2003.4.1(Tue)

目覚めたもの

 新年度初日だが、私は子守りのため、休暇をとった。春休み中のみこりんと庭に出てみれば、プラムは満開、枝々が薄緑色した白で彩られている。すかさず激写しておいた。この時期、植物たちは一日一日の変化が早い。明日にはもう散ってしまっているやもしれず、新緑に包まれている可能性もある。花桃の方は、まだ二分咲といったところだが、こちらも明日には満開になっているのかもしれない。

 陽気に誘われるまま公園へ。男の子グループの中にお友達を発見したようで、何やら話し込んでいるようす。覗いてみれば、男の子がプラケを持っていて、その中に“幼虫”が収納されていた。3匹も、巨大な乳白色の幼虫が、体をまるめてその中にいた。体長にして10cmは軽く越しているであろう立派な幼虫だ。おそらくカブトムシの幼虫ではないかと思われたが、子供たちは幼虫の持つ大きな1対の顎を指摘して「くわがた!」と言っていた。近所で掘ってきたのだという。しかもまだたくさん幼虫がその場所にはいるらしい。こんな住宅地の中で、ひそかにカブトムシが暮らしているとは、おそるべし。
 プラケの中は砂しか入ってなくて、どうみても幼虫が暮らすには快適とは言い難いものだった。男の子は「ようちゅうは、みずしかたべん」と信じているようだったので、腐葉土を入れておくように助言しておいた。が、たぶん腐葉土は買ってきてもらえないだろうなぁ…。幼虫達はすっかり男の子達のオモチャと化していて、無事に蛹へと変態するまで生き長らえることはあるまい。

 やがて遊具で遊び始めた子供たち。妹を連れて遊びに来ていた中学生くらいの女の子が、わりと面倒見よく遊ばせてくれていたので私は見守るだけでよかった。6つくらい年の離れた姉妹、みこりんに妹ができたら、ちょうどこんな感じになるのかなとか思いつつ。

 午後3時を回った頃、たっぷり遊んだみこりんを連れて帰ることにする。
 公園を出たところで、私はヤツの姿に気が付いた。側溝の中に、そいつはいたのだ。
 土色したヒキガエルが1匹、ずるっぺた、ずるっぺた、と休み休み歩いていた。体表にはまだ土から這い出してきた名残があり、動きにも冬眠から覚めたばかりといった緩慢さが残っている。みこりんも、じぃっと覗き込んでいたが、以前、庭でヒキガエルと遭遇した時のような怖がり方はしなかった。好奇心のほうが勝ったようである。

 しかしこのカエル、いったいどこを目指しているのか。側溝に入ったままだと、外には出られまい。このまま下水に入ると、川に出てしまうが…。ずるっぺた、ずるっぺた、と進んでいくヒキガエルの姿に、やがて違和感を覚えた私は、その違和感の正体に気付いて心が沈む。ヒキガエルの左腕が、ありえない方向に曲がっていたのだ。折れているらしい。
 折れた左腕のまま、はたして無事に暮らしていくことができるのだろうか。この状態で男の子達に発見されたら、たぶんそこで生が尽きそうな心配もあったが、側溝はやがて蓋で覆われ、ヒキガエルの姿はその暗がりの中へと消えて行ったのだった。
 ところで我が家の庭に暮らしていたヒキガエルは、結局昨年は一度もその姿を見ることがなかった。もしも今も生きているなら、そろそろこのヒキガエルのように冬眠から覚めて這い出して来る頃だろう。ぜひ、もう一度その姿を見てみたいものである。


2003.4.2(Wed)

春のエネルギー

 昨日激写したはずのプラムの画像が、なぜかPCへの転送に失敗して消滅してしまっていたので、今朝は少しばかり早起きして庭に出ている。幸いにして太陽が顔を覗かせていて、コンディション的には変わりなかったが、危惧したとおり、はや葉っぱがちょろちょろとその姿を現しつつあった。満開の白に、ところどころ鮮やかな緑が混じってしまっている。それでもいちおうデジカメにて撮影し直し

 枝垂染井吉野の蕾は、あいかわらず固そうに見える。ほんの少し内側から膨らみつつあるかなといった具合だが、まだまだ開花には時間がかかりそう。その隣りのユスラウメの方が、先に花を付けそうな感じだ。
 サクランボ“タマサンゴ”の苗には、あちらこちらから芽吹きが始まっていて、勢いを感じた。若々しい樹は、エネルギーに溢れているのが目に見えてわかる。この調子ですくすくと育ち、来年にはみこりんと一緒にサクランボ狩りができるとよいのだが。

 土曜日に種まきした苗床からは、もうちらほらと双葉が開いている。暖かな日が続いたので調子がいいようだ。夜には室内に取り込むようにしたのも、功を奏しているのかも。ただ、もっとも期待している、赤いピーマン“カルメンスイート”に動きがないのが少々気になる。まだ温度が足りないのかもしれない。毎年、野菜苗の作成はGWを過ぎる頃になってしまって遅れをとっているため、少し早めにチャレンジしたのだが、加温設備なしでは無謀だったか。ビニールで覆ってみるかな。


2003.4.3(Thr)

BB

 うちの実家もついにADSL導入を試みたらしいのだが、うまく接続できないとかでヘルプがあった。とはいえ実家と300キロ以上離れていては、サポートにも限界がある。とりあえず実家から局までの距離を確認してみたところ、検索不能と出た。が、この状態でもYahoo!BBはサービス圏内らしい。むぅ、ややこしい。

 で、ついでに我が家の電話番号でも検索してみたのだが、ここで驚くべき結果を目の当りにすることになった。つい最近まで我が家も“検索不能”の憂き目にあっていたのだが、なんと“1km”の距離に変化している。おぉ、ついに我が家もADSL圏内に入ったらしい。
 市が整備中のCATV網の完成を待つ間でもなく、1kmの距離でADSLに変更できるチャンスである。いよいよISDNから離れられると思うと、感無量だ。
 光の方はどうかなと調べてみたが、こっちは相変わらずまだらしい。でも、いちおう申し込みをしておこう。申し込み世帯が多ければ光ケーブルを敷設してもらえるらしいので、打てる手は打っておくに限る。

 さて、フレッツADSLにするか、Yahoo!BBにするか、だが。つまり、NTTにするかソフトバンクにするか、という選択になるわけだが、近頃のNTTと国のやり方を見ていると、まだソフトバンクの方がましのように思えるので、そのようにしようかと思う。一度はYahoo!BBの放置プレイに怒って解約した身だが、とりあえず忘れてやることにする。
 これで実家の方もYahoo!BBになればBBフォン同士でかけ放題、なのだがじつに惜しい。実家にADSLが開通するのは、まだしばらくかかりそうである。


2003.4.4(Fri)

長い夜

 満開の染井吉野の花びらが、はらはらと散る。桜も、はや終盤を迎えたらしい。そこに追い討ちをかけるように、雨が降る。しとしとと降りしきる雨をたっぷり吸った花びらが、黒いアスファルトを桜色に染めつつあった。

 今夜は少し冷える。久しぶりに石油ファンヒーターを点火した。まだまだ苗達には油断のならない季節だ。いや、苗達だけではない。私も今夜はなんだか喉にいやな痛みが走る。こんな夜は早めに毛布にくるまって寝るのが一番。みこりんと共に、布団に潜り込んだ。

 ところが習慣はそう簡単に変えられぬもので、なかなか寝付かれない。みこりんは隣りでとっくに熟睡モードで、激しく寝返りをうっている。足で蹴られること数回、みこりんを正しく布団に戻してやりつつ、睡魔の到来をひたすらに待った。

 やがて私が意識を失ったのは、どうやら丑三つ刻を過ぎたあたりらしい。なんだかもったいなかったような、金曜の夜のことであった。


2003.4.5(Sat)

入園式

 念入りにめかし込んだLicと、こちらは普段とあまり変わらないみこりんを、保育園に送って行って一時間半が過ぎようとしていた。今日はみこりん念願の年長組さんになる日である。園ではそろそろ入園式も佳境を迎えていることだろう。
 外は小雨。晴の日には少々不似合いだが、みこりんの希望に満ちた瞳には、わずかの翳りもなかった。

 昼食用の乾麺を茹でている頃、お迎えコールがあった。茹で上がるまでしばし待ってもらって、デジカメ片手にクルマに乗った。本当は復活のAE−1を持参したかったのだが、なんとストロボが故障していることが直前に判明してしまったので、やむなく置いていくことになった。
 保育園では、大半の園児と親が早くも帰宅済みのようだった。乾麺茹で上げるわずか数分のことなのに、みんな動きが素早い。みこりんが新しい教室を教えてくれたので中に入ってみたところ、今年一年お世話になる担任の先生がいた。すかさずデジカメを構えると、先生も心得たもので、みこりんを隣りに寄せて、はい、ポーズ。
 あとでみこりんが言うことには、担任になってほしいなと思ってた先生が、うまい具合にみこりんのクラスを担当することになったらしい。たしかにその先生は、みこりんが保育園に初めて入った1歳の頃を知ってる人であり、早々にみこりんが先生の名前を正しく覚えていたことで私の記憶にも残っている人であった。みこりんにしてみれば、私やLicに次いで、長く接しているオトナということになる。いや、ひょっとすると私よりも先生の方がより長く、活動中のみこりんと接しているかもしれん。私にとって、平日は起きてるみこりんより、寝てるみこりんの方が長いし。

 私の知らないみこりんの一面を知ってる先生か。よく話してみると、面白いかもしれない。

既視感

 階段を、みこりんを抱っこして降りる。脇の下に手を入れ、ぶらーんと持ってやると、両手両足をまっすぐに伸ばして、みこりんはゆらゆら揺れていた。

 強い既視感があった。こんな感じに階段をおりたことは、過去にもあった。その時に私の手に抱っこされていたのは……、みこりんではなく、にゃんちくんだ。猫のにゃんちくんも、脇の下に手を入れて抱っこすると、こんなふうにぶらーんと無抵抗に伸びてしまう。猫族特有のしなやかさで、ゆーらゆらしながら、一緒に階段を降りるのは、そこはかとなく心地良いものであった。
 猫とみこりん。サイズ的にもまぁまぁ似ている、今のうちだけ楽しめる技であろう。心残りのないように、存分に堪能しておかねば。


2003.4.6(Sun)

オン・ステージ

 保育園児は、地元の各種イベントで歌や踊りを披露しなければならない。その役目は保育園の中でも最年長の年長組さんが主に負う事になっており、今日はみこりんの初仕事の日であった。
 山深い道をクルマでどんどん進んでいくと、やがて谷あいに小さな集会場のようなものが出現する。特産物を売る露店やら、手書きのメニューが貼ってあるような食堂、そして農産物の直売所などが並び、広い駐車場の片隅には木で組まれた小さなオープンステージ。そこがみこりん達の舞台である。

 樹齢およそ100年はたっていそうな桜が満開に咲き誇る中、みこりんの手を引きステージ脇へ。そこにいたのは、昨年度までみこりんのクラスを担当していた先生だった。春の人事異動で別の保育園に移ったはずだが、ピアノ担当の先生が確保できなかったのか、伴奏要員として駆り出されたようである。みこりんは終園式の日に手渡した「あいにきてね」という手紙の効果が、はやくも現れたかと喜んでいた。しかし春からの伴奏は、いったい誰が担当することになるのか、ちょっと心配でもある。ずっとこの先生がやってたから、バックアップがいないのかも。

 30分ほど待って、いよいよみこりん達の出番となった。観客は、おじいちゃんおばあちゃんがメインで、いかにも田舎の花見の余興といった感じ。数にしておよそ20人ほどであろうか。園児の保護者の方が多いような気もするが、子供の発表を観覧することができるのであれば、どのような機会であっても歓迎である。
 みこりん達は、全部で5曲ほどを披露してくれた。今日のために特別に練習とかはしていないのだという。日頃歌っている曲なので、みんな歌詞を暗記してしまっているらしい。物覚えのよい年頃なので、このくらいはどうってことないのだろう。でも、あとで聞いたところによれば微妙に歌詞を間違えた箇所もあったらしい。もっとも、聞いてる方が歌詞を知らないので、間違ったかどうかはまったく問題ではなかったのだけれど。

去り行くもの

 朝には蕾だった庭の枝垂染井吉野も、お昼にはぽつぽつと開花していた。いよいよ本格的な春の訪れが、我が家にもやってきたようだ。
 春の訪れと共に、去って行ったものもある。ことりさんだ。ジャンガリアン・ハムスターのことりさんが、昨夜遅く、逝ってしまった。目の上と、耳にできていた腫瘍からの出血が遠因になったのだろうと推測する。

 大好きだった回し車の手前で丸まったまま横たわることりさんの亡骸を、ティッシュで餌と共にくるんでやった。異様に小さい。体力をいかに消耗していたかを実感する。
 みこりんが見守る中、花壇に穴を掘った。ナンテンの根元に、およそ30cmほどの深さになるまで掘っていると、なぜそんなに深く掘るのかとみこりんが問うた。何故だか考えてごらんと言うと、しばし沈黙した後、こう答えてくれた。「ねこにとられないように?」
 そう、他の生物に墓を荒らされないように、というのはある。『完璧な防壁』があるので猫は侵入してこないが、カラスが掘り返すかもしれず…。でも、本当は、ことりさんが這い出してこないようになんだよ、と思わず言いかけてしまったが、危ういところで言葉を喉の奥で閉じ込めることができた。そんな『ペットセメタリー』みたいなイメージをみこりんが抱いてしまうと、きっと夜、夢にみる。

 土をすべて埋め戻してしまうと、みこりんはどこに埋めたかわからなくなるのではと心配していたが、私が小石を立ててやったら安心したようだ。一緒に合掌し、ことりさんを送ってやった。みこりんは、早くも次の小動物を飼いたがっていたが、しばらく新しい生き物を増やすのは止めておこう。今の生物達だけで、けっこう手一杯なので、これ以上増えると破綻しそうだ。みこりんが自分ですべての世話ができるようになるまでは、おあずけ。

蘇る土

 一冬越えた市民農園に、久しぶりにやってきている。白菜を定植して以来、見に来ていなかったので、どんな惨状になっているかと怖れていたが、案外まともそうで安堵する。
 みこりんは敷物の上で、さっそくおやつを楽しんでいるようだ。風が強いので、敷物の四隅に重しを乗せたくらいではすぐに飛んで行ってしまいそう。みこりんが乗って、ちょうどいいくらいだった。

 大根と白菜には、ちらほらと花が咲いていたが、まだ満開というには時期が早い。大根は、庭の菜園で栽培した同種の出来栄えと比べても、数倍の胴回りを誇り、じつに具合がよい。それに比べて白菜の方は、なんというか白菜というより、ただの菜の花みたいになっていた。ちっとも葉っぱが育っていない。定植の遅れは、やはり致命的だったようだ。菜の花として食するというのもありかな、と思ったものの、今回は大根を1本、抜いていこう。すでに花が咲きつつあるので、もしかしたら固くて食べられないかもしれないので1本だけだ。
 それにしても苗の頃は、ひょろひょろで貧相っぽかったのに、こんなに立派に育つとは。この土は、大根にとても合っているのかもしれない。昨年はタマネギもわりとうまくいったので、根っこ系にいい土という可能性はある。今年はぜひともトマトやピーマンといった実モノを、どうにかしたいものだ。

 ところで畑の土は、二年を経て、ようやくほくほくと粘土質からの改良効果が見られるようになってきた。一畝を耕してみたが、昨年までのようなかっちかちの塊がない。まるで庭の菜園を耕しているのと同じ感触だ。これはもしかすると、いけるのかも。なんて思いつつ、残りの畝3つも耕してしまおうとしたのだが、体力がもたなかった。体、なまりすぎ。こっちの方もなんとかせねば。


2003.4.7(Mon)

ROBODEX2003

 鉄腕アトムの記憶はあまりない。とはいえ、粘土ではよくアトムを作ってたような気もするので、当時(たぶん今のみこりんと同じ年頃)は結構はまっていたのかもしれないけれど…。

 今年のROBODEXは、結局、行けなかった。2倍速いという銀アシモは、ぜひとも生で見たかったのだが、来年はきっと3倍速い…(同じネタがたぶんいたるところであるだろうから省略)。
 人型二足歩行という制御系とメカニズムは、おそらくどんどん進歩してゆくと思われる。しかし、肝心の“知能”もしくは“知性”の実装は、いまだブレークスルーは到来していない。50年経っても変わらないんじゃないかとさへ思ってしまうほどに、変化は見られない。実際、仕事でも人工知能ブームな時には間違いなく“エキスパートシステム”にしてそうな案件が、今やそのような単語すら忘れ去られたかのようである(エキスパートシステムが人工知能か?と言う問題はあるのだが)。判断するのは人間であり、マシンは判断のための情報分析を高速に実行すればよい、という状況だ。
 案外、自律ロボットよりも先に、生体の神経系をマシンと接続する世界が到来するのかも。


2003.4.8(Tue)

雨と風、そして雷さん

 春の嵐が吹き荒れていた。仕事中なので、外の様子はブラインドに遮られてまったく見えないが、音はだんだん激しさを増す一方のように思える。
 時刻は午後7時を回り、すっかり暗闇と化している頃、突如、右方向から閃光があった。と同時に、強烈な摩擦音が上空をよぎる。右から左へ、一瞬で移動を終えた光は、そのまま鋭角に下方へと突き刺さっていく…、のが脳裏に鮮やかにイメージされた。
 ほぼ同時に、大気の弾ける爆発音が落ちてくる。実に近い。隣りの建屋に避雷針がなかったら、ここに落ちてたんじゃないかと思うほどに。

 雨と風は、満開の花桃を無造作に散らしていた。……、あとの掃除が、大変だ。


2003.4.9(Wed)

死後の世界

 ずぅっと一緒にいてほしいなぁと、みこりんは言った。大きくなっても親にずっといて欲しいという思いは、5歳頃の子供には切実なことだろうと思う。なにしろ自分一人では、まだ生きて行く術がないのだから。でも時々みこりんは、こんなことも言う。「もし、おとーさんとおかーさんがいなくなったら、みこりん、おばーちゃんとこにいくの」と。いったいみこりんの想像の世界では、どんな災い事が起きているのだろうかと心配になってしまうが、みこりんなりにいろいろと考えているらしい。

 私がみこりんくらいの頃にも、やっぱりそういう事を考えていたのかどうか、今となってはほとんど記憶にないのだが、1つだけ今でもよく覚えていることがある。夢の中で、白装束のオトナ達が山道を歩いているのだ。何かを担いで、ひたすらに歩いて行くその顔は青白かった。その一団の中に、父親の姿を見つけて、私の心は凍っていた。子供ながら、これは死後の世界だろうと思っていたらしい。
 みこりんも、そんな夢を見たのだろうか。

 幸い、私の予定ではみこりんが実家のじじばばに引き取られるような事態は発生しないことになっている。みこりんには安心してよいのだと、そう伝えておいた。


2003.4.10(Thr)

事実とは

 じつに久しぶりに前泊出張である。ホテルに寝るためだけに前日から移動するのもなんだかもったいないので、昼間っから少々早めに仕事を切り上げ、電車に乗った。夕方には東京に着ける計算だ。明日の仕事は遅くなりそうな予感がするので、今日のうちに秋葉原を巡っておこうと思う。

 じつは最近、新しいPCを1台組立てたのだが、こいつを家庭内LANに接続するにはスイッチング・ハブのポートが足りない。NICも足りない。LANケーブルも足りない。ケース用のファンも足りない。前回のサーバにHDDを増設した影響で、CDドライブへの電源コネクタも足りない。こういう細々したものを、一気に買い揃えてしまおう。
 本当は外部スピーカーとか、激安のLCDとかも買ってしまいたい欲望にかられたが、さすがに持ってかえるには荷物になりすぎるので諦めた。

 すっかり夜も更けた頃、ホテルへと辿り着く。ひと風呂浴びて、ベッドに寝転ぶと、睡魔がどどどっと押し寄せてきて、いつのまにやら意識朦朧。つけっぱなしのTVから、何度も繰り返し『無意味な殺戮…』というフレーズが聞こえていたような気がした。バグダッド陥落。真実は、結局、わからないままだ。フィルタを通した報道からは、偏った事実しか見えてこない。いや、それが事実である保証すらない。苛立ちが、じわじわと眠った脳を責めさいなむ。TVの電源を切り、眠った。


2003.4.11(Fri)

おみやげ

 予想通り、今日の仕事は長引いた。最悪値で予約していた21時付近の新幹線には間に合ったが、金曜夜の新幹線は軒並み赤い×印が並んでいる。危ないところだった。
 発車までの待ち時間、みこりんへのおみやげを物色する。キティちゃんやらプーさんの人形焼きはなかなか魅力的だが、みこりんは餡子が苦手だ。これらを持ち帰っても、皮だけしか楽しめないだろう。諦めるか…、と思いかけていた頃、とある1軒のキティちゃんの人形焼き屋に目が留まった。ここには他にはないディスプレイがあったのだ。

 展示されていたのは、いわゆるキティちゃん型のクッキーだった。これだけならばどうということはなかったのだが、そのクッキーが詰められているモノに注目である。クリアブルーの水差しみたいな入れ物に、クッキーは抱え込まれていたのだ。
 これだ。これしかない。みこりんはこういう入れ物に、とても弱かったはず。
 1個買っても600円そこそこ。これも一種の食玩と思えば、許容範囲だ。というわけで購入決定。

 支払いを済ませて手渡された紙袋が、ド派手な赤いキティちゃん柄だったのは計算外の事態だったが、もはやそんなことに動じていては女の子の父親はやっていられない。
 家に帰り着いたのは、今日と明日の境界線近くだった。朝、みこりんが発見しやすいように、リビングのど真ん中にその紙袋をそっと置いたのだった。


2003.4.12(Sat)

成長

 外は雨。起きだしてきたみこりんは、予想通りリビングで派手な紙袋に気がついてくれた。しきりと中を気にしていたが、いきなり引っ張り出すようなことはしなかった。さすが年長組さんである。
 開けていいよと告げると、いよいよみこりんはがさごそと開封にとりかかった。中に入っていたモノを確認したみこりんは、予想通りクッキーそっちのけで入れ物だけを取り出し、大事そうに抱えて自室へと消えて行ったのだった。

 さて、お着替えタイム。みこりんがシャツを探していたので、戯れにLicの乳バンドを手渡してみた。すると、みこりんは口元をきゅぅっと引き締めて、ぺしぺしと“みこりんパンチ”を繰り出してきたのであった。どうやら照れているようである。ちょっと前までなら、自ら乳バンドを装着してふざけていたみこりんなのだが、もはやそんな時代はあっというまに過ぎ去ってしまったらしい。
 さすが年長組さんである。


2003.4.13(Sun)

季節のうつろい

 まるで初夏のような陽気だった。枝垂染井吉野の花びらは、早くも散り始め、その隣りでは、ゆすら梅が満開だった。
 庭では、いつのまにやら新緑の方が目立つようになってきている。ところが、一個所だけ気になる部分があった。木いちごの新芽に、ほとんど動きがないのだ。かろうじて1本の枝から葉っぱが展開しつつあったが、残りの大部分は、冬の時期からまるっきり変化は見られない。ラティスに絡ませた枝という枝の時間が、凍り付いたかのようだった。

 なんだか嫌な予感がしたので、枝の1本を、折ってみる事にした。ぽきり、という乾いた感触が手に残った。断面を確認するまでもなく、この枝が死んでいることがわかった。…やはり。
 こうなってしまってはしかたがない。思い切って枯れ枝をすべて撤去することにした。ラティスに絡んだ枝を1つ1つ外してゆくが、やはり1本を除いてすべての枝が枯れてしまっているようだ。適当な長さに切断していると、その原因らしきものが判明してきた。どうやら枝の中央を虫に食われてしまったのが致命傷になったらしい。カミキリムシの幼虫だろうか。昨年、プラムの枝もあやうくこいつにやられてしまうところだったが、そちらは早期発見でなんとか退治することに成功した。が、木いちごの方は大打撃である。
 根元の方からは、新たな芽吹きが始まりつつあるとはいうものの、再び昨年までの枝振りにするには、さらに数年を要してしまうだろう。みこりんとの木いちご摘みも、今年はおあずけになってしまうかもしれない。

 木いちごの枯れ枝を片付けるついでに、庭に積み上げてあった剪定屑も、シュロ縄でくくってガレージへと移動させた。これでみこりんも庭で思う存分遊ぶことができるだろう。さらに、サンルーム内に待避させていた寒がりの植物達も、定位置へと移動させてやった。一気に空間の広がったサンルームでは、みこりんがせっせと庭用オモチャを移動させ、手早くままごとセットをこしらえていた。普段は片付けの苦手なみこりんでも、こういうシチュエーションだと恐るべき整理整頓の能力を発揮する。きちんと揃えられたサンダル類と、テーブルと椅子。ままごとに限らず、外で食事できる準備は整った。
 冬の間、ひたすらに庭で風雪に耐えていた焚き火セットも、そろそろ稼動の頃合いである。剪定屑がいい感じに乾燥すれば、今年最初の焼き焼きをしようかと思う。


2003.4.14(Mon)

知識の在処

 今朝はみこりん、摘んだクローバーを忘れずに保育園へと持っていったが、無事にウサギに食べさせる事ができたと教えてくれた。保育園で飼っているウサギの世話は、代々年長組さんがやることになっているので、春からみこりんも担当になっているのだ。

 庭にわさわさと生えてきているクローバーが、ラジコンを走らせるのに邪魔なことが気になっていたみこりんは、どこからかそれがウサギの食料であることを知り、まさに一石二鳥とばかり、昨日、袋いっぱいに詰め込んでいたのであった。いったいどこでその情報を入手したのか、とても気になる。みこりんが言うには、先生に“注文させた”らしいのだが、“注文された”の間違いじゃないのかとか、もともと庭の雑草がクローバーという名前とはみこりん知らなかったんじゃないのかとか、いろいろ不思議な点は残る。

 近頃みこりんは、水蒸気の事を知っていたり、磁極の事を知っていたりと、私の想像を超えた知識を持っていて驚かされることが多い。みこりんに囁いているのはいったい誰(何)なのか。教育テレビという線も本人自ら匂わせてはいるのだが、それですべてを説明するにはまだ不十分なような気もして、悶々としているのである。


2003.4.15(Tue)

真夜中のこと

 目覚めた瞬間に、熱っぽいことに気付いたので、そのままひたすら寝て過ごした。熱を持った脳が見せる不条理な夢が、延々と続いたような気もするが、目覚めてしまうとなにもかも曖昧になる。

 昨夜は、真夜中みこりんが突然鼻血を出した。なかなか血が止まらずに、このまま血が足りなくなったらどうしよう…、と不安になったことを思い出す。小さな鼻の穴の奥から、時折、ずるっと出て来る血糊のような物体が、まるで血染めの脳味噌であるかのように思えて、恐怖した。なぜこんなに大量に出て来るのか、もう出てこなくていいと念じながら、ティッシュでぬぐった。
 一向に止まる気配のない血に、ついに私は階下のLicを呼ぶことにした。効果的な鼻血の止め方を調べてもらおうと思ったのだ。

 ところがLicは特に慌てるようすもなく、しばらく押さえておいたら止まると、私と交代してみこりんを抱え込んだ。“しばらく”というのが、どのくらいの時間のことを指すのか気になったが、Licが大丈夫と言うのならば大丈夫なのかもしれない。女の方が血に強いというのは本当らしいと思いつつ、私は血の付いた枕カバーとパジャマを洗うため、洗面所へと向かったのだった。

 手で揉み洗いの後、洗濯機を回して寝室に戻ってみると、みこりんはすぅすぅと寝息をたてていた。鼻血は止まったのだ。
 安堵したが、どうやらこの時から私の熱の種は芽生え始めていたような気もする。

 そして再び、夜。みこりんは鼻血を出す事もなく、すやすやと眠っている。私は、昼間寝過ぎたせいか、目が冴えてしまって何度も寝返りを打っていた。このまま朝を迎えてしまうと、睡眠不足の連鎖が始まるのではないかと危惧したが、幸いにして夜明けの記憶はない。


2003.4.16(Wed)

野良猫

 朝、ガレージのバイクの上に、猫がいた。ボロ雑巾みたいな、ズタボロの猫だった。特に顔付近は生傷が無数にあるようで、目つきが異様に悪い。
 近寄ると、バイクの上からどすんと降りて、よたよたと去って行った。猫のいたバイクの上を確認してみると、そこにあったのは、どろどろな下痢…。バイクシートを被せてあったので、バイク本体に被害はないものの、これではシートを新調せねばなるまい。被害額1万円超。野良猫のもたらす我が家への災いは、『完璧な防壁』の外では、いまだ進行中なのだ。

 午後、仕事から早めに戻った。体調はまだ完全には戻っていない。帰りの車の中で、今日も保育園をお休みしていたみこりんが「バケツのなかにねこがおった」と教えてくれた。ガレージにいたのとは別の猫らしい。

 家に着くと、ガレージにまた猫がいた。朝の猫と同じだ。奥の縁台の上で、長々と寝そべっている。人の姿を見ると、またしてもよろよろした足取りで逃げて行った。私の記憶に誤りがなければ、あの猫はたしか昨年までこの付近のボスだったはず。ついに世代交代の波が押し寄せたのか。ふてぶてしいまでに逞しかったあの猫が、人の姿に尻尾を見せるとは。
 縁台の上には、ぽつぽつと血痕があった。新たなボスにやられたのかもしれない。

 さて、玄関脇に置いたバケツが、みこりんの言う「ねこのはいっていた」バケツである。また入ってたりして、と、みこりんが言ったが、まさかそれはないやろうと思いつつも、覗き込んでみると、「いた」のだ。雉虎猫が、底の方に丸まってこっちを見上げていた。やはり目つきが異様に悪い。目が見えないのでは、と思ってしまうほどに細目になってしまっていて、上下の瞼が厚ぼったく腫れていた。何かの病気だろうか。猫は、あまり俊敏とはいえない動作でバケツから飛び出すと、とたとたと隣りの空地へと消えて行った。
 このバケツが気に入ってしまったらしい。でも、野菜の水遣りにも使うこのバケツが、猫の寝床になってしまうのは好ましくなかった。二度と入れないように、逆さにしておいた。

 夜、サンルームからガレージを見やると、相変わらず落ちぶれた猫が縁台に寝そべっているのが見えた。居着く気かもしれない。冗談じゃない、と思いつつも、あまりに哀れなその姿に、今夜だけは見逃してやる気になっていた。今夜だけだ。明日はどこか別の場所を見つけてもらおう。


2003.4.17(Thr)

タオルとみこりん

 まるで初夏のような暑さに覆われた一日だった。みこりんを寝かし付けるときにも、毛布一枚が暑そうに思われたので、そのまま布団をまくっておいた。
 安らかな寝息を立て始めたのを確認して、無線モニタをONにすると、そっと寝室を出た。

 静かな夜であった。昼間の熱気が徐々に醒めてきつつあり、そろそろみこりんに布団をかけてやって方がいいかもと思っている頃、受信用の無線モニタからうめき声が響いてくる。みこりんの声だった。

 大急ぎで寝室に戻ってみると、みこりんが布団の上で真横になってもがいていた。枕にかけていたバスタオルにヘビのように巻き付かれて、苦しんでいるらしい。夢の中でも、きっと何かに巻かれているに違いあるまい。さっそくタオルを取外してやった。
 毛布と掛け布団をかけ、定位置に戻してやると、みこりんはようやく安心したかのように規則正しい寝息に戻った。

 タオルに巻き付かれてもがくみこりんの図というのも、こういう時期ならではだ。来年にはもうタオルごときでは動じないほどに、大きくなっていることだろう。写真撮っておけばよかった、と後で気付いたがもはや手遅れ。次回のチャンスを逃さないように、再度枕にタオルをセットしておいたのだった。


2003.4.18(Fri)

メカ

 来月、親戚の結婚式のため“横浜”に行くのだということを、みこりんはよく覚えていた。横浜という場所がどこにあるのか地理的に知っているわけではないみこりんだが、昨年、ROBODEX2002にてASIMOと一緒に写真を撮った場所ということで、みこりんの記憶にもその地名はしっかりと刻まれているのだった。

 踊る二足歩行ロボットASIMOのパフォーマンスが、みこりんにどれほどの衝撃を与えたのかということは、その後、ことあるごとにASIMOの名を口にすることからある程度は推測できていた。が、ここまで記憶を維持していることに、予想以上の効果であったことを知る。ASIMOが等身大であったこととか、ROBODEXという一種異様な熱気に包まれた場所であったこととか、いろいろと要因は考えられるけれど、案外みこりんが持っている生来の“メカ好き”の心が、生ASIMOとの遭遇によって増幅されたのかもしれなかった。
 なぜみこりんが“メカ好き”と私が思うようになったか、といえば、スタートレック・シリーズやスター・ウォーズ等の宇宙船が出て来る映像に強い興味を示すこととか、近頃ではTVでサンダーバード2号の発進場面をちらっと見た瞬間に「あ、サンダーバード2ごう!」と正確に指差せる程になっていることとか、モノの配置に形式美を見出しているらしいこととか、保育園で男の子と一緒にガンダムごっこをしているらしいこととか、いろいろとある。ところでガンダムごっこって、何ガンダムになってるのかとても気になったが、みこりんにもそれは謎らしい。SEEDを見てない我が家なので、みこりんが知ってるガンダムといえば、スーパーロボット大戦に登場する機体しかない。つまり古い機体ばかりなのである。はたして友達と話しが合ってるのかどうか、ぜひともその現場を覗いてみたいものだ

 さて、そんなメカ好きのみこりんのために、そろそろ我が家にも本格的なロボットを、と考え始めている。かといって、いきなり番竜というのは敷居が高すぎるだろうから、手頃なサイズのを作ってみる案が、いまのところ有力である。でもひょっとすると、みこりんにとってロボットとは、人型とか犬型でなければならないかもしれない。ROBODEXで目の肥えたみこりんなら、当たり前のように二足歩行を要求する可能性もある。本格的に二足歩行の趣味にはまってしまうと、時間も金もいくらあっても足りなくなりそうだから、昆虫タイプや車輪タイプでも可能かどうか、一度みこりんの要望を確認しておかねばなるまい。


2003.4.19(Sat)

赤ちゃんカマキリ

 天気予報では午後から雨。たしかに徐々に空が暗くなってきているような気もする。ぽつぽつと落ちてこないうちに、春の庭を観察しよう。
 雑草の伸びが著しい。花壇の方でも、ドクダミの新芽がいたるところに発見できた。菜園1号&2号では、昨年掘り残したゴボウの葉っぱが、はや座布団みたいに大きく広がって、他の植物を圧倒しそうだ。早く食ってしまわねば大変なことになりそうである。
 サンルームの中を、大きなアシナガバチが2匹ほど、飛び交っていた。巣を構えるつもりなのだろう。昨年の巣はそのままにしてあるのだが、特に興味はないらしい。古巣を再利用するという性質は、ないようだ。

 ウッドデッキの上で、小さなカマキリの赤ちゃんを発見した。茶色いタイプだ。全長約1.5cm、体重はおそらくミリグラムのオーダーのような軽やかな仕種で板の上を駆けている。みこりんを呼んでやると、異様に強い興味を示した。この小さなカマキリにどうしても触りたいらしい。大きなカマキリは恐くて半径1m以内に近寄れないみこりんだったが、赤ちゃんカマキリはぜんぜん平気とみえる。
 みこりんは赤ちゃんカマキリをしばらく手で追っていたが、なかなか敏捷に逃げるので、触れることもできないでいた。そこで、まず私の手に乗せてから、手渡しすることにした。こういう小さい生物を捕獲する場合、手で掴みにいっては生体を破壊するやもしれず、危険である。追いかけるのではなく、相手の進行方向を予想して先回りし、手の上に乗ってきてもらうのがよい。

 ほどなくして赤ちゃんカマキリは、私の腕に乗っかっていた。小さいくせに、いっちょまえに鎌の手入れなぞしている。赤ちゃんとはいへ、さすが肉食昆虫だ。そのままみこりんの手に移し替えてやると、「かわいー」と見とれている。でも、カマキリは素早かった。あっという間にジャンプして、地面へと降り立ってしまう。結局、みこりんの手に触れたのは3度ほどしかなかったが、これですっかり赤ちゃんカマキリの虜になったらしいみこりんは、「かいたい」と宣言したのであった。

 こんな小さな赤ちゃんカマキリを、果たして飼うことができるのかどうか、少し不安はあったものの、好きにさせておくことにした。ここに1匹いるということは、同時に卵からかえった兄弟姉妹があと100匹はいるに違いないのだ。自然淘汰に任せておいても、大半が死んでしまうことになる。貴重な観察の機会を奪う事はない。なにしろカマキリの卵嚢は、ざっと庭を見渡しても5つや6つは軽くあるのだから。
 さっそく小さなプラケを持ってきたみこりんは、赤ちゃんカマキリを中に入れていた。お約束のようにクローバーを摘むと、一緒に中に入れたのだが、みこりんはカマキリの餌がなんであるのか知っているのだろうか。以前教えてやったような気もするが、みこりんは「なぁに?]と聞いてきた。「生きている虫だよ」と言うと、みこりんは合点がいったようで、蟻を捕まえはじめたのだった。蟻は、みこりんでも捕獲出来る数少ない虫である。しかし、本当に蟻でいいんだろうか。サイズ的にも、ちょっと小さすぎるかも。
 そこでバッタの赤ちゃんを探してみたが、雑草の海は広大でなかなか姿を見つける事が出来なかった。花の苗に齧られた痕が残っているので、すでに卵から孵っていることは確実なのだが…

 蟻だけでは少し不安もあり、ニボシも一緒に入れておくことにした。動かない肉は食べないような気もしたのだが、何もないよりはマシかもしれない。

 みこりんは、赤ちゃんカマキリに「らっきー」という名前をつけた。性別が不明なので、どちらにでも通用するようにということらしい。わりと細かいところに気がつくみこりんであった。


2003.4.20(Sun)

宇宙服

 体がすっぽり入れるくらいのビニール袋や、紙袋を加工して、みこりんが服を作っている。上下一揃いの服を着込んだみこりんは、その出来栄えを私に確認してもらおうというのか、目の前でくるりと回ってくれた。継ぎ目には、ビニール紐を通して結んでいたり、一風変わった雰囲気の服に仕上がっていた。
 いったいこの服はなんであるのか。興味を引かれた私は、みこりんに聞いてみることにした。

 「うちゅうふく」と、みこりんは答えた。みこりんがどうして“宇宙服”なんて言葉を知ってるのかと一瞬思ったが、そういえば以前、スタートレック・シリーズを一緒に見てる時に教えてやったような気もする。そのことを確認してみると、みこりんは新たな閃きがあったらしい。上着に、ウォーフのトレードマークである“片襷”(劇中、あれがなんという名前で呼ばれていたのか覚えてないけど)の絵を描き始めたのだった。しかも星マーク付き。
 さらに宇宙服ならば、ヘルメットとか手袋とかブーツもいる、ということにみこりんはすでに気付いていた。さっそく厚紙を折ってヘルメットを作り、ビニール袋を両手両足に巻き付けて、手袋とブーツの代りにしていた。顔面を覆うバイザーは、透明ビニール袋の両端に輪ゴムを付けて、マスクのように装着して完成だ。
 左腕には、入園式でもらってきたワッペンをくっつけて雰囲気を出している。じつに芸が細かい。でも、なんだか宇宙服というよりは、あやしげなロボットのようにも見える。

 とりあえず写真を撮ってやる事にしたのだが、ポーズの瞬間、みこりんは敬礼してくれた。この動作はスタートレック・シリーズではなかったはず。いったいみこりんはどこで覚えたのか。最近、宇宙関係の映像を見たといえば、BSで『ライト・スタッフ』をやってたくらいだが……。

 *

 夜、みこりんが寝入ってからも、宇宙服のことが頭から離れずにあった。宇宙服…、みこりんはどこからそのインスピレーションを得たのか。
 何気なく冷蔵庫の方を見た私は、そこに重要なモノが貼ってあるのにようやく気付いたのだった。そこに磁石で貼ってあったのは、毛利さんのブロマイドである。オレンジ色の宇宙服を着込み、ヘルメットを抱えた姿で立っている図だった。かれこれ4年ほど前に、JEMの愛称募集に応募した際、NASDAから送ってきてくれたものだ。みこりんが小さい頃から、そのブロマイドは冷蔵庫のその場所に、ずっとあった。

 謎は全て解けた…、ような気がする。


2003.4.21(Mon)

移動するチップ

 ウズラは砂浴びが大好きと、ものの本には書かれている。が、やはり個体差というものはあるようで、我が家の2羽のウズラ“ぴーちゃん”と“さっちゃん”では、どっちかというと“ぴーちゃん”の方が砂浴びを好んでいるようだ。もっとも、彼等のケージには砂ではなく、広葉樹のチップが敷き詰めてあるので、砂浴びならぬ、チップ浴びということになるのだが。

 1つのケージを仕切って、それぞれに1羽づつ入れているため、ぴーちゃんが砂浴びする度に、蹴り出されたチップがどんどん下の隙間を通って、隣りのさっちゃんの領域に流れ込んで行くらしい。今ではぴーちゃんの領土のチップは底を尽き、プラスティックの床が見えている状態であるのに対して、さっちゃんの領土はまるでチップで出来た丘陵地帯が形成されているかのようである。
 そんなになってもなお、ぴーちゃんはわずかのチップを見つけると、その上に座り込み、ばさささささと羽音だけは立派にチップ浴びの真似事をしている。チップ浴びの物理的効用というよりは、行為自体に何か快楽の源があるような具合だ。

 そんなぴーちゃんのために、チップを足してやろうとチップ置き場を探ってみると……、空っぽだった。予備のチップがあるものとばかり思っていたのが運の尽き。ぴーちゃん、なんだか不服そうである。
 仕切られた隣りの領土には、チップが山積み。すでにさっちゃんの匂いがたっぷり染み込んでいるはずだが、何もないよりはあったほうがいいのではないか。そう思った私は、できるだけキレイそうな部分を選び出し、ぴーちゃんの領土へと移してやることにしたのだった。

 チップが空から降って湧いたのに気が付いたぴーちゃんは、「ぐるるるる」と喉の奥で歓喜の声を漏らしている。まだほんの2つかみくらいしか移してない状況にもかかわらず、さっそくごろんと寝そべり、派手に羽根をばたつかせてチップ浴びを始めるのであった。
 さて、そろそろ気候もよくなってきたことだし、ウズラのケージを屋外に作ってやるべきかもしれない。そうすれば、チップが足りなくなるなんてこともなく、心行くまで本物の砂浴びを堪能できることだろう。


2003.4.22(Tue)

勧誘電話

 もともと職場では外線電話のかかってくる回数は比較的少ないセクションに属しているのだが、ここ数ヶ月というもの、その頻度が極端に増加している。そのほとんどが、いわゆる勧誘などの“迷惑電話”であり、ひどい時には同一人物からと思われるものが、日に何度もかかってくることもある。もちろん私宛ではない。たまたま私の机のそばに外線電話があるため、受けざるを得ないのだった。
 しかも相手が出せと要求してくる人物というのは、何年も前に所属を異動している人たちばかりで、そのたびに「そういうものはおりません」と答える事になるのだが、相手はそんなことで諦めるような連中ではない。その1時間後、あるいは翌日には、再び電話をかけてくる始末である。絶対に取次いではもらえないのに、懲りないというか、なんとかの1つ覚えというか、困った人たちだ。

 そんな中、少し毛色の異なった電話がかかってきたことがある。電話に出て社名を告げると、「あれ、また同じところにかかっちゃいましたねー」とか抜かすノー天気そうな女の声がした。そして、「番号を順番にかけていってるんですけどー、次の番号も同じ会社ですかー?」と言う。「は?」と一瞬目が点になりかけたが、とりあえず「さぁ次の番号がどうなってるかはわかりませんが」と答えると、女はさもあきれた風な口調で平然とこう言ったのだった。「同じ会社なのにわかんないんですかー?」

 ちなみに私の職場では、外線につながってる電話だけで数百本はある。どの番号がどうなってるかなんてわかるはずもないのだが、この女にはそういう状況がありうるという事が想像もつかないらしい。これ以上こういう種類の女と話していると、こっちの脳までどうにかなってしまいそうなので、とっとと切る事にした。

 ところで、この手の勧誘電話(セミナーとか教材とか金融商品だとか)が自分宛てにかかってきた場合の、正しい対処の仕方は…。絶対に相手のペースに乗せられないように、速攻で電話を切る。その際、「興味はないので、失礼します」とでも言っておく。絶対に相手に説明させてはならない。相手は電話がつながってる時間を計測しているはずである。その時間は名簿に記載されて、また別の業者に転売されるのだ。電話で長く話せば話すほど、カモとみなされるのである。相手から電話を切るのを待っていてはいけない。強引にこちらから切る。相手が何かしゃべっていても、とにかく切る。もしも相手がなかなか用件を切り出さずに、ぐだぐだと説明を始めたら、「用件は何か?」を連呼する。用件を言わないようなら、これも即座に切ればよい。特に新入社員は、電話の応対に慣れていないせいか、よくカモられてしまう場合があるようだが、勧誘電話には即切りで対処すべし。


2003.4.23(Wed)

血みどろの抗争

 バイクシートの後席あたりが、なんだか錆色っぽくなっていた。いったい何が付着しているのかと、目を凝らしてみれば、どうやらそれは血液の名残らしいことがわかる。おそらくまたしてもあの野良猫が、このシートの上で寝そべっていたのだろう。闘争の傷痕から染み出した血が、べったりとシートを濡らしているのだ。
 ところどころ血の塊のようなものもあった。かなり手傷を負っているらしい。ここでふと、怖い想像をしてしまったので、そぉっとバイクの向こう側を覗いてみる事にした。も、もしかして……

 幸い、そこには想像したようなモノはなかった。念の為、Licがバイクシートを少しめくって中を確認している。やはりそこにもいなかった。ほっと安堵する。

 それにしても、シートを新調しても、この状況ではまた汚されるのは目に見えている。何か手を打たねばなるまい。たとえば釘を無数に打ち込んだ板を逆さにして、バイクシートの上にかけておくとか…。その前に奴の命が尽きるかもしれないが、長年ボス猫としてこの付近一帯をしめていたタフなやつだけに、油断できない。しかし気になるのは新しいボス猫である。それらしい姿をさっぱり見掛けないのだが、いったいどの猫が新たなボスの座についたのか。…もしや、猫ではないのかもしれない。アライグマとか、ハクビシンとか。いずれ決着を付けねばならないかもしれん。


2003.4.24(Thr)

薬の威力

 こっぴどく胃腸風邪と扁桃腺炎にしてやられた私は、ただひすらに寝る事だけが唯一の“出来る事”だった。だから昼間の記憶は、ほとんどない。気が付いたら夜だった、という久しぶりの経験をしてしまったが、それでも昨日、診療所で処方してもらった薬が徐々にではあるが、効果を発揮しつつあるらしい。あれほど不快感に満ちていた腹の奥底が、やんわりと軽くなってきた、ような気がする。首筋でこりこりとしこっていたリンパ腺が、さほど違和感を発していない、ような気もする。

 今回処方された薬は、全部で5種類ほどあった。これほどの薬がなければ、もはや回復しないほどに自己回復能力は落ちてしまっているのかと、なにやら物哀しくもあり。とはいえ来週早々には、またしても重要な出張が待っているので、有り余る薬に頼ってでも速攻で治してしまわねばならないのだが。おまけに来週はもうGWに突入する。去年の今ごろは同じく病に伏せっていて、GWの間中寝込んでしまうという大失態を演じてしまった。そんな事態はなんとしても避けねばなるまい。


2003.4.25(Fri)

ワレモコウを切るモノ

 今朝の目覚めは素晴らしいものであった。病の悪しき気は、完全に消え去ったかのようである。
 さわやかな朝の空気の中、庭をしばし散策してみた。しっとり湿った雑草が、はや足首を越えつつある。深い緑の絨毯を歩き、以前から気になっているワレモコウの場所までやってきた。

 桃花ワレモコウの苗を植えたのは、冬のことだった。苗といっても根っこだけで、ほんとうにこんなのから芽吹いてくるのかと不安に思ったものだ。ようやく春になり、待望の芽吹きを確認したときには、それはうれしかった。鮮やかな緑色した小さな葉っぱが、3本ほど土の中から伸びていたのだ。まさに干乾びたミイラが、若く瑞々しい体へと復活したかのようなイメージがあった。
 ところが数日経って、その新芽は突然、地面に倒れ伏していたのだった。不審に思って調べてみると、生え際から何か鋭利なもので切断されているのがわかった。切断された葉っぱは、まだ新鮮さを失わずに地面にあったが、もはや復活することはありえない。私は、根っこの生命力を願わずにはいられなかった。

 ワレモコウは、その後も何度か芽吹きを繰り返してくれた。すさまじいばかりの発芽力といえる。春のエネルギーをめいっぱい溜め込んでいたのだろう。しかし、そのたびに、芽吹いた新芽は、やはり何者かに切断されてしまうのだった。無残に散った新芽…、いったい何やつが潜んでいるのか。

 相変わらずワレモコウの新芽は、生え際で切断されてしまっていた。いくら生命力が強いとはいっても、これほど続けざまにやられてしまっては、再生もままなるまい。無念すぎる。手で触れようと足を一歩踏み出した時、ばさっと何かが跳んだ。

 茶色のトノサマバッタが1匹、網戸につかまってこちらの気配をうかがっていた。冬の間、サンルームで細々と寒さをしのいでいたやつに違いない。そういえば、以前もこの付近で姿を見掛けたような気がする。どうやらこのあたりをテリトリーにしているのだろう。……、まさか。
 トノサマバッタのごつい口ならば、ワレモコウの新芽を切断するなぞ簡単なことだろう。しかし、葉っぱを食べもせず、ただ切断するだけというのは…

 ワレモコウの新芽を切断しているのがトノサマバッタなのかどうか、確証はない。もしかすると地面の下に何者かが潜んでいる可能性はある。しかし、なぜだかトノサマバッタの目つきが気になるのだ。なんだか隠し事をしているかのような、よそよそしさだ。…そうなのか、ほんとうにトノサマバッタなのか。かといって、トノサマバッタを抹殺するのもなんだか気が引ける。しばらく捕まえて隔離しておこうか。そうすれば彼が犯人かどうかがはっきりするだろう。ワレモコウの命が尽きてしまう前に、確かめねば。


2003.4.26(Sat)

倒れていたもの

 朝食をとるべくリビングのテーブルにつくと、自然と視線は庭へと向く。その視界に、有り得ない光景が映っていた。
 ゴールドクレストが大きく傾いていたのだ。高さにしておよそ3m近くある木なので、その迫力も絶大である。上下方向よりも、水平方向の距離感の方がリアルに感じられるためかもしれないが、その光景はかなりの圧迫感をもっていた。昨夜、春の嵐が荒れ狂っていたので、その影響だろう。しかしこれまで何度も台風に持ちこたえた木が、春の嵐で倒れ伏すとは。それほど大きくなりすぎたということなのか。

 みこりんも、このゴールドクレストをどうやって元に戻すのか気にしていた。とりあえず「魔法でなおすよ」と答えておいたが、もちろん魔法使いではないので、そんな技は使えない。やはり物理的に力を加えるしかあるまい。
 雨合羽を装着し、軍手をはめると、ばさばさと倒れた木の中に分け入っていった。雨水をたっぷり吸い込んだ幹は、軍手をすぐにびっしょりと濡らしてしまう。それだけで重量が倍増したかのように感じたが、思い切って両手で押し上げてみる事にした。

 お、重い…。3m以上の木を起こすのに、その半分以下の高さのところを押しても、容易には持ち上がるはずもなく、腰をいわすかと心配になるほど両足を踏ん張り、腰を入れて、全身でぐぐぐぐっと…
 ようやく垂直に近い程度まで戻すことに成功した。でも、ちょっとでも気を抜くと、すぐに倒れ込んでくる。一時も気を休める事は出来なかった。しかしこの体勢では、やがて破綻するのは目に見えている。なんとか足元にあるシュロ縄で、幹をどこかに固定せねば。でも、手が届かない。というか手を放せない。な、なんとしよう。

 リビングでアッピーしてるLicを呼ぶことにした。すでに腰はぎりぎりといやな軋みを発しているような気がする。早急な対処が必要だ。
 枝に埋もれてLicの姿も確認できないが、とにかく私のやりたいことを伝えることに成功した。Licはシュロ縄と鋏を持って、木の背後に回り込んでいるらしい。そこにある柵に固定すればよいのだが、柵の弱い箇所にくくってしまっては、今度は柵が倒れ伏すだろう。大丈夫だろうか。
 Licは私の意図をよく理解してくれていた。期待どおり柵の支柱にシュロ縄をかけてくれたようだ。でも、方向が悪かった。倒れ込んでくる角度と正反対の方向に縄をかけねば、直立させておくことは難しい。もう1回、縄を掛け直すLic。今度こそ大丈夫。おそるおそる手を放しても、もう倒れ込んでこない。成功だ。

 しかしシュロ縄だけで、これだけで本当に大丈夫なんだろうか、という不安がちらり。今年、台風の直撃を食らったら、またしても倒れてくるのでは。もっと抜本的な対策が必要かもしれない。


2003.4.27(Sun)

魔法の力

 昨日倒れていたゴールドクレストが元に戻っているのを見て、みこりんはおおいに不思議がっていた。私が「魔法で直した」というのを、半信半疑で聞いていたみこりんだったが、やはり腑に落ちないことがあったらしい。

 「まほうだけでは、もとにもどらないようなきがする」と、呟くみこりん。“まほうだけでは”ということは、一応魔法の力も信じてはいるようだ。でも、実際の魔法の威力を見たことがないみこりんには、それですべてを納得するのは困難とみえる(逆に言えば、もっと軽そうなものだったら魔法の力だけでも信じてもらえるということか)。

 ではどうやって倒れた木を元に戻したのか。みこりんは考え考えずぅっと考えていたらしいのだが、結局、答えは見つからなかったようだ。幼き日の謎として、この現象はみこりんの記憶に静かに刻まれることになるのだろう。その影響がどのようなカタチで現われるのか、少し気になったが、謎は謎のまま残しておくのも面白いかもしれないと思ったので、真相は伝えないでおこう。


2003.4.28(Mon)

夜の駅にて

 終電まで残り1本という時刻、ほどほどに広い駅の構内は、人影もまばらで静まり返っていた。回送電車が1本と、寝台列車が1本、うずくまるように停車していたが、それがかえって静寂を強調しているような気さへした。
 1番線の電光表示には、“東京行き”の快速電車が入ってくる事が示されている。東京までは300km以上離れたこの場所で、そんな表示がなされることになにやらぞくぞくとした興奮を覚えた。

 時間ぴったりに、すべるようにして“東京行き”快速電車が入ってくる。クリーム地に毒々しいまでのピンクと、それを縁取るような深い青のラインが入った奇怪な車体。こんな色彩の電車が、深夜ひたすら東京を目指して走るのかと想像すると、ちょっと怖い。やがてホームに、人の動きがあった。三脚に、いかついカメラをセットした少年2人組が、いそいそと先頭車輌を目指している。まさか、この車輌をカメラに収めようというのか。このすさまじいまでの配色の車輌を。
 マニアとは、そういうものなのかもしれない。

 数分後、東京行き夜行列車は、暗がりの中にその姿を消していった。さらにその数分後、私が乗るべき車輌が到着する。1両きりの、なんとも寂しげなその姿。夜だと、よけい物哀しげに感じられた。
 今日が金曜日ならいいのに。そう思わずにはいられない瞬間である。


2003.4.29(Tue)

食い散らかし

 朝のひととき、花壇をみこりんと共に散策してみる。日曜日に、みこりんと定植した花の苗を確認しておこう。
 一番東の奥に植えた矢車草のところで、私は無残に散った葉っぱを発見していた。伸び始めていた本葉が、びしびしと千切られたように散乱していたのだ。食われたのではなく、まさしく毟り取られたといった感じに。

 そのすぐそばの地面に、ぽっかりと小さな穴が開いているのが見えた。小さな土団子も積み上がっているところからして、どうやらミミズっぽい。これが犯人ではないだろう。根切り虫でもあるまい。根切り虫ならば、生え際からすっぱりとやる。こんな中途半端なところで毟ったりはしないはず。
 なんとなく、これをやったのは“虫”じゃないような気がした。

 …鳥、か?カラスがいたずら目的で苗を荒らした、のだろうか。ワレモコウのことといい、なんだか気になる今日このごろである。


2003.4.30(Wed)

たとえば昔の話しを

 結婚式の場面をTVで見ながら、みこりんがぽつりと言った。「みこりん、おおきくなったらだれとけっこんするのかなぁ?おとーさんと?」

 あと数年もすれば、あぁそんな昔もあったなと、しみじみこの時代のことを懐かしむことになりそうである。


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