2003.1.1(Wed)

謹賀新年

 ゆったりと目覚め、新年の空気を味わう。木星からの生中継はなかったが、たぶんあと5年もすれば、火星からの有人放送はあるかもしれない。
 おだやかな2003年の始まり。

 年賀状チェック中に、青いリボンのシールが貼られたものを一枚発見。学生時代の友人からのものだった。
 青いリボンは、もちろん言うまでもなく北朝鮮に拉致られたままの家族の帰還を願うもの。うかつだった。こういうシールが存在していることは容易に想像できたはずなのに、入手しそこねていたとは。それにしてもさすがにヤツらしいと、遠き友に思いを馳せる。

 *

 初詣にて、親子三人並んで柏手を打ち、合掌。みこりんも何やら真剣にお願いしているようである。いったい何を願ったのだろう。気になったので教えてもらおうと思ったが、「ひみつー」とちっちゃな声で言われてしまった。む、むぅ〜
 でも、あとでこっそり教えてもらえたので、まだまだ安心。


2003.1.2(Thr)

冷たい土に穴を掘る

 冬休みも残すところあと三日。今日を入れても四日しかない。そろそろ花壇の整理でもしようと、庭に出た。むき出しの皮膚に、冷気が容赦なく襲い来る。雪が降ってもおかしくないほどに、寒い。

 長靴と軍手を装着し、クワを片手にまずは軽く“耕し”から。庭の東隅を、これまで第三の菜園として利用してきたが、そこへのアクセスが少々悪く、ついうっかりその存在を忘れてしまうため、思い切って花壇に改造しようかと思うのだ。広大な庭でもないのに、なぜそんな事態になってしまうかといえば、ナンテンとユスラウメの2本の木が、ちょうど菜園への入り口をふさぐ格好になっているからだった。
 これらの木を植えたのが6年ほど前のこと。その当時は、東隅にはクコの木がほどよく育っていて、よもやそこに立ち入ることになるとは思いもしていなかったのだ。だから安心して2本の木を植えてしまった…。
 現在、クコの木はすでにない。“とうせんぼ”状態の2本の木をなんとかすることが先決であった。
 ユスラウメは、まだ70cmほどの可愛いサイズ。しかし、隣りのナンテンは、私の背ほどに生長している。これほどの存在が花壇の前面に出てきていては、狭苦しいことこのうえない。やはり動かすならば、こっちの方だ。

 移植のための穴を掘る。南へ2mほどの位置だ。隣家との境界近く、ここならば思う存分育っても大丈夫。ざっくざっくと土を掘り返していると、みこりんが寄ってきた。すでにみこりんなら腰まで埋まってしまうほどの穴が開いている。さっそくお手伝いを申し出てくれるみこりん。余っていたクワを両手で重そうに持ちあげると、さくっと落とす。思わずエネルギー保存則を教えてやりたくなるほどの、見事な落下であった。
 およそ50cmほど掘り進んだ頃、下の方で硬いモノにぶちあたる。岩盤かと思うほどに、穴の底いっぱいに広がっている。みこりんは何が出て来るかとわくわくして見入っているのだが、こいつをほじくり出すのはなかなか骨だ。シャベルの先っぽはかろうじて潜り込ませることができるものの、このまま全体重をかけてしまっては間違いなく途中で折れる。テコの原理をもっとも有効に使えるクワの刃先を、どうにかして差込まねば。

 やはり穴を広げるしかない。急速に接近してくる夕闇に追い立てられるように、大急ぎで作業を進める。ぐいっとねじって、ようやく動いた硬いヤツ。でかい。岩かと思ったが、どうやらこれは壁面等に使用するコンクリートブロックらしい。分厚い塊が、徐々に姿を現してきた。
 片手では持ち上がらず、両手でどうにか地上に引き上げる。「“かせき”みたい」と、みこりんは評してくれた。本当に化石ならば面白味もあるのだが、無粋なコンクリートでは、ただのガラクタ。花壇の縁石にも使えない。とりあえず隅っこに放置。処分は追って考えるとしよう。

 掘り上がった穴の底に、元肥と堆肥を入れて、適度に埋め戻す。続いて移植元のナンテンを掘り出す作業にとりかかった。もともと大して耕していなかった場所だったので、シャベルがなかなか入っていかない。思ったよりも地表に近いところで、つい、“ぶちっ”とやってしまった。ね、根っこが…
 あとはもうナンテンの生命力にかけるしかない。穴の上にナンテンを置き、向きを整え、土で根っこを隠してやった。地上部分の1/5にも満たない根っこだったが、これがなかなかうまい具合にバランスをとってくれている。一応、用心のため支柱を1本、刺しておいた。

 気がつけば、すでに闇が降りていた。みこりんも、いつのまにか消えている。みこりんは暗闇が怖い。ついでに野良猫も怖い。だから、夜は家の中がいいのだ。
 明日もまた、土を耕すとしよう


2003.1.3(Fri)

みこりんのシールド

 しとしと冷たい雨の降る午後、庭仕事には不向きだったが冬休みも残り少ないこともあり、雨合羽を装着して作業を開始した。今日の予定は南西の隅に植えてあるユキヤナギの剪定。ちょうどコニファーの陰に隠れるようになっているので、そこに潜り込むには雨合羽がちょうどよいシールドになってくれる。もしも雨合羽がなければ、コニファーの尖った枯れ葉がちくちくと全身にくっついてしまったことだろう。

 ぱちぱちぱっちんと、隣家にややはみ出し気味だった枝を大胆に伐採していると、みこりんがウッドデッキに出てきてこちらを覗き込んでいる。コニファーの陰にいたのが、なんだか“かくれんぼ”してるように映ったのか、「みこりんも!」と喜び勇んで寄って来る。しかしそのまま突っ込んできたら、みこりんが全身コニファーの刺々まみれになってしまうだろう。そこでみこりんに言う。「みこりん、杉の葉っぱが落ちて来るから、何か着てきなさい」
 たたたっと部屋に戻って行くみこりん。てっきりウインドブレーカーでも着て来るのだろうと思って待っていたのだが、さっぱり出てこない。もしやすっかりこちらの事は忘れてしまって、暖かい部屋の中でLicと二人、お茶でもしてるんじゃなかろうか。そんなことを思い始めた頃、ようやくみこりん再登場。

 「みて!」と、みこりは開口一番そう言った。得意げに立つみこりんの姿は、まるで“一反木綿”のようであった。頭から白くて長い紙をすっぽりとかぶっている。どうやらカレンダーの大きな紙を利用して、シールドを自作したらしい。なかなか出てこないと思ったら、こつこつと自室で工作していたのか。安易にウインドブレーカーを選ばず、自作してしまうところに、“しめしめ”などと思ったりしている私。将来がかなり楽しみだ。
 しかしみこりんのシールドには視界が極端に悪いという欠点があった。なんとかして私のいるコニファーの向こう側に潜り込もうと試みるも、強靭な枝にことごとく退けられてしまう。「“ささき”のはっぱがじゃま」と、みこりんは言った。ささき?それが杉(すぎ)のことだとわかるのに、3秒ほどの時間が必要だった。
 「みこりん、“ささき”じゃなくて、すぎ、だよ」「すずき?」「すーぎ、“すぎ”だよ」そんなやりとりの後、結局、みこりんはコニファーの突破を諦めたらしい。もしかすると改良型シールドをさらに自作してくるかもと期待したが、どんどん雨は激しくなる一方だったので、私もそろそろ作業を切り上げることにした。
 仕上げに来春ハーブ花壇にする場所をさくっと耕し、10年もののレモンバームを植え替えてやる。また今年もハーブティに有効利用させてもらうとしよう。

初めてのオセロ

 木片にアルファベットが描かれたみこりんのオモチャを利用して、囲碁の真似事をやりはじめたのが一昨日のこと。みこりんは昨年の夏にLicの実家で、じぃじに囲碁を教えてもらってからというもの、妙に囲碁にはまってしまっているのだ。囲んで相手のを取るというのが、どうやらツボだったようで、木片に限らず、ビー玉等、類似のものが囲碁遊びに使われた。
 そういう状況の中、今宵ついに本物の碁盤が我が家に登場したのである。Licが買物に行ったついでに、オモチャの碁盤を買ってきてくれたのだ。片面が碁盤で、もう一面がオセロに使える優れもの。リバーシブルである。
 まずはルールの簡単なオセロから始めることにした(じつはこの時点で私もLicも囲碁のちゃんとしたルールを把握していなかったのだ)。

 みこりんはすぐにオセロのルールを把握した。挟んだら自分のものにできるというのが、囲碁に通じるものがあったらしい。オセロ初体験だというのに、私が2〜3度手加減しただけで、ほぼ互角の勝負を仕掛けて来る。2度目は、手加減1度だけで、とうとう私が負けてしまった。3度目は、手加減なしで本気の勝負。これはぎりぎりで私の勝ちだったが、いきなりこんな状況では、みこりんに打ち負かされるのも時間の問題では…、と少々焦る。私がオセロ下手なのか、みこりんが強いのかは、まだこの時点では不明だが、いずれLicと戦わせてみたいものである。パズル得意なLicならば、おそらくオセロも強いはず。その結果を見て、判断しよう。
 でも、みこりんがオセロに適性があるのは間違い無さそうな気もする。囲碁も、この調子で仕込めば結構いい線いったりするのかも。


2003.1.4(Sat)

移植

 晴天だが、木枯らしがぴーぷー吹きすさぶ、これまた庭仕事には不向きな天候だったが、雨合羽装着で作業を開始した。これなら少々の汚れも気にならないし、暖かいし、なかなか具合が良い。冬の園芸に雨合羽は必需品ではあるまいか。
 さて、本日の作業はチコリとシュウメイギクの植え替え。チコリは、葉っぱを生食できるだけでなく、花もかなり美麗な青で見た目もいい。ただ、若干背が高くなるので、ウッドデッキ前という現在の場所では、少々窮屈そう。そこで、昨日耕しておいた来春のハーブ花壇一番奥に、ごっそりと移し替えてやるのだ。
 さらに、今年のこぼれ種で増えたチコリが3株あったので、こちらは東側のフェンス際に移動した。来年には、さらにこぼれ種で現在の倍には増えてしまうだろう。そうなったときに、思い切って抜き去ることができるだろうか。野菜苗を間引くだけでも一苦労なのに…

 シュウメイギクも、そうやって間引けないままどんどん勢力範囲を広げてきた植物の1つである。幸い、この花は日陰でも大丈夫らしいので、コニファーの陰とか、ナンテンの足元とかに移動させることにした。
 そうやってどんどん分散していった結果、メインの花壇は思った以上に空間が広がって見えるようになった。よほどうまく種まきしないと、すかすかになってしまうか、異様に偏った品種で埋め尽くされるかのいずれかになってしまうだろう。コタツ園芸でじっくり悩むべきところだ。
 私は赤とオレンジを基調にしようかと思っていたのだが、Licは青と白がいいという。おまけに青い花で花壇向きのやつは、意外に少ない。春の球根モノだと青花は豊富なのだが、夏となると候補はぐぐっと限られてきてしまうのだった。ソレと好みがぴたりと一致すれば悩むこともないのだが、そうもいかないところが問題を複雑にしていた。

 とりあえず花壇計画は一冬かけて迷うとして、今は土をしっかりと作っておこう。庭の片隅でこつこつ作ってきた生ゴミ堆肥を、いまこそ存分に活用する時である。土袋にぎっしり詰めて、花壇にばらまき、混ぜ混ぜ混ぜ。みこりんも、ニカッと笑みをうかべてお手伝いの準備。いつもは危ないからと余りクワを触らせていないのだが、ナンテンを移植した結果、みこりんがクワをふるっても余裕があるため、好きにさせてやった。

 その花壇のすぐそばで、ナンテンの苗を複数発見。ここにもこぼれ種で増えた木が…。いっそ、盆栽仕立てにでもしてやろうかと思う今日この頃。


2003.1.5(Sun)

みこりんと迷路

 朝の玄関ベルは、たいてい宅急便であることが多い。みこりんもそれを経験則で知っているので、私よりも先に玄関に駆けていった。がちゃりとドアを開ける。おなじみの制服と、表に止まった大きなトラック。やはり宅急便だった。
 箱の中身を、みこりんは早く知りたがっていた。普通のダンボールではなく、何か模様が入っているところが、みこりんの興味を引いているらしい。そこでびりびりと表面の梱包材を破り、箱を露にしてやった。
 “RADEON”の銀文字がでかでかと入った黒い箱。年明け早々にインターネット通販で中古のグラフィックカードを注文していたのが、はやくも到着したのだった。

 「あけて、あけて」と、せがむみこりんのために、さっそく開封してみると、中から出てきたのはCD-ROMと1冊のマニュアル。みこりん、ちょっとがっかりきている。ふふふ、本命はここだよと、二重底のようになった部分を持上げ、本体を取出してやった。
 みこりんは基盤上のパターンを見て、「“めいろ”みたい」と言った。みこりんの迷路好きは、もしや赤ちゃんの頃にオモチャとして与えたHDDが何らかの影響を与えているのでは…、と思った瞬間だった。

 このグラフィックカードは、我が家のLinuxマシンに装着することになる。これまでカスのような古いカードが刺さっていたのだが、Kylix(C++対応になったことだし)で本格的に遊ぶには、あまりに非力。そこで新カードの投入となったのである。ついでにOSの方もRedHat8にバージョンアップしてみる予定だ。得られた知見はそのまま業務に活用できるので一石二鳥。でも冬休みには間に合いそうに無いので、来週の作業である。

雪モルモット

 お昼過ぎにちらちらと舞っていた雪は、夕方を目前にしたところで本降りとなった。あっというまに視界が白く染まり、庭はみるみる輪郭をなくしていった。
 わずか数分で2cm、3cmと、順調に積もっていっている。みこりんはさっそくソリを手に庭に出て行こうとするので、防寒対策のしっかりした服に着替えさせ、私も重装備で庭に下りた。
 目を開けていられないほどの降り。これはかなり積もりそうだ。

 みこりんは「もるもっとつくって」と言った。雪だるまでも、雪うさぎでもなく、もるもっと。何故ゆえにモルモットなのかという疑問が、頭上をぐるぐる回ったが、みこりんが好きなのならばそれもいいか。
 でもその前に、かるく雪合戦なぞ楽しみ、ついでに雪だるまも作ってやった。みこりんはどうしてもソリで遊びたいらしいのだが、まだそこまでの積雪はなかったので、残念そう。でも明日にはきっとその願いは叶うに違いない。

 日は陰り、街灯がつく頃まで外にいた。最後の仕上げに雪モルモットをつくってやる。基本型は雪うさぎ。違うのは耳がちょっと短いことくらいだ。手渡してやると、「おめめと、おくちがない」と鋭い指摘が。こだわりのみこりんである。そこでナンテンの赤い実で目玉を、同じくナンテンの葉っぱで口をつけて、はい完成。今度こそみこりんは受け取ってくれたが、どうもイメージしていたものとは違うものだったらしく、いまいち受けがよくない。雪モルモット…、もしかして保育園で先生につくってもらったことがあるのではなかろうか。今度どんなものなのか聞いておかねばなるまい。


2003.1.6(Mon)

雪の一日

 雪道は苦手だ。特に、凍った道は寿命が縮む。今朝の道路は、まさにそんな最悪な状況だった。昨夜の積雪からある程度予想はしていたのだが、かっちかちに固められた白い道路を、改めてクルマで運転してみて、とてもじゃないがこんな道を会社まで走りきるのは無謀に思えてきた。
 もちろんすべての道がこうなっているわけではない。でも、保育園までのわずか3キロほどを進むだけで7分もかかってしまった上に、極度の緊張で神経がぴりぴりと張り詰め、いまにもふっと力が抜けてしまいそうになる。これではあぶなかしくて運転なんてできたものではなかった。

 結局、仕事始めは午後からのスタートにした。わざわざストレスを溜めることもない。それに事故っては元も子もないし。

 お昼には、日向の雪はほとんどが溶けてしまっていた。が、日陰はわずかの変化も見られない。それでも朝よりは、ずいぶんとましだ。それよりも明日の朝のことが気にかかる。今朝よりももっとひどいアイスバーンとなって立ちはだかるのではあるまいか。

 そんな雪も、みこりんにとっては楽しい遊び道具の1つ。夕方、保育園からみこりんを受け取って帰宅したあと、街灯の薄暗い明かりの中、庭でひとしきり雪遊びに興じている。当然私も付き合わされているわけだ。それだけでは寒すぎるため、デジカメでみこりんを激写することにした。
 ところが困ったことにデジカメの液晶ビューの感度では、被写体がまったく見えないのだ。いくら目を凝らしたところで、ノイズのようなちらちらがランダムに流れるのみ。それでもレンズの向きでだいたいの当たりをつけて、シャッターを切る。広角ズームにしていたおかげで、さほどおかしなレイアウトにはならずにすんだ。
 この季節、我が家の庭は日当たりが悪くなる。たぶん明日も雪は残るだろう。みこりんの雪遊びは、続く。


2003.1.7(Tue)

その人の名はホシ・サトウ

 スーパーチャンネルで昨年末から放映が開始されたスタートレック・シリーズの最新作『エンタープライズ』(スーパーチャンネルでの解説はこちら)も、これまで同様に録画を継続中である。媒体はS-VHSだ。ところが、年始から“丸ごと5日間”ということで第10話まで連続放映されるのを機に、直接PCでHDDに録画し直すことにした。
 “丸ごと5日間”に気付いたのが惜しくも二日目だったことから、第1&2話だけは、テープからの変換になってしまったが、すべてHDDに記録したあと、テープを解放できた時にはなんだか気分もすっきり爽快に思えたものだ。場所をとらないというのが、これほど気持ちのよいものだったとは。このままDVDに焼かずに、HDDに残しておくことも考えたが、現状のコストパフォーマンスを考えると、まだ微妙にDVDの方が勝っているのでDVDに移すことになるだろう。きっと来年の今ごろは、HDDの記録量あたりの単価が、DVDを下回ってそうな気もするが(DVD1枚あたり2話収録するとして)、今はまだHDDの増設を考えるのは先の話しである(などと言いつつ、さくっと来月あたり120GBほど追加してるかも…)。

 さて“エンタープライズ”は、時代的にはこれまでのスタートレック・シリーズよりも古き時代を描いている。まだ連邦ができる以前だ。初めての深宇宙探査ということで、前シリーズの“ヴォイジャー”が未知宙域を舞台にしたのと、状況は少し似ている(時代設定は異なるが)。

 レギュラー・クルーの中に、ホシ・サトウという女性が登場する。たぶん日本人という設定なのだろう。演じているのは韓国出身のリンダ・パク (Linda Park)さん。劇中ではかなり気弱いところがありながらも、どでかいナメクジをペットにしている落差が可愛らしい。みこりんもナメクジのエピソードで、すっかりこの人のことを気に入ってしまったらしい。PCで再生中の画面を見るたび、「ほしさとうさんは?」と聞いて来るほどの執着ぶりだ。いつのまにか宇宙空間が出て来ると、それが“エンタープライズ”と瞬時に認識できるほどに。

 前作“ヴォイジャー”の時には、チャコティ副長を気に入っていたみこりんなのだが、今回何故ゆえにホシ・サトウさんなのかは、謎である。ナメクジを飼っているというのが、よほどインパクトがあったのか、はたまた、若い女性だからか。いずれ確認してみなければなるまい。


2003.1.8(Wed)

バイクっぽい

 “クライスラーが四輪バイク「ダッジ・トマホーク」

 8000ccの巨大なエンジンに、シートとタイヤが付属しているような、いかにも環境に悪そうなバイクだが、その凶悪なまでの無骨さが潔し。でも4輪にするなら、できればもっと大型化して、MEGAZONE23に登場するガーランドっぽく仕上げてほしかった気もする。
 もし試乗する機会があれば、ぜひとも乗ってみたいものだが、アクセルを3ミリほど回しただけで吹っ飛ばされそうな予感も少し…。こいつを乗りこなせるのは、やはり野獣並みの“あの男”しかいないのではなかろうか。


2003.1.9(Thr)

古のPC

 昨年暮れから本格稼動している我が家の新型PCは、もっぱら映像の録画と変換作業に、一日の大半を費やしている。それでも遅々としか進んでいない。こんなありさまでは、全てのテープをDVDに焼き終えるのは一年後か、二年後か。おかげで他の仕事には、ほとんど使えない状況だ。
 そういうわけで、日記書きにはLicの嫁入り道具の1つである古のノートPCを再び使っている。CPUはPentiumよりも1世代前の486、動作クロックは50MHz、メモリも12MBと、今となっては骨董品のようなマシンだが、テキストエディタで文章を書くだけならまだまだ十分使える。しかもノートタイプだからテーブルの上で使えるのもありがたい。入力姿勢が最適なポジションになる上、キーボードも小さくて打ちやすい。

 いい事尽くめのようだが、問題が1つ。OSが初期型のWin95のため、我が家のファイルサーバにアクセスできないのである。ファイルサーバの設定をこのためだけに変更するのも本末転倒のような気もするので、現在はフロッピーディスクでデータのやり取りをしている。ところがFDDの調子が今1つで、時々固まってしまったり、データが壊れてしまったりと、古さは隠しきれないのであった。これが完全に壊れてしまうまでは、せいぜい大事に使ってやろうと思う。


2003.1.10(Fri)

その行為

 庭の雪は、いまだ溶けず。冷え込む日々が続いている。
 夜も更けてきたので、そろそろウズラのケージに覆いをかけてやろうとしたのだが、その時、ぴーちゃんが怪しげな動きをしているのを発見した。
 両の翼を大きく広げ、その切っ先で床を支えるようにして立ち、しきりと水入れに向かってぶちかましをかけているのだ。いったい何をやっているのだろう?

 しばらくは事態が把握できなかったのだが、その水入れのカタチを見て、「なるほど」と合点がいった。その水入れは、鶏等の地鶏系の生物を飼うときによく使われるタイプの、陶器で出来た小山のような形態をしている。飲み口は下にあり、気圧をうまく利用して常に一定量の水がそこに溜まるようになっている。
 大きさは、ちょうどぴーちゃんを一回り小さくしたような可愛らしいものだ。そう、ぴーちゃんはその水入れに激しくアタックをかけているのだった。本能の命ずるままに、そういった形状のものを見かけると、じっとしてはおられないのだろう。
 しかし、もちろん水入れは微動だにしない。ぴーちゃんのアタックが報われることは、有り得ない。ちょっと不憫なような気もするが、ここでメスを同居させてしまうと、あとが大変なことになる。なにしろウズラはほとんど子育てをしないらしい。つまり、卵の保温から雛の飼育まで、すべて人手でやらなければならなくなるのだった。みこりんがもう少し大きくなれば、お手伝いしてもらえるだろうけれど、これ以上生物を増やすのは得策ではない。現状でも手一杯気味なのだ。

 ところで、さっちゃんの方の水入れは、小山型ではなく、ハムスター等に使うタイプの試験管を逆さにしたようなカタチ。ゆえに、ぴーちゃんのような行為は見られない。試しに水入れを交換したらどうなるか…、もしかすると擬似メスが不可欠だったりすると、さっちゃんの方にも同じようなタイプの水入れを導入せねばならないが、さて、真相は如何に。


2003.1.11(Sat)

インストール

 Licとみこりんを駅まで送っていったあと、一人家に帰り着いた私は、さっそくPCの筐体を開けにかかった。3つ縦積みにしているPCの最下段をいじるため、上の2つをどかしてからの作業だ。みこりんに観察させたかった気もするが、安全を考えると、一人の時に作業するのがよいだろうとの判断だった。

 先日届いた中古のグラフィックカードに挿し換え、HDDのケーブルをシールドの施された高性能なものに交換し、ネットワークカードをさらに1枚追加して、筐体を戻す。いよいよOSの交換にとりかかる準備が整った。
 現状 Redhat7.2 のところを、Redhat8にする。アップデートではなく、フォーマットし直しのクリーン・インストールである。もちろんファイルサーバとして共用してきたディスク領域はそのまま温存。
 インストーラーに従って設定してゆけばよいだけなので、特に問題はなかった。すべてのハードウェアは自動認識され、かりかりとあとで人力にて設定することもなく。

 なにはなくとも、まずファイルサーバとして機能させねばならないので、sambaのインストールを実行した。現状の最新版をソースから。これも前回の手順をほぼ踏襲して、やがてファイルサーバ機としての機能は復活。とりあえずLicが戻って来るまでにやっておくべきことは、これで終ったことになる。
 ただ気になることが1つ。HDDのフォーマット中に不良ブロックが検出されたので、そのパーティションを分離しなければならなかったことだ。インストールしたばかりだが、もしかするとHDDの交換なんて事態になったりするのかもしれない。ファイルサーバなだけに、用心にこしたことはあるまい。近頃ではHDDの寿命は2年とかなんとか言われているらしいし…。


2003.1.12(Sun)

DVD焼き

 目覚めれば、すでに太陽は西に傾きつつあった。時計の針を確認するまでもなく、今が夕方だということがわかる。
 長い、長い夢をみていたような気がした。少し体が熱っぽいような気もする。発熱時特有の、不条理な興味深い夢だったかもしれないが、目覚めてしまえば夢の記憶はまたたくまに輪郭を失い、霧散していった。

 Licとみこりんの帰還予定は明日。となれば、今日はひたすらDVD焼にでもはげむのが吉。並行作業で昨日インストールの終ったLinuxマシンに、プロキシサーバを導入しておこう。キャッシュはそっくりそのまま残っているので、無事に引き継げられればWebサーフィンの快適度も変わるまい。

 DVDに焼くのは、『エンタープライズ』からと決めた。10話分、約10GBだから、これをHDDから消してしまえればかなり楽になる。
 1話で約1GBだから、1枚のDVDに3話は入るかと期待したが、微妙なところで容量オーバーの赤ランプ点灯。これ以上画質を落とすのも何なので(現在のビットレートは3.1M)、2話づつ格納することにした。こんなことなら、もう少しビットレートを上げておくのだったと後悔しても、オリジナルテープはすでに上書きしてしまったので、どうにもならず。第11話からの反映としよう。

 1枚のDVDを焼き上げるのに、だいたい2時間強。出来上がったものから確認のために視聴する。それがちょうど1時間半くらいで終るので、まぁまぁいい具合に作業は引き継がれていくのだった。
 計5枚のDVDに、10話分、きっちりと焼かれたのを確認し終ったのが、真夜中過ぎ。延々と『エンタープライズ』づくしであったが、こうやって改めて見直してみると、さらに作品世界になじんでいくのがわかる。最初はバルカンのトゥポルと、前作のヴォイジャーにおけるセブンとのキャラのだぶり加減が気になっていたのだが、いつのまにかそんな心配もささいなものに思えつつあった。かえってそれはそれでいいのかも、などと肯定しはじめている。慣れとは恐ろしいものだ。

 HDD内の10話分のデータは、サーバの方に転送しておくべきか少しだけ迷ったが、結局、さっぱりと消すことにした。残すとなったら、最終話まで残さなければならなくなるし、不可能ではないにしても、HDDがもったいない。300GB程度のHDDが1万円で買えるようになったら、そうしてもいいけれど、今はまだその時ではなかった。

 最後に『ウルトラQ』5話分を焼きつつ、布団へと潜り込む。明日目覚める頃には、すっかり焼き上がっていることを期待して。


2003.1.13(Mon)

復活の“ヤツ”

 大晦日から溜め込んであった生ゴミは、サンルームのテンポラリバケツの中にある。そろそろ堆肥化のために裏庭に持って行こうと思い立ったのが、夕方のこと。
 リビングのガラス戸を開けると、まず目に入ったのが、バケツ周辺に散乱した卵の殻だ。バケツに蓋はしていなかったので、もしかするとカラスに荒らされるかもという心配はあったのだが、案の定だ。サンルームの天井には秋の終わりから遮光カーテンを取り払ってあるので、上空からはバケツが丸見え。サンルームのドアは、約50cmほど開けてあるので、そこから大胆にも侵入してきたのだろう。
 そう思いつつ殻を拾い上げようとしたとき、散乱具合がそんなものではないことに気がついた。バケツの陰に隠れるようにして、さらに玉ねぎの皮やらニンジンの皮が床上に続いている。その先には、かっちかちに固くなった食パンが1枚…。
 なんだか妙だった。食パンが落ちているのはメタルラックの下側なのだ。そんな場所にカラスがわざわざ運び入れたりするだろうか。そもそもカラスでは、その場所には入れない。なにしろメタルラックの最下段と、床との隙間は5cmにも満たない。その隙間に落ちている食パン。

 私の脳裏に1つの仮説が導かれるのに、さして時間は必要ではなかった。
 ヤツだ。ヤツはまだ、生きてこのサンルームに巣食っているにちがいない。
 チューリップの球根を齧られて以来、その後の消息はぴたりと途絶えていたのだが、ついに動き始めたか(あるいは別の生物が入り込んだ可能性も捨て切れないけれど…)。

 まだ見ぬヤツの姿を想像しつつ、バケツに生ゴミを戻し、庭に出る。なんだかホっとしている気持ちもあった。ヤツは死んではいなかった。また干し柿でも吊るしておいてやろうか。そんなことを思いつつ、生ゴミを土に混ぜる。
 すっかり土を被せてしまってサンルームに戻ろうと振り返ると、ちょうどプラムの枝に留まろうとしていたヒヨドリが、大急ぎで反転していく姿が見えた。厳しい冬にも、生物はたくましく生き抜いている。そう実感した夕暮れのひとときであった。


2003.1.14(Tue)

チャットにはまる

 ネットワーク・ゲームは数あれど、その中でLicの心を捉えたものは、これまで2つ。『チェイス・チェイス』と『アッピー』である。それはもう、わずかな時間も逃さずPCを起動してゲームに没頭するほどの、熱の入れ様である。今は特に『アッピー』に激しく入れ込んでいる模様。

 『チェイス・チェイス』は、逃げ役と追いかけ役に分かれての鬼ごっこのようなもの。『アッピー』は、いわゆるRPGである。ただ、現在はまだβテスト段階なので、本格的な謎解きやらイベントやらは用意されていないらしい。これら2つのゲームに、Licがそこまで惹かれる理由は何だろう。もともとLicは3DOを保有していたほどのゲーマーなのだが、それを差し引いても、現状の熱の入れ様はただごとではなかった。

 『チェイス・チェイス』や『アッピー』には、ネットワーク・ゲームとして当然のようにチャット機能が付いている。私は、これがすべての元凶ではないかと睨んでいる。おそらくLicにとって、『チェイス・チェイス』や『アッピー』でなくとも、安価に遊べるものならなんでもよかったのではないかと思われる。チャット機能があって、細々としたアイテムを収集できるタイプのゲームで、しかも従量課金ではなければ、おそらくLicはハマるのではなかろうか。何故なら…

 何故ならば、Licはいにしえのパソコン通信時代からチャット中毒な人だったからだ。インターネットが本格的に一般民衆に広まる前時代、PCを保有していた人々が三々五々集まれる場所といえば、ニフティ・サーブやPC-VANといったパソコン通信のチャット空間くらいしかなかった。そこでLicは従量課金をものともせずに、夜な夜なチャットにどっぷりと頭の先から爪先まではまっていたのである。まだ接続利用料が1分10円などという、今から考えると気の遠くなるような値段設定だった頃のことである(もちろん電話代は別)。
 やがていっときチャットから離れていたLicだったが、昨今のネットワーク対応アプリケーションの使いやすさと、定額常時接続の出現により、再びふつふつとチャット意欲が湧き起こってきたのであろう。

 ここで問題が顕在化したのが、我が家の回線の細さだった。未だにISDNの64kなものだから、Licが『アッピー』を実行中に、別のPCにて私がネットに接続しようものなら、とたんにLicの画面は固まってしまうのである。帯域が足りないのだ。ケーブルTVの敷設を待っている余裕は、あまりないかもしれない。光の到来が望まれるが、その気配が微塵もない今、やはりADSLに転ぶしかないのかも。NTTもYahoo!BB(ソフトバンク系)も私的“嫌いな企業ベストテン”に含まれているため、なんとも悩ましいところだが、これ以外に選択肢がないのが辛いところである。


2003.1.15(Wed)

チャットの相手

 ちゃかちゃかちゃかちゃかと、Licが『アッピー』でチャットしているのを、みこりんはうらやましく思っていたのかもしれない。画面の中に出て来るいろんな“お人形さん”と会話しているという認識はあるようで、みこりんも、その仲間に加わりたかったのだろう。ある時、みこりんは見よう見まねでキーボードを高速に打った。チャット画面に流れる意味不明な文字や記号の羅列。おそらく“周囲”の参加者は、一瞬目が点になったことであろう。
 もちろん、みこりんはゆっくりとならば正しくキーボードから日本語を入力する技量はある。ただしそれは“かな入力モード”の時に限られた。Licも私もローマ字入力に慣れているので、通常は“かな入力モード”にはなっていない。おまけに、みこりんはLicの高速打鍵を真似たため、ますますでたらめな文字列となってしまったのだった。チャットとは、そのように高速に入力するものであると、みこりんは何故だか思い込んでいたようである。

 しかしこの出来事は、みこりんの熱意を我々に伝えるに十分であった。みこりん用に“かな入力モード”に切換え、チャットに参加させてみたのである。「あそぼ」と、みこりんは打ち込んだ。相手はLicのチャット仲間であったので、親切にも返答をよこしてくれた。みこりんのチャット体験は、こうして成功裏に終ったのである。
 ところで、ふと気になったのでみこりんに確認したことがある。それは、返答してくれたのは、いったい誰だと思っているのかということだ。
 みこりんは言った。画面を指差しながら、「このひと〜」と。「うん、それはそうなんだけど、その“人”を操作してるのは誰かなってことなんだけど」との私の補足は、しかしみこりんにはうまく伝わらなかった。きょとんとしてこちらを見ている。みこりんは『アッピー』を、『ももんがクラブ』のようなスタンドアロンなソフトのイメージで捉えているふしがあった。

 ネットの向こうに、Licと同様、生身の人間がいて、互いに会話を交わしているのだということを、どうにかして教えてやりたいものだが、そのためにはみこりんの身近な人間を『アッピー』に誘うのが、おそらくてっとり早い。実家のじぃじばぁばがキーボードに慣れるためにも、この作戦は有効かもしれない。だがそのためには、実家のPCに『アッピー』をインストールせねばならないが、そんな“高等技術”を両親がもっているはずもなく、いきなり作戦は暗礁に乗り上げてしまった。みこりんの興味が次回帰省する数ヶ月先まで継続していればよいのだが、なにしろ熱しやすく冷めやすいところのあるみこりんのことだから、心配だ。Licのチャット熱は、おそらく持続しているだろうけど。


2003.1.16(Thr)

国華園カタログ

 花壇にできた霜柱は、昼間も溶けずにそのまま残っているようだ。まるで氷柱がどんどん伸びてゆくように、霜柱も徐々にその高さを増していっている。そしてある地点に到達すると、自重に耐えかね、ごろりと横倒しになるのだろう。高さにしておよそ5cmほどの霜柱の塊が、黒い花壇の表面に、ばらばらと散っていた。

 こんな寒い夜には、部屋でぬくぬくと暖をとりつつ、園芸カタログでもめくっているのがいい。今宵は先日届いたばかりの国華園カタログにしておこう。
 相変わらず世界一ビッグなイチジクとか、太古のブドウとか、世界で最も激辛なトウガラシとか、変わり種がこれでもかと散りばめられていて、好奇心を心地よく刺激してくれる。Licには“普通”の野菜にしてと言われているが、ついついそうした“普通ではない”方に目がいってしまうのだった。
 たくさん種を買い込んでしまいそうだ。そんな予感がある。実際、買物リストにメモってゆく数は、小一時間ほどで20を軽く突破してしまっていた。

 すでにメモ済みのサカタとタキイの分も併せると、えらいことになってしまいそうだが、今は未だ、取捨選択すべき時ではない。一冬じっくり迷って迷って、春の気配を感じる頃までに結論を出せばいいのだ(あんまり迷いすぎて締め切りを過ぎてしまっていたことも過去にはあったが…)。
 ところでLicはリンゴの樹が欲しいらしい。鉢でも栽培できるタイプの、直立するやつが気になっているようだ。でも我が家でそれを育てると、果実を収穫する前に、ほとんどをヒヨドリなどの野鳥に食べられてしまいそうな気もする。が、まぁそれでも楽しそうなので、一本注文してもいいかなと思っているところである。


2003.1.17(Fri)

眠りの途中で

 食卓の椅子に、お手製のダンボールで作ったブランコをぶら下げて遊んでいたみこりん。自分が座るとさすがに壊れそうだと思ったのか、部屋からプーさんのぬいぐるみを抱いて戻ってきた。その大きなぬいぐるみを、自分の代りにブランコに座らせて、ゆーらゆーら。それだけでは飽き足らず、ブランコに足置きを追加し始めるみこりん。工作好きの血が、いかんなく発揮されてゆく。
 ひとしきり自作ブランコを堪能したあとは、明日のためにブランコの下にクッションを敷いて固定し始めた。そうしておかねば、壊れてしまうとでもいうように念入りに。

 私もそのことは覚えていたのだが、リビングでみこりんを寝かしつけるときに、ついうっかりそこのクッションを枕代わりに使ってしまった。やがてそのことに気付いたみこりんが不満を表明し始めたのだが、仮眠の体勢に入り込んでいた私は、すべてのクッションを崩したわけではないことを理由に現状維持を強く説いたのだった。しばらくは抵抗の構えを見せていたみこりんだったが、私の決意が固いことを悟ると、あきらめたのかようやく隣りに潜り込んでくる。しばし流れる気まずい空気…。
 と、その時、ふいにみこりんが言った。「そういえばきょう、108センチになったきがする」と。保育園で身体測定があったのだろう。しかし最近100センチになったばかりのみこりんが、もう108センチ?睡眠に落ちつつあった私のボケた脳には、あまりに現実的な思いしか浮かんでこない。意識の奥底では、それがみこりんの発する“場の雰囲気を和ませる会話”であると理解して、適切なフォローをすべきと警告を発していたが、どんどん低下してゆく意識レベルは、それに気付かないままとうとういつのまにか深い眠りへと落ちていた。わずかな記憶を探ると、何か曖昧な受け答えをしたようだったが、それが果たしてみこりんを満足させるものだったかどうかは定かではない。
 眠い時でも、睡魔に打ち勝つ強靭な精神力が必要な場面は、そう多くはないかもしれないけれど、日頃から鍛えておいて損はしない。そう強く感じた夜のことであった。


2003.1.18(Sat)

ウズラたち

 我が家にウズラがやってきて、はや数ヶ月。昼も夜も朝も真夜中も、ウズラの雄叫びが轟かぬ日はない。しかしそれにもだいぶ慣れた今日この頃。
 餌は相変わらずラウディ・ブッシュ社のペレットを与えている。最寄りのペットショップには“ハイエネルギー・ブリーダータイプ”しか売っていなかったが、ウズラにはこのタイプでも大丈夫らしいので、夜な夜なコーヒーミルで適度に砕いてやっているのだった。何故、夜なのかといえば、ウズラの世話が我が家の生物達の中でもっとも手がかかるから、である。2セット分の餌の容器は、毎回水洗いしてやっているし、水入れも同様、おまけにチップの上で固まっている糞を取り除かなければならない。これを朝の忙しい時間帯に実行するのは、到底不可能だった。だから、夜、ウズラ達が眠る前に行い、そのままケージを布で覆ってしまうのだ。こうしておけば翌朝、餌がなくなってしまっていることもない。

 ところで、ウズラは砂浴びが大好きな鳥だと、どこかで読んだ記憶がある。実際、私が子供の頃飼っていたウズラもよく砂浴びをしていたし、今飼っているウズラ達もばさばさとよくチップ浴びをしている。彼等のケージには砂浴びセットを用意してやっていないので、底に敷かれたチップを浴びることで代用しているのだ。
 そのチップ浴びする姿は、じつに無防備で、長々と寝そべり、リラックスしまくっているように見える。しかも不思議なことに、1羽が始めると、それにつられるかのように、もう1羽も始めてしまうのだった。互いの場所はダンボールの目隠しで仕切られていて見えないようになっているのに、あの独特の“音”が、したい気分を起こさせてしまうのかもしれない。
 しかもチップ浴びするのは、たいてい決まって午後から、どちらかというと夕方からが多かった。午前中とか、お日様が南から照り付ける午後の早い時間帯に、彼等がチップ浴びしているのはあまり見たことがない。もしかするとチップ浴びに最適な時間帯というものが存在するのかもしれないが、いずれみこりんにでも研究させてみようかと思っている。なにしろこのウズラ達を買ってきたのは、みこりんなのだから。

 でもみこりん、近頃ではすっかり育ってしまったウズラにあまり関心を示してくれない。仕種を子細に観察すれば、そこはかとなく愛らしいウズラなのだが、まぁ見てぱっとわかるほど可愛いものではないから(少なくともぬいぐるみのようなハムスターとは大きな違い)、いかんともしがたいのだけれど。せめて観察してもらわないと、いつのまにか私のペットみたいになってしまうおそれが…(すでになってるかも)。


2003.1.19(Sun)

MPU交換

 動画変換とDVD焼に、その身を捧げている我が家の新型PCだが、組立て当初から、主電源ONを2回繰り返さなければ起動しないとか、リセット後に再起動しないとか、主に“起動”における問題を少なからずかかえていた。原因として思い当たることは、約2点。MPUが変か、電源が変か、いずれかではないか。いまのところ問題は“起動”時に限って現われているが、この2点のいずれかが悪いということになれば、影響はじつは作動時にも出ているかもしれない。
 そこでまずはMPUを交換すべく新規発注していたのだが、今週初め、それが届いた。3GHzが一般的に売られる現在では、かなり見劣りしてしまうが、それでも現状よりは若干の性能アップになる。

 筐体を開け、作業の邪魔になる電源ユニットを取外し、交換作業を実施した。刺す向きを間違わないように慎重に。
 筐体を元のように組み直し、いよいよ電源ONである。果たして無事に起動するだろうか。背面の主電源ON、続いて表側のパワースイッチを押す。これまでならば、この作業だけでは起動シーケンスには入らない。が、今回は当然のようにBIOSバージョン表示のあと、起動が始まった。
 成功だ。

 続いて再起動も試みる。OK…
 リセット。OK…
 もはや問題は消え去ったらしい。ということは、電源は無関係だったということか。じつは電源ユニットも新調すべく、発注済みなのだった。でもだからといってこれが無意味になったわけではない。高性能な電源ユニット(今回買ったMPUよりもじつは高価)は、CD焼きやらDVD焼きには欠かせないものなのだから。美しい波形とノイズの少ないパワーを供給することで、そうしたメカ部分の動作を安定させ、音や画像の質を向上させることが期待できるからである。なぜこんなことを書いているかというと、これを読むであろう一人の“女性”に、電源ユニット新調の効用を説くためだったりするのだが、はたして納得してもらえただろうか。

 夕方、みこりんがビニール紐をもてあそんでいたので、面白い遊びを1つ教えてやることにした。紐を輪っかのようにして、中に獲物がかかるときゅっと締まる、“罠”を作ってみせてやったのである(紐の結び方は、投げ縄に準じる)。
 最初、みこりんはそれが何なのかわからないらしく、あまり反応を示してくれなかった。でも、私が罠の実演を自らで示してやると、途端にぐいぐいと食いついてきたのであった。

 さっそく私の手から罠を受け取ると、床上に仕掛けて「はいって」と言う。私は少し離れた場所から歩いてきつつ、罠にわざと足をつっこみ、きゅっと引っ張る。すると罠は、しゅっと締まり、私は捕えられた獲物になる、というあんばいだ。捕まったあと大袈裟に七転八倒してやると、みこりんはたいそう喜んでくれた。
 そんなことを何回も飽きることなく繰返すみこりん。ついでに罠の作り方も教えてやろうと思ったのだが、こちらの方はまだちょっと難しかったようで、みこりんの興味の方はいまひとつだった。でも、既に普通に紐を結ぶ技は習得しているみこりんなので、いずれ罠の作り方もすっかり覚えてくれることだろう。焦る必要はない。
 罠にこれだけ興味を持ってくれたみこりんなので、野山で獲物を捕らえなければならない事態になったとしても、きっと大丈夫(そんな事態がそう頻繁にあるかどうかはおいといて)。“罠”という存在を覚えてさへいれば、途方に暮れる心配はあるまい。


2003.1.20(Mon)

債権回収詐欺

 Licもみこりんも風邪でダウンしているので、私が看病のために一人、家の中で活動をしていた。ソレに気付いたのは、買物から戻ってきた時だ。ポストの中に、クレジットカードの請求書等と混じって入っていた一枚のハガキ。表には私の住所と名前しか書いてないシンプルなもの。裏返してみると、“御請求通知書”と書いてある。しかし併記された会社名に心当たりはなかった。

 何か買ったっけ?と思いつつ、さらに目で文面を追っていくうちに、頭に血が上って行くのを感じた。と同時に、手先が冷たくなっていく。
 書かれていた内容は、要約すると『あなたの電話回線から使用されたアダルト番組の使用料について番組提供者から債権譲渡を受けた。よって三日以内に指定の銀行口座に金を振込むように。もし放置したら家まで押しかけちゃう場合もあるからそこんとこよろしく』となっている。もちろん私にはまったく身に覚えのないことである。ここは冷静に対処すべきであった。

 とりあえずWebにて情報収集を行ってみた。この手のトラブルは、同様の体験をした人が何らかの報告をしているはずである。会社名でまず検索したが、ヒットしない。そこで、口座名義人のカタカナ名で検索。…当たりだった。ここに、同じ口座名義人で同様の文面による詐欺の報告がなされていた。
 ここまで確認できると、かなり頭は落ち着いていた。

 詐欺に間違いあるまい。先のサイトにも書かれていたが、こういう場合は警察に届けておいた方がいいようだ。さっそく最寄りの警察署に電話をかける。
 担当官に事情を話すと、どうも心当たりがあるような雰囲気。この近郊でも似たような事例が報告されているのかもしれない。「放置しておいても大丈夫」と言ってもらえたので、さらに心は平常に戻っていった。もしも相手から何かアクションがあれば、すぐに連絡するようにと担当官は名前を教えて電話を切った。

 とりあえず、今出来ることはこのくらいだろう。何事もなければよいが、しばらくは警戒しておこうと思う。


2003.1.21(Tue)

債権回収詐欺その2

 電話のベルが鳴る。5回目で取り、名を名乗らずに「はい」とだけ伝えた。電話でこちらから名を告げるのは、見知らぬ相手に無用の情報を与えることになるので、以前から止めている。
 警察からの電話だった。昨日“詐欺ハガキ”の報告を行った警察官が、情報の確認と様子伺いのためにかけてきてくれたのだった。自宅まで取り立てに行くというのは脅しであって、まず間違いなくそんなことはないそうである。「もしも来るというのならば招待してやってくれ」というほどに、大丈夫らしい。./Japanの報告では、神奈川のとある警察署では、この手の報告をしてもとりあってもらえなかったそうだが、えらい違いである。神奈川県の警察といえば、ここ数年いろいろと不祥事が続いているので、まぁそんなものかもしれないが、これだけをもって「だから警察は…」と十把ひとからげに警察批判を垂れ流すのは、じつに見苦しい。

 今のところまだ相手からは何のアクションもない。しかし三日後からはどうなるだろう。おって報告していこうと思う。
 この手の詐欺はかなり横行しているようだ。とにかく安易に金を振込まないことが重要だろう。もしそうしてしまえば、「これは金になる」と相手に余計な情報を与えてしまい、次々と要求はエスカレートするにちがいあるまい。もしも同様のハガキ(もしくはメール)を受け取ってしまったならば、まずは警察に報告することをおすすめする。

 *

 参考リンク:「身に覚えのない請求」に負けてはいけない!不当・架空請求に勝つべし!

NIFTY

 ここ数年はログインすることもなく、ただ放置するにまかせていた@NIFTYのIDを、ついに今日、破棄申請した。これですべての@NIFTYのIDを手放すことになる。@NIFTYからの完全な撤退だ。
 月200円とはいえ、年間だと2400円にもなる。技術雑誌ならば2冊は買えてしまう金額だ。もっと早くにこうしておけばよかったのだが、10年以上前から保有しているIDなだけに、少々愛着もあり、なかなか踏み切ることが出来なかった。が、もはやフォーラムにもチャットにも、以前のように熱を入れる気力はなく、得られる情報にしてもWebでほぼ事足りている。NIFTYから得たもの失ったものはそれぞれ多いが、今は何もかもがみな懐かしい…

 NIFTYよ、さらば。


2003.1.22(Wed)

バニラビーンズ

 就寝前のひととき、ヨーグルトを静かに食すのが、数年前よりの我が家の習慣となっている。おもにみこりんの栄養補給のために始まったのだが、胃潰瘍予防になるとか、虫歯予防になるとか、いろいろ良いことを聞くので、いつのころからか私も一緒に食べるようになった。
 ヨーグルトの種類は特に定まっていないのだが、近頃のお気に入りは『バニラビーンズ』(高梨乳業株式会社)である。

 ホイップクリームが入っているのと、バニラビーンズのおかげで、食感がヨーグルトというよりは、むしろムースのようにふわふわしており、味もヨーグルト離れしている。バニラムースを食しているかのような具合なので、みこりんにもじつに受けがよい。ちょっとまえは“ナタデココ”にご執心だったのに、あっさりと鞍替えしてしまったらしい。
 そのくらい『バニラビーンズ』の魅力は素晴らしいものなのだ。私もこれまで試したあらゆるヨーグルトの、最上位にランクさせることに異論はない。でも、はたしてこれをヨーグルトと分類してよいものやら、悩ましいところだ。ヨーグルト的にうまいというのとは、ちょっと違うような気がするし。よくよくパッケージを見てみれば、“ソフトヨーグルト”と書いてある。
 やはり、ただのヨーグルトではないらしい。


2003.1.23(Thr)

新たなる迷路

 夕食前のひととき、みこりんが黙々と迷路に没頭している。没頭しているといっても、迷路を辿っているのではない。迷路を創っているのだ。以前から、みこりんは迷路の創作に並々ならぬ情熱を注いでいたが、今宵の迷路はいつものパターンを超越した新作のようである。
 これまでの迷路が、私の描く“碁盤の目”状の模倣だったのに対して、曲線を多用し、なんとなく脳味噌の皺の構造、もしくはナスカの地上絵を彷彿とさせる“円弧”を基調としたものとなっていた。

 みこりんが私にきらきらペンを差し出し、「いっしょにかこう」と誘ってくれた。が、いざペンを進めようとして手がとまる。みこりんの考案した迷路のパターンが読めないのだ。
 みこりんはこの新型迷路を二人で仕上げることを所望していた。なんとかしてパターンを把握せねばならない。しかし複雑に入り組んだ曲線は、つかみどころのないまさに迷路であり、私の視線を惑わしてくれる。

 私の苦境を察知したのか、みこりんがお手本を示してくれることになった。「こうやって、こうやって、こうしてかくの」と、さらさらとみこりんは新たな迷路を画用紙に描いていった。まずはその手順を模倣してみる。迷路はどんどん出来上がっていくが、いまだパターンは把握できない。いったいみこりんは何を基準にしているのか。もしや未知の指令を受けていたりは…、などといらんことに頭が回り始めたころ、みこりんが難易度を下げたお手本を描いてくれたのだ。

 「そ、そうかっ!」
 それは閃光のように、私の脳を貫いていた。ついにみこりんの迷路のパターンを理解することに成功した。基本は相似形だったのだ。時折混ざるイリーガルな突起が解読を困難なものにしていたが、それを除けば単純な相似形の重ね合せに違いあるまい。
 さっそくその推測をもとに迷路を描いてみる。みこりんの反応は悪くはなかった。大筋、間違ってはいないらしい。
 それにしても、このような迷路のパターンをどこで身につけてきたのだろう。気になったので質問してみたところ、「いつのまにかできるようになっていた」のだという。(…やはりどこかからの謎の指令が、…)という内なる声が、またぞろ湧き起こりつつあったが、ここはひとつ素直にみこりんの進歩を喜んでおきたい。みこりんの迷路に対するあくなき挑戦が、このような新しい思考をもたらしたのだろう。次にどんな迷路が登場してくるか、楽しみである。


2003.1.24(Fri)

とある本との出会い

 最近、富島健夫氏の小説にはまっている。まだ2冊しか読んでいないが、おそらく次も本屋で見かけたら買うだろう。描かれる舞台設定は戦後とか、昭和の始め頃なのだが(発表されたのも70年代と、わりと古いものもある)、そういう時代の古臭さを感じさせないところが素晴らしい。人間の行為、思考、他人との関わりあいには、時代を超越して普遍のものがあるとはいへ、情景描写に深くのめりこむには、“古臭さ(あるいは異質さ)”はかなり致命的だ。それがまったくといっていいほど見られないので、すんなりと小説世界に入り込んでいけるように思われる。

 台詞回しに多少現代とは異なった部分があるものの、それがかえって新鮮だったりするので、狙ってそうしているのではないかと思ってしまうほどである。
 残念ながらすでに故人であるので、新作を読むことはもはやできない。それがかえすがえすも残念である。もしもこの作家との出会いが、中学、高校の頃であったなら、その影響の度合いは平井和正氏よりも大きかったにちがいあるまい。たまには別方面の小説に手を出すことも必要だなと、改めて思うのであった。


2003.1.25(Sat)

初めてのプラモデル

 みこりんの音楽教室が終るまで、近くのプラモ屋にて時間つぶし。ハセガワのマクロス・シリーズのパッケージに書かれた、“限定生産”の文字に惹かれまくっていると、いつのまにか時間になっていたらしい。みこりんの影が、ささっと棚の向こうをよぎって行ったのが見える。
 ぐるっと棚を回り込んで、みこりんが接近してきた。きらきらと瞳を輝かせて駆けて来る。その姿を1mまで引き付けておいてから、私はくるっと背中を向け、反対方向にダッシュした。みこりんの興奮レベルが3度ほど上昇した雰囲気を感じつつ、適当に逃げたところで、再び向き直る。そのままみこりんが突っ込んで来るのを、全身で受け止めてやった。

 さて、そんな軽い戯れのあと、私は買うべき箱を2つほど棚から抜き出す。やはりマクロス・シリーズのエリント・シーカー、そして兵装システムのパッケージだ。それを見上げていたみこりんが、自分も作ってみたいと言い始めたのだった。
 よろしい、何か1つ好きなのを選びたまえ。そうだな、クルマなんかが簡単でいいかもしれないな。と、棚から棚へと物色してゆく。みこりんは、飛行機よりもロボットよりも、船よりも、クルマがいいらしい。そこで最初はミニ四駆の箱を触らせてみていたのだが、いまひとつ反応が鈍い。どうやらみこりんは、リアルタイプなクルマがお好みのようだ。
 実車タイプのクルマがずらっと並んだ棚を前にして、みこりんはおおいに迷っていた。あまりに選択肢がありすぎて、どこから手をつけてよいやらパニックに陥っているかのよう。そこで端っこから見ていくことにしたみこりんだったが、やがて1つの箱を指差し、「これがいい!」と言った。

 真っ赤なシビックだった。しかし、どう見てもみこりんの美的感覚からは、ちょっと離れているような気がする。みこりんはもっとスポーティなのが好きなはず。そこで、ミニカーでも持っているカウンタックはどうかと、聞いてみることにした。
 LP400,LP500S等、様々なバリエーションのカウンタックが並んでいる。みこりんはすぐにそれがカウンタックだと気付いたようだ。そして、ドアが真上に開いているガルウイングのパッケージ写真に、視線が釘付けになっていた。「ひこうきみたい」そう、みこりんは呟いていた。

 最終的に、みこりんが選んだのは黄色いボディのパッケージ写真が載っていた、カウンタックLP400。何度も何度もドアが真上に開くのかどうか、私に確認してくるほどの熱の入れようであった。よっぽどガルウイングが気に入ったとみえる。完成写真には、きっちりドアが開いているところが写っていたので「大丈夫」、そう言ってもまだみこりんは不安気である。

 *

 家に着くなり、さっそくプラモデルの組立ては始まった。おもむろに箱を開ける。「む!」なんという部品点数の多さだろう。やはり2000円は伊達ではなかったか。みこりんと一緒に組立てるには、少々不向きなような気もしてきたが、極力みこりんに協力してもらいつつ、作業を進める。なにごとも経験だ。しかし私が本格的にプラモデルに取り組むのは、かれこれ十数年ぶりのこと。いまひとつ勘が鈍っているような気がする…

 今回は、みこりんにプラモデルとはどういうものなのかを知ってもらうことが最優先事項のため、塗装はしないこととした。もちろんパテ埋めなどもやらない。せいぜいバリ取り程度の、じつに素直な組立てである。
 ランナーから部品を切り取り、カッターナイフで丁寧に突起を削り、必要ならばヤスリをかける。その一連の作業工程を、みこりんは興味深そうに見つめていた。部品の切り離しをやりたいというので、任せてみる。少々変に切れてしまう箇所も出てきたが、まぁいい。みこりんのやりたいようにやらせてみよう。でも、あまりにクリティカルな細い部品は、やっぱり私がやってやる。修復不能になってしまっては、元も子もない。

 エンジン部分の組立てが終了したのが、すっかり日も暮れた頃であった。続いて足回り。みこりんの期待する、座席やらボディやらには、まだまだ行き着かない。
 ところでエンジンが何なのか、みこりんは特に知りたがっていた。それがいったいクルマの何に役立つのか、みこりんなりに疑問に思ったのだろう。クルマを動かすところだよという私の説明に、「てでまわすところ?」(それはハンドル)、「くるくるまわるところ?」(それはタイヤ)と、どうもピンときてないようす。やはり実物を見せてやった方がいいかもしれない。でも、プラモデルが完成すれば、おのずと理解できるかもしれないけれど。

 みこりんにも用途がすぐにわかるハンドルとか座席をくっつけるところに、なかなか進まないので、みこりんは徐々に飽き始めてきたらしい。プラモデルそのものへの興味はあるのだが、自分で作るという行為に飽きたようである。緻密な作業が要求されるため、みこりんではまだ十分に参加できないのも影響しているようだ。残念だが、今回は私がお手本を見せてやることで、よしとすべきなのかもしれない。

 やがて、みこりんの眠る時間がやってきた。作業はようやく足回りが終了しつつある状況。今日中に、座席の取付けにいけるかどうか微妙なところだが、そこはぜひともみこりんにやらせてみたいので、今宵は内装を少しだけ組立てて、終ることとしよう。


2003.1.26(Sun)

プラモの続き

 ぎゅっと搾れば、ぼたぼたと水滴がしたたってきそうなほどの曇天である。昨日のうちに、庭仕事をやっておくべきだったと後悔しても後の祭り。こんな日には、ぬくぬくと部屋の中でみこりんと一緒にプラモ作りの続きでもしているのが吉。

 いよいよ座席の切り離しなので、みこりんにやってもらった。接着剤もついでに塗り塗りしてもらい、べったりとくっつける。これで内装はほぼ完了。あとは外装だ。ますますクルマっぽくなってゆくので、みこりんの反応も上々である。積極的にお手伝いを申し出てくれるので、できそうなところはみこりんにやってもらうことにした。
 透明部品を切り離し、窓枠にはめ、接着。ドアのひんじを折れないように取付け、金属支柱を固定すると、ガルウイングの出来上がり。リトラクタブル・ライトも抜かりなく組立てたが、みこりんに「これ、ひかる?」と問われ、一瞬答えに詰まってしまう。そうか、単純に光らせるくらいならやってもよかったかもしれないな。リアルタイプが大好きなみこりんのことだ、ぴかぴかと各部が光ればさぞや喜んでくれることだろう。

 こうして完成したボディと、シャーシを、ぱかっとくっつけると、ほぼクルマと言ってよい状況となる。が、タイヤの取付けに精密ドライバが必要なため、完成は明日へと持ち越しとなった。精密ドライバは、会社に持って行っているのだ。みこりんからも「せいみつどらいば、わすれないようにね」と、しっかり念を押されてしまった。
 こうして完成に近づいたカウンタックは、みこりんをかなり満足させているようだ。さっそく手にとり、いじくりたおしている。まだ接着剤の硬化が十分ではない部分があるので、けっこうヒヤヒヤものだったが、みこりんの好きにさせてやった。みこりんには心に決めた遊び方があるらしい。このプラモを買ってきた当初から、ドアが開くことをとても気にしていたとおり、その座席にブロックについている小さな人形を座らせるのだと意気込んでいる。ブロック・セットに付属している道路と街並みが描かれたシートを広げ、ブロックで家を作り始めた。ガレージにでもするつもりだろう。

 ただ1つだけ、みこりんには不満な点があるようだ。それは、ボディの色が、白だったこと。みこりんが欲しかったのは、パッケージ写真にある通りの、まばゆく明るい黄色いボディのカウンタックだった。だから、自分のペンを持ち出してきて、塗ろうとまでしているのだ。それもいいかなとも思ったが、プラモデルには専用の塗料があるのだと教えてやった。
 きらりんと瞳を輝かせるみこりん。さっそく週末にでも塗料を買ってこなくてはならないようだ。


2003.1.27(Mon)

 土曜日、『アッピー』をやっていたLicが、突然サーバに接続できなくなったと言っていた。『アッピー』は韓国発のネットワーク・ゲームなので、やはりあの影響だったのかもしれない。SQL Slammer、今回もまた既知のセキュリティホールが狙われた。
 いまだにIEやOEのセキュリティホールさへ塞いでいない人が大勢いるような現状だから、ましてやSQLサーバなど、こんなものなのかもしれない。が、あまりにずさんすぎやしないか。

 わかっているけど“諸般の事情”というやつでセキュリティパッチを当てられないのか、あるいはそんな事実をまったく知らずに過ごしているのか、はたまた、自分だけは大丈夫とノーテンキを決め込んでいるのか…。インターネットが社会生活に不可欠なインフラとなった暁には、車検ならぬPC検が必要かもしれない。その大前提として、ネット接続に免許が必要になったり、とか。でもネットが止まって人死にが出るとかにならない限りは、大丈夫かもしれないが。
 かといってWindowsUpdateのような機能がスマート化して、勝手に最新状態になっているという状況もぞっとする。しかし、状況はそのような流れにあるような気もする今日この頃。


2003.1.28(Tue)

怒りの理由

 ウズラ達に餌をやろうと、ケージの天井をパカッと開ける。いつもならば2羽のウズラはとまどいつつも右往左往するばかりなのだが、今夜は“さっちゃん”の様子がちょっと違った。じぃっと私の手の動きを目で追っていたかと思うと、突然、ぴょんとジャンプしたのだ。
 あまり本気になって跳んでいるようには見えなかったので、最初はじゃれついているのかと思った。が、着地した彼は、喉の奥で「ぐるるるるる」と低く唸り、姿勢を低くして構えている。どうも怒っているようだ。

 餌入れを取りだそうと手を入れると、その手に向かって嘴でつっついてくる。その勢いは、これまでよりも鋭さが3割ほどアップしているように感じられた。そうしている間も、唸り声は途切れず、よく見れば尾の辺りの羽毛が逆立っている。相当にヒートアップしているらしい。
 いったい何が彼をそこまで怒らせているのか。まったく心当たりがないので、戸惑うしかない。幸い、ウズラの体格では少々つっかかられても大して被害がないため、ほとんど無視していても大丈夫なのだが、気になってしょうがない。にゃんち君のように甘えた声ですりよってくれとまでは言わないが、せめて隣りの“ぴーちゃん”のようにおとなしくしていてほしいものだが。

 餌をミルで砕いてる間も、「ぐるるるるるるる」。水入れを取り出すときにも「ぐるるるるるるるる」。糞を取ってる時には、さらに激しくアタックされた。そして、いよいよすべての作業が終わり、水入れをケージに戻した時だった。
 さっちゃんが、いきなり陶器製の水入れにのしかかって行ったのだ。翼を広げ、ぐいぐいと。…なんとなく、彼の興奮の理由がわかったような気がした。

 擬似雌を入れておくのがいいのか、それとも撤去しておくのがいいのか、思案のしどころである。


2003.1.29(Wed)

雪の道

 あっというまに外は一面の雪景色。何もかもが白く染まって行く、夕刻。
 風の軌道が白く雪の道となり、轟々と渦を巻いているのが見える。これは積もりそうだ。
 早めに帰宅したほうがいいかもしれない。さっそくLicにその旨をメールした。ほどなく「了解」との返答があり、私は仕事の残りを超高速に仕上げにかかる。そうしている間にも、雪はどんどん降り積もって行ったのだった。

 Licから「渋滞中」との一報が入った。突然の雪に交通も麻痺状態なのかもしれない。予定よりも1時間遅れで、私は建物を出る。Licは未だ到着せず。
 猛烈な吹雪が顔面を襲う。とても痛い。傘を盾にしていないと歩けないほどだ。あっというまに体表温度は下がり、徐々に感覚が麻痺していくのがわかる。

 国道脇の歩道を歩いていると、いやに静かなのに気が付いた。クルマの姿がほとんどない。ちかちかとオレンジ色のランプを点滅させたのが、ところどころに止まっているだけだ。どうやら雪にタイヤをとられて身動きとれなくなったらしい。
 さらに進んでいくと、大型トラックが車線を塞ぐカタチに2台が並んで止まっているのが見えてきた。いずれもハザードランプを点灯させている。運転台に人影なし。その後方には、どこまでも続くクルマの列が、微動だにせず並んでいた。雪の滅多に降らない地方ならともかく、毎年雪に埋もれることのある場所で、いまだにノーマルタイヤしか装着していないとは。しかも天気予報で大雪の予報が出ていたのだ。無謀にもほどがある。

 やがてLicの運転するクルマと無事に合流を果たした私は、お腹すいた攻撃を繰り出すみこりんのために、途中で中華料理屋に立ちより、空腹を満たした。雪はまだまだ降り止まない。
 帰り道、ちょっとした上り坂で、渋滞発生。ここでもノーマルタイヤのクルマが立ち往生していたのだ。都合、5台ほど。わずか5台のために、渋滞は延々と続く。

 一部の意識の低い人間のために、大勢が迷惑を被る図というのは、数日前のネットの道でも展開された光景にどこか似ていた…


2003.1.30(Thr)

雪の道その後

 雪は20cmほどに積もっていた。雪道の運転は嫌いだ。特に朝の早い時間帯は、まだクルマもそれほど通っていないため、道路にも雪がたんまりと残っている。焦って出勤して事故っては元も子も無いので、午後から仕事に出かけることにした。Licとみこりんは臨時休暇である。
 靴下もズボンも二重に装着し、いつもは着ないセーターも着込み、分厚いジャンバーを身にまとって外に出る。足にはもちろん雪道用の長靴を履いている。ここまで厳重にしておけば、少々の寒気にも大丈夫。ざっくざっくと雪に足を埋めながら、ガレージへとたどり着いた。

 クルマに凍り付いた雪を落とし、発進。
 滑らないように慎重に、慎重に。スタッドレスタイヤでも、きゅるきゅるとブレる圧雪路。思わず両肩に力がこもる。こんな調子では、会社にたどり着くのはいつになることやらと思えるような道路が続いた。

 ところが…。長いトンネルを抜け、南側に出た途端、それまでの光景が幻であったかのように、雪の取り払われた黒いアスファルトが現われる。加速しても全然平気。な、なんじゃこりゃ。
 我が家の山奥さ加減を、改めて思い知った雪の日のことであった。でもイノシシにはまだ出会ってないんだが…


2003.1.31(Fri)

初めての連続跳び

 今年の初め、まだ正月休みの頃のことだ。みこりんはまだ、縄跳びが連続で跳べなかった。1回跳んでは、小休止、しばらく間があってもう1回、という具合に、間欠的にしか跳べてはいなかった。
 その主たる要因は、腕を連続的に回転させることができなかったことにある。何故、腕の回転が滑らかにならなかったかというと、手首のスナップを効かせる術を習得していなかったために、肩で腕を回していたことにあった。みこりんの腕の力では、まだ連続使用に筋肉は耐えられなかったのだ。それともう1つ。跳ぶのと同時に腕の回転が止まってしまっていたことにある。同時に2つのことをするには、まだ鍛練が十分ではなかった。

 ところが今週の月曜日の夜、私を迎えに来てくれた帰り道、みこりんはそっと教えてくれた。保育園で、縄跳びが連続で跳べるようになったことを。
 よほどそのことがうれしかったのか、帰宅するなり自室で跳んでみせようとしてくれた。けれども、部屋にあったビニール縄は、変にカタがついてしまっていて何度やっても足にからまってしまう。諦めきれないみこりんは、その後もチャレンジを続けてくれたが、やはり成功しなかった。私は、縄をまっすぐにするべく吊るしておくことにした。

 それから二日たった水曜日。ビニール縄は、かなりしゃきっと伸びていた。そして、ついにみこりんの連続跳びを、目の当りにすることとなる。ジャンプ2回で腕回転1回のリズムに乗って、みこりんは上手に跳んでいた。腕の回転が見違えるほどブレていない。手首だけで回す技を習得したことが、最大のポイントだろう。
 「いーち、にーぃ、さーん…」みこりんが数えながら跳んでいる。「じゅういち、じゅうにー、…」ときて、ついに「じゅなな」まで数えることに成功した。素晴らしい進歩だ。見違えるような跳びっぷりに、しばらく見とれてしまっていた……。
 この過程をビデオに残しておくのだった、と気付いたのはずっとあとになってからのことだ。連続跳びできない時代との比較のためにも、記録しておくべきだったのに、うっかり忘れてしまっていた。まさかこれほど早く上達するとは思っていなかったというのもあるが、近頃ビデオを稼動させる習慣が失せつつあるのが最大の問題かもしれない。記憶だけでなく、記録しておかねば。“初めて”のことはこれからも続くだろう。次回は、きっと忘れまい。


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