2000.2.1(Tue)

本いろいろ

 会社帰りに本屋に寄ってみた。山口譲司の『BIRTH 3』がようやく出ていたので、迷わず買う。次に『C MAGAZINE 2000年2月号』をゲット。画像処理関連で減色処理アルゴリズムが載っていたのがポイント。で、ずずっと奥の方まで進み、ガーデニング関連の棚から『ベランダでおいしい野菜づくり』(たなかやすこ著)に目が止まったので、しばし立ち読みしたのち買うことに決めた。ベランダ菜園とはいうものの、各種野菜の基本的なところは参考になる。

 夕食後、みこりんが寝てからさっそく読書タイムである。『BIRTH』は、前回のお話をすでに忘れつつあったので、しばらく記憶を呼び戻すのに苦労した。科学技術と妖術の異能者どもの闘い、古典的スタイルゆえに妙な安堵感を覚える。中盤から後半にかけて、千獣観音の過去が明らかになってきたことで、物語に命が吹き込まれつつあるように感じた。このまま長編となってくれることを期待しつつ、『キ○イラ』のようにネバーエンディングになってしまっても困るかなぁと、いらん心配などもするのであった。

 次に、『ベランダで〜』を読んでいたらLicも横から覗き込んできた。海外の品種がけっこう多く紹介されていて、興味をそそるのだ。巻末の通販会社リストには、外国の種苗会社のオンラインで注文可能な Webサイト も載っていて、時代の変遷を感じさせる。ほんの数年前まで、海外からの珍しい種を個人輸入するといえば、かなりマニアな人の楽しみだったのだ。ところが今や、国内の通販以上にお手軽に買えてしまうのだから恐ろしい…、いや、ありがたいことである。外国ばかりではない、国内にあっても、地域限定の野菜などはまだまだ珍しいものがたくさんある。国華園のカタログでも『日本各地の銘柄野菜10選』コーナーがあったりするので、ガーデナー達は今夜も購入リストを睨みながらうんうん唸っているにちがいない。

 で、結局今夜も時計は午前2時を回ってしまった。こうして2月もあっというまに逃げてゆき、いつのまにか春が来てたりするのだろうな。


2000.2.2(Wed)

灯台もと暗し

 なにを今ごろと思われるかもしれないが、今日の今日まで、私は C++Builder 4 に JPEGフォーマットの画像を扱える TJPEGImage クラスが内蔵されていることに気がついていなかったのである。
 あれはそう、Borlandから Delphi が初めて世に出た時のこと。私は「これこそ待ち望んでいたものだ」とばかりに、自腹で即買いした。当時、某パソコン通信のとある魚類系及び園芸系フォーラムで盛り上がりつつあった『データベース』や『観察日記』を作成するのに、これさえあれば怖いものなしとさえ思ったものだった。で、画像の表示が必要になったわけだが、当時は JPEG 画像を標準で扱えなくて、今でも広く使われている Susieプラグインを用いるか、自力で0から作成するしか手がなかったのである。その後、ほどなくして C++Builder 1 が登場し、そちらも試してみたのだが、状況はあまり変わらなかった(初期の C++Builder は、当時の Delphi とは比べモノにならないデキの悪さだったし)。それでも C/C++ 言語なれば、公開されているライブラリも広く使えるようになったので、それはそれで便利ではあったのだが。
 あの頃の記憶が強すぎた。まさか標準で内蔵していようとは。

 今回は JPEG フォーマットでの書き出しが必要だったので、Susieプラグインが使えなかった。そこで昨日の午後からいろいろ試行錯誤していたところ、今日になって、ひょんなことから TJPEGImage の存在を知ったというわけである。あぁ、まさに灯台もと暗し。

泣きたい年頃

 いつものように、Licとみこりんがクルマで迎えに来てくれている。今日は私が運転して帰ろう。Licがドアを下りると、なぜかみこりんがシートに突っ伏して大泣きしている。髪をパイナップルのようにてっぺんで結わえてあるのが可愛らしい。
 さっきまで病院にいたという。みこりんの診察だったのだが、扁桃腺の腫れはほとんど治ったらしい。診察が終わってからも、みこりんは良い子だったようなのだが、お薬を貰うときに、咳止めの水薬が出なかったのが、まずかった。みこりんは、アレがことのほか好きなのだ。容器代金の100円を看護婦さんに手渡したかったのだ。
 泣き叫んでいるみこりん。意味不明のうわごとを繰り返す。手のつけようがない状況である。

 クルマを発進させても、いっこうに変わりなく激しく泣いている。ところが、とぎれとぎれに聞こえてくる言葉が気になってきた。「〜したかった」と言ってるように聞こえるのだ。最初、お薬のお金を払いたかったと言ってるのかと思ったのだが、Licがいろいろ聞いてみたところによれば、「ミキサー車、見たかった」ということらしい。私の迎えに来る途中、泣きやまないみこりんをなだめるために、Licがすれ違ったミキサー車を見てみこりんに「ミキサー車おったよ」と言ったという。みこりんは泣いていたので見えなかった。それが悔しいらしいのだ。な、なんという執念深さ。でも、お薬の件はもういいようなので、ほっとする。ミキサー車ならまた出会う可能性があるけれど、お薬はもはやどうにもならないから。

 ところがこういう時に限って、ミキサー車は現れない。みこりんが泣き始めて20分は経過してしまった。ミキサー車、いったいどこに隠れてしまったのか。ミキサー車でなくてもよい。ショベルカー、トラック、バス、その系統ならなんでもOKだ。……、バス?おぉ!!バスなら、もうじきバス会社の横を通るので見放題ではないか。思いついたときには、私は口走っていた。バスが見えるよ、と。
 ところがどっこい、相変わらず伏したままのみこりんには、車窓の景色など見えないのであった。し、しまったぁ!時すでに遅し。みこりんは、今度は「バス、見たかった」と言って泣いている。おぉぉ、いったいどうすればいいのか…。

 信号で止まったのを機に、私とLicでみこりんを必死になだめにかかった。その甲斐あってか、みこりんはようやく椅子にきちんと座り直してくれたのだ。チャンス到来。
 Uターンかまして、さきほど通り過ぎたバス会社まで戻る。バスが見えた瞬間、みこりんはそれまでの大泣きが『ウソ』のように、上機嫌になったのだ。た、たすかった。ほんとにみこりん、バスが好きなのだなぁ。
 バスにバイバイしてからあとは、いつもの平穏無事な帰り道であった。


2000.2.3(Thr)

宇宙航空事業部、どちらが買うか

 出勤してからいつものように、ニュース系のサイトをチェックしていると、『日産、航空宇宙部門売却へ』(産経新聞 2000.2.3 ニュースフラッシュより)の記事に目が止まった。
 日産自動車が宇宙航空事業部を売りに出したのは去年の秋。石川島播磨重工業と川崎重工の2社が名乗りを上げて交渉していたはずだが、形勢は石川島播磨重工に有利に傾いているらしい。固体ロケットブースターのラインが手に入れば、石播的には航空部門のジェットエンジンに加えて、宇宙部門でもエンジン関連に食い込めるようになる。そりゃ、欲しいに違いない。あぶれた川重は、業界3番手以下は必定。もはや宇宙関連では生き残れない可能性もある。フェアリングだけでは、どうにもなるまい。HOPE-Xにしても、三菱の独占を牽制する目的だけで、参加させてもらえている現状は、あまりに寒い。

 逆に、一発逆転で川重が買収に成功したらどうなるか。宇宙部門で盤石な製品をラインナップできる魅力は大きいに違いない。石播と異なり、川重は機体メーカーでもある。既存/新規の航空機や宇宙機などに、うまく応用させることができれば他メーカーとの差別化がいっそう進むことになるだろう。得意の大型機関連でいえば、空中母機と、それに搭載する小型打ち上げロケットなどだ。今後の発展形を考えれば、石播よりも面白いことになるかもしれない。石播では、エンジン単体以上のものにはならないような気がする。
 勝負の行方は如何に。


2000.2.4(Fri)

“くろべとやまと”

 昨日は宅急便がやってきた。もちろん、みこりんの大好きな“クロネコヤマトの宅急便”だ。届いたのは押入収納棚4個セット。ニッセンのカタログでLicが注文しておいたものだ。こいつを本棚として使えば、半年は本の置き場で困ることはないだろう。組立て方法は、極めて簡単。本をのっけて大丈夫かと心配になるくらい、やわっちい。四隅をネジで留め、キャスターを4つねじ込めば、完成だ。さっそくみこりんが、棚を押して爆走しはじめるのだった。

 そして今日、再び“クロネコ”が来た。ニッセンの第二段が到着したのだ。「くろべとやまとのたっきゅうびん!」とみこりんは叫ぶ。昨日までは「くろべとななのたっきゅうびん」だったのだが、いきなり進歩していた。でもまだ時々「にゃーごとななのたっきゅうびん」と言ったりもしているので、頭の中では混沌としているにちがいない。いつ「くろべ」が「黒猫」であることに気が付くか、楽しみである。“黒猫”マークがついていることは知っているみこりんなのだが…。

 第三、第四便が届く頃には、「黒猫」になっていたりして。

宇宙航空事業部の行方

 ほぼ石川島播磨重工業で決まりのようだ。新聞にリークされた時点で、すでに決定事項だったのだろう。だいたい川崎重工は名乗りを上げた段階で、新規の民間航空機を同時に2機種製造するために動いていた。どちらもたいへんリスキーな仕事である。日産の宇宙航空事業部は、かろうじて黒字とはいえ併合するにはそれなりにエネルギーを使う。余力はなかったともいえる。真相は永遠にわからないのだろうけれど。


2000.2.5(Sat)

サカタのタネから到着

 ステビアにシャワーを浴びさせていると、玄関をノックする音がした。珍しい登場の仕方で届けられたのは、一抱えほどの大きさのダンボールが一箱。送り主は「サカタのタネ」である。先月末に注文しておいたのが、もう届いたようだ。
 送り状のチェック。

  • 葉げいとう“イエロースプレンダー”の種1袋
    (今年のテーマカラーは緑と黄色にしようと、この時は思っていた)
  • バジル“アフログリーン”の種1袋
    (去年に引き続き今年も買った。花壇の縁取りには最高)
  • ゴッホのひまわりの種1袋
    (サカタのタネ今年の目玉商品!やっぱり押さえておかねば)
  • ジフィーポット(直径5.5cm)240個
    (間引きが苦手な私には、最初からポットで育苗がいいのでは)

 以上、送り忘れはないようである。
 国華園にも、はやく注文しなければなぁ。

菜園2号完成か

 午前中のうちに、ホームセンターへ足りない土を買い出しに行った。鶏糞3袋とバーク堆肥6袋、それに有機石灰1袋は迷わず決まったが、問題は培養土である。プランターの土(14リットル)は一袋298円とお買い得だが、やや材質に難がある。といって有機培養土は25リットル入りで1280円、質的には最高だが値段が問題だ。最低でも4袋は欲しいので、もっと安いものを探さねば。あれこれ迷っているうちに、Licがいいものを発見してくれた。培養土(20リットル)498円。
 袋ごしに中身を確認してみると、なかなか良さそうである。粒が適度に細かいうえに、バーミキュライトの混合率が高い。重たい我が家の赤土には、こういうのが合っているはず。4袋買った。あとは花壇の土用に再生材を1袋。そして忘れてならない菜園の囲い用に薄型のブロックを8個と、猫避け用にネットと支柱。合計、約8600円也。

 軽く昼飯を食ったら作業開始である。みこりんは、帰りのクルマでお昼寝モードに入ってしまったので、今日も独りで土と戯れることになりそう。
 トランクから買ってきた土を降ろしていると、とてつもなく気分が悪くなってきてしまった。さっきの昼飯が悪かったのか?じっと固まってやりすごそうとしたが、ひどくなる一方なので、ひとまず玄関へ待避する。すると、嘘のように気分の悪さはなくなった。こっこれは。。。
 ちょうど2軒向こうでは外装工事のために、朝から工事が進んでいる。今は発動機を作動させていて、かなりの振動が発生していた。この低周波が怪しい。玄関の中にいれば、ほとんど振動はわからないが、ひとたびドアを開ければ内臓の奥から震わすほどのエネルギーに包まれる。何度か出たり入ったりして試してみたところ、気分の悪さはこの振動と連動しているように思われた。困った。あの振動はいつ収まるのか。いったんリビングに撤退である。

 幸い、十数分で振動は止まった。作業再開。
 買ってきた土を混ぜるだけなので、楽勝と思ったのだが、ブロックで枠を作るのにやや手間取ってしまった。それに加えて、元からある菜園から立ち枯れしている巨大シシトウの残骸を撤去して、こちらも耕し直さねばならなかったので、思わぬタイムロスが加わる。結構深く耕していたはずだったのに、菜園2号と比べるとまったくお話にならないレベルの耕し方だったのがまずかった。少し掘っただけで、石がごろごろ。道理で栽培中の大根が、なかなか太らないわけだ。

 鶏糞3袋、バーク堆肥3袋、培養土4袋を加えてよーく混ぜ、支柱をたててネットで囲えば完成だ。すでに時刻はあと10分で午後5時というところ。冬至な頃に比べれば、ずいぶん日の落ちるのは遅くなったが、これから花壇のほうまで堆肥を投入するには時間がない。今日は菜園2号だけでよしとするか。
 って、明日はまたもや雨らしい。日曜を狙い撃ちするような雨雨雨。午前中だけでいいから、晴れてくれないかな。

 夕食は、昼間菜園で間引いた大量の太ネギと人参が登場。みこりんがお手伝いしてくれて、きれいに洗われた人参は、まるでタンポポの根っこのように細かったが、サラダとして丸かじりしてみれば立派に人参の風味である。かりかりと歯ざわりも気持ちいい。太ネギは、溶いた小麦粉でお好み焼き風になっていた。みこりんが面白がって何度も「ちょうだい!」するのだが、ネギがやっぱりダメらしく、吐き出してしまう。幼児には、まだ早かったか。このネギ、本当なら直径6cmを越える大物になる品種である。どんな味がするのか期待でいっぱいだが、みこりんも早くネギの味がわかるようになればなぁ。


2000.2.6(Sun)

雨だったが

 よかったのか悪かったのか、複雑な心境である。というのも、昨夜からどうも喉がいがらっぽいなと思っていたのだが、起きてみるとやはり風邪っぽいのだ。しかも胃腸風邪な気配が濃厚である。喉の奥で、ケトン体の味がしている(血中のケトン体を味わうことはできないが、そういう胃腸風邪特有の味がしているという意味である)。飢餓感と膨満感が常にせめぎ合っているかのような、ぎりぎりとした緊張感が、常に胃のあたりに感じる。いやな感触だ。
 加えて全身倦怠に咳、眠気とだるさ。それでもお日様さえ見えれば、庭で昨日の続きをやれるだけの体力は残っていた。ところが朝から冷たい雨が降りしきる。

 みこりんとサンルームに出てみれば、じとっとべたついた湿気に包まれて、首のあたりがもぞもぞとした。みこりんは、天井の透明アクリル板に雨粒が当たって砕けるのを、じっと見つめている。雨粒に興味を持ち始めたのだろうか。この雨粒がどこから生まれて、どうやって落ちてくるのか…、なんてことを考えているのだろうか。あるいはみこりんのことだから、このシャワーはいったい誰が降らしているのだろう、と思っているのかも知れない。いつか聞いてみなくては。

 そういうわけで、今日の予定はすべてキャンセルである。みこりんとコタツに寝ころんで、お昼寝タイム。その間に、Licはお買い物に出かけていった。

 再び目覚めたときには、すっかり夕方を過ぎて、夜に入ろうとしていた。いいタイミングで、Licが帰宅。胃腸薬と健康ドリンクを買ってきてくれていた。ついでに古本屋で『クレオパトラD.C.最終巻』『砂の薔薇 最終巻』『八雲立つ 8〜12巻』をゲットしてきたようである。夕食をはさんで、ひたすら読みふけった。新谷かおるの絵、だんだん私の好みから遠ざかってきているのが残念。平成2年出版の『クレオパトラD.C.最終巻』と、平成11年出版の『砂の薔薇 最終巻』では、人物描写にシャープさがほとんどなくなっている感じがする。背景や脇役、群衆などの描き込みが安易になっている気がする、などなど。

 ところでみこりんは、コップを4個ほど使って遊んでいる様子。お茶の移し換えをやってるらしい。飽きもせず延々と遊ぶ。だが午後9時をまわったとたん、ふいにコップを置いたみこりん。もう寝るのだと言う。最近、みこりんは早寝なのだ。
 寝室に連れていき、絵本を読んでやっている間、みこりんはずっとイルカの人形がついたボールペンを握りしめていた。一昨年の夏に神戸のばぁばが買ってくれたものだ。今夜はコレがお守り代わりなのだろうか。でも、今夜は「お化け」ネタでは脅かしていないのだが。つい、みこりんの頭の中を覗いてみたくなった瞬間である。
 明日はきっと晴れる。胃腸風邪、金曜までには治してしまわねば。


2000.2.7(Mon)

宅急便のプレゼント

 昨日、ニッセンの第3段が届いた。入っていたのは、みこりんの服だ。胸に青い林檎のマークがはいった赤い服。すっかり気に入ったらしく、何度も私に見せに来ていた。
 ところでみこりんは、これらはみな「くろべとやまとのたっきゅうびん」のプレゼントだと思っているらしい。今朝なども、「おとーさんも、りんごの服ある?」と聞くので、持ってないよと答えてみれば、「くろべとやまとのたっきゅうびんが、もってきてくれるで、おとーさん」と言うのだ。みこりんにとって、商品を運んでいるだけの宅急便屋さんこそが、サンタのおじさんのようにプレゼントを持ってきてくれる“くろべとやまと”のおじさんなのだろう。いつも突然にやってきて、大きな箱をみこりんに手渡してくれるのだから、そう思ったとしてもなんら不思議ではあるまい。
 「ありがとー」と宅急便屋さんにお礼を言うみこりん。運んでくれたのは宅急便屋さんだけど、買ったのはLic。はたしてみこりん、いつ、この事実に気が付いてくれるだろうか。

YAMAHA FZ250 PHAZER

 偶然の一致か、運命のいたずらか、奇しくも昨日の日付で、別々の方から2通、メールをいただいてしまった。どちらも当サイトの『YAMAHA FZ250 フェザー(PHAZER)』を見てくれた PHAZER 好きの方々である。おぉ同士よ。

 ところで ヤマハ発動機のサイトには、FZRシリーズがラインナップされていないようなのだが、まさか FZRシリーズまで打ちきりになったとか??(いや、そんなはずは…)

せんせい

 今夜は、みこりんが怖いくらい『いい子』である。トイレも自発的にするし、ご飯もきちんと食べるし、なにより駄々っ子状態にならないのがすごい。いったい何が起きているのだろう。保育園で、何かいいことあったんだろうか?そういや今朝は、「誰と遊ぶの?」という私の問いに対して、「こーちゃんと遊ぶぅ!」と即答してたな。もしやらぶらぶ状態なのか!?

 夕食後のデザートを食ってるときにも、みこりんはやたらと世話焼き女房風だった。イチゴの食べ方を、「こう持って!」と私に細かく指導してくれたのだ。右手でイチゴの先っぽを掴んで掲げ、おもむろにヘタをむしる。そうしたら、にっこりイチゴに微笑みかけてから、口中へと投じる…、というのが正しい“みこりん流のイチゴの食い方”らしい。ちょっとでも作法を無視したり、間違えたりすると、ただちに修正されてしまうほど厳しい教えであった。

 まさかとは思うが、はやくも今年から『ばれんたいんでぃ』のチョコを用意してやらねばならなかったりして…。早いコならば、3歳にしてチョコを配りまくるご時世らしいから、絶対ないとはいえないが。うぅむ、私が男兄弟なうえ、従兄弟連中にも女の子が少ない家系だったので、よけい女の子の育児ってものがやたら新鮮に感じる昨今だったりするのである。


2000.2.8(Tue)

しんしんと

 昼間はすさまじい雨だったらしい。もしかすると、夕方には雪も混じっていたのかもしれないが、私は脇目もふらず仕事(!)に没頭していたので、さっぱり気が付いていなかったのであった。退社するころにはちょうど雨が上がり、週末の3連休のことに思いを馳せたりする余裕も出てきて初めて、今夜が尋常ではない寒さだということに気が付いたのだ。まさか、雪が降ったりして。

 夕食が終わり、ぶり返してきた胃腸風邪で怠い体を持て余しつつ、みこりんを膝にのっけてTVなど漫然と見ていたときのこと。Licが、すでに庭一面銀世界になったことを報告してくれた。積雪は、5cmほどだという。こんな時間から積もっていては、明日はおそらく道という道は、デンジャラス・ロードと化していることだろう。いやいや、そんなことより、週末3連休が雪で覆われないかどうかのほうが心配だ。

 早めにみこりんを寝かしつけることにした。ところが、絵本を読み終わり、灯りも消してすでに1時間以上が経つというのに、暗がりでときおり濡れたように光るのは、みこりんの瞳。いつもなら、“おやすみ3秒”という寝付きの良さを誇るみこりんが、今夜はなかなか寝てくれない。いちおう静かに横になってはくれているので、みこりんも寝ようと努力はしているらしいのだが。何か心配事でもあるのだろうか?

 じっと見つめていたら、みこりんと目が合ってしまった。私が起きているのを確認したのかどうか、すぐにみこりんは目を閉じた。半分は寝ているのかもしれない。ときおり唸り始めるエアコンが気になってるのかな?あるいはみこりんの心配事はそんなありふれたものじゃなくて、「雪が連れ去りにくる」のを恐れているのかもしれない。寝る前に、積もった雪を見てきたみこりんが、私にも雪を見ておいでと言ってくれたとき、思いついて私が口にしたフレーズが、「雪が連れ去りにくる」だった。みこりんがどんな反応を示すか興味があったのだが、特にコメントはなしだった…。

 本当に怖いとき、みこりんはそうやって“聞かなかったことにする”ことがある。みこりんがなかなか寝付けないのは、延々と暗闇の中で「雪が連れ去りにくる」イメージに襲われているからではあるまいか。ま、まずいかも。
 しばらく布団の上から、ぽんぽんと軽くたたいてやってみた。ねんねー、ねんねー。やがてみこりんの寝息が、規則的になってきたのを感じた。さらに待つこと30分。ついにみこりんは夢の中へ。怖い夢を見ませんように。


2000.2.9(Wed)

最近お気に入りのチャンネル

 ここ最近、SkyPerfecTV! の HOME CHANNEL(ch.372)をつけていることが多い。ガーデニング関係のプログラムが豊富というのが、大きな理由である。海外から番組を買っているらしく、これまで日本では見慣れなかった内容が、ほどよく新鮮なのもいい。なにしろ「この庭の生け垣は…」と指さす先は、どこの植物園ですかぃ?というほど広大な大自然が映し出されたりするのだ。日本でこの感覚が身近なのは、北海道の一部くらいではなかろうか。平均的な日本人の“狭い”庭には、とうてい適用不可能なアドバイスやらアイディアなどが盛りだくさん。圧倒されて、もはや感心するばかり。ギャップが大きければ大きいほど、刺激的で面白い。

 もちろんそういった見て楽しむ系のものばかりでなく、海外モノでも都会のガーデニングだとか、室内園芸だとかもちゃんと押さえてあるので、実用的な楽しみにも不足はない。特に印象に残っているのが、家庭菜園の紹介のときで、奥行き、幅ともに、かなり大型の菜園だったにもかかわらず、説明していた白人女性は、座った位置から一度も動くことなく自在に種を蒔き、水をやり、収穫までこなしてしまったシーンである。なぜそんなことが可能だったかといえば、その女性の手足(この場合、重要なのは手のほうである)が、まるでタカアシガニかと思うほど長かったのだ。とても私にはマネのできない芸当である。カレル・チャペックも、その著書『園芸家12ヶ月』でこう述べていた。園芸家にとってもっとも好ましい体型は、苗を踏まずに移動できる長くて細い足と、どんなところにも届く長い腕なのだと。やはりガーデニングを志す以上、たゆまぬ努力によって手足を長く長く、ひたすら長くすべきということを、件のシーンでは教えていたに違いあるまい。

 そうした中で、私が今、妙に惹かれているのが『マリーのハーブの丘から』という30分番組である。これはたぶん日本製。
 ハーブ関係の栽培方法から利用方法まで、いろいろ紹介してくれるのだが、単なる How To モノではない落ち着いた雰囲気が心地良い。紹介役のマリーさんは、とても(たぶん)40代とは思えないほど異様に生活臭がなかったりするのも、いい感じである。元モデルというその整った容貌とスタイル、ケバさやハデさから対極の位置にある上品さなど、どれをとっても“非日常(ありふれてない)”のだ。マリーさんだけでなく、たまに登場する岡村真弓さん(番組監修)も、負けずに上品である。気取った上品さではなく、自然と溢れてくる資質なのだろう。まったく違和感がない。見ていてじつに爽快な気分を満喫できるうえ、ハーブ関連の蘊蓄も語れるようになるのだから、これを見逃す手はあるまい。冬のコタツ園芸は、今年飛躍的に面白くなってきた。


2000.2.10(Thr)

失敗

 今日は一日、研究室の“離れ”でひたすら確認試験をやっていたので、このニュースを知ったのはすでに夕方。『MVロケット4号機打ち上げ失敗』。。。脱力感というよりも、漠然とした怖さを感じた。気が付いたら背後が断崖絶壁で、二度と這い上がれない深い闇が迫っていた、という感覚の恐怖である。(宇宙作家クラブ ニュース掲示板“M-V/ASTRO-E打ち上げ情報”に詳細情報あり。)

 昨日、地上追跡局でケアレスミス(コネクタの外れ)が発射一分前に見つかり、打ち上げが延期されたというのを聞いたときから、なにやら違和感があった。昨年、H−IIロケット8号機の打ち上げに失敗したNASDAならば、コネクタが外れていても不思議ではないが(いや、ほんとはいけないんだけど…)、宇宙科学研究所がらみでそんなことが起きたという事実は、にわかには信じられなかったのである。故意に誰かが破壊工作を…?なんて勘ぐってしまったほどだ。

 今回の失敗の原因が、技術的な問題なのかどうかはまだわからない。回避不能な潜在的不具合だったのかもしれない。でも、「何か変」だ。ツキに見放されていると言ってしまえれば気も楽だが、もっと根本的なところでおかしくなってきているのではないかという思いが強い。おおざっぱに言ってしまえば『プロ意識』が希薄になりつつあるのでは?という危機感でもある。“コネクタを足にひっかけたかもしれない”と思えない連中が、増えてきているのではあるまいか。
 衛星の軌道投入に失敗したとはいえ、第一段の不具合のあと、ロケットはじつに絶妙なリカバリーを行っていたようで、そういう点では「さすがである」と思うものの、それがあるからこそ、前日のケアレスミスがよけい不似合いに思えてくるのだ。

 日本の科学技術の失墜などという一面的な問題ではなく、“しつけ”の不足や“モラル”の低下という普遍的な問題に行き当たるかもしれない。ここ数年の事件・事故・出来事・社会現象などを思い出してみると、なんだか符号するような気もしてくる…。自分勝手な親達とか、みょーな悪平等から進歩しない学校とか。こういうときこそ、外から新しい“血”を入れるべきなんだろうな。


2000.2.11(Fri)

3連休初日

 花壇は、半分ほど雪に覆われていたが、せっかく晴れているので耕すことにした。今日の予定は、去年巨大シシトウが植わっていた南側2m部分だ。すでに石ころの撤去は済んでいる場所なので、あとは鶏糞やバーク堆肥などの土壌改良材を混ぜ込むだけでよい。

 鶏糞1袋、バーク堆肥2袋を投入し、砕き砕き混ぜ混ぜ。石ころはないはずなのに、やたら土中で硬いモノにぶちあたってしまう。不審に思い手にとってみると、それは氷だった。地表面だけでなく、土の中もかなり凍り付いているようだ。氷ならば溶けてしまえば実害はないので、そのまま作業を続行する。
 結局この作業は、お昼前には完了した。やはり石ころを取り除かなくてもよいと、作業能率は極端に上がる。時間はたっぷりあまっているので、さらに東に向かって2m耕すことにした。

 ここには去年植えたサルビア3種が越冬中だったので、まずそれらを掘り上げなければならない。枯れた地上部の枝などをあらかじめ切っておく。私がちょきちょきやっていると、みこりんもやりたいと言うので、お手伝いしてもらった。最初はハサミを入れるたびに「ここ?」と確認していたみこりんだが、だんだん慣れてきたのか自分の判断で切り始めたのだった。地表ぎりぎりではロゼット状に新芽が広がっていたが、みこりんの興味の対象はもっぱら背の高い枯れた花芽。なので私も気楽に任せていられたのだが、たまに緑色を保ったまま葉っぱをつけた頑丈なやつも残っていて、そういうのは切らないように「茶色くなったやつだけだよ」と何度か声をかけておいた。
 みこりんがなにやら興奮気味にハサミを入れていたので、ふっとそっちを見ると、青々した頑丈な生き残りが、まさに今、切り落とされた瞬間であった。「あーーー!みこりんっ!それ緑色やんか」と言う私に、みこりんは「おっきぃよ、これ!」と話が噛み合わない。まぁ1本くらいはしょうがないか。50株以上残ってるんだし。

 みこりんに手伝ってもらって地上部を整理したあとは、シャベルでさらってサルビアを一気にどかし、空いた花壇にクワをがんがんたたき込む。菜園2号ほどではないが、やはりここにも石がごろごろ。それでも一度は花壇にする前に耕しておいたためか(数年前のことだ)、意外に作業はやりやすかった。耕し終了。土壌改良材の投入…、という段階でストップ。鶏糞を使い切ってしまっていたのだ。買ってこなきゃなぁと、腰など伸ばしていると、Licから呼び出しが。じじばばが、もうじき到着するのだという。この3連休、たまたま仕事が休みとなった私の両親が、田舎からみこりんを見にやってくることになっているのだった。クルマで来たならば8時間ほどで到着するが、冬の関ヶ原越えはリスキーということで、今回はJRである。駅まで迎えに行かねばならない。ついでにホームセンターで鶏糞やら堆肥やらも買い足してこよう。
 みこりんを着替えさせ、出発。Licは家の片づけに追われているので、居残り。

 最寄りのJR駅は、無人駅である。なのでホームまで堂々とお迎えに行ける。みこりんは、はたしてじじばばの顔を覚えているだろうか。去年の夏に会って以来だから、やや不安。
 4分遅れで列車が到着した。降りる客はまばら。みこりんがじっと見つめている。やがて、一点を指差したのだった。じじばばを発見したらしい。顔を覚えていたようである。だがしかし、じじばばが近づいてくると、なんだかむっつりとおとなしくなってしまった。じじばばが、これ以上ないくらい顔面の皺をくしゃくしゃにして「みこちゃん!」と呼びかけても、固まったまま。うーん、これはもしや“照れ隠し”かも。人見知りだったら、もっと怖がってるはずだし。やや進歩の兆し。

 駅からの帰り、ホームセンターで鶏糞3袋、バーク堆肥2袋、培養土(25リットル入り)2袋を買った。園芸コーナーのレジ係りのお姉さんが、やたらと美形なのに驚く。アルバイトに違いあるまい。また買いに来なくては。

 家に着いたら、みこりんはすっかり打ち解けていた。じじばばには、たっぷりみこりんの相手をしてもらって、私はひたすら花壇の土造りに没頭。鶏糞1袋、バーク堆肥2袋、培養土2袋を投入して、ひたすら混ぜる。ついでにジャーマンアイリスとバラ2株も植え替えすることにした。
 でもその前にサルビアを花壇に戻しておかねば。縁石に沿って1つ1つ植え込んでいたのだが、途中で雨が降ってきてしまった。いかにも冬の雨といった、細くて静かな雨である。途中で止めるわけにいかないので、作業を続けた。雨は、降ったり止んだりしていたが、幸いざざ降りになることなく上がってくれたので、土もそれほどぬかるまずに植え替え終了。ジャーマンアイリスは、かなり増えてぎゅうぎゅうになりつつあったが、もう一年株分けは待ってみることにして、ちょっと広めな空間に植えてみた。バラ2種は、やや後方に下げておいた。花壇の中央付近が広々した感じだ。今年もたくさん種を播いても大丈夫。
 片付けを終えてほっとしたとたん、猛烈な頭痛と関節の痛みに襲われてしまった。なんだか風邪っぽい症状だが…。ちょっと無理をしてしまったかも。


2000.2.12(Sat)

クコの木方面

 寝ている間も、なんだかずっと頭が“じんじん”痛んでいたような気がする。目が覚めても、爽やかな日差しとは裏腹に、いっこうに治まる気配のない鈍い頭痛。どよんとした気分で階下へと降りると、すでにみこりんは全開モードでじじばばと遊んでいたのであった。元気がなにより。みこりんの元気で、少しは気持ちもラクになったような気がする。
 というわけで、今日も庭の続きだ。

 南側の花壇には、西よりにコニファーが3本植わっている。6年前に、何をトチ狂ったか衝動的に3本も買ってしまい(高さ60cmほどのやつ)、置き場所に困ったあげく、買ってきたままの鉢植え状態で庭に放置していたものを、その半年後にやはりじじばばが夏休みに遊びに来ていて、いつのまにか地植えにしていったのである。それまでコニファーは横倒しになっていたりもして、半分ほど日焼けしており、なおかつ先端から30cmほどが枯れつつあった。枯れた幹は、大胆にカットされ、なんだか不格好な姿になってしまっていたが、今ではその面影はどこにもなく、威風堂々の逞しいコニファーに復活した(現在、高さは1m70cmほど)。基幹を切断されているとは思えないほど、うまい具合に脇芽が伸びてくれたのだ。
 コニファーが大きくなればなるほど、株間はだんだん狭く、薄暗くなってきており、去年そこにLicが植えたルドベキアが、なんだかひょろんとなっている。花壇の土を整備したこともあり、植え替えることにした。移動先は、ジャーマンアイリスの隣。なんとなく和風な雰囲気である。

 いったん買い物に出て、鶏糞3袋、バーク堆肥4袋、培養土2袋を抱えて帰宅。今日は花壇の東南部分、クコの木方面を開拓する。
 すでにあらかたの石ころは掘り出してあるので、あとは土壌改良材を混ぜればいい…、といういつものフレーズには、いつものようにオチがある。私のクワさばきが、だんだん上達しているのか、単に土が雪解け水でぬかるんでいるからなのか、より深く耕せてしまい、結果、新たな石の山に遭遇してしまったのであった。またしても重量30kgクラスの石が、3個4個と発掘されてくる。土の分量が、かなり減ってしまった。
 鶏糞2袋、バーク堆肥3袋、培養土3袋を投入。だが、土の量は満足できるレベルに達しない。といって、今年これ以上を求めると、出費が膨大なことになりそう。来年の課題ってことで、よしとしよう。
 クジャクソウの白とピンク、それぞれを今日耕した場所に移植した。この花は、ぶわっと大きく広がるので、花壇のコーナー部分のほうが似合っていると思ったからだ。で、クコの木をどうするかは、まだ未定。撤去するなら早い方がいいのだが…。

 昼間飲んだ頭痛薬がそろそろ切れてきたようで、またしても痛みが襲ってきたので今日は作業を終了した。私が花壇をやっている間、じじばばとみこりんが、花壇以外の雑草を抜いてくれていたので、だいぶすっきりした感じになっていた。やはり雑草対策は人海戦術に限るなぁ。
 明日は花壇の最後の仕上げの予定である。


2000.2.13(Sun)

おひさまな

 じじばばが今日のお昼に帰ってしまうので、午前中のうちにお雛様を飾ることになった。今年もお内裏様とお姫様の二人だけだ。みこりんが欲しがれば、三人官女あたりは将来増えるかもしれないが、このシンプルな構成はけっこう気に入っていたりする。
 毎年、お雛様を飾るのはLicがやる。男の私には、なんだか手を出しにくい雰囲気が雛人形にはあるのだ。
 雛人形が着々と準備されている間、私は予定どおり花壇の最後の仕上げにとりかかった。花壇南西方向に土を入れるのだ。ここには昨日までクジャクソウ2種が植わっていた。花壇とはいえ、ぜんぜん耕してなかった場所なので少々手こずる。この赤土100%みたいな場所に、鶏糞1袋、バーク堆肥1袋を投入し、改善を試みるのだ。
 作業しているすぐそばの、コニファーの間に植わっていたレモンバームが気になったので、これもクコ方面へと植え替えておく。

 みこりんが座敷の方から、私を呼んでいるのが聞こえた。雛人形の飾り付けが終わったらしい。窓越しに覗いてみると、みこりんが一生懸命それが何か説明してくれたのだった。でも、なかなか“おひなさま”と言えなくて、「おひさまな」だったり「おひ?」と詰まってしまうあたりが、そこはかとなく可愛いらしい。
 そろそろじじばばを駅まで送って行かねばならない時間である。急いで着替え、みこりんをじじばばそれぞれに抱っこしてもらって写真を撮り、心残りがないようにしてもらってから、駅へと向かう。
 みこりんは、じじばばが自分の家に帰っていくという事実を、よく理解しているようだった。今度会えるのは、夏…、みこりんも、はや3歳か。

公園にて

 じじばばも田舎に帰り、いつもの日曜の午後を堪能する。
 今日は用事でちょこっとお出かけ。みこりんの情緒がやや不安定な感じで、よく泣いた。そこで、以前から気にはなっていたが一度も入ったことのない“大きな公園”に行くことにした。
 住宅街にあるような公園ではなく、市民公園の規模を持つそこは、一面芝生が貼られ、だだっぴろく、子供の野球なら6面ほどダイヤモンドがとれそうである。はしっこのほうに子供用のアスレチックが備わっていて、今日も多数のお子さまで賑わっていた。

 最初、みこりんはアスレチックを遠巻きに見るばかりで、なかなか遊ぼうとしなかったのだが、そのうち慣れたのか一人で好きな方に行ってしまった。元気で結構。だが、このアスレチックはまだみこりんには大きすぎる。結局、滑り台やら平均台やら、ずっと私とLicが補助してやったのだった。
 ところで滑り台の上では、なぜかみこりん“はいはい”で進むことが多かった。もしや高い場所が苦手なのかも?1歳の頃には、平気でたったかいってたのに。でも、順番を守らずに先に滑ろうとする男の子に、ちゃんと「みこちゃんがすべるの!」と言ってたのは、進歩だなぁ。

人見知り

 夕方、戻ってみると、にゃんちがまだケージに戻っていない。朝、ケージから出してやったものの、じじばば(見知らぬ人)が恐いらしいにゃんちは、あっというまに2階の北側の窓辺へと駆け上り、窓枠のところで“じぃぃぃっ”と置物のようにたたずんでいた。まだ、そこで固まっているのかもしれない。さっそく救助に向かう。

 やはりにゃんちは、そこにいた。ぴくっとも動かずに、静かに静かに待っているようだった(何を待っているのやら)。レースのカーテンを上げて、「にゃんち、おいで」と呼んでみても、ちろっと舌を出しただけで、動かない。よっぽど見知らぬ人が恐かったのだろう。それにしても、去年じじばばが来たときには、これほど人見知りはしなかったのに、なぜ今回は最後まで慣れなかったのか。にゃんちの心の変化は窺い知れない。

 動かないので、抱っこして連れていくことにした。暴れるかと思ったが、拍子抜けするほど素直だった。そりゃ、朝から夕方まで、こんな寒いところで固まっていれば疲れるだろう。さささ、あったかいソファ(にゃんち専用)にお入り。
 ようやくケージに帰ってきたにゃんちである。それから1時間後、とっぷり日も暮れてから、にゃんちも活発に動くようになってきた。家の中に、見知らぬ人の気配がないのを確認できたからかもしれない。
 甘えん坊というか、寂しがりやというか、人見知りというか、にゃんちの繊細さには、時々驚かされるのであった。

軋みのドア

 リビングの木製のドアが、以前から軋んでいた。蝶番のあたりが、ヘンにこすれているのだろう。開閉のたびに、古い洋館を想起させるイヤな音が響くのだ。昼間なら、まだいい。真夜中、こいつが悲鳴をあげるたびに、心の平穏は乱された。
 だが、今日限りで、そんな心配もなくなる。昼間、100円ショップでマシン油を買ってきたのだ。本当は556のほうが良かったのだが、100円というのはあまりに魅力的な値段であった。これでダメなら、556を試してみよう。

 注入。

 確認。まだ軋む。
 これでもかっ、とばかりに、油を挿しまくった。だいぶマシにはなったが、根本的な軋みが解消しない。Licが、蝶番のネジを締め直してみてはと言う。ドアが自重で下がってくるので、ゆがみが発生しているのかもしれない。
 6角レンチで、締め込んでみた。思わず総毛立つような軋みを発して、ネジが締まった。これでどうだ!?

 ドアに手をかけ、そぉっと引いてみた。「………」
 信じられないくらい、静かな動作である。まったく音がしないではないか。原因は、こいつだったか。マシン油の効果も手伝って、恐いくらい無音でドアは開閉した。うぉぉぉ。か、感動である。ドアが軋まないのが、これほど心地良いものとは。
 だが心配事もないではない。こんなに静かに開閉できてしまえば、泥棒さんが侵入してきても気づかないのではないか、ということだ。だがそんな欠点よりも、静かさ、滑らかさといった利点のほうが圧倒的で、すぐにそんな心配は消し飛んでしまったのだった。

F1

 夜、たまたまつけていたTVで、ホンダの新しいF1マシンが紹介されていた。
 “BARホンダ002”、そのデザインと色彩に、ここ数年遠ざかっていたF1への興味を、久しぶりにかきたてられたのだった。こいつが走るのならば、今年はF1中継を見てみようか。
 ところで、このマシンから何を連想したかといえば、なぜかヴァルキリー(VF-1J)なのだ。白いボディが印象的だからかも?。


2000.2.14(Mon)

絵柄

 みこりんが絵本買いたいモードらしいので、帰りに本屋に寄った。図書券は、あとわずか。豪快に買えるのも、今日が最後だ。
 『Dr.モードリッド』外薗昌也、『ウルフガイDNA7』平井和正、『有機物を使いこなす』農文協編(農山漁村文化協会編集部)、『ローズ・ガーデン』わかつきめぐみ、『ペルソナ』高橋由紀、そしてみこりんの絵本2種を購入。

 みこりんが絵本を見て「おーい」と言った。私の記憶にも、かすかにひっかかっている言葉だ。「おーぃ」というフレーズの入った絵本を、昔みこりんに買ってやったような気もする。でも、なぜみこりんは今日買った絵本を見て、「おーい」と言うのか?
 この謎は帰宅後、解説で判明した。作者が同じだったのだ。つまり絵柄を見て、みこりんは「おーい」の絵本を思い出したということらしい。幼児の記憶力、侮り難し。

 『Dr.モードリッド』を読む。表紙と帯に興味を惹かれたのだが、さて。この作者名は、覚えがある。でも、何を描いてたかは思い出せない。
 扉絵で、いきなり隠し武器が披露されていた。銃がかなりちゃっちいのが、個人的には大きく減点。腕に仕込むなら、サイコガンくらいハデじゃないと…。せめてガッツの大砲くらいは…。
 で、読み進めてみた結果、物語が薄っぺらい、各パートの結末がありきたり、と、よい印象は残らなかったのだった。考古学者が、いつもいつも武器でカタつけてちゃ飽きる。そのアクションシーンにも、さして見るところがないのでは、どこも楽しむ部分が残らない。もう少し、知力で勝負するようなストーリーにならないものか(最初の“黄金”の話みたいなのを発展させていけばよかったのに)。古本屋行き決定。


2000.2.15(Tue)

先生の趣味

 夜半から雪が本降りになってきた。すでに庭は一面真っ白である。こんな夜には、あったかい風呂の有り難みが骨身にしみる。
 みこりんとぬくぬくしていたら、突然みこりんが両手で顔を覆った。「ん?」と思った直後に、その手がささっとどけられ、みこりんの顔面は“子泣き爺”そっくりな妖怪面に変貌していたのである。こっこれはぁっ。

 ただちに私も、己の顔面を両手で覆い、憤怒の形相を作り終えると、さっと手をどかすのだった。『大魔人遊び』を、みこりんから仕掛けてきたのは今夜が初めてである。素晴らしい。これまで何度も“独り大魔人”をやってた努力が、今、報われたのだ。

 それにしても突然だった。何の前触れもなかった。いつからみこりんは計画していたのだろうか。いつもお風呂で私が大魔人をやってたので、ふいに思い出したのかもしれないが、私に「やって」と言わず、自分でやってしまうところが興味深い。“面白そうだ”と思ってくれたということか。
 みこりんが再び顔を覆った。今度の大魔人も、さきほどの“子泣き爺”そっくりだった。まだ顔面変貌に工夫の余地がある。私は手本を示すように、顔面百面相を繰り返してやったのだった。そのうち、みこりんが「ちゅーしてあげる」と言い出した。おぉぉ、大魔人の怒りは少女の『愛』によって鎮められる…、をやろうというのか。いったいどこでそんな設定を勉強してきたのだ。ま、まさかみこりんは今日、保育園でこの『大魔人遊び』を先生相手にやってきたのではなかろうか。そして先生の中に、たまたま大の特撮好きがいて、この技を伝授されたのでは。。。みこりんの保育園の先生は、平均年齢がかなり若い。こういうマニアックな趣味を持った先生がいても、不思議ではあるまい。
 確かめねば。


2000.2.16(Wed)

あっちもこっちも

 Licも私も朝は苦手だ。冬ともなると、よけい起きるのが億劫になる。そんな血をしっかり受け継いだのが、みこりん。いつも最後まで寝ている。
 起こすのも一苦労だが、さらに着替えさせようと思うと、知力の限りを尽くした駆け引きが繰り広げられるのである。いかにみこりんの興味を惹き、自分で着替えさせるかがポイントだ。近頃は言葉を上手に駆使するようになってきたので、闇雲に叱るだけでは逆効果になることも多い。理を説くのが早道である。
 だが最近は寒さが厳しく、布団の恋しいみこりんを起こす段階で、すっかりエネルギーを消耗してしまうことが多くなった。ただでさえ朝は時間は惜しいのに、起こすだけで10分も20分もは、かけていられない。なんとかしなくては…。そこで今朝は、寝室のTVをつけてみることにした。『おかあさんといっしょ』の時間帯というのがミソである。

 はたしてみこりんは、オープニングが流れてきた瞬間、がばっと起きあがったのだった。すさまじい威力。これまでの私の苦労は何だったのか。
 ところがみこりんの好奇心は、別のことに向けられているようである。みこりんは、こう言ったのだ。「おとーさん、こっちでもやってるよ!?」
 いつもみこりんは、リビングのTVで『おかあさんといっしょ』を見ていた。この寝室では、私が記憶する限り、見たことはないはずである。みこりんにとって、『おかあさんといっしょ』は、リビングのTVでしか見られないものと認識していても不思議ではないだろう。なにしろみこりんは、TV放送の仕組みなんて知らないのだ。

 ビデオならば、テープに入っているのだと、みこりんも理解している。テープは、ちゃんと目に見えるし、触れるのだから、いかにもわかりやすい。だが、TV電波はそうはいかない。あれは通常、目で見ることはできないからだ。もちろん幼児でも、目で見えないものを理解することは可能である。お化けなどは、目で見えないものの代表選手だが、みこりんは当たり前のように存在を信じているのだから。いずれみこりんも、TV電波の存在を認識できるようになるであろう。
 想像力と、経験則がどんどんみこりんを成長させる。春になる頃には、もはや「こっちでもやってるよ!?」と驚いてくれたのを、懐かしく思うようになっていることだろう。そして私は、この日記にみこりんの成長過程をあますことなく記録し続けるのである。


2000.2.17(Thr)

お役所仕事

 今年から、私の勤務形態は劇的な変化をするはずだった。他地域の研究部門ではすでに導入されている裁量労働制が、ついにこちらの事業部でも適用されることになっていたのだ。
 勤務時間が自由に決められるという以上に、無条件にプラスされる15時間残業相当の手当に、私は多大な関心を寄せていたのである。なにしろ今は残業制限が厳しいため、15時間の残業など不可能だからだ。もちろん実績が上がれば、さらに査定で上乗せがあるため、大失敗しなければかなり大きな給料アップにつながる願ってもないチャンスであった。…ところが、……。

 今朝届いたメールによれば、裁量労働制の話は『なかったこと』になってしまったのである。ほんとうに肩が落ちてしまうほど、がっくりと脱力した。顎も落ちそうになった。『なかったこと』になった理由が、あまりに不条理に思えたからだ。
 敵は、所管の“労働基準監督署”であった。
 私が所属する事業部では、顧客の大部分が“官”である特性上、どうしても実労働時間(工数)管理が欠かせないのだ。なので、裁量労働制となっても、何時間働いたかは記録せねばならない。これが、いけないということのようだった。時間いくらではなく、成果のみで勝負する裁量労働制においては、実労働時間を把握することなど“まかりならん”というわけなんだろう。だが、別の地域の同業他社では、裁量労働制でありながら実労働時間管理も行われているので、たんにうちの地域の“労働基準監督署”のローカル・ルールのようにも思われる。法律の文面解釈の仕方が、官僚によって違うということなのだろうが、それにしてもである。損得勘定をすれば、裁量労働制のほうが我々研究職にはプラスが大きい。たとえ実労働時間が把握されようとも、よほどの天才かバカでなければ、これまでの労働時間とそう大差がつくはずもない以上、実害はあり得ないはずである。ということが、担当官には想像もつかないんだろうなぁ。

 かくして給料アップの夢は、はかなく散ってしまったのであった。はぁ…


2000.2.18(Fri)

こんな夜には

 庭の雪だるまは、いまだ健在、溶けずに踏ん張っている。雪は降っていないが、気温が相変わらず低いのだ。
 みこりんを抱っこしてクルマから降りると、寒さに思わず夜空を仰ぎ見る。氷柱でも垂れ下がってそうな、冬の夜空である。

 南西の方角、高い位置を、何かが点滅しながら横切っていく。後方に長く伸びた直線的な軌跡から、飛行機と思われた。みこりんも、それが飛行機だとわかったらしい。しきりに、自分も飛行機できるよと言い始めた。たぶん、ジャングルジムのてっぺんでやる遊びのことを言ってるのだろう。
 飛行機が西の山の彼方に消えると、みこりんは夜空に煌めく星々に興味を惹かれたようす。「いっぱぃおほしさまあるね!」と指さしている。みこりんが見ているのは、オリオン座だ。相変わらず汚れた大気なので、ぼんやりくすんだ感じの星明かりだが、みこりんは生まれてこのかたこの夜空しか知らない。今年の夏こそ、キャンプに連れ出し、降るような満天の星空を見せてやりたいと思うのだった。

ちぐはぐな研究

『地雷探知ロボット 千葉大開発、3月カンボジアへ』

 というわけで、各種ニュースでも様々に取り上げられていたのだが、なんというか複雑な思いである。これを開発した千葉大学工学部の野波健蔵教授(ロボット工学)は、純粋に科学技術で社会の役に立つのだという気概をお持ちの方なのであろう。だがしかし、『1台の製造費は約1000万円。』『6本の脚の先端にはそれぞれ超高感度の金属探知機』というあたりに、地雷探知という事の大変さを、失礼ながら本当に理解されているのだろうか?と、思わずにはいられない。
 ロボット関連の各種研究室では、この他にも似たような地雷探査ロボットがさまざまに研究されているわけなのだが、どれも移動機構ばかりに重点がおかれて(ロボットの専門家なのだから、偏重する傾向はあるのだろうが)、別に“地雷探査”と銘打たなくてもいいのではないかと思えるものが、案外多いのだ(ちなみに私は地雷探査技術のほうを研究している)。不整地用の汎用移動機構の研究は、たしかに重要なことなので、それはそれでかまわないのだけれど、安易に“地雷探知”をくっつける必要はないのではと思うのだ。

 現在、埋設地雷の探査は、人力に頼るしか手がない状況である。地雷原を破壊するための兵器は存在するが、それが用いる地雷除去の手法は、力任せの破壊であり、実際に現地の人々が困っているような地域では使えないのだ(おもに戦闘中に使用されるのが目的だから)。結局、そういう地域では金属探知機片手に、ちまちま根気のいる作業を強いられているのである。この金属探知機もくせ者で、やみくもに感度を上げれば釘やら金属屑にも反応してしまい、作業能率が著しく低下するうえ、土壌の種類によっては金属探知機が使えないこともある。さらに、非金属の地雷にはまったく歯が立たない欠点もある。今、求められているのは、金属探知機に代わる、安価で丈夫で、確実な探査方法なのである。

 それなのに、いまさら“超高感度の金属探知機”とは…。予算獲得のための方便か。地雷探知用と銘打てば、このご時世、予算は通りやすいに違いない。探査技術については、ほとんど研究していないものと推測する。
 しかも価格は1000万円。製品化されればもっと安くなるんだろうが、これを現地に持っていくのは、少々まずくはないか?地雷探査要員の給料が100ドルとかそういう地域に、日本円で1000万円ってのは、あまりに現実味がなさすぎると思う。まさかボランティアで配布するってわけにもいくまい。同じ1000万円出すなら、それこそ金属探知器を大量に購入し、現地で人を大勢雇い、地雷探査の訓練を施し、人海戦術でやってしまったほうが、数倍効果的でさえある。このロボットが金属探知機を使っている以上、ロボットであることのメリットはほとんどないような気がする。探査技術が未確立な状態で、職人技ともいえる人間の金属探知器による地雷探査の技法も使えないとあれば、やみくもに反応が出た箇所にマーキングをしまくって結局どれが“当たり”なのかわからなくなってしまいそうな予感がする。確実とはいえない探査手法を使ったエリアでは、そこがほんとうに安全である保証もない。結局人間の作業は減ることはないし、安全性が飛躍的に高まるわけでもない。

 結局、研究のための研究で、終わってしまうのではないか。ロボット工学の先生なので、移動機構は素晴らしいものなのだろうけど。いずれは、こういう無人の移動機構の出番も来るのかもしれないが、探査技術の研究と歩調を合わせる必要は、あると思う。記事中のコメントによれば、「ロボットで地雷の位置さえ特定できれば、除去作業の安全性もスピードも飛躍的に高まる。」と述べておられるのだが、思わず「その、位置を特定する探査技術が難しいんですけど」とツッコミ入れたくなるのだ。高感度の金属探知機では、ノイズに混じった地雷の位置を明瞭に特定することは難しい。経験を積んだ人間ならば、そのロボットが安全と宣言したエリアであっても信用できないにちがいないし、実際、安全とは言い難い。

 金属探知機に代わる新たな探査方法ということならば、JAHDS (人道目的の地雷除去支援の会)が保有している『マイン・アイ』(開発はGEO SEARCH)などに代表される地中探査レーダーや、音響センサ、磁気センサなど、さまざまなものが研究中である。それらとどうして連携できないのだろう。金属探知機でお茶を濁すより、ずっと大切なことだと思うのだけど(地中レーダーも装備していることが後日判明したが、地雷探査用というわけではなく、民生品だった−つまり対人地雷のようなものは想定外−。センサは、信号処理の性能も重要なのだ。その部分がすっかり抜け落ちているような気がする)。


2000.2.19(Sat)

くねくね獅子

 休日の朝は、みこりん早起きである。8時には私も起こされてしまった。寝たのが夜明け前だったので、全然寝足りないのだが、今日は保育園で“劇ごっこを見る会”が開催される。今年こそ、見に行かねばなるまい。
 去年は、平日に開かれたのでLicだけが見てきた。私はLicが撮影したビデオ映像で知るだけだ。ぜひ、生で見てみたい。みこりんは、はたしてうまく“劇”をやれるだろうか。「ちゃんとできるよ」なんてみこりんは言ってるけれど。

 みこりんのクラスは最初に登場する。保育園でも最年少の1歳児クラスなので(でもみこりんは2歳)、劇といっても名前を呼ばれたら返事するとか、先生と一緒に歌を歌ったり踊ったりと、普段の保育の様子を再現するものである。このあたりのコンセプトは去年とほぼ同じ。
 先生が、一人一人、名前を呼んでいく。「はーぃ!」と元気に手を挙げる子、恥ずかしそうにうつむいてる子、我関せずと“虚空”に目を凝らしている子、など、さまざまであるが、みこりんはどうか。去年は、うまくお返事できなかったが…。ついにみこりんの番が来た。き、緊張の一瞬だ。
 さっと手を挙げるみこりん。おぉぉ、やったぞみこりん。声は小さくて聞こえなかったが、格段の進歩である。なにより、今年は舞台の真ん中に陣取っているのだ。気合いの入り方が違っていた。

 みこりん達が退場してしまうと、今日の予定はとりあえず終了。そのまま帰ってもいいのだが(お昼ごろ、また迎えにくればよい)、“可愛い”と評判の先生のクラスを見ていってもいいかなと思ったので、居残ることにした。土曜ということもあってか、去年よりは見に来ている保護者の数も多いらしい。でも、運動会の時ほどカメラの砲列はなかった。大型のストロボとか、それなりの望遠レンズとか、野外撮影以上に装備を要求されるからだろうか。
 さて、肝心の“可愛い”先生は、今年、大きい組さんを担当している。ゆえに、小さい組さんのように、先生も一緒に登場することはなかったのだった。ありゃりゃ。それにしても大きい組さんともなると、台詞もしっかり覚えてるし、ちゃんとストーリーもできていたりして、わずか2〜3歳の違いでこうも成長するものかと、改めて驚くのだった。

 園児達の劇が終わると、地元の獅子舞保存会のみなさんによる獅子舞が披露された。この地方の獅子舞を見たのは今日が初めてだったのだが、私の記憶にあるどんな獅子舞とも違っていて、興味深かった。立ち姿勢が基本らしく、獅子頭をかぶった一人だけが舞うのである。動きは、まるで日本舞踊のように滑らかでどことなく女の雰囲気を漂わせている。なよなよくねくね獅子が動くのだ。カルチャーショックである。獅子舞といえば、激しい男の舞踏と思っていた私の既成概念が、がらがらと崩れてゆく。
 この獅子は、両手を添え、羽織った布きれをその手に巻き付けて、くるくるくるくる回していた。異様な感じがした。ある意味、恐い。もし子供の頃、この獅子舞を見たとしたら、きっと夢に見たに違いない。獅子というより、宇宙人の奇怪な舞いのようにも見える。あの手の動きには、どんな意味があるのだろう。猛烈に好奇心がうずいた。

 私の記憶にある獅子舞で、これまでもっとも異彩を放っていたのが香川県のとある神社で奉納される“大獅子”だ。獅子頭は、高さ、幅ともに2m以上という巨大サイズである。これを大人数十人でかつぐのだ。胴体の長さもハンパではなかった。100mはあったろうか。境内に向かって、こいつがゆるゆると進んでくるさまは、迫力満点。大きいということは、それだけで畏怖の念を抱かせるに十分なのだが、この獅子は夫婦で登場する。やや小振りとはいえ、それでも1mを越える獅子頭を持つもう1体が、そろって動くのだ。作り物であるはずなのに、“命”を感じてしまった。
 今日の“くねくねする獅子”は、大獅子に匹敵するインパクトで私の脳裡に焼き付いてしまった。“祭り”というキーワードが出るたび、突如としてくねくね獅子が思い浮かんでしまうに違いない…。あぁ、それにしてもだ。くねくねする獅子を、美麗なお姉さんではなく、おっちゃんがやってたのだけが心残りである。

『ORGANIC』

 午後は死んだように寝て過ごした。眠い。眠すぎる。みこりんが布団で寝ようと言ってくれたのだが、起きあがることもできず、そのままコタツで寝てしまった。だからだろうか、夕方起きてみると、ひっきりなしに寒気が襲い、じんじんと頭が痛んだ。し、しまった、風邪ひいたかも…。

 頭痛薬を飲んで、お買い物に出かける。今日はみこりんの強い要望で、マーゴに決定。何を買うのかと聞けば、「はんばーぐ!それから、ポテトとジュース」と言う。みこりんにとって、マクドナルドのハンバーガーはたまらなく魅力的な食い物なのだろう。ちょっとまえまで、ピクルスとカラシのついたハンバーガーは食べられなかったのに、いつのまにか半分以上食べてしまえるようになってるし…。
 それにしてもセット価格で360円というのは安い。平日ならば、さらにハンバーガーは半額。これで利益が出てるのが不思議なくらい。

 腹が膨れたら、今日もちょこっと絵を売ってるとこに立ち寄ってみた。内田新哉の作品は、やはり私とLicの感性に合致するらしい。つい見入ってしまうのだった。2〜3000円の小さなポスターは、お手軽で良いのだが、やはり大判のリソグラフの質感は素晴らしい。だが、私の気に入ったのは値札が50000円であった。衝動買いするには、値が張りすぎだ。Licも気に入ったのが見つかったらしい。『ORGANIC』と題されたそれは、田園を流れる南風が見えるような、そんな風景画であった。冬には、やや季節外れだが、大量生産品ではないことが今日買っておこうと決心させたのだった。明日には手に入らないかも知れないのだ。値段も1万ちょいと、さきほどの5万に比べれば手頃だし。

 早くも夏のボーナスを先取りしてしまったが、この絵のように、今年育てる野菜達が豊作になりますようにと願いつつ。

ティガ&ダイナ&ガイア

 みこりんが「てぃが、みる」というので、金曜日借りてきていた映画版『ティガ&ダイナ&ガイア』を見た。ガイアが登場すると、みこりんはガチャポンで獲ってきたウルトラマン・エースを持ってきて、「いっしょ!いっしょ!」と楽しそう。で、両腕を直角に構えて「しーーーーー」と、なにかの光線を打ったりしている。この構えはセブンのワイドショットであろう。スペシウム光線ではなく、ワイドショットなところに、みこりんのこだわりを見た思いである。

 だが、みこりんの集中力も、最初の10分が限度だった。あとはブロックで遊んだり、ミニカーで遊んだり。でも、以前に比べるとずっと物語を楽しんでいるような気がする。男の子が出てくるのがよかったのかな。台詞の意味も、だいぶ理解できるようになってきてるようだし。
 でもみこりん、ティガなんてTVで一度も見たことないのに、どうしてあれほど「みたい」と主張したのだろう。保育園でお友達に聞いてくるんだろうか。ワイドショットの構えを知ってるのも、謎だ。私がみこりんに「ウルトラマン」してやるときは、エメリウム光線か、スペシウム光線なのだが。先日の大魔人の件といい、ますます先生の中に特撮好きがいる疑いが濃厚である。


2000.2.20(Sun)

“血”

 雪解け水で、庭(花壇以外)は泥沼状態だった。水はけの悪いこと悪いこと。雪だるまだけは、まだかろうじて立っていたのだが、みこりんによって頭と胴体に二分割されてしまい、頭部はお昼までには消えてしまった。胴体の運命も、風前の灯火である。

 去年、Licが作ってやった雪だるまを、みこりんはとても怖がっていた。目と口がついたら、それこそ火がついたように泣いたものである。それほど“可愛くない”雪だるまであった。だが、今年みこりんは雪だるまを怖がらない。Licの腕前が上がったのか、雪だるまの顔は、去年とは比べモノにならないほど整っていたのだ。この調子ならば、来年あたり雪の彫刻でも立っていそうな雰囲気である。楽しみ楽しみ。

 今週みこりんは、キティちゃんのお医者さんセットでよく遊んでいる。最近、使ってなかったので飽きたのかと思っていたのだが。
 今日は私の腕についた“にゃんちのひっかき傷”が診察対象だった。昨夜は、にゃんちが何かにびっくりして腕から飛び降りた際、かなり深く爪でやられてしまったのだ。深い部分で血管を刺されて、内出血してたりもする。でも、みこりんは血の瘡蓋が気になっているのだ。
 最近、みこりんは“血”というキーワードによく惹かれているらしい。Licがおろし金で指をすり下ろしそうになって血が出たとか、私がひげ剃りに失敗して口元血まみれにしてたりすることが多かったからかもしれないが、体の内側から溢れ出てくる真っ赤な血というものが、不思議でならないのだろう。人体模型か骨格標本を買ってやろうかと思ったりもする昨今である。

 みこりんの治療は、傷口の真上に注射器で“ちぅぅぅぅ”してくれるもので、かなりスリリングである。「いたい?ここ、いたい?」と言いながら、瘡蓋表面をざざざざぁっとさすられると、それだけで「おぅぅ〜」と声が出てしまうのだった。優れた拷問吏には女性が多いと聞いたことがあるような気がするが、これも性差の1つなんだろうか…。
 みこりんの好奇心を満たしてやってから、午後はちょろっとお買い物。古本屋で『Dr.モードリッド』含む4冊を売却。1冊60円也。思ったより高く売れた。

問答

 お風呂にて。みこりんに「お風呂に顔つけてごらん」と迫っていると、最初「できん〜」などと言ってたみこりんだが、そのうち「みこりん、おかおつけれる」ときた。おぉ!ではさっそくやってごらんと思った直後、「プールで」と、ささっと付け足すみこりん。こっこやつ、できるな…。


2000.2.21(Mon)

想像力

 忘れないうちに書いておこう。昨日、海水魚水槽の水換えをしていたときのことだ。
 水槽から抜いた古い海水をバケツに入れてあったのだが、みこりんが興味津々で手をつっこもうと狙っていた。こういう水ものが、ことのほか好きなのだ。きっとばしゃばしゃしたいに違いない。だが、古い海水はかなり汚れていて、そんなことされたらばっちいこと極まりない。なので「おてて入れちゃだめだよ」と何度か念を押していたのだが…。

 私の隙をついて、ささっとみこりんが手を突っ込んだのが見えた。いちおうみこりんなりに、見つからないように気をつけてチャレンジしたらしい。私が振り向くと、平静を装っていたりする。そこで私はこう言ってみたのである。「みこりんはイイ子やからバケツに手つっこんでないやろうけど、この水はな、恐いんやで。さわったら、手ぇが溶けてくるでぇ。血ぃもいぃっぱい出てくるで。さわってないよね?みこりん。もしさわってたら、早めに手、洗ったほうがええよぉ」

 さて、みこりんはどうしただろうか。大急ぎで手を洗いに行ったかといえば、そうではなかった。バケツで作業している私に向かって、「おとーさん、おててだいじょうぶ?血でてない?」と心配してくれるのである。大人は丈夫なので簡単には溶けないのだと答えてやったら、みこりんはなんだか落ち着きがなくなってしまった。自分の手のことが気になってきたのだろうか。所在なげにバケツの縁に手をかけてみたり、コツコツ叩いてみたりしてる。そして、バケツにつっこまれた私の手をじぃっと見たかと思うと、たたたたっと何処かへ消えてしまった。みこりんが手を洗いに行ったのかどうかは、わからない。わからないが、言葉の理解力と想像力の成長著しいみこりんには、こうした新しい“言いつけ手法”も通用するようになったことは間違いないようである。

『ケイゾク』

 この1、2年は、地上波のドラマをほとんど見てなかったのだが、先週たまたま深夜の再放送で『ケイゾク』がどんなものなのか知ってしまった。内容の面白さとか、そういう本質的なものはおいといて、私は中谷美紀に弱い。“日石わーきれいガソリン”で踊ってたときから、特別だった。なので先週、みこりんの『てぃが』と一緒に『ケイゾク』の1巻を借りてきたのである。
 その日のうちに通しで見たのだが、こういうお話はぜひともLicと一緒に見たい。一人でツッコミ&推理するのは悔しすぎる。だがLicは土曜、日曜と、みこりんを寝かしつけると一緒に朝まで寝てしまっていたので、果たせなかった。
 ところがついに今夜、Licは睡魔に負けなかったのだ。3話続けて鑑賞。うーん、まんだむ。


2000.2.22(Tue)

『名古屋・熱田神宮近くの川に「シャチ」現れる』

『名古屋・熱田神宮近くの川に「シャチ」現れる』

 河口から4キロ遡った市街地の川に、シャチらしき生物が泳いでいるのが発見されたというのだ。なんだか無性に血が騒いでしまう。UMAなどではなく、ほぼシャチに間違いないのだが、それでも本来“川”にいない巨大生物が、川を泳いでたというのはスリリングである。

 子供の頃、川のそばを通りかかるたび、『何かを期待して』川面を見つめることが多かった。そのころ学級文庫で読んだ“謎の生物”特集も、多大に影響していたと思われる。首の長いやつとか、巨大なヘビみたいなやつとか。そういうのが、いまにも川の中をゆらぁと泳いでいるのではないかと、覗き込んでしまうのであった。体長1mクラスの鯉などに驚かされることはあったが、結局、今まで何か特別なモノを見ることなく過ぎてしまった。

 この夏、長良川や木曽川で、何を見つけることが出来るだろう。生シャチに出会えるなんて機会はたぶんなさそうだが、この先もずっと、川面が気になっては覗き込む癖は直りそうにないような気がする。


2000.2.23(Wed)

真夜中の料理

 もはや今朝といっても過言ではない時刻、私はまだリビングで活動していた。寝る機会を逸してしまったのである。再び睡魔の到来を心待ちにしていたのだが、どこで油を売ってるのやら姿が見えない。しょうがないので洗濯したり、掃除したり、片づけたりと、家事などやってみたりして。

 ふとサイドボードの上に、大根がほぼ丸ごと転がっているのが気になった。たしか数日前からそこにあったような気もするが、はやくも表皮が“しなしな”になりつつある。老人の腕のような感じで、ごろんと大根が転がっているさまは、夜中に見るとなんだか恐い。視界から消す手っ取り早い方法は、料理してしまうことだ。Lic愛用のシャトル・シェフ(驚異的な保温力で、最初の加熱以降の火力が不要な魔法の鍋)の出番である。

 “でこん汁”。こいつを作ろう。作り方はいたって簡単。分厚く輪切りにして、皮をむき、あとはダシ汁で煮込むだけ。シャトル・シェフ向きの料理といえる。皮をむいたあと、面取りしようか一瞬迷ったが、ダイナミックに食いたいのでそのまま鍋に入れることにした。やはり“でこん汁”は装飾の一切ない、原始的料理として味わいたい。
 ところでこの“でこん汁”という名称に惹かれたのは、むかーしむかしの『まんが日本昔話』にまで遡る。小学生だったか中学生だったかのころ、あるお話の中で、貧しい老夫婦が“でこん汁”をひたすら食う場面があったのだ。
 米が買えないので、畑でとれた大根だけが生きる糧という背景事情は、いかにもわかりやすかったのだが、画面で“でこん汁”をうまそうに食ってる描写はおそろしいほど生々しかった。汁をかきまわす音、そして咀嚼音、聞いてるだけで自分も“でこん汁”を囲んでいるかのような錯覚を覚えるほどだった。あの日から、私にとって“でこん汁”は特別な食い物となったのだった。

 シャトル・シェフが、ぽこぽこ気持ちいい音をたてはじめたようである。醤油とみりんで味付けして、再沸騰。そして火を止め、保温器の中へ挿入しておしまい。今夜のおかずは“でこん汁”。おいしいおいしい“でこん汁”。
 ところが朝、Licが不服そうであった。大根には使い道があったのだ。し、しまった…
 あ、畑で聖護院大根がそろそろ収穫時ではないかな?Lic用には、とれたての大根をあげよう。


2000.2.24(Thr)

意外な再会

 「パパゼリー食べる?」とLicに言われたのが、昨日の夜のこと。Licは私を“パパ”とは呼ばないので、“パパゼリー”という食い物を食べるか否かと問われているわけだ。保育園でサンプルを貰ってきたらしい。
 みこりん用のお菓子のことだろうと思って、すぐには手を出さなかったのだが、改めてその形状を見て私は……、「か、肝油ドロップやんか!」と、即座に小袋から取り出したのであった。まさしくそれは『肝油ドロップ』、に見える。糖衣錠のような姿で、表面に砂糖(?)がまぶしてあり、適度に弾力があるという特性は、まさに『肝油ドロップ』そのものではないのか。なぜこれが『パパゼリー』なのか。パパゼリーとは、いったい何者か。疑問をはらすべく、添付されていた説明書に目を凝らした。

 羅列されていたのは各種ビタミン類であった。はたして肝油ドロップの成分がどうであったか、私は残念ながら覚えていない。だが、少しだけ期待していたのだ。『肝油ドロップ』には肝油が含まれているのではなかったかと。あぁしかし、大昔の肝油ドロップには確かに肝油が使われていたらしいが、私が子供の時分にはすでに肝油は入っていなかったとかいうかすかな記憶があったりもし。もはや、こうなっては“食ってみる”しかあるまい。舌の記憶を呼び覚ますのだ。

 試供品は1個しか入っていない。ここは慎重にいかねばなるまい。激情にまかせて、一気に食ってしまってはいかんのだ。そろぉっと、そろぉっと『パパゼリー』をつまみ上げ、舌先に乗せてみる。ん〜、微妙に甘い。『肝油ドロップ』との類似率34%…。
 では次に、噛んでみよう。半分からやや前よりを、前歯で両断。歯にもったりとくっつくこの感触は・・・類似率76%…。
 心を鎮めて、ゆるやかに噛みしめてみた。思わず両の目を閉じてしまうノスタルジィな味覚への刺激。んぅ〜、類似率99.9999%…。

 Licは『肝油ドロップ』を見たことがないと言う。私が導き出した結論は、はたして正しいのか間違っているのか、このままでは決着が付きそうにない。そこで困ったときのサーチエンジンである。どうやら試供品の『パパゼリー』と、『肝油ドロップ』は同じモノらしいことが複数の情報から確認できたのである。そうだったのか。肝油ドロップは、現代において、『パパゼリー』と名を変え、生き残っていたのだな。私は己の味覚の記憶が正しかったことに満足した。…しかし、1つだけわからないことがある。それは、なぜ『パパ』の『ゼリー』なのか?ということだ。“パパ=父親”を連想してしまうので、なにやら妙な感じである。別の意味に使ってるのだろうか。どうせなら『キッズゼリー』のほうが…、などと思ってしまうのだが、真相はどうなのだろう。

肺活量

 ほとんどの幼児がそうであるように、みこりんもまた風船が大好きである。お店のキャンペーンなどで風船を配っていると、必ず寄り道して貰ってくるし、ディスプレイ用に飾ってある風船にも、その熱い視線を注ぐことによって店員さんにアピールする(獲得率約8割)。そんなみこりんが、膨らんでいない風船に対しても興味を示すようになったのは、いまから半年ほどまえだったと思う。もちろんまだ、自力で膨らませることはできなかったのだが。

 先日、じじばばがやって来たときも、みこりんは風船セットを買って貰っていた。大事にプラケースにしまっていて、宝物になっているようす。2〜3日に一度は、私かLicに膨らませてもらって満足していたようである。
 今夜は私が膨らます係だった。一気に息を吹き込むと、みこりんはたいそう喜んでくれた。そのうち、自分でもやってみたくなったらしい。ちっちゃなほっぺを、ぱんぱんにして「ぶーーーーー」。
 まだ上手に息を調節できていないようだ。唇から、かなり空気が漏れている。それでも果敢に挑戦するみこりんである。私が手本を示すように、もう1個の風船を膨らましてやると、横目でちらちら見ながら、さらに「ぶぅぅーーー」。うーん、惜しい。最初のとっかかりを越えさえすれば、かなりイイ線いきそうな感じなのだが。

 そこで私が膨らまし中の風船を、みこりんの口にさしてやった。これなら最初の関門を突破する必要がないので、みこりんでも大丈夫ではないかと思ったのだ。しかし、なかなかタイミングを合わせるのが難しいみたいで、風船から逆流してくる空気にびっくりしていた。意外に逆流するのも面白かったようで、これまたたいそう受けてくれたのだった。
 そうやって遊ぶこと5〜6分。だんだんコツを覚えてきたようである。なんと最初の一息で、風船が軽く膨らむようになってきたのだ。さすが幼児の頭脳は覚えがよい。

 「すごいぞ、みこりん!」と誉めてやれば、「かーさんにみせてくる!」と、かけてくみこりん。うれしくてしょうがないらしい。この調子だと、いずれ自力で最後まで膨らますことができるようになるだろう。
 それにしても驚いたのが、みこりんの肺活量である。ほとんど息継ぎなしで、何度も何度も風船に息を吹き込むことができたのだ。私がそんなことをすれば、たちまち酸欠で倒れるかもしれない。みこりんの思わぬ特技を発見したかも。


2000.2.25(Fri)

意外に強かった

 保育園で、みこりんのクラスでは今日、お相撲大会だったらしい。家では、相撲系の遊びをやったことがないので、みこりんが“2位”だったと聞いても、にわかには信じられなかった。

 全部で10人ほどの中で2位なのだが、みこりんが格闘している様子はいったいどんなだったのだろう。ぜひ見てみたいものである。おとなしそうでいて、けっこう気の強いところがあるみこりんだから、派手に“ぶちかまし”とかやったんではなかろうか。

 みこりんに習い事をさせるとしたら、やはり『語学』『音楽』『格闘技』の3本は外せないと思っているのだが、『格闘技』をどうやってみこりんに興味を持たせるかが課題であった。案外みこりん、『格闘技』をすんなり受け入れてくれたりして。


2000.2.26(Sat)

“目鼻口”

 起きてみれば、すでにお日様は南中高度にある時刻。夜更かしがたたってしまったか。でも、なんだか天気はご機嫌斜めである。しかも、猛烈に寒い。2月も、もう終わろうかというのに、雪でも降るんじゃないか?なんて思っていたら、午後からほんとうに雪が降ってきてしまった。みこりんが何度も雪を見に行っては、はしゃいでいるようす。どんどん景色がモノクロームに変化してゆくのが、みこりんには面白いらしい。

 Licによれば、みこりんがお昼頃、神様に「ゆきをふらしてください」とお願いしたのだという。ちょうどTVで北海道の雪景色が映ったので、思いついたのだろう。みこりんがお天道様と交信できるのならば、ぜひ今年の夏は梅雨を早めに切り上げるようにお願いしておかねば。

 私が寝ている間に、届け物があったらしい。リビングにどでかい箱が置いてある。開けてみると、まさしくそれは『額』であった。申し込んでおいた『おおた慶文カレンダー』用の額が、ようやく到着したのだ。さっそく保管しておいた表紙絵を装着し、どこに掛けようかと迷った末に階段の折り返し点の壁に決めた。ここだと西日にも当たらないし具合が良い。

 昼下がり、みこりんがコタツでお絵かきしている。何を描いているのかと、ちらと覗いてみたところ、なんだか違和感があった。いつものみこりんの絵にしては、どうもヘンなのだ。大きな丸の中に描かれている2つの点は、いったい何だ?しかもその下には、ちょろっと“口のような”線もあるし…、って、それもしかして“目鼻口”!?

 みこりん自ら、「これは“おさかな”のえである」「これは“め”である」と主張しているので、間違いあるまい。ついにみこりんが“目鼻口”を描くようになったのか…。いま、私は猛烈に感動している。す、すばらしぃ。このように、幼児の能力はある日突然レベルアップするので、油断できないのだ。徐々に、ではなく、いきなり『ぽんっ』。見逃さないようにしておかねば。


2000.2.27(Sun)

最後の新聞紙

 一転して、今朝は太陽が輝いてみえる。庭の植物達を見回っていても、その陽気に誘われて、花芽でも動き出しそうな気配である。花桃やコブシの蕾を、デジカメで激写しておく。今年は、まともに生長記録でもつけようかと思っているのだ。己の記憶力に、だんだん自信がなくなってきたというのも理由の1つ。みこりんの覚えの良さと、柔軟さを見ていると、まったくもって自信喪失である。

 サンルームで、ピーコが水浴びしているのを発見。今日は天気もいいことだし、鳥かごの掃除をすることにした。と、ここで問題発覚。我が家では2年ほど前から“紙媒体”での新聞を取っていないのだ。ゆえに、下に敷く“紙”が、我が家にはない。これまでは、たまに投げ入れられるサンプル紙をストックしておいて使ってきたのだが、それも前回で使い切ってしまっていた…。どこかに置き忘れはなかったろうか。我が家の隅々の映像を、脳内で再現しつつ検索開始。最近、部屋の片づけに力を入れていたのでデータは新鮮だ。そのおかげで、見つけることができた。2階の物置と貸している“将来の”子供部屋に、たしか新聞一束が置いてあったはず。さっそく取りに向かった。

 黄ばんでいい感じに匂っている日経新聞が、たしかにその部屋に放置されていた。助かった。これであと数カ月は大丈夫だ。一面を含む1枚を慎重に剥いで、階段を降りる。そこを、みこりんに見つかってしまった。
 「あ!!ぴーちゃんのおそうじするの??」おそるべき連想力である。もしかするとみこりんは、“新聞紙とはピーコの掃除に使うもの”と覚えているのかもしれん。家で新聞紙を広げて読んでいないのだから、そう思ったとしても不思議ではあるまい。

 助手みこりんは、よく働いてくれた。掃除道具を出してくれた上に(片づけるのは、まだ難しいようだが)、自らホースを持って水洗いをしてくれるのだった。受け皿部分を外した鳥かごは、そのまま地面に置いてある。ここぞとピーコが地表に降り立ち、雑草やら小石やらをついばみ始めた。それを見たみこりんが、疑問を口にする。あきらかに食べ物でない物体を食べているのだ。驚くのも無理はない。みこりんも“食べ物”と“食べられないモノ”との区別が、ようやく明確になってきたのだろうか。鉢植えの白菜“ポチ”を1枚採ってきて、ピーコの“菜っぱ入れ”にさしてやった。これはみこりんも食べる葉っぱなので、納得しているようす。
 そしてお昼の時報が鳴るまで、庭でみこりんとチューリップに水をやったり、タマネギを観察したりして遊んだのだった。

古いもの

 午後、淡水魚の水槽をお掃除。それが終わったら、いよいよ本日の“メイン・イベント”開始である。

 『2階セクション、開かずの間』。いつのころからか、我が家にはそう呼ばれる場所が存在している。2階部分の中央に位置したそこは、いずれ“子供部屋2号”となるべき場所である。だが今は、まるで時が止まったかのように静止しているのだった。

 みこりんが生まれる前には、Licが産休中の在宅勤務に利用していたこともあるのだが、復帰してからはほとんど人の出入りがなくなってしまった。あとに残されたのは、主の帰りをじっと待つアイロン台。洗濯物。転んだままの衣装棚。そして数々のLicの思い出の品とともに、本が積まれているだけであった。
 それも今日で終わる。私は、Licがくれたエプロン(最近、愛用している)を装着し、ホコリの浮いたフローリングへと足を踏み入れたのだった。

 私は奇妙なモノを見つけていた。それは、アイロン台に掛けられ、準備万端整った状態で放置された布オムツである。まるでちょっと用事を思いついて出かけたまま、主が戻ってこなかったような、そんな状況であった。なぜ“たたまれて”いないのか?どうして途中で終わっているのか?これではまるで、Licがアイロン掛けの途中に、失踪したかのようでさえある。……、まさか。

 まさかLicはあの日、ほんとうに消えてしまったのではあるまいか。今いるLicは、精巧にコピーされた探査用プローブだったりはしないか。おぉそういえば思い当たるぞ。みこりんが生まれてしばらくたってから、急にLicが眼鏡をかけなくなったではないか!?視力検査表の一番上しか見えないはずのLicが、どうして眼鏡なしで生活できているのか……。部屋の温度が急に2〜3度、下がったような気がした。ぞわぞわと、胸の奥でなにかが囁いている。いけない、耳を貸してはいけない。真実を知ってしまってはいけない。
 などとSFに興じながら、黙々と作業を進めるのであった。

 いったん夕食をとり、Licとみこりんがお風呂に入っている間に作業を再開。ほどなくして、部屋の中はあらかた片づいた。モノを分類しなおして隣の“子供部屋一号”に運び込んだだけなのだが、それでも分類されているのといないのとでは大違いである。これで“2階セクション、開かずの間”は消滅した。いつ第二子が誕生しても、慌てることはない。

 続けて今度は、寝室の押入整理だ。ここには私の箱がある。この家に越してきたとき、引っ越し荷物としてまとめたままの姿で、そこにある。おもに“大学〜就職して数年間”時期の品が入っているのだが、改めて引っぱり出してみると、ほとんどが燃えるゴミか荒ゴミであった。どうしてこんなものを後生大事に保存していたのか、さっぱりわからない。ぽぽぽいのぽいだ。

 ただ1つ、例外があった。名刺大の“YAMAHA”のワッペンだ。白地に赤く縁取りがあり、“YAMAHA”のロゴが黒く描かれているありきたりのもの。初めてバイクでこけたとき、ジーンズの膝が破れてしまった。それを、こいつで塞いだのが最初だ。以来、卒業するまでずっと私はそのジーンズを愛用し、あらゆるシーンで一緒だった。バイクのほうは、もはやこの国にない。仕舞っておこう、これだけは。
 空いた空間には、今月始めに届いた押入収納BOX(本棚)を入れた。さっそくみこりんが一緒に入って遊び始めた。お風呂から上がったばかりだというのに……。ま、いいか。押入で遊べるのも、ちっこい今のうちだけだし。押入収納BOX4つのうち、はやくも2つが埋まってしまった。残りは2つ。まだまだ本は沸いてくる。なんとかせねば。


2000.2.28(Mon)

体力勝負

 朝起きると、腕と脇腹、背筋、そして腰、太股が筋肉痛になっていることに気が付いた。まるで激しい全身運動をしたあとのような…。思い当たることがある。みこりんだ。昨夜、みこりんは何度も何度も“高い高い”を求めてきた。普通の“高い高い”ではない。天井に頭突きをくらわすほど放り投げられるタイプの、“ハイパー高い高い”である。放り上げて、落下してくるのを受け止めるだけだが、体重11kgのみこりん相手に、20〜30回と、際限なくそんなことをしていれば、筋肉痛にもなろう。普段力仕事をしてないのだから、てきめんである。

 ずっと抱っこするのには慣れた。あれにはコツがあるのだ。効果的に腰を入れて、無理な力を入れなければ、かなりの時間、抱っこしていても平気になった。だが、“ハイパー高い高い”のような、瞬発力と持久力の両方を要求される筋力は、基本的な筋肉量の増大と、太く逞しい筋繊維への転換が欠かせない。これからみこりんはもっともっと大きくなる。鍛えねば。さっそく今日から腕立て腹筋ヒンズースクワットだ。

 ところで今夜の夕ご飯は、みこりんがいっぱいお手伝いしてくれたという。ニンジンの皮むきに始まって、大根の皮むき、こんにゃくを細かくちぎるなど、多彩にこなしてくれたもよう。しきりと包丁を使いたそうなそぶりを見せたらしい。3歳の誕生日を迎える頃には、包丁を触らせてみてもいいかなと思う。何ごとも経験だ。


2000.2.29(Tue)

成長の印

 昨夜0時過ぎ、PCの前に座っていると、電話の呼び出し音が小さく響いた。内線である。子機からの呼び出しだった。
 受話器をとると、Licがみこりんの不調を告げた。足が痛いといって起きだしたというのだ。さっそく2階の寝室へと向かう。

 みこりんはさめざめと泣いていた。一時間前からそうなのだという。ちょこんと布団に座って、ときおり痛いと訴えている。どこが痛いのか聞いてみたが、なかなか要領を得ない。仕方がないので、足をさすってやって、異常がないか調べてみたのだが、これといって変わった点は見あたらなかった。
 そのうちやっと、左足が痛いことがみこりんの口から告げられた。左足…。ぷにぷにと触ってみても、腫れているとか、窪んでいるとか、熱をもってるとか、冷たいとか、そういう異常はなさそうである。困った。異常はないけど、痛いと言ってるのだからどこかがおかしいはずなのに。

 そのうちみこりんが、痛い部位を指さすことができるようになった。どうやら足の甲から足首にかけてらしい。目を見開いてチェックしたが、やはり変わったところは見つからない。少し赤黒っぽい箇所があったが、右足と比較した結果、ただの血管であることがわかった。

 Licが「成長痛かも?」と言う。育ち盛りの子供に、急激な骨の伸びで関節や筋肉、皮膚などがひきつれて発生する痛みである。足の膝に、よく症状が出るようだが、足首にも発生するのだろうか。わからないが、とにかくしばらくさすってやることにした。

 だんだんみこりんの痛みも薄らいできたらしい。私の寒いギャグで受けてくれるようにもなった。少し安堵する。ダメ押しで、冷えぴたシートを貼ってやることにした。目に見える処置がされることで、精神的に痛みを克服できるかも?と期待して。

 そして今朝、みこりんは何事もなかったように、目を覚ましたのだった。やはり成長痛だったのかもしれない。

閏年

 今日の日付で問題を起こすようなソフトウェアって、閏年の判定ロジックがそもそも組み込まれていないのではなかろうか?“400年に一度の特異点だから”なんて理由じゃなくて。
 閏年の判定ロジックは周知の通り、3つの条件からなる。

  1. 4で割り切れる年
  2. でも100で割り切れたら違う
  3. しかしながら400で割り切れれば閏年

 もし今日、誤作動するとすれば、この条件のうち2番までを適用している必要がある。いかにも不自然だ。古い組込み系ソフトウェアならば、やっつけ仕事で当面は問題の出ない条件1までを適用している可能性はある。これならば2000年になろうとも誤作動することはない。誤作動するもっとも早い年で、2100年である。じつに合理的な省略法といえる。
 ところが条件2までしか適用していない場合、条件3を省略した動機付けに乏しい。条件2が有効なのは、もっとも近い該当年で1900年か2100年なのだ。こんな中途半端な省略方法もあるまい。現実的にはほとんど意味がないのだから。そんな100年単位で考慮しなければならないソフトならば、2000年対応に必要な条件3は避けて通れないはずである。というか条件2だけを追加する意味がない。

 つまり条件2を適用する以上、条件3まで含めているはずで、実質的に条件1だけでも世紀をまたがる日数計算の必要な天文シミュレータのような特殊なものでない限り問題とならないことから考えても、今日誤作動すると言われるような条件のソフトウェアは、“常識的”にあり得ないのだ。
 もしあったとしたら、それはもとから閏年の判定ロジックが組み込まれていないか(あるいは判定ロジックを使わない方法で閏年を設定し、それに不具合があったか)、条件2までしか知らない奇特なプログラマによって組まれたソフトウェアってことになる。
 もっとも、後者はほとんど存在確率が無視できると思われるので、実際にはほとんどが前者の“閏年判定ロジックが組み込まれていないソフト”が問題となるはずである(判定ロジックを使わないタイプだと、内蔵カレンダーの設定にミスがあった例は、すでに発覚している)。

 ならば、それは別に今年に限った話ではない。“400年に一度の特殊な条件だから誤作動する”なんていうマスコミが大好きな理由は、まさに笑止千万。まったく、誰が言い出したのやら。
 おぉそうだ、もう1つ誤作動する条件があった。Y2K問題対策がいまだされておらず(年号を2桁処理のまま)、なおかつ閏年判定ロジックは完璧に実装されている場合だ。今日を1900年2月29日と見なすから、閏年判定ロジックでは閏年ではなく、平年として処理してしまう。すると29日ってのはあり得ない値だから、はたしてどんな結果になるかは未知数…。うーん、こっちのほうがありそうだ。

 で、実際問題、気象庁のアメダスがなにやら今日の日付を2月1日と誤認識して、1日のデータを送信してきたようである。妙な挙動だが、なんとなく最後にあげた誤作動の原因っぽい予感。


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