食べ方を以前ホームチャンネルで見た記憶がある。あれを思い出さねば。

 花桃が落葉しはじめている。枝垂れ桜のほうは、すっかり丸裸だ。落ち葉が積もった土の上。なんだかほかほかして気持ちよさそう。こういう場所でウズラを飼ってみたいと思う。どこかに廃材落ちてないかな。小屋作りに使えそうなヤツ。


2000.10.22(Sun)

朝焼けから夕闇まで

 つい徹夜してしまった日曜の朝。朝焼けがまぶしい…。朝焼け…、つい例のフレーズがリピートされてしまう。朝焼けときたら、やはりミラーマン。恐るべき刷り込みである。
 それにしてもめちゃめちゃ寒い朝だ。霜が降りてても不思議じゃないくらいに。かじかむ手をすり合わせながら、花壇の植物に液肥をやる。今が盛りの秋明菊の白が、まるで燃えるように立ち上っていた。精霊の姿をそこに見たとしても、少しも違和感のないほどに。

 お昼、みこりんと庭で遊ぶ。パイナップルセージにはまってるみこりん。今では名前を間違うこともない。正確に“パイナップルセージ”と言っている。サルビアよりも、パイナップルセージを先に覚えてしまったようだ。よそのお宅で咲いている赤いサルビアを見かけるたびに、「ぱいなっぷるせーじ、さいてるね〜」と指さしてくれるみこりんであった。たしかに仲間には違いないが…。
 パイナップルセージの赤い花を摘み、根本をちゅうちゅう吸う。これがみこりんには堪えられない。何度も何度も吸う。無数に咲いている赤い花。地面に散った赤い花。当分はなくなってしまう心配はしなくてもいい。でも、際限なく花を摘むことを覚えると、止められなくなるのではないか。だから適当なところでお仕舞いにする。みこりんも「お花が可哀想」というのは了解できるから。

 ガレージで“ままごともどき”を一緒にやってたら、猛烈な睡魔に襲われてしまった。時刻はちょうどお昼過ぎ。腹も満たされ、寝るには絶好のチャンス。みこりんとともに、お昼寝タイムへと突入する。
 せっかくだからと二人ともパジャマに着替えたのだが、これが絶対の安眠へと誘うトリガとなったようだ。はっと気がついたら、あたりはすっかり夕闇であった。時間感覚の消失。秋という季節には、昔からこういうことがよくあった。昼夜逆転した学生時代ならば、これからが本番、友人どもが下宿に大挙して押し掛けてくる時刻だ。でも、今はもう、そんな思い出にも、それほど感傷的になることはない…。
 一緒に寝ていたはずの、みこりんがいない。起きあがると、階下からみこりんの上がってくる音が聞こえてきた。いつもなら目覚めと同時に私を起こしにかかるみこりんだが、どうしたことだろう。いや、たぶんみこりんはその時、起こしてくれたに違いない。それほど私が熟睡していたということだろう。

 みこりんが暗がりの廊下からぼぉっと出現した。座敷童子って、こんな感じかな、と、唐突に思ってしまう私であった。

茎の怪

 夕食後、リビングを少々片づける。
 そのついでに、半年以上“茎”のままになっているモンステラの挿し木を見てLicが言う。本当に根っこは存在しているのか?と。
 あるに決まってるじゃないかと、私は指で土をほじくり返してやった。たくましいモンステラの根っこが、そこにあるはずだった。そうあるべきだった。が、しかし、モンステラの茎は、ただの茎のままそこにあった。根っこなど、微塵も存在していなかったのだ。

 な、なんじゃ、こりゃ?
 たしかに新芽が出てくる気配は、これまで一度もなかった。半年前、挿した時と同じく、ずっと茎だけの状態だった。でも、緑色は焦ることなく、たしかにそいつが生きていることを証明していた。だからこそ、辛抱強く新芽が出るのを待っていたのだ。
 ところが根っこは少しも出来ていなかった。半月ではない。間違いなく半年、その状態で生きていた。その間、水やりを忘れてからっからにしてしまったこともある。それでもなんとかその茎は生きていた。しぶとく、まるで別の生命体にでも変化したかのように。

 土に埋まっていた方の茎は黒く変色していたが、触れると瑞々しい感じだった。慎重に先っぽをカッターナイフで更新してみたところ、きれいな切断面が現れてきた。生きている。この茎は、生きているのだ。
 根っこが出るようにと、ハイフレッシュをまぶしてから、再び土に埋め戻す。これからどんどん寒くなる。果たして発根は間に合うだろうか。それともこのまま茎の姿のまま、生き続けるのだろうか。彼女の収まった素焼きの鉢を、リビングから洗面所へと移動させてやった。場所を変えれば、あるいは…。


2000.10.23(Mon)

The TAKO

 衛星設計コンテストの最終審査発表があった(『第8回衛星設計コンテスト受賞作品ミッション概要一覧表』参照)。
 その中で私の視線を釘付けにしたものは、やはりこれ。The TAKO(Target Collaborativize)−Flyer。アイデア大賞を受賞した中西洋喜氏(東北大学 工学部)の作品だ。
 名前がまず素晴らしい。Target Collaborativize を、無理矢理 The TAKO と略すその姿勢に、すがすがしさを覚える。説明文も心地よいものだ。特に「…そこで故障衛星にソフトに抱きついてその姿勢を安定させ、ロボット衛星により回収が可能となるような機能を提供する…」の下り。思わず脳裏に、ゆらゆらとしなやかに八本の足を絡ませながら、ETS-VII を抱き絞めにかかっている The TAKO の姿を妄想してしまった。ぜひともコレの模型を見てみたいものである(一次審査を通過した時点で、模型を作らねばならないので、あるはず)。


2000.10.24(Tue)

夜話

 夜、みこりんに絵本を読んで聞かせる。今夜のリクエストは『大きなかぶ』だ。絵本によく見られる繰り返しのフレーズと、徐々にパワーアップしてゆく過程が、眠りへと誘うのに丁度良い。ついに“かぶ”を抜き終わり、「おーしまい」と電気を消して目を閉じる。こうしていれば、みこりんもいつのまにか寝入っているのが常だった。
 ところがいつになってもみこりんの寝息が聞こえてこない。その異様な静けさに、ついに私は瞼を開ける。目の前に、みこりんの顔があった。瞳の濡れたような輝きで、まっすぐこちらを見つめているのがわかった。

 眠れないのだろうか?今夜は別に“怖いもの”がやって来た気配はないのだが。
 不審に思っていると、こちらが起きたことに気づいたのだろう、みこりんがふいに語り始めたのである。唐突にそのお話は始まった。どうやら保育園での遊びの中で起きた出来事をお話してくれているようだ。と思ったときには、誕生日の話題に急展開し、さらに話は飛んで川遊びのことになっていた。

 いくらでも語り尽くせないほどに話題が湧いてくるようである。ここ最近、私の帰りが遅かったので“お話”が溜まっていたのかもしれない。延々とみこりんは語り続けた。私も合間合間で質問などを入れつつ、話を繋ぐ。
 しかし…。あぁみこりん、今が夜のもっと早い時間ならよかったのに。そろそろ寝ないと明日がつらい。
 残ったお話は、いずれまた聞かせてもらおう。それまで憶えてくれるといいのだけれど。

青いトマト

 青いトマトが食卓にのぼったのが、昨夜のこと。その残りは今日のお弁当にも入っていた。
 青いトマトは、和風だと“ぬか漬け”“酢漬け”“塩漬け”などで食すらしい。米国風ならば、“フライ”。欧風だと、“青いトマトのソース”などとなる。我が家では米国風な青いトマトに調理されて登場した。

 以前ホームチャンネルで見たやつは、たしか小麦粉か何かをつけてソテーにしていたようだったが、今夜のは完全なるフライである。Webで検索したところによれば、こういう食べ方のほうが米国では一般的らしい。で、食べた感想は…。

 酸っぱかった。トマトではなく、何か別の野菜のような感じ。まずいわけではないのだけれど、食べ慣れていないだけに少し抵抗感があるな、と。ケチャップで甘みを足せば、かなりましになる。それでも5つ6つとは食べられなかった。3つが限界。
 慣れればもっといけそうな予感はある。食感がさくさくと瑞々しいので、和風の漬け物系にはかなり合いそう。次回は和風に挑戦だ。

 *

 タキイからハガキが来ていた。
 なんと“吹詰咲アネモネ”が、品切れ!!!
 “稀少”って書いてあったからなぁ…。もっと早く注文しておれば…。
 来年またカタログに載ってますように。


2000.10.25(Wed)

着ぐるみ

 いつも布団を蹴飛ばして冷え冷えになってしまうみこりんのために、去年Licが夜なべして縫いあげたフリースの着ぐるみを、今年も使うことにしたらしい。だいぶサイズを大きめに作ってあったのが幸いしたようで、まるであつらえたかのようにぴったりはまっていた。
 それを着た状態で、てけてけ家の中を駆け回っているのを見ると、やっぱり熊か何かのぬいぐるみを連想してしまう。さらに去年よりも背が伸びていることから、映画『ブレードランナー』に描かれていたセバスチャンの人造人間達にまで連想の発火は及んだ。なんということだ。もっと可愛らしいやつを想像せねば…と、ふっと我に返ると、ちょうどTVでは例によってミュージックビデオが流れていて、そこに映し出されていたのはあの柄の女だった。

 みこりんもそれをじっと見つめていた。幼児にもこういうのがわかるのだろうか?と思ったらみこりんが言った。「ねこさん!」と。
 たしかに猫科だ。

 みこりんには猫の着ぐるみを着ているように見えたらしい。「みこりんもきたい!」、そうも言った。これはぜひとも変身スーツを着せてやらねばなるまい。Licにリクエストしておかねば。

--------------
 豹柄の女………“SURREAL"で浜崎あゆみが扮してるやつ


2000.10.26(Thr)

どうやって確認すべきか

 “三洋電機の太陽光発電、一部製品に出力不足

 というのを知ったのが今日のこと。最近ニュースをほとんどチェックしていなかったので、5日遅れとなってしまった。
 我が家の太陽光発電装置も三洋製だ。ただちに事実関係を確認すべく設置工事を担当した会社に電話を入れる。あいにく担当の人がいなかったので、あとで電話をもらえるように手配して、仕事に戻った。

 太陽電池の品質レベルが高いか低いかは、はっきりと不具合として表面化しないだけに、これまで隠せてこれたのだろう。ちょっと出力不足かな?と思っても、日照という自然現象を用いている以上、ある程度の変動はあって当たり前というので言い逃れてきたのではないかと想像する。そうやって2年間隠し続けてきたメーカーが、突然心を入れ替えましたと言われても、にわかには信用できそうにない。

 自宅の方には、三洋から封筒が届いていた。曰く、「製造番号は把握できているのでお宅のは大丈夫です」。問題の製造番号一覧は付けおくべきなのではないかと思ったが、5000に及ぶ番号一覧ってのもあまり現実的ではないか。それにして出荷枚数2万3460枚のうち、5476枚の不良品ってのもすごい。故意にやってるとはいえ、約1/4が不良品なんてのは、よほどバレない自信があったとしか思えない。品質レベルの違いだけだから、出力差も、それほど大きなものではなかったのかもしれない。実際どうだったのかは知らないけど。正規品が間に合わないなら、ランクを落とした分、低価格バージョンとかにする道もあったように思うが…。将来高性能版が出たら安価にリプレース可能とかのオプション付きで。実際、太陽電池パネルは、ここ最近、続々高効率で安価なやつが開発されていることだし。

 夕方かかってきた工事担当者からの電話はLicが応対した。それによれば、「大丈夫らしい」ということだった。なぜ「らしい」と推定になってるかといえば、メーカーがそう言ったからという理由。客観的に不良品ではないという証拠を示すのが難しい製品というのは、なかなかやっかいなものである。やはり地道に毎日メーターをチェックしていくしかないようだ。


2000.10.27(Fri)

未来予想

 ちょいと朝まで調べモノ。戦闘ロボットの将来動向などを探っているうち、こんなページに出くわしてしまった。

 "Manta"
 まだビジョンでしかないが、公開された情報がこうだということは、アンダーグランドではけっこう先に行ってる可能性もある。
 対潜水艦用の無人兵器が優れた潜水艦乗りに勝利する事態が、来世紀中にあり得るのかどうか。50年後のロボカップで二足歩行ロボットチームが人間の世界チャンピオンチームに勝利する可能性と、はたしてどちらが可能性として“有望”だろうか。状況設定は戦場のほうが圧倒的に複雑なんだろうけれど、敵の破壊という限定がつけば、意外に双方とも似通っていたりして。サッカーは“視覚”、潜水艦は“聴覚”、そこの出来具合で勝負は決まりそうな予感もする。無人潜水艦の中をぱかっと割ったら、シャチの“脳”が埋め込まれてた…なんてことになってたりは…。いかん、それではあまりにお約束すぎだ。もっとこう度肝を抜かれるような設定にしないといかん。…って、なんか違うぞ。


2000.10.28(Sat)

『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』

 SkyPerfecTV!のPowerMovie2で『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』を見る。
 Licとみこりんは、毎年恒例の会社&労組共催行事『遊園地遊び放題』に出かけていっていない。あとで見せてやろうと録画用テープもセットしておいた。

 そしていよいよ始まり。
 TV最終回から2年後という設定で物語りは進む。三体の石像、闇の巨人達。そのポーズが禍々しくて気色良い。特に青い方は、動きが“北斗の拳”を連想させるしなやかさでけっこういい感じ。マスクの造形がいかにも悪人面なのはベタすぎる気もしたが、良い子達も見る作品なので仕方ないのかもしれない。
 内容は“お約束”を踏襲しており、新鮮味は感じられないものの、懐かしく見ることが出来た。昔、子供の頃読んだコミック版のウルトラマンの世界観などもつい思い浮かべたりして(M78星雲の巨人達と、平成の光の巨人達の直接的な関連性はないのだけど)。
 で、今回のキーとなるダイゴとレナのラブストーリーは、視聴対象からお子さまを切ってしまえなかった中途半端さが、いかにも残念に思える。って、もともとそういう作品じゃないと思うから、切ってしまってはいかんのだけど。闇のお姉さん(というには少々トウが立ってる芳本美代子)とのドロドロした三角関係がもうちょい入ってればなぁと思ってしまうのだった。まぁダークヒーローじゃないティガにそんな真似はさせられなかったんだろうなぁ。

 それでも個人的にはけっこうOKな感じで、満足しつつラスト付近にさしかかる。さしかかる。……おそらくもっとも見せ場であろうシーンのはずだった。それなのにそれなのに……長野 博(V6)、そこで照れが入ってどうする。その片足重心かけーの抱きしめは、見ているこっちがこそばゆいぞ。やるならもっと本気で“がしっ”と抱くこと。
 でもあとで録画を見たLicは、そのシーンには特に違和感を感じなかったらしい。なので私の気のせいかもしれん。が、ん〜、でもあの立ち位置は、どうもひっかかる…。

 それはそれとして、今回の作品は伏線が多かったように思う。きっと“次”があるに違いない。できれば“次”は、アダルト向けにもう少しシフトしてもいいんじゃなかろうか。でないと、伏線を活かしきれないような。三角関係もそうだが、あの赤いヤツとのからみが特に見たい。かなりの因縁ありそうで、想像するだにぞくぞくする。『Good bye,Dear my friend…』って言わせといて、フォローなしってことはあるまい。期待して待とう。

お化け屋敷

 なんとみこりんは今日、遊園地で“お化け屋敷”に入ったという。チャルメラでさえ大泣きしてしまう怖がりのみこりんなのに。しかもLicだって怖い系のあらゆるものから遠ざかってるほどの怖がりなのに。その怖がり二人が揃って“お化け屋敷”に挑戦したとは、快挙である!
 私は今、猛烈に感動している。これで“恐怖”を家族で共有できるのだ。一人だけで背筋を凍らせなくてもすむのだ。これからはLicもみこりんも、みーんなそろって怖い系を楽しむことが出来る。

 長かった…、じつに長い闘いの日々であった。怖い話しを細切れに聞かせ、怖い映画を徐々になじませ、怖いコミックをちょこっとトイレに置いてみたり…と、恐怖に好奇心が打ち勝つ日々が来るのを、深海で静かに獲物を待つチョウチンアンコウのようにひたすら待った甲斐があるというものだ。
 とはいえみこりんは、お化け屋敷の中では最初から最後までLicに貼り付いていたらしく、まともにお化けを見ていないとか。まだまだ慎重な対応が必要だ。


2000.10.29(Sun)

受話器の向こう

 丑三つ時。そろそろ月曜に手が届く…そんな時間のことである。

 突然、電話の呼び出し音が鳴った。昔のベルタイプならば、今頃椅子から5cmは浮き上がっていただろう。よかった、か弱いピロピロ電子音に変更しておいて。
 私は1度目のコールが終わるや否や、受話器を取っていた。じっと息を潜めて受話器の向こうの気配を探る…。だが、電話はすでに切れていた。はたして相手は人間だったろうか。なぜか機械的な冷たさを感じてしょうがないのだ。あまりにその反応が正確すぎて。

 こういうことが頻繁にあるというわけでもないので、よけい気になる。間違い電話ならばこちらが無応答のままで切ったりはしないだろう。何らかのアクションがあるはずだ。それがなかったということは、意図的にかけてきたということになる。はたして誰であろうか。さっそくルータのログを調べてみた。ここには電話回線を流れた記録がある。さっきのあれが幻聴でない証拠に、たしかに電話機からの呼び出しだったことがわかった。でも、電話番号は不明。誰がコールしてきたのかはわからない。

 そういえば以前、うちの電話機の留守電機能がひとりでに動作していたことがあった。留守電ならばたいていもっている遠隔操作のコマンドは、パスワードさえ破れれば意外に共通に扱えたりするものだ(そういう取り決めがあるのかどうかは知らないけれど)。幸い我が家の電話機では、テープは常に消去しているので何も聴くことはできない。だからあまり気に留めていなかったのだが…。

 電話機のパスワードを総当たりで破るのは、けっこう骨だ。もし破られたとしたら、それは最初からパスワードを知っていた可能性が高い。
 やはりパスワードは変更しておこう。それが日々の平穏のためには必要だ。


2000.10.30(Mon)

夜の地殻変動

 やはり最初に気が付いたのはLicだった。「地震!?」という言葉のあと、だんだん揺れははっきりと、誰が見ても地震とわかるほどに大地を揺るがせ始めたのであった。このあたりは軽い地震ならば比較的よく起きる。だが、今夜のそれはいつになく長く、イヤな予感が沸き起こった。
 つい理科の授業で習った縦波・横波の進行速度のことなどを思い出す。どっちが先に来るんだったかな…。やがて、揺れは徐々に収束し始めていた。心底ほっとする。

 にゃんち君が愛用の椅子の上に待避しているのが見えた。猫も地震を怖がるようだ。でも、ハムスターは相変わらず寝入ったままだった。これは以前から不思議だったのだが、ハムスターは地震を何とも思っていないらしい。少なくとも我が家のチュー達は、地震が来ようと、激しい雷鳴が起きようと、まったく意に介さない。
 魚達が地震の予兆を感じたかどうかは、残念ながら不明だ。大地震の前には、池の魚の泳ぎ方が妙になるという話は聞いたことがあるが、我が家の水槽ではそういう異常行動はこれまでのところ記憶にない。

 地震は結局、震源付近では震度5弱ということだった。このあたりでは震度3。今回は大丈夫だった。でも次は…、やはり地震保険に入っていた方がいいかな、と思ったりもする今日この頃。


2000.10.31(Tue)

おいしい匂い

 午前中を休暇にした今日、気持ちよく晴れた青空の下で、バラの剪定などをやる。
 青いバラというのは実際のところまだ存在してはいないのだが、世の中には藤色や紫色のバラのことを、“青い”と言うことがある。その方が謳い文句としては目立つからだろう。そんな“青い”バラの1つに、ブルームーンという品種がある。本当は明るい藤色の花を咲かせるバラだ。我が家にも植えてあったりする。

 このブルームーンを買ってきたのが、今から7年前の1993年のこと。某パソコン通信で当時少しばかり話題になっていたので、「青い」と言われるバラがどんなものなのか興味を惹かれて購入したものだ。
 最初は鉢植えにしていた。翌年の秋、はじめて花を咲かせることができた。色はほんのり薄いピンクだった。これじゃまるでブルームーンというよりピンクムーンだなぁ…と思ったことを今でもよく覚えている。その後、引っ越しを経て、ブルームーンは地植えとなった。
 地植えにしてから4年あまり。花色は徐々に濃くなり、今では濃い藤色を出してくれるときもある。最初のピンクムーンに比べれば、ずいぶんと格調高い雰囲気だ。年月を経て、バラも熟成してくるのかもしれない。

 今、庭ではブルームーンが花を3つほど咲かせていた。1つはもう盛りを過ぎていたが、残りの2つは今が丁度いい具合にきゅっと締まっている。ところが葉っぱのほうが、どうもおかしい。まともに残っているのはごくわずかで、あとは残らず丸刈り状態…。いやな予感がする。じっくりと観察してみると、貴重な葉っぱの1つに、何者かがしがみついているのを発見した。チュウレンジバチの幼虫だ。丸々太っている。こんなになるまで発見できなかった私も迂闊モノだが、どうして虫の幼虫は植物本体を枯らしてしまいかねないほどに葉っぱを食い尽くすのか。これは春、モンシロチョウの幼虫がキャベツを食い尽くしてたくさん自滅していったのを目の当たりにしてからというもの、ずっと謎に思っていることだ。
 とにかく葉っぱをこれ以上食われたらたまらないので、幼虫はすべて撤去した。花も切り花にすることにした。葉っぱがないのに、花を咲かせていては株の消耗がひどいだろう。

 切り花にしたバラは、リビングのテーブルに飾ってみた。濃い色のバラも元気があってよいが、ブルームーンのように薄い色彩は、秋にぴったりだと思う。優しげな柔らかさがあって、ほっと安心できるような感じ。そして香りも特筆すべきものがある。酸味のあるフレッシュフルーツといった感じの独特の香りだ。甘いのではなく、どちらかといえば“おいしい”匂い。小林製薬には、ぜひとも“おいしい香り”シリーズに、この“ブルームーン”を加えることを検討してほしいものである。


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