2007.7.1(Sun)

カレーの日

 夕食のリクエストをみこりんに聞いてみたところ、いまひとつすっきりと答えが出てこなかったので、カレーに決定。カレーなら、みこりんはいつもの2倍食べてくれる。迷ったら、カレーだ。
 というわけで、ルーがあるかどうか戸棚をチェック。いつものルー専用フォルダの中に、プライムバーモントカレー“甘口”を2箱発見。箱に書かれた“作り方”を見ると、10皿分と書いてあった。1箱は開封されてルーのいくつかはなくなっていたが、残りの1箱は未開封。これだけ余ってれば10皿分は余裕だろう。
 あとは野菜と、肉。ちょうど昨日菜園で収穫したばかりのナスが1本ある。これも入れよう。肉は、粗挽きソーセージで代用する。

 *

 炒め、煮込み、と順調にカレーは仕上がっていき、きっちり30分煮込んだところで完成。
 ほかほかの炊きたてご飯にルーをかけている時、みこりんがやや怪訝そうな声で「とーさん、これうすいよ?」と言った。
 たしかにちょっと薄い…、でも、水はちゃんと10皿分計って入れた…、はず。出来立てだから水っぽいんだろうか。やはりカレーは一晩寝かせないとダメか。
 このカレールーは、1箱に2パッケージ入っている。形状は、よくある板チョコ型ではなく円盤のようになっており、それがさらに5等分されて最小単位となる。カレールーというより、なにやらチーズっぽい形…

 食べ始めたみこりんが、「このジャガイモ、ジャガイモの味しかしない」と言った。
 …ふむ、カレーというよりは、この感じ、どっちかというとポトフ系の煮込み野菜な雰囲気が漂っているな。
 さらにみこりんが言う。「このニンジン、ニンジンの味しかしないよ?」
 そ、そうだね。これはちょっと変だ。

 改めて箱をじっと見つめてみる。表面に書かれた“1箱10皿分”の文字が、するりと頭の中に入ってきているのだが、その意味するところを理解するのにひどく時間がかかっている。まるで思考が停止してしまっているかのように、脳の動きがものすごく鈍い。

 1箱10皿分…
 1箱…、1箱…、1箱…?
 このカレールーは、1箱に、円盤が2枚入っていた。
 しかし、私は円盤を………、1枚しか使ってないような?

 箱の中には円盤が1枚まるまる残っていた。そいつを取り出し、ぱきっと割って、最小単位に分割する。チーズのような形のルーが5つ出来た。
 試しにその中の1つを、熱気の残る鍋へと投入。菜箸でつまんでよく溶かし。
 「お!なんか色がカレーっぽくなったような?」
 みこりんもうんうんと頷いている。
 さらにルーを2つ入れてみた。もともと10皿分の水量で作っていて、ここから3皿分抜いたから、残りは7皿分。もし私の推測が確かなら、これできっちり正しい分量になったはず。

 鍋の中は、こってりとろーり変貌を遂げていた。さっきまでの水っぽさは微塵もない。改めてみこりんの皿にルーをかけてやったら、色がぜんぜん違っていた。
 みこりんがそれをスプーンですくい、さっそく食べるのかと思ったら私に向けて差し出してくる。
 「食べてみて」
 抜かりのない、みこりんであった。

 今度こそ、カレーは完成していた。


2007.7.2(Mon)

サンタの秘密

 これまでサンタクロースは、みこりんにとって、謎の人だった。クリスマスになるとこっそり家の中に入ってきて、枕元にプレゼントを置いてゆく。どこから入ってくるのか、どうやってプレゼントを作っているのか、みこりんはずっと不思議に思っていた。
 そのはずだった…。しかし、みこりんは見てしまったらしい。サンタクロースの秘密を解き明かす、ゆるぎない証拠物件を。

 昨年のみこりんのクリスマスプレゼントは、“たまごっちスクール”をメインに、他にもちょっとしたものが入っていたのだが、その中の1つに、やはりたまごっちのキャラを模したストラップがあった。数日後、みこりんはその品と同じ名前が刻印されたレシートを、Licの財布の中に見つけた…

 みこりんのお友達も、サンタはいないのではないかという見解を持つ子が多いという。でも、みこりんにはまだ迷いがあるようだ。レシートの品と同じものがプレゼントに入っていたとはいえ、偶然の一致ということもある。そこで、今年こそサンタの姿を見てやろうと、今からすでに意気込んでいるのだった。
 果たしてサンタは存在するのか。みこりんの探求は続く。


2007.7.4(Wed)

ロールアウト

 昨夜みこりんは、眠りにつく前、照る照る坊主を3つこしらえて、窓に貼った。
 雨降りませんように…
 そして今朝、空は思いっきり曇天だった。照る照る坊主3つ分の神通力も届かず。

 学校では今日、みこりんの学年が保育園の子供達を招待してプールで交流を深めることになっていた。雨が降ってはプールは中止だ。ゆえに、晴れて欲しかった。

 *

 お昼前、ばらばらと雨が降る。
 私は、自席から窓を打つ雨を見やりつつ、まさに今、工場敷地内で執り行われている式典のことを考えていた。
 何十年ぶりという国産の航空機が2機、ハンガーからロールアウトするめでたき日。晴れて欲しかったが…、その前途を覆う困難を象徴するかのような雨。ふ、不吉な。

 だがしかし、このくらいのトーンが丁度いいのかもしれない。地にしっかり足をつけて、着実に前へ進むもう。


2007.7.5(Thr)

かくれんぼ

 夕方といってもこの時期は、まだ太陽もさほど高度を落としておらず明るい。帰宅した私は、さっそく閉め切られた家中の窓を全開にして風を通す。昨日の雨とは打って変わって、はやくも真夏の暑さを予感させるまばゆい光りは、吹き抜ける風をも輝いて見せてくれる。あぁ、このまま畳の上に大の字になって寝転びたい。そんな衝動にかられてしまうシチュエーション。

 ところで…、私よりも先に戻っているはずのみこりんはどこにいるのだろう。さっき窓を開けるために、片端から部屋に入ってみたが、どこにもその姿がなかったような?
 リビングには、みこりんの赤いランドセルがあり、その傍に、みこりん用の合鍵が落ちていた。そして私が戻ってきたとき、玄関のドアに鍵はかかっていたはず。ということは…、みこりんは家の中にいるはずだった。

 もう一度、順番に部屋を確認して回る。
 念のため、みこりんの隠れそうな押入れの中とか、布団の中とか、いちいちチェックしてみた。が、やはり、みこりんの姿はどこにも見えず。
 はて?
 立ち止まり、ちょっと熟考。
 想定しうる可能性をすべて考慮しただろうか。見落とした点はないか。
 だんだん怖い考えになってしまいそうになり、鼓動が少々早くなる。

 うーん…。額に手を当て、洗面台の前まで来たとき、私はその奥にあるガラス戸の存在に今初めて気がついたことに驚いてしまった。こんなわかりやすい場所を忘れていたとは。
 私が唯一確認していなかった場所。風呂場のガラス戸を、がらがらと開けた。
 一瞬無人に見えて、さーっと血の気が引いたような気がした。でも、すぐに浴槽の一番底の部分に張り付くように隠れているみこりんの背中を発見。
 「みこりん見つけた!」

 みこりんの笑い声は、生気に満ちていた。


2007.7.7(Sat)

怖い本

こわーい!都市伝説&怪談DX 昨日、家族で作った七夕飾りが、庭先でばたばたと強い風に煽られて乾いた音をたてている。それをBGM代わりに聞きながら、みこりんが買ってきたばかりの『こわーい!都市伝説&怪談DX』を読みふけっていた。
 横からそぉっとページを覗いてみると、こういう本にありがちな心霊写真の特集ページ等があり、なかなか恐ろしげである。みこりんは怖くないのだろうか。人一倍怖がりなのに、なぜか怪談モノの本を読むのは大好きというのが、どうにも腑に落ちないのだが…

 *

 日もとっぷりと暮れ、宵闇に包まれる頃、みこりんの挙動がなにやら妙であった。私がみこりんのそばを離れたりすると、そわそわと落ち着きがなく、ふらふらーっと後をついてきて、とりとめのない会話を始めたり。
 私がトイレの友に、やはりこれも今日買ってきたばかりの『鉄腕バーディー (16)』を持ち込んで読んでいると、みこりんがそーっとドアを開けて顔を覗かせた。そしてもじもじとしながら、こう言った。

 「こわくて、一人でお風呂入れん…」

 どうやら怖い本の効き目は抜群だったらしい。
 これまでも怪談本を読んだ後は、やはり怖くて、おどろおどろしい本の表紙を隠すように本棚の奥の方に移動させたり、といったことはやっていたのだとみこりんは言った。そんなみこりんの本棚には、怖い本が1冊2冊3冊4冊……、けっこうある。これに加えて学校の図書室でも借りてくるタイプなので、これまでに読破した怖い系の本は数十冊に上るのではなかろうか。
 怖いんだけれど、ついつい見てしまいたくなる、“怖いもの見たさ”の術中にすっぽりはまってしまっているとみえる。

 でも、これでちょっと安心した。9歳というみこりんの年齢で、あれだけ怖い心霊写真や体験談等を見たり読んだりして、ぜんぜん平気だったらある意味そっちの方が怖い。

 遠い記憶を探ってみれば、私も子供だった頃、友達から借りた心霊写真の本が夜中どうしても気になって、分厚い図鑑でサンドイッチ状態にして厳重に保管したりしていたような…。そんなことをふと思い出した夜、星空は、雲で隠れて見えなかった。


2007.7.8(Sun)

スイカとプラム

 時折、ふっと意識が遠のくというか、体の平衡感覚に狂いが生じたりして、体調はいまひとつよろしくない。…が、庭の雑草がまたしても夏の暑さと梅雨の湿気に勇気付けられ、ものすごい状況になりつつあったので、庭に出た。
 まず東側の、ささやかな菜園の状況などをチェック。トマトの枝が伸び放題で、なんだか枝垂れ柳みたいなことになっていて驚く。相変わらず、おそるべき生命力だ。摘み残した脇芽から伸びた枝が本体を圧倒するくらいにでかくなって、その自重で垂れ下がっているのだった。
 金属製の支柱が、弓なりに曲がっている。このまま放っておくと、ぽっきりといってしまうことだろう。さっそく補強しなくては。

 そんな様子を見ていたみこりんが、「トマトじゃないみたい」と感想を漏らしていた。その異形の株姿もさることながら、特に、ミニトマトの実が、異様にでっかく鈴なり状態なのがみこりん的にはちょっと怖いらしい。色も黄色いタイプだし、細長く、実の全長4cmほどと、ミニというよりミディと形容した方がしっくりきそうな迫力がある。
 普段なら率先して色づいた実を収穫してくれるところだが、みこりんがびびっているので、私が代わりに収穫しておいた。ザルに盛ると、たしかにミニトマトというよりは、何か新種の果実のようだなと思う。1つ口に放り込み、噛みしめてみると、ほどほどに甘いトマトの味がした。ん、味は大丈夫。

 キュウリは下半分が枯れ始めており、例年のごとく消滅の危機に瀕していた。その代わりといっては何だが、こぼれ種で発芽したゴーヤが5〜6株、しゅるしゅるとネットに絡み付いて生長中。こちらはとても頑強で、冬が来るまで緑を維持する。トマト同様、生命力に満ち溢れている。

 そうやって地面より上の部分にばかり目を向けていたので、足元にあったそれを知らずに踏みつけてしまうところだった。菜園からはみ出すようにして伸びた蔓が、雑草の中に埋もれ、そこで密やかに育っていたもの。それは、みこりん待望のスイカであった。
 ちょうど片手にのっかるサイズで、形はラグビーボール状をしており、その形状ゆえに、ころんと横倒しになってはいたものの、緑の肌に黒い稲妻模様は健在だ。このまま雑草の海に沈めていては、虫に食われてぼろぼろになるか、太陽がしっかり当たらずへろへろになるか、いずれにしてもスイカの実にとってよい環境とは言いがたい。さっそく雑草を抜きにかかる。

 こちら菜園方面では、ドクダミが雑草の大半を占めていた。ドクダミの有効利用も一時期考えて、いろいろ調べてみたこともあるのだが、お茶にするにしても結構な手間がかかるようなので、結局“抜く”という手段しか残らず。でもやっぱりちょっともったいない気もする…
 そんなことを思いつつ、抜いて抜いて山を作り上げ、菜園方面の雑草抜き完了。スイカの幼い実は、これですっきりと地面の上ですくすくと育ってくれることだろう。念のため、実の下に鉢皿を逆さまに敷いてみた。今年の梅雨明けは7月20日以降なんて説もあるので、湿気対策だ。ここはあまり水はけがよくない。
 スイカが鉢皿に乗っているのを見て、みこりんがちょっと怪訝そう。自分なら鉢皿よりも、もっとよいモノを見つけられるといった感じでウッドデッキをがさごそ探していたようだが、結局、よいモノは見つからなかったらしく、このままでいくことになった。無事、スイカが大きくなりますように。

 菜園の隣にあるプラムの木には、今年はたくさんの実がついていた。全部で10個以上はあるだろうか。例年、多くても4個とかそんな感じだったので、今年がいかに多いかがわかる。
 みこりんも、この実が熟すのを楽しみにしていた。熟す過程で、適期を逃すと落果してしまうため、数が多ければ無事に収穫できるものも増えるだろうという読みである。ただ、台風にやられるとあっさり全滅なんてこともあったりするので油断できない。

 プラムの実は、まだ青い。食べるにはもう少し日数が必要だった。しかし、みこりんはどうしてもプラムの実を調べてみたくなったらしい。「おとーさん、プラムの実、1つとってもよい?」と聞いてきた。
 みこりんの探究心を満たすため許可してやると、いそいそと木に近づき、丸々と大きな実を1つもぎとり、しげしげと見つめていた。そして「かたいね」と言った。
 その後、そのプラムの実がどうなったかというと……、みこりんのままごとセットによって“調理”され、皿に盛り付けられていたのであった。みこりんは、プラムの実の中には、桃のようにでっかい種が1つあることを学んだ。

 庭の雑草抜き、完了。葉っぱの減ってきたバラの世話もしてやりたかったが、体の方が限界らしいので、今日の作業はこれにて終了。


2007.7.9(Mon)

深海微生物

ちょっと前のことになるが、こんなニュースがあって、なぜだか奇妙に想像力を刺激してくれたのでよく覚えている。

ピロリ菌、先祖は14億年前の深海細菌 ゲノム解読

 ヒトの胃の中に生息し、胃がんや慢性胃炎などの一因とされるピロリ菌は、深海底の熱水噴出口に生息する特殊な微生物が祖先だったことが、海洋研究開発機構のゲノム解析で分かった。ピロリ菌の病原性や進化の仕組みを解明する手掛かりが得られるという。2日付の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。
 同機構極限環境生物圏研究センターの中川聡研究員らは、沖縄近海の水深約1000メートルの熱水噴出口から、2種類の微生物を採取。ゲノム(全遺伝情報)を解読して性質を詳しく調べた。
 その結果、いずれも「イプシロンプロテオバクテリア」と呼ばれる細菌の仲間で、ピロリ菌の近縁種と判明。遺伝子の塩基配列の分析から、ピロリ菌の祖先にあたることを突き止めた。両者は約14億年前に枝分かれしたとの説があるという。

7月3日11時2分配信 産経新聞

 深海、それは未知なるフロンティア…。というわけで、みこりんにもさっそくこの話を聞かせてやってみたところ、やはり異様に興味を示して聞き入ってくれた。みこりんはこの手の生物の進化がらみの話には、食いつきがよい。その頃、ヒトはいたのか、どうやって深海の生物起源のものが現在のヒトの体内に棲息しているのか。みこりんはしばらく目を虚空に泳がせて考え込んだ後、おもむろにこう言った。

 「昔、深海のお魚とか貝とかを食べてしまった生き物がいて、それがずぅっと生き続けてるんじゃないかな」

 もちろん、この“生き続ける”というのは同一個体が不死という意味ではなくて、世代交代を繰り返しつつも別の生き物の体内で生き続けているという意味である。それがいつしかヒトにも感染し、それが現在のピロリ菌となった…。これが、みこりんによる説である。

 なかなか興味深い。大昔は深海によらず、過酷な環境はもっと普通に存在していて、現在よりも他の生物との接点が多かったのかもしれない。
 極限環境における研究が進めば、さらに驚くべき発見が待っているやもしれず。私的には、他惑星の月に存在する“海”の調査にとても関心を持っているのだが、私が生きている間に、何かわかるといいのだけれど…。


2007.7.10(Tue)

鶏肉のトマトソースに煮込み

 一日の仕事を終え、家に帰り着く。今夜のメニューはLicの作ってくれた鶏肉のトマトソース煮込みだ。さっそく温め直してみこりんと二人、食べ始める。
 箸使いはさほど悪くはない二人だったが、骨付き鶏肉は箸でつまむとつるんつるん滑ってしまう。そこで箸を諦め、がっしと手掴みに挑戦。ん、食べやすい。
 そんな私を見て、みこりんがそっと手ぬぐいを水で濡らして固く絞り、お手拭代わりに差し出してくれたのである。
 …、大きくなったな、みこりん。しみじみとそんなことを思いつつ。

 みこりんも自分のお手拭を用意して、手掴みで食べ始め。ところで、ちょっとした隙に鶏肉が手をすり抜け、皿の中に、ぽちゃんと落ちた。
 当然、汁が跳ねる。そのうちのいくつかは、みこりんお気に入りの、買ってもらったばかりという白いシャツにぺっとりと付いてしまった。
 目が点になって固まっているみこりん。私も一瞬動きが止まってしまったが、「早く洗わねば」と思い直し、とっとと準備を始める。

 こういう食べこぼしの染みは、時間が勝負である。洗面台の下の戸棚から、こういう時のために使う専用の洗剤を発掘し、さっそく汚れに直接塗り塗り。そのあとは中性洗剤で普通に洗うらしいのだが、この中性洗剤を見つけるのにちょっと時間を食ってしまった。
 洗濯機よりも、洗面器の中でしばし浸しておくことを選び、およそ20分ほど手で軽く揉み洗い。強すぎず、繊維を痛めないように。

 その後は、普通にネットに入れて洗濯機でぐおんぐおん回し。
 約40分後、洗いは完了した。ぱんと白いシャツを広げてみると、どこにも染みの痕跡は見当たらず。成功だ。みこりんも「ありがとう!おとーさん」と、うれしそうであった。

 今回の教訓。お気に入りの白いシャツで汁の跳ねる食べ物を食べてはいけない。もしくはナフキン装着のこと。


2007.7.11(Wed)

『帝国のテーマ』

Selections from Final Fantasy XII [Original Soundtrack] 次のエレクトーン発表会は、秋。その演奏曲として、みこりんはかなり悩んだ結果、『帝国のテーマ』を選んだ。その名を聞いたとき、私は某SF映画の方を連想してしまったのだが(実際、なんとなく似てなくもない…)、この曲は『Selections from Final Fantasy XII [Original Soundtrack]』の中に収められている曲である。
 そう、FINAL FANTASY XII で使用されている楽曲だ。前回の発表会では、同じく FINAL FANTASY XII から、『交響詩「希望」第三楽章 ロード・オブ・ホープ』を演奏したが、やや不本意な結果に終わってしまったので、今回は気合を込めての選曲なのではないかと思われる。

 すでに楽譜も購入済み。あとは寝る前に聴く音楽としてCD-Rに焼くだけだったが、1曲のためにCD-R丸々1枚使うのは、なんだかもったいないような気もしたので、みこりんの希望を聞きつつ、同アルバムから他の楽曲も数曲チョイスして焼き焼き。それでも20分余りにしかならず、あっという間に焼き上がり。
 みこりんは焼くのにもっと時間がかかると思っていたらしく、かなりびっくりしていたようだが、さっそく一人寝の友として焼きあがったばかりのCD-Rを手に、自室へと消えていったのであった。

 願わくば、今度こそ、ミスなく弾けますように。


2007.7.12(Thr)

セルシン

 肩凝りと首の凝り・痛み、眼球の圧迫感があまりにひどく、先週までは自宅に帰ってもそのままダウンしそうになる日々が続いていたのだけれど、今週はじめにかかりつけの医師からセルシンを処方してもらってからは、嘘のようにそれらの症状が消えた。…魔法のようだが、この薬が私の体調にぴったり合ったということだろうか。ずっと以前、やはり肩凝り用として別の種類の薬を処方してもらっていた時には、ほとんど効果がなかったのに比べて、あまりの違いに自分でも驚いている。
 ただ、服用してしばらくは睡魔がやってくるのが玉に瑕ではあるのだが、その波を乗り切ってしまえば、あとは快適そのもの。肩凝りも、首も痛みも、眼球の圧迫感も、どこか遠くに消え去ってしまう。んー、素晴らしい。

 でも、あまりに効き過ぎる薬というのもちょっと怖いような気もしつつ、それでも体がとてもラクになったのはありがたい。頭の回転もよくなったような感じで、仕事の効率も上がっている。
 当分、これのお世話になりそうだ。


2007.7.13(Fri)

台風前夜

 昨日、みこりんが台風4号の話をしていたので、どこかに発生したのは知っていたが、まさかここまで直撃コースに乗っているとは思っていなかった。当たり所が悪ければ、かなり庭木に被害が出そう。いや、庭木どころか家の方もちょっとやばい。

 夕方、帰宅した段階では嵐の前の静けさか、雨もなく、不気味に鉛色した空が低く立ち込めるのみである。いまのうちに、とっとと台風対策をやってしまおうというわけで、飛んでいきそうなものをウッドデッキ内に収容し、サンルームの蛇腹状の窓を閉め切り、外界と遮断。これでいくら外を嵐が吹き荒れようが、サンルームの中は安泰だ。
 ただ、みこりんが一番心配しているプラムの木に実っている果実が、強風に耐えられるかどうかだが……、これは当日になってみないとなんとも言えず。できれば全滅は避けて欲しいけれど、過去の例から類推するに、あまり状況はよろしくない。
 あとは台風のコースが大きくずれてくれることを祈るだけ。みこりんは照る照る坊主を作っても手遅れだと言っていた。なぜなら、すでに台風は発生してしまっているから。

 どうやら、みこりんにとっての照る照る坊主とは、雨などが降り始める前に設置しないと効果を発揮しないアイテムとして定義付けられているらしい。私は、すでに状況が始まっていても、照る照る坊主の神通力は及ぶと幼少の頃に聞いたような気もする…。
 真夜中、激しく雨が降り始めた。
 プラムの実が落ちませんように。果たして願いは届くだろうか。


2007.7.14(Sat)

野菜たち

 朝から激しい雨が降り続いていた。台風の歩みは、のったりと遅く、こちらにたどり着くには今夜くらいまでかかるらしい。それならばと、昨夜できなかった菜園の野菜達を救出に向かうことにする。

 閉め切ったサンルームをちょっとだけ開け、みこりん用の小さい黄色の傘を差して庭に出た。大人用の傘は、みなクルマの中に置いてあるため、手っ取り早く使える傘といえばみこりん用のしかなかったわけだが、傘が小さいと小回りが効いて、枝葉の茂った狭い空間を通り抜けるには都合がよかった。
 そして庭の東側にあるささやかな菜園をチェック。

 黒光りするナスが2つほど、重そうに枝を垂らしている。大きさを考慮し、1つを収穫。残り1つはちょっと微妙だったので取り置き。それでもぐんと軽くなった枝は、しゃきっと上を向いたのでよしとする。
 黄色いミニトマトは…、なにやら内側から実が破裂してるやつがそこかしこにあった。数が多いためいったんザルを取りに戻り、色づいたやつを根こそぎ収穫。破裂した部分は、ぎりぎり食べられそうな雰囲気。内部が完全に露出してしまっているものは、中に先客がいるやもしれないので、土に還し。
 でかい普通の赤いトマトは、今年はなぜか出来がよく、重そうにたくさんの実をつけていたが、食べられる段階にあるのは3つくらい。しかしこちらは支柱を4本に増強してあるのでたぶん問題ないはず。赤く完熟した3つだけ収穫しておいた。

 キュウリは……、もうだめそう。下半分の葉が消滅して、上の方も元気がない。ネットに絡み付いているので、風で倒れることはなさそうだが…
 ピーマンも、株は元気だったが、実の方は残らず小さいまま黄色く変色してしまっており、やむなく本体から切り離し。無数に取り付いたカメムシに生気を奪われてしまっているのかもしれない。

 スイカの子供は先週より一回り大きくなった感じで、こちらは問題なさそう。
 そして最後に、プラムの木をじっくり見分。すでに実のいくつかは落果してしまっていたものの、落ちた中にはすでに色づき食べられそうなやつが混じっていたのでさっそく保護しておいた。とはいえ大部分がアリにたかられていたためそのまま放置せざるをえなかったのが残念至極。それにしても先週はまだまだ青い果実だったものが、わずか1週間で食べられるまでに熟してしまうとは、恐るべし。枝に残った数少ない実のいくつかは、鳥によってついばまれ、先を越されてしまっていた。それでも3つほど無事なのを確認し、家の中に戻ったのだった。枝についてるやつは、みこりんと収穫しなくてはなるまい。そのみこりんは、Licと共に、Licの実家に泊りがけで出かけているため、今宵台風の直撃を食らうと枝に残った実の生存もかなり危うく、今年もまた収穫できない可能性もあり。

 *

 ザルの中の野菜達を洗っていると、赤いトマトの表面に、1ミリほどの小さな物体を発見した。視力が落ちているため、じーっと見つめても瞬時に何だか判定できなかったのが哀しいところだが、その物体はカタツムリの赤ちゃんであった。小さいのに、ちゃんと殻までついているところが愛らしい。
 これほど小さなカタツムリを見たのは、もう何十年ぶりだろうか…。近頃ではカタツムリの存在そのものが、私の身近から消えつつあるのでちょっとうれしい。壊さないようにそっと指にとり、雨の降りしきる庭の、木の葉にくっつけておいた。
 無事に大きくなってくれることを願いつつ。

 *

 真夜中、ふっと気がついてみるとリビングにいた。いつのまにか寝入ってしまっていたようだ。
 家の外では吹き荒れる風の音。時折、ぎしぎしと家が軋む。暗がりの部屋の中、じっとこちらを見つめるにゃんちくんのきらりと輝く瞳が、妙に野生動物っぽいなと思った。
 風の音を聞いているうち、またしても睡魔が降りて来て、意識は深く沈んでいった…


2007.7.15(Sun)

嵐の後で

 台風一家…、もとい、台風一過で、お約束の猛烈な晴れ。
 明日はカレンダーによれば祭日だが、私は仕事があるので今日中に済ませておかねばならないことをやってしまうことにする。

 みこりんが産まれた年に、玄関脇に植えた桃色の花を咲かせるハリエンジュ(ニセアカシア)の木の、2階部分にさしかかる途中の太い枝が2本ほど、歩道側に倒れ込んできているのだった。木そのものもだいぶ傾いてしまっているようだ。本格的に修復するには一人では無理っぽいので、倒れ込んでいる枝の処理だけを行う。このまま歩道を塞いでいてはまずかろう。

 高枝切り鋏、剪定用鋏2種、ノコギリ等を用意し、垂れ下がっている枝をちょっとずつ切っては落とし、切っては落とし。
 枝から伸びている無数の葉が、徐々に歩道にうず高く積まれてゆく。いつのまにかものすごい茂りようだ。数年前、瀕死状態にあったとは思えないほどに。

 午後6時のチャイムが団地内に鳴り響く頃、ようやく垂れ下がっていた枝をすべて切り離すことに成功した。あとはこれを小さく刻んでゴミ袋に詰めるだけ。…だが、これがまたちまちまと気の長い作業の始まりであった。刻まず無理やり袋詰めも可能だが、そんなことをしてしまうとゴミ袋が何枚必要か考えただけで気が重くなりそうだったので、徹底的に刻んだ。

 鋏を持つ手の豆がつぶれそうになりつつも、およそ一時間かけてゴミ袋2つと半分に収めることができた。最後のほうは、太い枝をノコギリで切断するのも億劫になるほど腕の力を消耗してしまっていたが、これで当分、歩道の安全は保障される。木本体が傾いているのを考えるとちょっと不安は残るが、とりあえず今日の作業はこれでおしまい。


2007.7.16(Mon)

揺れ揺れ

 今朝も気付いたらリビングにいた。またしてもそのまま寝入ってしまっていたようだ。背中の辺りが妙に傷む。でもまぁそのおかげで早朝に目覚めることが出来たので、とっとと出勤してしまうことにする。

 なんかクルマの数が少ないな、と思ったら今日は祭日なことにあとから気付く。頭ぼけぼけである。
 私の勤務先では今日が仕事の代わりに、お盆休みが長期休暇となるようカレンダーが設定されているため、3連休がつぶれてもあまり問題なし。

 *

 仕事中、へんに床が揺れているのを感じた。1秒か2秒周期くらいで、横方向にゆるやかに、ゆーらゆーらと。10秒くらい継続しただろうか。
 ここは5階、でも1階と2階を吹き抜けで造り付けられている組み立て部門が入っているため、でかいマシンが搬入されてたりするとたまにこうして揺れることもあり、特に不審には思わなかった。

 *

 夜、家に戻ってから、新潟方面が地震でえらいことになってるのを知り、驚く。
 近頃みこりんは、東海、東南海地震を妙に恐れていた。…子供の直感、だろうか。
 こちらも備えておいたほうがよいのかもしれない。


2007.7.17(Tue)

朝、突然に…

 小さい頃、みこりんはよく鼻血が出ていた。小学校に入ってからは、その頻度は減ってはいたものの、今朝のように突如として鼻血が出てしまうこともままあり。
 目覚めた時に鼻血が出るという傾向があるようだ。覚醒し、体が活動を開始するにあたって血圧が上昇、それと共に、血管の弱い部分から出血、という状況なのだろうか。

 ただ今朝のは、両方の鼻の穴から一度に出てきたとみこりんは言っていた。普段ならば片方だけ。少し気になる現象。


2007.7.18(Wed)

ブラックリスト

 電子メール同様、固定電話もかかってくるのはその大部分が迷惑なものになってしまって幾歳月。会社では、「そのような者は当課にはおりません」で対処する方向になっているが(近頃はSGIを名乗っていかにも本物のSilicon Graphics,Inc.であるかのように偽装する業者も出てきたが、何度もかかってくるとこちらも学習するのでそれも通用しなくなった)、我が家では、ナンバーディスプレイとナンバーリクエストで対応している。

 電話に出る前に電話番号がわかると、いかにもあやしい番号からのものには出なくてすむのでストレスがたまらなくて良い。かかってくる可能性のある人の番号は、アドレス帳に登録してある名称に変換されて表示されるため間違うこともない。たまに本当に用事のある人を逃す場合もあるが、そういう人はちゃんと留守電にメッセージを残してくれるので大概は問題なし。
 とはいえ、夜中に電話が鳴るとドキッとさせられるのも鬱陶しいため、頻繁にコールしてくる迷惑電話には、電話機の機能として搭載されているブラックリストに乗せてしまう。こうすればコール音は鳴らなくなる…、のだが、このブラックリストに乗せる手順がなかなかややこしい。

 うちの固定電話機は、アドレス帳を1種類しか内蔵しておらず、ブラックリストに乗せる電話番号も、一度、アドレス帳に登録せねばならないのだった。そうした上で、ブラックリストとしてその電話番号を設定するという2段構えになっている。しかも着信リストからアドレス帳への変換ができないため、一度電話番号を紙にメモってから、アドレス帳に登録するという手順が要求されてしまう。
 私の期待するユーザーインタフェースとしては、ブラックリスト専用のアドレス帳があり、かかってきた怪しい番号は着信リストからボタン1つでブラックリストに乗せることができる、というものなのだが…。ケータイには、この程度の機能は普通についているため、よけいその落差が鮮明に浮き彫りに。
 こうやって、徐々に固定電話機は姿を消していってしまうのだろうな、と思う今日この頃。


2007.7.20(Fri)

朝の情景

 気が付けば、7月も下旬。みこりんは今日、1学期の終業式を迎える。つまり、明日からは夏休みだ。…光陰矢のごとし。

 朝、出勤しようとガレージに向かうと、クルマのナンバープレートの上に、何か甲虫っぽい虫がくっついているのを見つけた。けっこうでかい。ちょっとわくわくしながら観察してみると、どうやらカミキリムシ、しかもこの特徴的な黄土色の体色はミヤマカミキリであろう。
 このままくっつけていっては危険なので、そっと手に取り、傍らの花桃の幹に止まらせてやった。

 あぁ、もうそんな季節なのだなと、強烈に夏を実感した朝のひと時。


2007.7.21(Sat)

俳句教室

 俳句クラブに入っている関係で、みこりんが自治体主催の俳句教室に参加することを決めたのが先月のこと。まだまだ先のような気がしていたのだが、今日がその当日である。同じ学校からみこりん一人きりの参加だったら私について来て欲しそうな感じだったが、幸い、同じクラスのお友達も一人参加することがわかって、みこりんも何だか心強そうだった。
 朝から雨のぐずつく天候だったけれど、雨天決行。俳句を詠むには晴天よりも、こうした非日常な情景のほうがよいのかもしれない。

 バスが苦手なみこりんのために、現地集合を選択し、クルマで送っていくことにしてあった。集合場所は、前日にオンラインマップで詳細に脳内イメージしておいたので、方向音痴な私でも大丈夫。方向的に先月開催されたエレクトーン発表会場に近いというのもラッキーだった。
 Licのこしらえてくれたお弁当を、みこりんの小さなリュックに入れ、30分前に出発。地図によれば、かなりの山奥らしい。県道からわき道に入り、延々と1本道が続く、はず。

 わき道の入り口には、目指す集合場所となっているキャンプ場の看板が出ていたので、迷うことなく山道へ入ることが出来た。それにしても、対向車が来たらどうなってしまうのかと不安になってしまうほどの細い道。しかもガードレールなしの、片側が川というなかなかスリリングなコースである。
 山際に、自生しているのか植えられているのか、色鮮やかに青紫の紫陽花が咲き誇っており、みこりんが思わず「きれい!」と言っていた。たしかに美しい色合いだ。山の緑と、紫陽花の青。でもそれに見とれていると脱輪しそうなので、慎重に運転を続ける。
 と、目の前を何かが横切っていくのが見えた。猫よりもちょっと大きいサイズだったが、あれはどう見ても…、サルだったような。うーん、野生のサルを生で見たのはこれが初めてだ。野生のサルが通う山奥、か。とてつもなく山深い場所なのだと、改めて実感する。

 集合時刻を3分ほどオーバーして現地に到着。しかし、市役所から出発したはずのバスは、まだ見えず。とりあえずクルマを降りてみると、隣に停めてあったクルマのウインドウが開き、中からみこりんサイズの女の子が顔を覗かせた。じっとこっちを見ている。どこか記憶にある表情だった。みこりんのクラスから参加する子は、保育園も一緒だったので、私も小さい頃の姿は記憶にある。その面影があった。
 みこりんもクルマからおりてきたので、その子が間違いなくみこりんのお友達であることがわかった。妹と一緒に参加するらしい。
 それからほどなくしてバス到着。予想ではマイクロバス程度と思っていたら、大型のバスで、しかも降りてくる子供達の人数が半端じゃなく多い。軽く一クラス分くらいはいそう。俳句教室大盛況である。俳句の先生と引率のボランティアリーダーや市役所の職員さんなども揃い、さっそく俳句教室が始まったのを見届けて、私はいったん家に戻ることにする。お迎え予定時刻は昼食をはさんだ午後2時なので、まだ4時間以上あった。

 *

 お迎え時刻は、予定表によれば午後2時だったが、早めに終わることを予想して午後1時半には午後の解散場所に到着していた。解散場所は、朝の集合場所から程近い場所にある、市役所の現地事務所だ。事務所とはいっても数年前に近隣の市が合併したため、元は本物の市役所だった場所である。建物はかなりでかい。
 建物が大きすぎてどこで待っていればよいのか悩む。入り口には参院選挙の事前投票場所が設けられていたため、待合室もなく。とにかくバスの近くにいれば間違いないだろうと、解散時刻よりちょっと前の1時45分頃、バスの付近で待っていると、来た来た。子供達がぞろぞろとバスに乗っていくのが見える。その中に、みこりんの姿を発見。声をかけると、気付いてくれた。
 クルマに乗り込み、「さて、帰るか」と言うと、みこりんがお友達のお母さんがまだ迎えに来てないのだと教えてくれた。お友達姉妹が不安げな表情で近くにいたので、解散予定時刻である午後2時まで一緒に待っていてあげるかなと、みこりんと共にクルマを降りた。昨日聞いていたみこりんの話ではここに迎えに来てくれるはずだったらしいのだが、女の子に聞いてみたところ、どこに迎えに来てくれるのか知らないのだと言った。ありゃまぁ。妹の方は、すでに涙目で、いまにも大泣きしそう。こりゃ、家まで送っていってあげたほうがいいかな、と思っていると、市役所から引率で来ていた職員さんが、状況を察して近寄ってきてくれた。女の子にお母さんのケータイ番号を聞き、電話している様子。
 どうやらお母さん的には、帰りはバスで市役所まで戻ってもらうつもりだったらしいことがわかり、お友達姉妹はまだ不安げな表情のままバスに乗車。解散となった。

 帰りのクルマの中で、みこりんは「滝つぼって何?」とか、色々と今日知った新しい言葉を質問してきた。かなり実り多き時間を過ごせたようだ。
 この俳句教室は年4回開催で、今回が2回目。みこりんは次回も参加したそうである。今回はバス参加組の子達にしか参加賞の俳句手帳を貰えなかったらしく、次回はそれをゲットしたいのだそうな。限定アイテムに弱いみこりんであった。


2007.7.22(Sun)

落ちていた白い物体

 耳元で、「ぐるるる」という獣の声を聞いたような気がして目覚めると、リビングにいた。顔のすぐそばで、にゃんちくんが鼻息をすぅすぅと吹きかけてくるのがこそばゆい。またしてもPC操作中に寝入ってしまっていたようだ。時計の針は丑三つ時を指し示している。このまま二度寝も、なにやらもったいないのでそのまま起きて夜明けを迎える。
 朝の光りはどうしてこうも神々しいのか。庭に下りて、全身に陽光を浴び、浄化する。

 午前7時半ちょっと前に、みこりんが起きてきた。7時半から『ポケモン・サンデー』が放映されるので、これだけは欠かさないみこりんである。

 午前10時、早くもうだるような夏の暑さに体中の細胞がぞくぞくと歓喜に打ち震えている感じ。私は寒いのは苦手だが、暑いのはかなり耐性がある。むしろこの滝のように流れ落ちる汗が、たまらなく心地よい。というわけで、サウナ状態のクルマに乗り込み、学校までみこりんの育てている菊を取りに出かけた。

 夏休みの学校は、白く明るいのに、どことなくしんと静まり返って、なかなか不気味でよい。みこりんに鉢のところまで案内してもらい、二人でクルマまで菊鉢を運んだ。直径にして軽く30cmオーバーの菊鉢(普通の鉢より、胴体が長い)は、なかなか運び甲斐があった。おまけに高い支柱が3本にょきっと生えているので、屋根の低いクルマにはそのままでは入らず、やや斜めに傾けてシートで固定。無事、搬出に成功した。

 鉢植えは、玄関脇に置くことにした。みこりんがそこを所望したのである。庭よりも、こちらの方が水遣りをしやすいからということだった。
 土の表面にはミズゴケが敷かれ、まだ水分を含んでいたが、この状態ですでに乾き気味らしい。さっそくみこりんが水をかけてやっている。葉っぱの裏や、新芽には赤茶色のアブラムシがびっしりと張り付いており、みこりんに秘儀“テデトール”を実演してみせてやった。でも、アブラムシの怖いみこりんが、この技を自ら行使できるのは、まだまだ先になりそうな感じ。やはり牛乳スプレーの方が効果的かもしれない。

 *

 夕方、みこりんと庭の菜園でささやかな大地の恵みを収穫した。今年はどういうわけかトマトが絶好調である。ザルに山盛り。こんなに順調なのは、初めてトマト栽培を行った9年ほど前以来かもしれない。
 キュウリは案の定、完全に消滅してしまった。その空いた空間を埋めるように、ゴーヤが無数にネットに絡みつき。
 一番はしっこに植えてあるナスを収穫していた時、ふと、みこりんが足元に何かが落ちているのに気が付いた。指差す先を見てみると…、石にしては異様に丸っこい白い物体が。
 直径1cmくらいの玉であった。みこりんがこわごわ手にとり、ちょんと触れてみて、そいつがぶにょっと柔らかいことを教えてくれた。白い表面には、うっすらと緑のコケのようなものの痕跡もあり。……遠い記憶の奥底で、私はこれの正体を思い出していた。

 みこりんが「これは何?」と問う。私が思い出した答えを言ってみたところ、みこりんはひどく怖がってしまった。でも、足元に転がっているその白い物体が1つだけでなく、全部で4つもあることに気付いてからは、好奇心の方が勝ったようである。拾い集めて、小さな容器に入れ、「お友達に見せてくる」といって駆け出していってしまった。
 そのお友達とは、カナヘビを飼っている近所の女の子であることは言うまでもない。

 しばらくして、18時を告げるチャイムが団地内に鳴り響く頃、みこりん帰還。
 手にした容器には、玉が1個だけ残っていた。3個は、カナヘビ飼いの女の子にあげてきたようだ。みこりんは、その子もこの玉の正体を、私と同様に考えていると教えてくれた。…ふむ、さすがカナヘビ飼ってるだけのことはあるな。
 みこりんは、残った1個の卵を育ててみたくなったようだ。大丈夫だろうか。若干不安もあり。でもまぁ、産まれたら産まれたで興味深いので、私も時々様子を見ることにしよう。
 このカナヘビの卵が、無事孵ることを祈りつつ。


2007.7.23(Mon)

結晶

 夏休みの宿題といえば、やはり思い出すのは自由研究。自分でテーマを考え、観察、そして何らかの結論を導き出すのは小学生には苦労も大きかったが、理科好きにな子供にとってはとても充実したひとときであった。それはみこりんの時代になっても名を変え、若干姿も変えつつ、生き残っている。ちなみにみこりんの学校では、『たからもの』というテーマで、夏休み中に何か1つ集中して取り組むことが求められている。
 みこりんが選んだテーマは、『結晶』だった。

 先日の俳句教室があった土曜日の夕方、結晶作りは始まった。みこりんはすでにWebにて結晶の作り方を一通り調べており、材料などもテキパキと自分で準備していたのだが、肝心の結晶の元を何にするかで悩んでいた。学研などの付録に付いて来た尿素ではありきたりすぎると思ったのだろう。みこりんは、砂糖、塩、ミョウバンの3種から、どれか1つを選ぶつもりらしかった。でも、砂糖と塩の分量が、今一つみこりんの準備していた手順に必要な量に足りず、困っていた。

 結晶を作るには、飽和水溶液が必要だ。物質が水に溶ける量には、それぞれ違いがあるので、溶かす量は大切だった。しかし、小学4年生レベルではまだこの飽和水溶液とか、水に溶ける量の計算は難しい。例に出されている分量から、自分の環境に合った量を求めるには、比の計算を行えばよいが、最近ようやく小数点を習い始めたばかりのみこりんには、ちと荷が重過ぎる。
 かといって最初から私が口を出しては面白くないだろうし…。というわけで、しばらく見守ることにしたのだった。

 うちにあった砂糖の量が、ちょうど450グラムほどということをみこりんは実測で求め、例に出ていたサイトの分量のちょうど1/2倍付近というところに目を付けたらしい。これなら水の量を半分ほどにすればOKなのではないか。そう思ったみこりんは、さっそくボールに450グラムの砂糖を入れ、水を100ccほど投入し、菜箸で攪拌開始。
 ところがさっぱり水溶液になる気配なし。30分ほどかき混ぜ続けてダメっぽいので、私がサイトを斜め読みして温度を少々加えつつ混ぜてみることにする。なんとなく、べっこう飴作りの時のような感じに、鍋の中にボールの中身をどばっと移し、とろ火でゆっくり加熱しつつ、かき混ぜかき混ぜ。

 やがて水分が蒸発をはじめ、どう見ても水溶液からは程遠い姿に…。
 べっこう飴作りの経験から言えば、これ以上加熱すると砂糖本体が溶け始めてしまうはずだった。ところが……

 鍋の中に残った大量の白い物体は、びくともせずそこにあった。だんだん鍋の底のほうから固まってきつつあり、菜箸では歯が立たなくなってきた。木べらを使ってみたものの、がりがりと表面を削るのがやっと。
 もうかれこれ1時間くらい加熱しているというのに、いくらなんでもこれはちょっとおかしいのではないか。私がそう思い始めて、みこりんに聞いてみた。
 「みこりん、こりゃダメだわ。ぜんぜん溶けない。ほんとうに砂糖と水の分量あってる?」
 「………おとーさん、それ砂糖じゃなくて、塩…」

 な、なんですとー!!

 砂糖の結晶作りのページを見てたから、てっきり砂糖だと思い込んでいたが、たしかにこれは砂糖ではなく、塩っぽい。こんなに加熱して平気なのだから、砂糖ではありえない。というか、塩ならこんなに加熱する必要もなく水溶液が出来るはずだが?
 みこりんに塩に関する結晶の作り方のページを調べるように言うと、さっそく見つけ出していた。それによれば、塩の飽和水溶液に必要な分量は、塩500グラム程度とすると、水1800cc…。そりゃ100cc程度の水で溶けるはずはなかった。

 みこりんは、物質が違っても、水に溶ける量は同じだと思っていたようだ。だから砂糖の配分を、塩にそのまま適用してしまったのだった。
 私はみこりんに物質によって溶ける量には違いがあることを教え、目の前で実践してみせたのだった。1800cc投入された水によって、塩はまたたくまに溶け始めていた。もはや加熱の必要もなかった。

 そうやって出来上がった塩の飽和水溶液を一晩置き、時々底に溜まった塩を攪拌しつつ、より完全な飽和水溶液に仕上げ、プラスチックのコップにうわずみをすくったやつと、攪拌して濁ったやつと、2種類のコップをみこりんは準備した。比較することは、とても大事だ。何も言わなくても比較してしまうあたりに、みこりんの理系的センスの一端を垣間見た気がする。

 そして今日、月曜日。結晶は、はやくもコップの底に現れつつあった。うわずみの方だ。濁った方には結晶は見えず。
 はたして、夏休みが終わる頃、どれだけ大きな結晶になっていることだろう。私もちょっと期待して待ってみようと思う。


2007.7.24(Tue)

倉庫整理

 この季節恒例の、電力休暇(工場を止めて地域の電力使用量に配慮する休み)が明日から始まる。土日を含めると5連休だが、すでに夏休み真っ最中のみこりんが、夏休み前から蓄積されていた宿題を消化するのに悪戦苦闘中なので、特に予定はない。
 というわけで、久しぶりにFINAL FANTASY XIを起動してみた。

 2世代目のマイ・チョコボが成長しきって引退してからは、チョコボレースの特典である育成中のチョコボへの能力アップも行えないため、レースからも遠ざかり…。餌の栽培も、すべての鉢がかりかりに枯れてしまっていたので鉢ごと撤去してすっきりした。
 チョコボ用の餌のバザーではずいぶん儲けさせてもらったが(もちろんヴァナ・ディール内でのお話)、これ以上のお金は使い道もないのでいらないし。というかチョコボ育成のコンテンツそのものがすっかり寂れてしまってるような雰囲気もありやなしや。

 すっきりついでに、栽培隊兼、合成で大量に作った品の競売への出品要員としてジュノの街に派遣していた倉庫キャラや、三国で複数存在していた倉庫キャラ達の任を解いてやった(それでも各国一人は温存)。あとで使うかも、と取っておいたけど結局使いそうにない品は、そのまま店で売り払い。所持金は残った倉庫キャラの財政担当の元へと集約。これで倉庫キャラ総数は半減だ。それでも高性能な収納数の多い収納家具が新登場したおかげで、持ち物の保管には十分だった。便利になったものよ。

 そうやって倉庫キャラ達の荷物を移動させているうちに、ふと気付けば窓の外が明るくなり始めていた。
 夏の朝、か。
 世間が平日というだけで、なんとなく得したような気になる小市民であった。


2007.7.25(Wed)

個人懇談

 暑さのピークを迎える午後2時ちょっと前、学校で個人懇談が行われるので5分前には教室の前に到着していた。廊下に出されていた順番待ち用の椅子には誰も座っておらず、静かな教室の中をそっと覗くと、担任の先生だけがいらしたので声を掛ける。
 OKとのことなので、さっそく個人懇談開始。

 4月からみこりんの担任になったこの先生と、直に会話するのは今回が初めてだ。
 みこりんの様子を聞かれて、今まさに夏休み前の宿題にかかりっきりな事を伝えると、先生は他の子の宿題の様子など教えてくれた。それによれば半数以上の子が、みこりんと同じく夏休み前の宿題、要は平日にやるべき普通の宿題が徐々に蓄積されていってしまい、えらいことになっているということだった。
 1学期、先生はわざとページ数を指定せずに国語と算数のドリルを宿題として毎日出した。1学期中にドリルをすべて終えるべく、検印帳の欄の数から逆算して日々の消化量を自己責任でやり遂げるというのが目的だった。小学4年生になったので、自発的に計画性をもって勉学に取り組む姿勢を育むという目標は、1学期、脆くも崩れつつあったのだが、終業式の翌日、貫徹でがんばった男の子とかが先生にドリルノートを持ってきて見せてくれたり、それなりに成長のあとは垣間見えた模様である。

 先生が、みこりんが1学期最後にやった国語と算数のテスト用紙を見せてくれた。悪くない、いや、むしろ素晴らしい点数である。みこりんはドリルの問題が難しいから出来ないんじゃなくて、単に飽きっぽいというか、マイペースすぎるところがあるのだろう。
 先生も同様の評価だったが、これから学習内容がより高度になっていくに従い、ちょっとのつまづきであっというまに出来なくなってしまう子はわりといるらしい。今、自己学習の癖をつけておかないと、ということだった。
 たしかに、私の時代にも小学生時代は神童と呼ばれながらも、中学以降、普通になってしまった子を何人か知っている。まさにほんのちょっとの油断が命取り。わからなくなってしまった事が少しずつ積み重なっていくと、もはや取り返しの付かないほどの遅れとなって現れてしまうのだった。
 用心、用心。


2007.7.26(Thr)

クリスタルフラワー

 FINAL FANTASY XIでは、先月ちょっとしたバージョンアップがあった。当時はノーチェックだったのだが、そこで新規に追加された合成品の一覧を見ていて、ぐぐっと心を動かされたものがあった。

クリスタルフラワー

細工の見事な硝子製の造花。
調度品の一種。

必要スキル:錬金術100+彫金56(以上か?)

 んー、ちょっとこれは作ってみたいかも。私の合成スキルは錬金術は100だが、彫金となると40で止まったままだ。これではチャレンジすることすらできない可能性が高い。
 彫金スキルを上げるしかあるまい。彫金というと、貴金属やら宝石やらが登場してくるので、金食い虫なイメージがあり、なかなかこの一線を越えられなかったのだが、こういうのは思い立った時に、一気にやってしまうに限るので短期集中型でスキル58を目指すこととする。

 彫金スキル上げ40台は、ミスリルを主に使用する。50台になると、きんきんきらきらの金となる。感覚的にはミスリルの方がすごい金属っぽい気がするのだけれど、ヴァナ・ディールの世界では、ミスリル<金<白金という具合になっているのだった。

 幸いミスリルについては、Licにもらったものを大量に倉庫キャラが保有しているので問題ない。リングに加工し、それを分解してまた素材に戻し、というのを繰り返し、無事、ミスリルを使うスキル帯を突破。
 次は金だ。金の手持ちはないので、手っ取り早く競売から素材を買ってくるしかない。でもスキル帯のレシピを見ているうちに、錬金術で2回ほど加工すれば彫金の金加工に使える品があることを知った。さっそく原価計算である。ちゃかちゃかちゃかと脳内で電卓をはじき…、導き出された答えは、その錬金術の技を使ったほうが安上がりというもの。さっそく大元の素材調達にとりかかった。

 そういえば、この素材、錬金術のスキル上げの時に、なんに使うのかはわからなかったが原価の1.5倍くらいで売れたことを思い出す。そうか、これは彫金職人さんのスキル上げに使う品だったのだな、と今更ながら納得するのであった。

 今月中…、にはクリスタルフラワー作れるようになっておきたいものだ。


2007.7.27(Fri)

フラッタ・リンツ・ライフ

フラッタ・リンツ・ライフ 長らく2階の物置部屋を占拠していた14インチのCRTを、ようやく宅急便でリサイクル業者に託すことができた。これでほんの少し物置部屋にも足の踏み場が増えたわけだが、もうちょっと捨てられるものがある。次回の粗大ゴミの日は、絶対に忘れないようにせねばなるまい。

 宅急便屋さんの帰り道、いつもの本屋に立ち寄り、新しい出会いを求めて書架の間を彷徨い歩く。めぼしい文庫やコミックの新刊情報はあらかた入っているので、できれば手薄な分野がいい。たとえば新書版の小説。あるいはハードカバーなど。
 でもその領域は狭く、薄暗い。
 何かいけないコーナーに足を踏み入れるような感覚で、そっと入り込んでいくと…

 おぉぉ!こ、このカバーイラストは…。手に取るまでもなく、その絵が鶴田謙二氏のものであることはわかった。
 買おう。そう思った後で、一応、中身をチェック。ふんふん、なんとなく神林長平の『戦闘妖精・雪風』のような雰囲気が。たぶん失敗はすまい。で、結局、買い。

 『フラッタ・リンツ・ライフ』(著:森博嗣)、これがじつはスカイ・クロラシリーズ第4弾ということを知ったのは、買って帰った後のことであった。
 …またやってしまった orz...


2007.7.28(Sat)

月と花火

 19時半過ぎ、月は南東の空高く昇っていた。それを窓越しに見つけたみこりんは、さっそく望遠鏡片手にウッドデッキへと降りてゆく。望遠鏡は学研の付録だったが、レンズは5枚使用されており、倍率も約30倍と、私の子供時代には考えられないような高性能な付録であった。

 私と並んで月を見上げたみこりんは、望遠鏡を右目に当てて、覗き込んでいる。今宵の空模様は、あいかわらずぼんやりと薄明るくガスで曇っており、他の星々もまったくといっていいほど見えない最悪な状況。これでも雲が出てないだけましなのだが、月の周囲にはなにやら赤っぽいリング状の光芒があった。
 みこりんが「よく見えない」と言うので、今度は私が試してみることにした。これには一応三脚も付属していたのだけれど、脚の長さ10cmほどの超ミニサイズゆえ、取り外されていたのだった。だからしっかり保持しないと、30倍とはいえ振動の影響は侮れない。

 月は大きいので、すぐにレンズの視界に入ってきた。ピントを慎重に合わせてゆく。
 大気の揺れがリアルに見えた。ちょっとぞくっとする。クレーターの影も、見ようと思えばそれなりに見えそうだった。が、やはり手で保持しているだけだと“ぶれ”が激しくて、たしかによくは見えない。ちゃんとした三脚に固定できればいいのだけれど、留め具がオリジナルなので、そのままではうまく取り付けられそうにないのが少々残念。

 月の他に面白そうな星はないかな…?ぐるっと視線を巡らせていると、東の方向に鮮やかな光の明滅があった。どこかの花火大会が始まっているらしい。距離があるため大迫力といはいかないものの、一応爆発音も届いてくるので、それなりに楽しめそう。
 というわけで、2階のみこりんの部屋に移動し、そこからベランダへと出てみる。1階のウッドデッキからでは、庭のプラムの木に遮られていまひとつすっきりと見えなかったから。

 みこりんはエアコンの室外機の上に座り、右目で望遠鏡、左は裸眼で花火を楽しんでいた。そうやって見ると、大きな像と小さな像とが重なり合って、なにやらゆかいなことになるのだそうな。

 ひとしきり夏の夜の花火を堪能したあと、私は南の空にぽつんとひとつきりで輝いている赤い星が気になって、望遠鏡で覗いて見た。ピントを合わせても輪郭がすっきりしないということは、惑星ではないっぽい。どこか遠くの恒星なのだろう。私がそう言うと、みこりんはさっそく星座盤を取り出してきてぐるぐると日時をあわせてみている。そしてじっと見比べてみた結果、みこりんは「アルタイル、かな?」と言った。
 ふむ、赤いし、そうかもしれない。
 あれがアルタイルだとすると、夏の大三角形を構成する残りの2つはどうしたのか。目を凝らして夜空を見つめてみたが、やはり薄ぼんやりとガスっていてよく見えず。晴れていてこの有様ではなぁ………。みこりんの見たがっている天の川は、未だ写真の中の世界でしかなかった。
 ちゃんとした星空の見えるところに、みこりんを連れて行ってやらねばなるまい。


2007.7.29(Sun)

セミとスイカ

セミの抜け殻 庭の小さな菜園で、ミニトマトなどを収穫。ザルに思いっきり採れた。ずしっと重い。

 ふと見上げたプラムの枝に、なにやら茶色い物体を発見。
 今年も無事にセミが羽化したらしい。

すくすくと大きくなりつつあるスイカ ついでに菜園で生育中のスイカの実。近頃少し大きくなるスピードにかげりが見られるとのこと(みこりん談)。ちょっと気になる。私が間違えて小玉スイカを買ってきたのでない限り、もちょっと大きくなって欲しいところ。

 そして今夜、みこりんの宿題がようやくコンプリートした。やっと本格的な夏が、始まる。


2007.7.30(Mon)

『宙のまにまに (3)』

宙のまにまに (3) 雨の音で目覚めた今日、『宙のまにまに (3)』(作:柏原 麻実)、読了。
 高天ネット(県内高校天文ネットワーク)いいね。他校の同好の士と知り合うのは、なかなか刺激があっていい(私の場合は、大学入ってからのサークルからだったけれど)。
 今回は病弱部長が、ちょっとかっこいい。最後の“おつまみおまけまんが”のエピソードが、ぐぐっと…

 ところで、学校の屋上の天体望遠鏡の話し。じつは私が通っていた小学校の屋上にも同じようにドームがあった。で、内部には天体望遠鏡が格納されているという噂だったのだが、卒業までの6年間、ただの一度もその実物を拝んだことなし orz...
 小学校だから天文部なんてなかったしなぁ。あれは、誰かの役に立ってたんだろうか。ふと、そんなことを思い出してしまった。


2007.7.31(Tue)

MyDeathSpace

死者のページを集めたWebの「バーチャル墓地」

 サイバースペースの奥深くでは、現実とフィクションの境界がぼやけ、生者が死者を出迎え、幽霊が存在する。

 彼らは墓石も花もないバーチャル墓地に住んでいる。かつての自分たちと同じ生きた人々の影の間を、自分たちが残した断片の間を漂っている。

 アリソン・バウアーさんは虹を残した。彼女のMySpaceのプロファイルは、赤、黄色、青のコラージュで飾られている。オレゴン渓谷で飛び降り自殺した彼女は、5月9日に遺体が引き上げられる前に、無意識のうちに自分の墓碑銘を書いていた。

 「色が好き。虹の形の純色が。友達も好き」。20歳のバウアーさんは、プロファイルの「関心」欄にこう書いている。「人を愛することが好き。わたしがみんなのことどのくらい好きか、誰も分からないでしょうね」

 今、彼女のページは、亡くなったMySpace会員のページをアーカイブしたWebサイトhttp://www.MyDeathSpace.comの1区画を埋めている。

2007年07月31日 11時45分 更新[Meghan Barr,The Associated Press]

 死んだ人のサイトがどうなるのか、ということについては以前この日記でも書いたことがあるけれど、この MyDeathSpace は、MySpace限定のアーカイブ(死んだ人のサイトそのものはMySpace上に残してあるものにリンクする形のようなので、アーカイブというよりはインデックスという方が的確かも)のような具合だろうか。アメリカのMySpaceが、日本におけるmixiに相当するものと考えると、ありなのかもしれない。ただ、MySpaceが事業を継続できなくなった場合、一蓮托生になってしまうので、死者の安住の地というわけではなさそうだ。

 ただMyDeathSpaceのようなサイトの存在が知られてゆくにつれ、真のアーカイブ、ドメインの維持管理等を行う“ネット墓地”が登場するのも時間の問題かもしれない。
 なにしろハードディスクのストレージ単価はどんどん安くなる一方だし、実際問題、Blu-ray とか HD DVD 等というものが来年あるいは再来年の今頃には「そういやそんな規格もあったっけねぇ?」なんてことになってそうな気もするし。私的には、バックアップ用のハードディスクを1つの家の中に置いておくのが不安なので、できればオンラインストレージの使いやすいサービスが普及してくれる方がうれしいのだけれど。そうやってオンラインストレージ・サービスが当たり前の存在になれば、“ネットお墓”というものの存在が、より現実味を帯びてくるのかも。


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