2004.1.1(Thr)

アライグマと猫

 ゆるやかに起床。障子を通した朝の陽射しは、やわらかくほのぼのと暖かそうに感じる。リビングでは、すでにLicとみこりんが朝食の準備にとりかかっているらしい。ぱたぱたと、足音が聞こえてくる。

 家族揃っての食卓。昨日の大晦日にLicが用意しておいてくれたおせち料理が、きっちりと重箱に収まって並んでいる。そして雑煮。今年は白味噌を買い忘れたこともあり、Licの実家で食されてきた焼き餅の入ったすまし汁タイプであった。通常、Licの実家がある神戸は白みそ丸餅圏内らしいのだが、Licの母が関東方面の人であるため、雑煮はすまし汁焼き餅タイプだったという背景がある。

 私にとって、このすまし汁焼き餅タイプの雑煮は、初めての経験となるのだが、いざ食してみると、予想外に汁と餅が違和感なく融合していて、結構いける。Licによれば、これでも母の味とは違うらしいので、本物はもっとうまいのかもしれない。でも白味噌に青海苔かけて食するあの味わいも捨てがたいので、日替わりくらいで出してくれないかな、とか思ったりもし。

 *

 午後、みこりんと公園へ遊びに出かける。正月初日ということもあってか、団地内には人の気配がとても希薄だった。公園には大人1子供2の先客がいたが、しばらくしたらいずこかへと去って行き、あとはただひたすら静かな公園が残る。
 みこりんはブランコ、鉄棒、追いかけっこなどを堪能したあと、満足したのか「かえる」と言った。帰り道、遠くのクルマの下に猫を発見。私がそれを指さし「あ、アライグマがおる!」と驚いたように言うと、みこりん本気で怖がり、「おんぶー」とおぶさってきたのであった。ちょっと驚かせすぎただろうか。猫の横を通り過ぎるとき、じっとその金色の瞳を見つめてみると、そろりと猫は視線の届かない場所まで移動していった。

 帰宅後、手を洗ってうがいなぞしている時、みこりんがなんとなく遠慮がちに「だましたでしょ」と言う。んー、やはり見破られていたか。「そう、あれ猫だった」と素直に認める私。みこりんは安心したように、去っていくのであった。


2004.1.2(Fri)

“凶”

 午前中、布団の上でみこりんを背中に乗っけてロデオごっこ。腰を高く上げた瞬間、ふっと背中から重さが消えた。はっと顔を上げると、その向こうで顔面から布団に突っ込んでいるみこりんの姿があった。まるで首が布団の中に埋まってしまったかのような光景に、血の気がさぁーっと引いていくのが分かる。だ、大丈夫か、みこりん。

 やがて起きあがったみこりんは、私の姿を見つけると、なんだか喉が詰まったかのような声で泣き出した。ぎぅっと抱きつつ、首やら肩やら頭やらを触ってチェック。…………、恐れていたような異変はなさそうだとわかり、やや安堵する。みこりんもすでに泣きやんでいた。しかし、首に妙な力が加わったことは確かなので、安心できない。慎重に見守る必要があった。

 *

 午後、初詣に出かける。正月二日目ということもあり、やや閑散とした境内である。20円の御賽銭で、たっぷりお願い事をしていたら、Licに「願い事しすぎ」とチェックが入る。ふむ、たしかに20円では割に合わないかもなぁ。家族安泰と一攫千金とみこりんに妹か弟を etc...

 御札を買ったついでに、みんなでおみくじを引いてみると、私とみこりんがまったく同一の“凶”、Licだけ“大吉”である。みこりん、“凶”というのがあまりよくないものだと敏感に察知したのか、不服そうな表情である。もういっぺん引きたそうだったが、こういうのは1回きりというのが常であることを言い含め、御神木に結びつけておく。

 帰り道、例によってスーパーにてLicが福袋をゲット。人出は、さしたるものでもなく、昨今の不況の余韻を彷彿とさせるものであった。

 それにしても“凶”か、なんとなく現状を反映してそうな予感もあり。今は何事につけても“待ち”なのかもしれん。


2004.1.3(Sat)

不眠

 夜、何度も目が覚めた。みこりんが息をしてないんじゃないかという、漠然とした不安がねっとりと冷えた体にまとわりついてくる。昨日の落下の様子が、フラッシュバック。そのたびに、みこりんの呼吸を確認せずにはおれなかったのである。

 朝、みこりんは元気に起きて活動を始めていた。首の後ろあたりが、ちょっと痛むらしい。その他に異常は…、とりあえず今のところはなさそうだ。しかし首というのがどうにも気に掛かって仕方がない。私も以前、クルマで派手に事故ったとき、首をやってしまったことがあるのだが、今でも冬になると首が痛む。妙な後遺症が残らねばよいが。

 夜中あまり眠れなかったせいか、昼間死んだようにぐっすりと眠った。


2004.1.4(Sun)

あと1日

 長かった冬休みも、明日を残すのみとなってしまった。休日というものは、なぜゆえにこうも早く過ぎ去ってしまうのか。休みの間、いろいろやろうと思っていたことはあったのだが、ほとんど実行に移せず、ひたすら休息ばかりだったような気がする。今日も昼間、猛烈な睡魔に襲われ、夕方までこんこんと眠った。

 どうやらそうとう眠りが不足していたとみえる。


2004.1.5(Mon)

免許更新

 冬休み最後の日、午後から免許の更新に出かけた。平日ということもあり、空いていることを期待していたが、現地に到着してその期待がもろくも崩れ去ったことを知る。入り口からはみ出した長蛇の列。その最後尾に並んだ。

 写真を撮り終えるまでに、約20分を要す。ここから2時間の講習が待っていた。あぁいつかゴールド免許にして30分更新になりたいものだと、しみじみ思う瞬間だ。今度こそ、今度こそ。


2004.1.6(Tue)

泡のお風呂

 私は泡のお風呂が苦手なのだが、みこりんが大好きなので、そういう系統の入浴剤は我が家に常備されている。それでも新しいのが好きなみこりん、今宵もおにゅうな泡の入浴剤を試してみる気になっているらしい。

 今回のは粉末タイプであった。空の浴槽に、さらさらと散らし、上から蛇口で一気に湯を投入する。ぶわっと拡がる濃密なフルーツの香り。いかにも甘そうな匂いに、頭がくらっとしてしまう。でも、みこりんは満足げであった。

 やがてお風呂タイマーが満タンを知らせ、みこりんとLicは風呂場へと向かった。体がべたつきそうなくらい甘ったるい香りに満ちた風呂場で、みこりんは泡を堪能しているようす。でも、そんなみこりんも、直接泡を体にぺったりくっつけられるのは苦手と見える。あくまで泡を手に取り、遊ぶのが好きらしい。

 Licと交代して私が湯船に浸かる頃には、泡もだいぶおさまってきていて、ほっと安心。みこりんはちょっと残念そうだが、泡のお風呂とはこういうものなのだということで、納得してもらうしかあるまい。


2004.1.7(Wed)

真夜中、突然に

 昨夜遅く、熟睡中にそれは起こった。突如わき起こる、気持ち悪さ。腹の奥底で、巨大な幼虫がとぐろを巻いているような、気色悪さがあった。背中の筋肉がきりきりと痛み、なぜだか猛烈な寒気を感じて、がたがたと震えが走る。体を“く”の字に折り曲げてしばらく耐えていたのだが、まるで布団の中身が氷に変化してしまったかのような寒気に耐えきれず、ストーブを点けに起きあがった。
 足下がふらついた。どうもおかしい。鈍い吐き気をこらえつつ、ストーブ点火。しかし、少しも暖かくは感じなかった。

 夜明けまで、ずっと意識はあったような気がする。寒気と吐き気は絶え間なく私の体を責め苛み、ただ耐えるしかなかった。

 朝、妙に意識がはっきりしているものの、そのすっきりしすぎなところが気になって、体温計を持ち出して脇の下に挟み込む。5分後、水銀柱は38.4度を指し示していた。吐き気は去っていたものの、寒気は相変わらずで、起きあがると体がふらついた。

 Licに病院まで送ってもらい、待合室で横になる。とても座ってなぞいられなかった。待ち時間の感覚もないほどだ。徐々に頭もぼぅっとしてきた。熱が脳にもきたらしい。朦朧としつつ、名前を呼ばれたので立ち上がる。足下がさっきよりもふらついているような気がした。

 病院で点滴してもらったが、あまり症状に改善は見られなかった。体中が痛むので、一日、布団の中で痛くない体勢を探しつつ、寝た。


2004.1.8(Thr)

てんてまり

 昨日よりは多少熱が下がったものの、まだ体がふらつくので、仕事を休んで寝て過ごす。
 夕方、みこりんが戻ると、ぱっと家の中が明るくなるのだが、今宵はみこりん、新しいボール技を覚えてきたようで、さっそく披露してみせてくれている。

 「あんたがたどこさ、ひごさ…」と歌いながら、足をちょいと上げてボールをまたぐようにしてるのだけれど、みこりんの体格ではまだボールの跳ねる高さの方が足上げの高さを上回っているので、なんだかボールに回し蹴りをかましているように見えて、面白い。でもみこりんはいたって真剣である。何度かボールがあらぬ方向に跳んでいってしまうのをものともせずに、飽きることなく何度も挑戦しては蹴りを入れていた。たぶん保育園のボールは、あまり跳ねないのだと思われる。我が家にあるボールはビーチボールの類なので、つくとかなり跳ね上がるのだ。

 よい鞠を買ってやった方がいいかも、と思いつつ、やはり寝て過ごす私であった。


2004.1.9(Fri)

再度『アルマゲドン』

 前回(1999.8.6)見たときには、けっこう厳しい評価を下した『アルマゲドン』だったが、今回は比較的気楽な気持ちで見始めたのが功を奏したのか、前回のアラがあまり目立っていないような気がする。かわって、アメリカ・イズ・ナンバーワンっていう体質がちょっと鼻につく。

 ま、それはともかく、いよいよラストシーン。ひとり小惑星に残って起爆スイッチを押した瞬間、走馬燈のように娘の思い出がめぐる演出(特にみこりんくらいのサイズの娘が出てくるとこ)に、私はしてやられた。前回はこの付近の演出を気に入らなかったはずなのに、なんとしたことだろう。当時から4年以上が経過し、みこりんとの記憶が積み重なった結果か、あるいは単に前回見逃してたか。とにかく私は女の子の父親という役柄に、妙にシンクロする体質に変化してしまっているらしい。

 このラストシーンのためだけにDVD買ってもいいかな、と思ってしまったほどだ。ここまで感情移入できたのは、たぶん今回の放送が字幕ではなく、吹き替えだったからかもしれない。字幕だと、妙に醒めた見方をしてしまう癖があるようだから。

 今日のこの吹き替え版、DVD化されないかな。


2004.1.10(Sat)

空から訪れるもの

 我が家の生ゴミ堆肥は、特殊な装置等は一切使わずそのまま土に混ぜ込むことで生成している。夏ならば1週間もあれば、きれいに土と融合してしまうので、堆肥を生成する土盛りが2つでも特に問題はない。ところが、気温の低下してくる冬となると話は別だ。なかなか分解が進まず、半月前の野菜屑がそのまま土の中から出てきたりするので、土盛り2つでは台所から出てくる生ゴミの量と分解量とのバランスが著しく悪化してしまうのだった。

 そんなわけで、今は暫定的に土盛りを3つに増やして対応している。それでも追いつかずに、テンポラリ領域としてサンルームに置いてあるバケツの中も溜まる一方だ。
 以前はこのバケツが何者かに狙われ、倒れていることもあったのだが、最近はバケツに飽きたのか、そういうことも起きなくなった。代わりに、土盛りの方がちょっと荒れ気味。土の中にある野菜屑が、たびたび持ち去られる事件が頻発しているのだった。
 庭は『完璧な防壁』で囲ってあるため、地をはう獣はまず侵入することは叶わないはず。となれば…、やはり、空か。
 まぁ冬の間はそうやって分解すべき野菜屑を減らしてくれているとも考えられるので、好きなようにやらしているのだけれど、はたして何者が訪れているのか、というのがちょっと気になる今日この頃である。


2004.1.11(Sun)

夢の中で

 頭痛、悪寒、喉の痛み、体の節々が痛む、などなど、どうみても風邪の諸症状っぽいものが出ているので、終日寝て過ごした。せっかくの休日が台無しだ。

 夢の中で、宝くじか何かで一攫千金、悠々自適な生活を送っているっていうのを“体験”した。日々、土と戯れ、仕事のストレスもなにもない生活。はぁ、まさに夢、だ。目覚めると、なんだかどっと疲れが…。現実はそうそう甘くはない。


2004.1.12(Mon)

タイヤ交換

 明日は雪、と天気予報が告げている。夜も更けていたが、Licのクルマのタイヤをスタッドレスに交換することにした。明日の朝、一面の銀世界に呆然としてからでは遅すぎる。

 懐中電灯片手に、トランクを開け、必要器具を取り出し、右後輪から順番にやっていくことにした。Licがあらかじめタイヤを全部所定の場所に移動してくれていたので、あちらこちらと動き回らずに済んだことや、みこりんが手元を懐中電灯で照らしてくれたお手伝い効果もあり、1本あたり4分少々で交換終了。これまでの最高記録樹立である。

 これで雪が降ろうがアイスバーンになってようが大丈夫。ところで私のクルマのタイヤは、結局、ノーマルのままで過ごすことに決めた。雪の時はLicのクルマで送ってもらおうという魂胆である。たぶん今年はそれほど雪は積もらないんじゃないかという、勝手な予感があるのだが、さて。


2004.1.13(Tue)

復活のウクレレ

 みこりんが2歳の時の誕生プレゼントに買ってやったオモチャのウクレレは、買った当初こそいろいろ遊びに使われていたものの、最近ではすっかりその存在を忘れ去られていた。が、今夜はみこりん、急にウクレレに目覚めたらしい。みこりんの目の前で、弾き方を教えてやったのが、開眼の発端となったようだ。

 普段エレクトーンで弾いている曲を、見よう見まねでウクレレでぼろんぼろんと弾き始めるみこりん。オモチャなので正確な音階になっていないところが、いかにもチープなのだが、一生懸命惹いているところが微笑ましい。こんなことなら、やはりあのとき本物のウクレレ買ってやっておけばよかったかな、なんて思ったりもし。

 ひとしきり弾き終えたあと、みこりんは言った。「しょうがっこうにいくようになったら、ぎたーやばいおりんもならってみたい」
 そ、そうきたか。ギターはともかく、バイオリンはちょっと難しそうだが、大丈夫かな。一度実物に触れさせてみたいものだが、さすがにバイオリンはほいほいと触れるもんじゃなし、難しいところだ。


2004.1.14(Wed)

楽譜と音階

 エレクトーンでみこりんが何かの曲を弾くとき、まだ楽譜を読むというよりは、耳で聞いた音階を再現しているような感じだ。楽譜を読みこなすのは、まだまだ難しいらしい。音楽教室でも、まず耳で聞いてからというのを重視しているようなので、今の段階ではこれでも十分なのだろう。やがてその音階が、楽譜の記号と対応付けられるようになってくれば、しめたものなのかも。

 今年の発表会では、初めてエレクトーンの演奏に挑戦することになるみこりん。楽譜も配布されているのだが、みこりんはもっぱらディスクで提供された模範演奏を耳で聞きながらの練習に余念がない。とはいえ、まだまだ毎日練習するほどには情熱的じゃないので、ちょっと心配ではあるのだが。音楽は好きっぽいので、とりあえず静観である。


2004.1.15(Thr)

夜話

 みこりんと一緒に布団に入り、絵本を読んで聞かせてやったあと、明かりを落とす。その瞬間から眠りにつくまでのわずかな時間、みこりんは私との会話を楽しむ癖がある。そうやってとりとめない会話をしていると、眠たくなってくるからなんだそうな。

 今日の話題は、みこりんが10歳のとき、私が何歳で、みこりんが30歳のとき、私が何歳で、みこりんが100歳のとき、私が何歳で、というのが延々と続くというものだった。みこりんが何歳になっても、私とみこりんとの年齢差は変わらないのだが、自分が30歳とか60歳とかいうのをイメージできるようになったのは大きな成長の印かもしれない。
 そして最後にふっと、こんなことを言った。「ながいきできるといいね」
 願わくばみこりんの曾孫の顔を見てみたいものである。


2004.1.16(Fri)

芥川賞

 綿矢りさ、芥川賞受賞。2年前に『インストール』が文芸賞をとった時には、その題名からして、また勘違いしまくりの小説かな(チャットというと、いつも“仮想”と“現実”の対比しか登場しないとか)、という印象を持ってしまい未読であった。が、今回『蹴りたい背中』が芥川賞か。はたしてどれほどのものか、一度両方読んでみるべきかもしれない。


2004.1.17(Sat)

本屋へGO

 いつも利用している本屋は、土曜日ポイント2倍デー。というわけで、本を買うなら土曜日と決めている私は、さっそく『蹴りたい背中』を求めてやってきた。
 やはりこういう旬のものは、レジ前のもっとも目立つ島にあるはず。というわけで、ひたすら探す。探す。探す。

 『蹴りたい背中』のポップはすぐに発見できた。のだが、肝心の本体が見あたらない。平積みに空白はなく、売り切れた風にも見えないのだが…。かわりに『インストール』が5冊ほど積まれていた。ふむ。

 私の読みたい順番は、当初『蹴りたい背中』→『インストール』だったのだが、ないのでは仕方あるまい。逆にしよう。というわけで、『インストール』を1冊、手に取る。いつもの癖で、最後のページをちらと読み、行間がやけに白いな、と初感想。1000円か。その価値ありやなしや。とりあえず、レジへと持っていくのであった。


2004.1.18(Sun)

『インストール』

 昨日買って帰った『インストール』を、読んでみた。行間が白いだけあって、読むのが遅い私でも1時間ほどで読み終えることのできる分量であった。

 まずタイトルにもなっている“インストール”という行為に、ひっかかりを覚えた。PCだけ持って帰った風に表現されている小学生が、どうやってインストール・ディスクを入手したのか?PCと一緒に、付属品も持って帰ったのなら、そういう記述が欲しかったところだ。おそらく“インストール”という行為は、この物語の中でかなり重要なシーンのはずなので、もう少し丁寧に書いておくべきのように思う。……とまぁ、こんな感じの感想は、きっとこの作者の場合は不要なものなのかもしれない。文章全体から受ける、いかにも女の子っぽい雰囲気こそが、この本の魅力の大部分であるのだろうから。

 そう、綿矢りさの紡ぎ出す言葉の数々は、徹頭徹尾、女の子そのものであった。この感覚は、たぶん似たような経験をした人にしか通用しないかもしれない。私の場合は、大学時代にこのような文章に出会ったことがある。当時私が在籍していたサークルでは、毎月、本を出していた。サークルメンバーそれぞれが書いた原稿をまとめ、コピーマシンで必要部数コピーしてホッチキスで留めるだけの簡素なものであったが、毎月毎月、定期的に本を出せる程度には活気のあるサークルであった。そこに彼女はいたのである。

 彼女の書いた文章には、そこはかとなく愛らしさがあった。サークルには他にも女の子はいたのだが、そういう愛らしさを感じさせる文章を書いていたのは、彼女だけだったように思う。つまりそれは一種の才能なのだろう。その雰囲気を今、『インストール』を読み終え、思い出しているところだ。

 そういう懐かしい雰囲気にさせてくれたので、私的には1000円の価値ありとしておこう。でもたぶんこの本は、ハードカバーより文庫の方が似合ってる。


2004.1.19(Mon)

一枚タダ

 1枚買ったら、もう1枚タダというキャンペーンがDVDで行われているのは知っていたが、私の行動圏内にあるショップでは欲しいタイトルが皆無だったので、これまで特に気にしてはいなかった。けれども、最近ソフマップから届いたメールで、欲しかったDVDの在庫があることを発見。さっそく注文しておいたのだった。

 今日届いたのは『荒野の七人』と『大脱走』。昔の人には説明の必要もないほどの映画だが、最近の人は聞いたことないかもしれない。もしレンタルビデオ屋で見かけたら、ぜひ見ておくといいかも。


2004.1.20(Tue)

人身御供

 陸自先遣隊イラク派遣。
 近くに某覇権主義の国(首領様の国ではない)を隣に持つ国としては、アメリカの後ろ盾が欠かせない。現状の日本の国力では、単独では太刀打ちするのは難しい。それゆえ、アメリカからの“危険な要求”をつっぱねることは不可能であったろう。いわば自衛隊は人身御供にされるのである。
 自衛隊基地周辺で「ハンターィ」と叫んでみたところで、隊員達が気の毒なだけだ。

 願わくば、一人の犠牲者も出すことなく、帰国できますよう。


2004.1.21(Wed)

ウズラのいる生活

 ウズラ達に餌をやっていると、さっちゃんには毎回体当たりをかまされてしまう。いまだに慣れてくれなのが、ちょっと寂しい。ぴーちゃんの方は、右往左往した挙げ句に、じーっと私の一挙手一投足を見守ってくれるのであった。

 ところでウズラは地をはう鳥である。ゆえに、餌を食べる時には、人工飼料であっても、ついつい両脚で大地を掻いてしまうのであった。その習性がなんとも愛らしくもあり、見とれてしまう。しかしこのままウズラのケージをリビングに置いたままにすべきかどうかは、今、とても迷っているところだ。
 土間のある家ならそこで飼うのもいいかもしれないが、さして広くないリビングの中に、チップが散り、そしておそらく糞の微細な粉も舞う。外で飼うのが望ましい。
 しかしこのウズラ達、最初はヒメウズラと称して売られていたため、ずっと冬の厳しさを知らぬまま育ってしまっている。いまさら屋外に出して大丈夫なものなのか、そこが判断の分かれ道。悩ましいところだ。


2004.1.22(Thr)

片づいたテーブル

 現在我が家のリビングには、本来食事のために使うテーブルが1つと、コタツが1つ置いてある。テーブルの方は、なぜかいつも物置になってしまうので、食事等はすべてコタツの方で行ってきた。ところが今夜、テーブルの上がふいにきれいに片づいてしまっていたのだ。Licが思い立って、整理してくれたようである。

 さっそく、みこりんがテーブルの椅子に座って、お絵描きに余念がない。どれどれと覗いてみると、大きな人が2人と小さい人が1人、描かれていた。みこりんによれば、家族一緒に庭で遊んでいるところなのだという。なるほど。
 寒い季節に入ってから、あんまり庭で遊ぶこともなくなったなぁ、と思い出させる瞬間であった。子供は風の子、寒い寒いと親の方が家の中に引っ込んでいてはいけない。一緒に遊べる期間も(たぶん)あとわずか。気合い入れねば。


2004.1.23(Fri)

雪道

 天気予報通り、朝起きてみれば、外は一面銀世界。路面を確認してみたところ、完璧に凍っている。一番運転したくないシチュエーションだ。
 でもみこりんを保育園に送って行かねばならない。慎重にクルマを発進させた。

 時速約30キロでゆるゆると進んでいると、背後にぺったり貼り付く4駆。思わずブレーキ踏んだろうかと思ったが、みこりんも乗っていることだし無理はしないことにする。さっさと追い越していけばいいのに、ずぅっと背後にまとわりついて迷惑なことこの上ない。こういう非常識なやつが団地内にいるかと思うと、気分も重かった。

 クルマに乗ったら人は変わると言うが、変わるんじゃない。本性が出るのだ。恐ろしいことである。


2004.1.24(Sat)

Amazonで注文

 みこりんの通っている音楽教室では、小学生になったら2つのコースに分かれることになる。普通のクラスと、より専門性の高いクラスだ。はたしてみこりんをいずれに通わせるのがよいか、悩んでいる真っ最中。そのクラス分けの説明会に、Licとみこりんが出かけている間、私は本屋さん巡り。

 『蹴りたい背中』があるかなと、ちょっと期待していったのだが、軒並み完売状態だった。さすがに話題性ある本である

 仕方がないので、オンライン書店 Amazonで注文することにした。1500円から送料無料なので、ついでにLic用のコミック加えてしめて1600円。発送まで4〜6週間となっていたが、さて、いつ頃手に入るかな。


2004.1.25(Sun)

海の夢

 どうにもこうにも眠かったので、ひたすら寝て過ごす一日だった。みこりんは一緒に遊んで欲しかったらしくて「ねちゃいかーん」なんて口を尖らせていたのだが、どうにも睡魔には勝てそうになかった。

 夢を見た。海を泳ぎながら、釣りをする夢。熱帯性海水魚が手の届きそうな距離を、悠然と乱舞していた。そこに釣り糸を投入し、お気に入りの魚を釣り上げるのだ。
 似たような夢は、過去にも何度か見たことがあるが、前回見たのがいつだったか、もはや思い出せないほど昔のような…。なんだかとても懐かしい気分だった。

 我が家の海水魚の水槽は、現在2つ。この家を買う理由の1つであった大型水槽は、しかし今、手放すかどうかの瀬戸際にある。来るべき東海地震に耐えられそうにないこと、が最大の理由である。もしもこの大型水槽が落ちてきたら、リビングは悲惨なことになる。水槽から出火でもしたら、それこそ一大事だし。というわけで、悩んでいるのであった。

 結論を出すのは、案外、近いかもしれない。


2004.1.26(Mon)

渡り鳥

 庭の枝垂染井吉野の枝が、ふっと揺れた。窓に視線を向けると、鮮やかなオレンジ色が目に飛び込んでくる。ジョウビタキだ。今年も無事、渡ってきてくれたらしい。
 しばらく窓の外を見つめていると、ヒヨドリも頻繁に訪れていることが分かった。花壇のナンテンの実などをつっついているようだ。台所で余っている林檎でも枝に刺してやったら、もっといろんな小鳥に出会えるかもしれない。試してみるか。


2004.1.27(Tue)

“落ちる”

 『インストール』再読中。さらっと読めてしまう文体なので、ついうっかり見逃してしまいそうな表現とか、いろいろ気付くこと多し。1回読んだ後、も一度ゆっくり読み直してみると、新しい発見に出会えるかも。

 ちなみに本文の中でも触れられている、チャットにおける“落ちる”という表現方法は、私がパソコン通信やってた1993年当時にも一般的だった。私のニュアンスでは“回線これで落とします”という意味合いだったような気がする。チャットの場を移動する時には、“落ちる”とは言わなかったな。
 常時接続が一般的な昨今では、回線を落とすという行為そのものがたぶん無意味というか理解できない人も多かろう。それでも“落ちる”という言葉が生き残ってるのは、慣習じゃなかろうか。


2004.1.28(Wed)

口笛

 みこりんとあったかな湯船に肩までつかりながら、口笛を少々吹いてみる。すると、みこりんが私の唇の形を真似ながら、「ほーほー」と口笛の練習を始めた。
 どうも舌の形がいけないようで、吐き出される息は、たよりなく漏れている感じ。そこで私は口をかぱっと開け、舌の形をみこりんによーく見せてやるのであった。

 じぃっとソレを見つめるみこりん。そして練習再開。自分なりに舌の形をいろいろ研究しているようで、口元がもごもごと動いている。
 「ほひゅー しゅー」とか、様々な呼気が漏れてくるが、音階を伴った音色はなかなか出ては来なかった。まぁ、そう簡単に口笛吹けるようにはならないだろう。私も小学校低学年くらいの頃に、結構一生懸命練習したものだ。だんだんじれてきたみこりんが、「どうやったらなるの?」と半泣き状態で聞いてくるのだが、こればっかりは己で習得してもらわねば、どうにもならない。「何回も練習したら鳴るようになるから」と、練習続行を促したのであった。

 しばらくは、あいかわらず息が漏れるだけでしかなかったのだが、唐突に“ぴゅー”と、それまでとは明らかに異なる音色が混ざり始めた。ぱっと輝くみこりんの笑顔。そうそう、それそれ。その唇と舌と息の吐き出し方を鍛錬すれば、いまにしっかりした音が出るようになるはず。
 みこりんが口笛吹けるようになるのも、時間の問題かもしれない。


2004.1.29(Thr)

到着

 Amazonより宅配で『蹴りたい背中』到着。案外早かった感じ。
 さっそく読んでみようかな、とも思ったのだが、無性に眠いので、そのまま寝て過ごす。感想はまた明日。


2004.1.30(Fri)

『蹴りたい背中』

 『蹴りたい背中』読了。始めからじっくり読んだので、だいたい3時間くらいかかった。
 文体が、前作『インストール』のような露骨に女の子女の子した雰囲気ではなくなり、より冷静に書けている印象を持った。これが17歳と19歳の違いなのだろう。

 ハツの風変わりな思考形態が、過剰に気になる部分もあったのだが、全体的に淡々とお話が進んでいく。なんとなく深夜枠で流されてそうな名も知れぬ邦画をイメージさせる。情景描写に手が込んでいるので、脳内でビジュアル化しやすいのだろう。あるいは、どこかで見たような…という雰囲気をあえて使っているのかもしれないが。

 ラスト、にな川の家で夜明けを迎えるシーン。なぜか自分の大学1回生の時、初めてサークルの仲間と一夜を過ごした夏の日のことを思い出していた。なにもかもが白く陽炎に揺れる暑い夏の、強烈なイメージを連想させる。人によっては、「は?」と言う感じの終わり方かもしれないが、私は気に入った。
 おそらく作者の成長と共に、次作はもっと完成度の高い作品が紡ぎ出されるに違いあるまい。そういう意味でも、次が楽しみである。

 これもきっと誰かが映画化しそうな予感。


2004.1.31(Sat)

役決め

 この団地に住むようになって、はや10年目。ついに来年度、自治会本部役員が巡ってきた。各班の入居順に班長と本部役員が順繰りに回っているので、そろそろだろうとは思っていたのだが、いざ実際に当たってみると、なんとも気が重いものである。

 夜、本部役員の役決め会議があるので、会議好きなみこりんを伴って出席した。今年度の自治会長以下3役を上座に、それをぐるりと取り囲むように着席した各班の役員候補のみなさん13名。みんな、どれか1つは役が当たるようになっている。覚悟を決めねばならない。石油ストーブが3基赤々と燃えているが、ひんやりとした空気はいっこうに暖まる気配がなかった。とても寒い。

 まず自治会長を選出することになった。なにしろこの役が一番重い。立候補を募ってみたところ、一名、長老みたいな人が名乗りを上げてくれたのだが、この人は民生委員候補でもあるため、いずれかにしたいとのことであった。民生委員は、たぶん自治会長より、ある意味、大変かもしれない、ような気がする。
 実際、立候補者はこの人一名のみだったというのだから、もしこの人を自治会長にしてしまうと民生委員候補を、新たに探し出さねばならないという作業が待っている。自治会長選出よりも、難問のような気がした。そういう気がしたのは、他の人も同様だったらしく、結局、自治会長はその民生委員候補の人と、家庭の事情を挙げたもう一人を除く11名での“くじ引き”となった。

 紙袋に入れられた紙の束。順番に引いてゆく。まず私。緊張の瞬間だ。
 かさこそと3秒ほど紙をかき混ぜ、1つを手に取った。当たってませんように……。そぉっと紙を開いてみる。白紙。よっしゃぁ、外れだ。
 次々とくじは引かれていくのだが、なぜか一向に当たりが出ない。そしていよいよ最後の一人。もしかして“くじ”の作成に失敗しているのでは、という恐い予感。だが、ついに決着が付いた。最後の最後で当たりが出たのだ。
 自治会長決定。

 自治会長が決まってしまうと、残りの副会長とか会計とか書記とかは、どれも似たり寄ったりである。多少副会長の仕事が多いのが気になるところだが、個人的には体育委員が一番やりたくない。結局、あみだくじで決めることになった。
 さっきのくじと反対方向に回してゆく。今度は私が最後である。つまり選択の余地なし。でも、あみだくじなので、線は追加できる。3本ほど足しておいた。

 結果発表。まず副会長から。逆順にあみだを遡り、決まった。私である。うむぅ。副会長は春祭りの実行委員長でもあるため、いきなり忙しくなりそうな予感。ま、しかたあるまい。早いうちに3役経験してたほうが、今後なにかと便利かもしれないし。
 こうして次々と役は決まっていった。みこりんは、副会長が交通安全部長も兼ねているというのを聞いて、「こうつうあんぜんのはたもつひとになるの?」なんて、なんだかうれしそうである。ちょっと違うのだが、会議中なので細かい説明は省略。

 次期自治会長に決まってしまった人だけ重圧に押しつぶされそうな表情をしていたが、残りの人はなんだかほっと安堵したような雰囲気で、散会した。
 春祭りか。何か新しい企画を立てても面白そうだが、団地内をとりまとめるのはかなり面倒っぽいので、無難に昨年のを踏襲という線かな、なんて思いつつ、帰宅したのであった。


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国際サンゴ礁年2008
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