2009.3.1(Sun)

『とある科学の超電磁砲 (3)』

『とある科学の超電磁砲 (3)―とある魔術の禁書目録外伝』(著:鎌池 和馬、作画:冬川 基) 『とある科学の超電磁砲 (3)―とある魔術の禁書目録外伝』(著:鎌池 和馬、作画:冬川 基)、読了。
 “虚数学区”という存在が、いまひとつよく理解できなかったのだけれど(原作小説はまったく読んでないし)、『アキラ(映画版)』の膨張してゆく鉄雄みたいなものなのだろうと勝手に脳内変換して読み進める。
 木山春生が、なぜレベルアッパーを作り、このような騒動(犯罪)を起こすに至ったのかという動機付けは、うむうむと納得できるものだったので、話として破綻することなく(というか、もやもや〜っとしたまま“終了”のパターンに陥ることなく)上手くまとまったと思う。
 このあたり、原作者のプロットがいいのか、コミック版の作者の力量がよいのか、原作読んでない私には判断できない部分だけど。“虚数学区”を破壊するために用いたのが、御坂美琴による超電磁砲というのも、きれいな終わり方だった。

 終わり方だった、といってもこの『とある科学の〜』シリーズが、これで完結したわけではなさそうなので、なにやらほっとする。レベルアッパー事件終了が、3巻の半ばあたりで、そこからあとは、短編が少々。おそらく4巻から、また新しく“事件”が起きるんだろうと思う。
 後半部分の短編集の中では、白井黒子が、まだ自分自身をテレポートできない小学生時分のエピソードが、印象深かった。初春飾利が、何の能力を持ってるのかという謎の一端もちらと垣間見えたし。さり気なく黒子を助けた“超電磁砲”の描写も、かっこいい。まさに兄貴と呼ぶにふさわしい御坂美琴……、って、あれ?


2009.2.6(Fri)

『付喪堂骨董店〈5〉―“不思議”取り扱います』

『付喪堂骨董店〈5〉―“不思議”取り扱います』(著:御堂 彰彦,イラスト:タケシマサトシ) 『付喪堂骨董店〈5〉―“不思議”取り扱います』(著:御堂 彰彦,イラスト:タケシマサトシ)、読了。
 シリーズ5巻目。1冊に4編が入るという基本構成は同じ。ただ今回は、真ん中の2章と3章が続き物になってる点が、これまでと異なる。

 1章。例によって付喪堂骨董店の姉妹店が売った、“アンティーク”によって引き起こされる事件のお話。事件といっても、今回のは人死にが出るとか(血は出るが)、そんな重いものじゃないのだが、最後に初お目見えの二人組みが、なかなか謎である。“アンティーク”を付け狙う…、秘密組織といっていいのかどうかまだ不明な点が多すぎる。
 それにしても、姉妹店を経営してるのはいったい誰なのか?というのは以前から気にはなっていた。二人組みと何か関係ありそうな、ないような。そもそも超常の力を持つ“アンティーク”を売るという行為が、すでにかなり危ないし。この謎は、いつ解き明かされるのか。……でも解き明かされたら、このシリーズ終わってしまいそうな気もするので、まだまだ謎のままで置いておいて欲しい気も。

 2章、3章は、とある有名な神話をモチーフにしたお話。グロイというよりは、哀しみと母の愛について、うむうむと感じ入るパート。
 そして、咲ちゃんの出生の秘密みたいなのを妄想するパートでもあるような。彼女は“アンティーク”を持っているのだろうか。これまでは明確に持っているとはされていないが、その瞳の奥に秘められた現実には、並々ならぬモノがあるらしい。たしか2巻か3巻にそんなような描写があった記憶がある。
 まぁこれもまた、明かされたらシリーズが終わってしまいそうなので謎のままでいいかもしれない。

 4章。例によって咲ちゃんと刻也のすれ違い話し。若い二人の初々しさに、全身がこう、ものすごくむず痒くなってくるパートだが、そこはいわゆるお約束なので、このシリーズにこのパートは欠かせないだろう。美麗なイラストも、相変わらずいい雰囲気である。カバーイラストの咲ちゃんに惹かれて表紙買いしたとしても、たぶんそれは後悔しないものと思われる。つまり何が言いたいかと言うと、咲ちゃん最高。


2009.1.23(Fri)

『火閻魔人』

『火閻魔人』(作:奥瀬サキ) 『火閻魔人』(作:奥瀬サキ)、読了。
 20年くらい昔に出版された『火閻魔人』(作者の名前もまだ、奥瀬早紀だった時代)なので、最初はただの再刊モノかと思ったのだけれど、作者のサイトにて、昔の『火閻魔人』と『支配者の黄昏』の同時収録であり、台詞も大幅に見直してあり、新規書き下ろしもちょっとだけ入っているとのことだったので、即行で買ったもの(出版部数が少ないという話もあることだし)。両作品とも、20年前のやつを持っている身としては、外せないところだ。

 1980年代後半に出版された伝奇モノの常として、これも夢枕獏と菊池秀行の影響を色濃く受けている。でも奥瀬サキ独特の、“エロほとんどなし”&“ピュアな愛”、あるいは青臭い愛情表現とも言える部分は、このちょっとあとにでた『低俗霊狩り』も含めて、現在、『低俗霊DAYDREAM』へと至るまで不変だと思っている。で、私は奥瀬サキの描くそういうところが好きだったりする。もちろん、静かなる超常の怖さみたいなのは堪能できるので、伝奇アクションものとしても十分面白いと思う。

 そんなわけで、単行本2冊分が詰め込まれているため、本書はけっこう分厚い。収録順としては、『火閻魔人』系→『支配者の黄昏』系だ。新規書き下ろしは一番後ろに収録されている(数ページ分だけど)。

 20年ぶりに読んでみて、だいぶ記憶が抜け落ちていた部分もあり、どこの台詞が変わったのか比較してはいないけれど、なんだかずいぶん読みやすくなったような印象を受ける。もしかしてかなり手が入ってるんだろうか。
 『支配者の黄昏』後半部分は、自分の記憶の抜け落ち具合も絶好調だったため、完全新作を読んでいるような雰囲気だった。これはこれでうれしい誤算。あとで本棚の奥から、オリジナルを引っ張り出して比べてみよう。

 それにしても…、なぜいま『火閻魔人』なのかが気になる。20年というのは、伊達ではない。なぜ今なんだろう。当時、これの続きが出る事を切望していたのだが…、ひょっとして。
 考えすぎかな。
 それはともかくとして、『火閻魔人』と『支配者の黄昏』も復活したことだし、ぜひ『低俗霊狩り』で単行本に収録されなかった例のヤツをぜひ出して欲しいなぁ…、というのはたぶん全国の奥瀬サキファンな人なら思っているに違いない。出たら買います。


2008.12.31(Wed)

『魔神伝』

『魔神伝 (1)』(作:来留間 慎一)
『魔神伝 (2)』(作:来留間 慎一)
 ちょっとまえに新刊情報で『魔神伝』(“神”の字は、正しくは“神”の下側に“人”という字が入る造語)(作:来留間 慎一)のタイトルを見つけ、即、注文していたのだが、届いた1巻2巻の分厚さにまず驚く。このコミックは、1985年〜1989年に月刊少年キャプテンで連載され、その時期に単行本も発売されていたわけなのだが、私が最初にこの作品に触れたのは、同時期に創られたOVA版『真魔神伝』(“神”の字は、以下同文)であった。その直後に、原作コミックを借りたか買ったかして読んだ時には、こんなに分厚かった印象はあまりなかったのだが、なにしろ20年ほど昔のことなので、私の記憶違いかもしれない。
 そんなわけで、新刊とはいっても、今回発売されたのは新装版だ。ぱらぱらっと中をめくってみて、1巻、2巻でそれぞれ完結した話となっていることに気付く。そして、2巻の内容は記憶になかった。これはこれで、かなりうれしい(どうやら旧版は4巻構成で、今回は2巻ずつをまとめているようだ)。

 内容的には、80年代に爆発的人気を博した菊池秀行の雰囲気を強く感じさせるものとなっている。魔法と、念法、そして、科学の3分野を、それぞれバックボーンとする使い手が、それぞれの事情により、闘うというアクション伝奇モノ。魔法と念法の組み合わせというのは、わりとよくあったように思うが、ここに科学力によって対抗する異星の宇宙刑事(正確には刑事ではないんだが)の存在は、組み合わせ的に当時でもかなり新鮮に感じたものである(宇宙刑事単体だとありきたりなんだけど)。宇宙刑事といえば、やはり蒸着。コンバットスーツに、超空間移動、レーザー光線といった科学力を駆使した技術がてんこ盛りなのである。だが本作品では、どっちかというと、この宇宙刑事はいじられ役になっているのが面白い。

 超空間移動で瞬間移動しながら攻撃を加えるコンバットスーツの宇宙刑事に対して、念法の使い手は生身。だがしかし、超空間移動中の宇宙刑事を、念法の使い手は己の武器とする刀を超空間内部に侵入させ、叩き落したりする。レーザー光線も、彼の念法の前には、ただの玩具と化し、レーザー光は刀でぶった切られるのである。さながら銃弾をものともしない、五ェ門と斬鉄剣のように。

 魔道士(彼の場合は肉体派魔道士と言うべきか)も、念法使いも、宇宙刑事も、それぞれ駆使する力は異なるものの、それが作用する例えば超空間といった場は同じというのが、ミソかもしれない。エスパー用のジャマーが、念法使いにもやや効果ありな設定とか、よくツボを心得ている。
 個人的には、邪妖精に寄生されて人外のモノに変わってしまった女子高生のあたりが、特に秀逸だったと思う。20年前、OVA版を見た時から、その印象は強烈で、今でもそのシーンは鮮明に思い出せるほどだ。

 ぐちゃぐちゃずるずるな化け物に変わってしまった彼女を、魔道士は完膚なきまでに破壊してしまうのだが、魔道士のベースとなっている男は彼女がなぜそうなったのかを知っているため、そのぐちゃぐちゃずるずるずるの血と肉片から、元の彼女だけを再構成してしまう(再構成の過程が、骨→内臓→筋肉→皮膚といった感じに順に行われていくのがなかなかリアルだった)。
 細胞(もしくは原子)レベルに分解されて死んだ人間を、肉体と共に魂まで元通りに復元する描写によって、神以上の存在であると言う魔道士の力が、強烈に読み手に刻み込まれるのである。

 グロさの中にあっても、魔道士の軽妙なノリと、念法使いのシニカルさ、宇宙刑事の熱血漢ぶりが絶妙にマッチしていて、変に暗さを感じさせないのもいい。
 で、1巻終了。

 2巻は…、時系列的には1巻よりあとの話。でも、念法使いは最後の方にちょろっと顔出し、宇宙刑事は出てこないので、話的には別物。ちょっと間延びした印象を受ける。1巻だけでも十分かもしれない。
 ただ念法使いとの絡みは、後続巻が出ることを念頭に置いてあるっぽいので、続き読みたいところではある。でも最後に“完”と書いてあるので、もう出なさそうな気もする…。20年も経ってるしなぁ…。


2008.11.26(Wed)

『とある魔術の禁書目録』

『とある魔術の禁書目録(インデックス) 3巻』(原作:鎌池 和馬、作画:近木野 中哉)

 コミック版『とある魔術の禁書目録(インデックス) 3巻』(原作:鎌池 和馬、作画:近木野 中哉)、読了。
 3巻が出たついでに、1巻と2巻も併せて買って、今回一気に読んでみた。
 ちなみに、私はこの『とある魔術の〜』の原作はまったく読んでいない。事前知識は、外伝となる『とある科学の超電磁砲』(作画:冬川 基)1&2巻のみ。だからまだ、科学サイドの、ほんのわずかな領域にしか触れていないことになる。
 そんなわけで、本作のタイトルにもなっている“禁書目録(インデックス)”なる人物が何者なのかとか(小説の表紙イラストで姿くらいは知ってる程度)、魔術サイドがどんな感じなのかは、まったく未知の世界。

 『とある魔術の禁書目録(コミック版)』1&2巻は、インデックス上条当麻の話。原作小説の1&2巻にそれぞれ相当しているらしい。『とある科学の〜』では、能力を打ち消す力“幻想殺し(イマジンブレイカー)”の有効性が、超電磁砲のビリビリ女こと御坂美琴との他愛無い“じゃれあい”程度にしか役立ってなかったが、こちらの本流の方では、えらく活躍していて驚く。
 異能の力であれば、それが科学によるものであれ、魔術によるものであれ、打ち消せるというのは、なかなか興味深い設定だ。いろいろと、いじれそう。

 そして3巻。一転して、科学サイドの、しかもかなりダークなお話。『とある科学の〜』では、まだそんな片鱗は微塵も見せていなかったので、少々意表をつかれた感じだ。科学サイドの暗黒面か。
 そういえば、『とある科学の〜』2巻ラスト付近で、御坂美琴と戦闘中の女木山春生が「学園都市で君達が日常的に受けている『能力開発』。アレが安全で人道的なものだと君は思っているのか?」と言ってたが、あれはこれに関連してるのかなぁと思ってみたり。すると今後『とある科学の〜』にも、“妹達”が出てくるんだろうか。あるいは、もっと別なダークサイドな展開に……

 ところでアクションシーンは、やはり文字よりも絵で表現した方が直感的でわかりやすいので困る。文章でも、そういうのに独特の味を出せる作家さん(個人的趣味でいえば、平井和正や夢枕獏)だと、小説のほうがよかったりもするのだけれど、『とある魔術の〜』の作者さんは、どうなんだろう。小説のほうは現在16巻まで出ているので、たぶん物語の展開はずっとずっと進んでいるだろうから、早く先を覗いてみたい思いはあるのだけれど、小説版(というか原作)にも手を出すかどうかは、やや躊躇い中。読んでしまったら、コミック版のネタばれにもなってしまうし…
 コミック版は、『とある魔術の〜』も、『とある科学の〜』も、絵柄が好きなので両方、買いの予定。

 ちなみに、みこりんは小萌先生が妙に気に入ってしまったらしい。オトナなのに子供サイズなところがよかったんだろうか。イラストクラブで使う素材が、また1つ増えたようである。


2008.10.6(Mon)

“いっぺん死んでみる?”

 みこりんお気に入りの声優さん、愛生ちゃんつながりで、みこりんがすっかりはまってしまっているアニメーションは、『ウミショー』の他にもう1つあって、それは『しゅごキャラ!』。日曜早朝から始まる放送は、欠かさず見ている徹底振りだ。平日もこの早起きを継続してくれたらと思わずにはいられない。

 その『しゅごキャラ!』のコミック版が連載されている雑誌を、みこりんは今日、買ってきていた。そろそろ『小学五年生』は卒業か…
 で、その雑誌には、『地獄少女』も連載されているので、ちょっと驚く。
 私は第1期目のアニメ版しか見たことはないのだけれど、けっこう怖い(というかシリアスで生々しい)シーンもあったような。

 ぱらぱらとページをめくっていたみこりんが、「“いっぺん死んでみる?”って、『地獄少女』?」と言った。
 いかにもそうだと私は答え、どういうシーンで使われるのかを説明してやった。……それにしても、なぜみこりんがそんな台詞を気にするのだろう?

 謎に思っていると、みこりんが言う事には、愛生ちゃんのブログに、その台詞が題名になってるエントリーがあって、ずっと不思議に思っていたのだそうな。いったいこの言葉の意味は何?って感じで。
 どうやら愛生ちゃんは、『地獄少女 三鼎』にゲストキャラで声を当てた回があるらしい。その時のエントリーに、“いっぺん死んでみる”が使われていたようだ。

 そんなわけで、『地獄少女』にも興味が出てきたらしいみこりんであった。


2008.10.5(Sun)

『鉄腕バーディー (20)』

『鉄腕バーディー (20)』(作:ゆうきまさみ) 『鉄腕バーディー (20)』(作:ゆうきまさみ)、読了。
 連載誌がオトナの事情で休刊(廃刊)になるというのを聞いた時でも、『バーディー』なら引く手あまたと思って、あまり心配はしてなかったのだけれど、その通りになってめでたしめでたし。とはいえ、その裏ではいろいろ大変だったろうとは思うが…。
 個人的には、移転先が見つからず、最悪、同人誌、しかもコピー誌になっちゃったとしても、買うけれど。というか中間マージン抜かれまくりの紙媒体の本じゃなく、ゆうきまさみ本人によるWebによる単独連載という形態を、ちょっとだけ期待してたりもした。

 まぁそれはそれとして。
 この作品世界では、バーディー側の人が何気なく大量にさくっと死んでしまうシーンが割りとあったりする。生々しい描写はないけれど、かえってそこが想像力を刺激して、怖い。今巻でも、おそらくは爆発したと思われる大型宇宙船の乗組員数は、数百人レベルじゃないような気がするし。
 高度なテクノロジーを有していても、起きていることは現在の地球上における“破壊”と“人の死”と、なんら変わらない。人の業みたいなものを感じて、しみじみとする。

 その一方で、バーディーを取り巻くローカルな人間関係は、二心一体の秘密も明らかになって、より強まった感もあり、今後の展開が気になるところ。ところであのねずみ型の捜査官達は、もっと登場させて欲しかったりもするのだけれど、次回に期待。
 それにしても、だいぶ前から登場しなくなっている捜査官のカペラは、一体どこで何をしているのか。まさか作者にも忘れられていたりは…………


2008.10.1(Wed)

『宙のまにまに (5)』

『宙のまにまに (5)』(作:柏原 麻実) 『宙のまにまに (5)』(作:柏原 麻実)、読了。
 他校の天文部との合同合宿の続きから。自前の望遠鏡を持ってない弱小天文部の美星達だったが、お父さんの遺品のアイピースだけはいいものが揃ってる。そんなわけで、他校の望遠鏡を貸してもらい、土星を導入。小さくてもリングを持つ独特の姿が確認できた瞬間の感動は、私にも覚えがある。
 図鑑等で土星の写真を見てはいるものの、実際にその姿をリアルに望遠鏡で捉え、自分の目で土星のリングを確認した時の、ぞくぞく感は、今でも忘れられない。120倍程度の倍率だと、最初は小さな点にしか見えないのだけれど、目を凝らすにつれ、輪っかが見えるようになる。ほんとうに宇宙にはこんな星があるんだと、飽きる事なく見つめ続けたものだ。

 さて、今巻で路万部長、卒業。巻数を重ねるごとに、キャラが安定してきたというか、あいかわらず病弱ネタで笑わせてくれるのだけれど、それだけじゃない部分が描かれることで、深みが増したキャラ。今後もちょこちょこと登場して欲しいなぁと思ったり。

 卒業と言う事は、新しい春到来ということで、新入生勧誘の季節でもあり。
 新入部員として入ってきた2名、特に女子の方、なかなか濃ゆいキャラでいい具合。
 寡黙だけれども、内側で静かに燃えてる鉱物“命”の炎とか、ものすごくマイペースなところとか、そのキャラ設定にはなんだかとても既視感が……。どこかでこんな感じの子が出てくる小説だかコミックだかを読んだ記憶があるんだけれど、それが何なのかもやもやーっとして、思い出せず。
 『ARIA』の登場初期頃のアリスかとも思ったのだけれど、別の作品でもっと雰囲気似てる子がいたような気がして仕方がない。

 まぁそれはそれとして、全般的に天文ネタに集中してきたのは、よい傾向だと思う。学園ラブコメなら、巷に溢れているが、天文ネタの作品はそうそうないから、ある意味貴重。今後もこの路線維持で、ぜひお願いしたい。


2008.9.20(Sat)

『バイオメガ (5)』

『バイオメガ (5)』(作:弐瓶 勉) 『バイオメガ (5)』(作:弐瓶 勉)、読了。
 絵の完成度は、ほぼ完了したのではないかと思えるほどダイナミックかつ美しい。ギーガー的デザインに、直線的な構造物、いわゆる日本的アニメーションに見られるメカギミックを、うまく融合させている点も、違和感なく、むしろ清々しいまでにはまっている。
 4巻でかなり改善は見られたものの、やや難のあった外観ヒト系の顔の表情も、ほぼ問題ない感じ。

 そんなわけで、よりストーリーに集中できるようになった点は、結構大きいかもしれない。

 全長48億km、直径100kmの、長大な構造体内部にも、底辺で暮らす人の営みは変わらず、たとえ外観が現在のヒトと多少異なっていようが、人間であることに違いはないという所に、何故だかほっと安心する。
 ついついここが地球ではなく、異形の構造体内部であることを忘れてしまいそうになるくらいに。

 だがしかし、そこに出現した支配層に属する“白い前垂れ”を有する個体によって行われるジェノサイドは、淡々と描かれている分、かえって怖い。まるで人がゴミのように…

 その力に唯一対抗できる合成人間、庚 造一。しかし、自分は生き残れても、多くの人は死んでしまったという無力感に、読んでいるこちらも引き込まれてしまう。
 訳有りの“胎児”を身篭っている少女が連れ去られたあとの、奪還の闘い。こちらも、見方を変えれば造一によるジェノサイドという点が興味深い。圧倒的な力の前では、どちらの層に属していようとも、一般人は無力にただ殺されるだけ。これもまた、淡々と進んでゆく。

 少女の死。産まれてきた赤子(といっても普通の赤子ではないけれど)を「守りたい」という合成人間“造一”の言葉は、とても“人間らしい”。
 赤子にはすでに名前があり、それは死んでしまった少女によって胎内にいるうちに付けてくれていたという下りは、短い文章だけれど、今回一番ぐっと来る所だった。


2008.8.17(Sun)

『雨柳堂夢咄 其ノ七』

『雨柳堂夢咄 其ノ七』(作:波津 彬子) 『雨柳堂夢咄 其ノ七』(作:波津 彬子)、読了。
 文庫本の方の最新刊である。この人の描くキャラクターには、独特の艶があって惚れ惚れとする。時代が現代ではなく、明治頃というのも雰囲気的にじつに良い。
 今市子氏の『百鬼夜行抄』と双璧をなす“物の怪”モノの傑作シリーズだと思う。

 “雨柳堂”という骨董屋を舞台にした1話完結のネタが基本なので、レギュラーメンバーはとても少ない。そんな中、骨董屋以外の人物として、例外的に継続して登場している、焼き物のつくろいに秀でた才を持つ女性と、焼き物の贋作作りをしている男の話は、今回の巻で、ぐぐっと動き始めた感があり、今後に期待。
 それにしても…、一番怖いのは、物の怪よりも、生身の人間だなと、しみじみ思う。物の怪は、心の闇をついて入ってくる…

 夏の夜、しかもお盆の頃に読むには、じつに最適な1冊だった。
 ところで、骨董屋が舞台ゆえに、様々な骨董品や、それに付いている精霊達の話がてんこ盛りなわけだが、ふと我が家にある品の中で、代々使われていくようなものがあるかな?と考えてしまった。実家が旧家というわけでもないので、お宝のような品があるわけでなし。

 自分が使ってきたモノに対象を限定した場合…、せいぜい大学の頃から愛用しているTAG Heuerの腕時計とか、TARAS BOULBAのデイパックくらい?それでも時間の流れにしてみれば、20年ちょっとしか経ってない。しかも時計は男物だから、みこりんに使ってもらうわけにもいかないし、私が灰になる時にその役割を終えるだろう。デイパックの方は、最近、片側の肩紐が取れてしまったので、永くはもたなそうだ。修理して使うか、新しいのを買うか迷い中。

 ……あ、もう1つ古いやつがあった。中学の頃に買ってもらったパーソナルコンピュータ“PC-8001”。およそ27年モノ。実家の物置に眠っていたやつを引き取ってきて、今はうちの倉庫部屋にいる。…でもこれは、どうなんだろう。故障してなければ今でも起動するとは思うのだけれど、“使う”という観点からしてみると、どうみても使えない。博物館に飾っておく分にはいいかもしれないが…。骨董品というのとは、少し方向性が違うような。
 それとも、こういうものでも、あと50年くらいしたら、骨董品として扱われるようになったりするんだろうか。その行く末を見てみたいような気もするが、たぶん先に私の寿命が尽きるので、無理。みこりんにでも頼んでおくかな。


2008.8.7(Thr)

最近買った本

『神様ドォルズ (2)』(作:やまむら はじめ)
『神様ドォルズ (1)』(作:やまむら はじめ)
 『神様ドォルズ (1)』、『神様ドォルズ (2)』(作:やまむら はじめ)。
 Amazonにここ数ヶ月ずっと“おすすめ”されていたので、試しに1巻をネット古本屋で買い、面白かったので新刊である2巻も買ったという流れ。
 カバーイラストだけ見ると、ほのぼの系かと思ってしまいそうになるが、中身は太古のオーバーテクノロジーの遺産である“案山子”と、それを操る“隻”と呼ばれる選ばれし若者達のお話。舞台は現代日本、“案山子”が存在するのは特定の村だけで、一般には知られていないという設定のため、都心における案山子同士の戦闘は、昔のダンバインが東京上空に出現した時のような緊張感があって、なにやら懐かしい。

 みこりんもカバーイラストに惹かれて、読んでみたらしい。主人公の妹で、しかも“隻”である詩緒という女の子が出てくるのだが、みこりんと同年代っぽいことから、この子にはまった様子である。続きが読みたいと言うのだけれど、2巻が最近出たばっかりなので、3巻が出るのはまだ当分先になるかもと言うと、かなり残念そうだった。

『魔法遣いに大切なこと“夏のソラ” (1)』(作:よしづき くみち、原作:山田 典枝) 『魔法遣いに大切なこと“夏のソラ” (1)』(作:よしづき くみち、原作:山田 典枝)。
 前2シリーズは未見。今シリーズから読み始めたばかりなので、設定など詳しいことは知らなかった。でもこの人のイラストは、以前から気になっていたので、いわゆる表紙買い。
 舞台はやはり現代日本(と思われる)。魔法遣い(まだ研修生だが)として稀有の才能を持ちながら、寿命があと1年で尽きてしまう女の子の話。今からどんな風にエンディングを迎えるのか興味津々。

 みこりんも表紙に惹かれて読んでみたようだ。主人公の女の子、ソラちゃんが可愛いと言って、すっかりはまっている様子。読んでる最中、くすくすとよく笑っていたのだが、どのシーンがツボだったのかは不明。でもたぶん、魔法と同時に出現するヒマワリに関する部分じゃないかなと想像。
 続きが読みたいと言うのだけれど、これも1巻が出たばかりなので、2巻が出るのはまだ当分先になるかもと言うと、かなり残念そうだった。

『GRANDEEK ReeL (2)』(作:桜瀬 琥姫) 『GRANDEEK ReeL (2)』(作:桜瀬 琥姫)。
 1巻は、かなり前に買って読んでいたので、2巻が出ると同時に買った。
 武具や防具に宿る精霊を視ることのできる少女のお話。稀代の剣士であった母親と、自分が引き継いだ能力の事を知る人物との出会い等、ようやくストーリーが進み始めた感じ。

 みこりんも表紙に惹かれて読んでみたようだ。主人公の女の子、ティーアが可愛いと言って、これもはまった様子。
 続きが読みたいと言うのだけれど、これも2巻が出たばかりなので、3巻が出るのはまだ当分先に…(以下同文)。

『Dr.コトー診療所 第一部・豪華愛蔵版 (1)』(作:山田 貴敏)
『Dr.コトー診療所 第一部・豪華愛蔵版 (2)』(作:山田 貴敏)
 『Dr.コトー診療所 第一部・豪華愛蔵版 (1)』、『Dr.コトー診療所 第一部・豪華愛蔵版 (2)』(作:山田 貴敏)。
 これは、みこりんが読みたいと言ったので買ったもの。まず1巻だけ買ってみて、一読したみこりんが、私にも強く勧めてくれたので読んでみると、これがまたツボにはまりまくりだったので、2巻も買ったという流れ。豪華愛蔵版仕様のため、1ヶ月に1巻ペースでちびちびと買っていこうかと思っている。豪華愛蔵版はすでに6巻まで出ているので、みこりんも安心だ。

 大学病院の凄腕外科医が、とある医療事故により、思うところあって離島の無医村に医師として第2のスタートを切るお話。
 みこりんによれば、「『ブラック・ジャック』よりは、手術シーンが気持ち悪くないので、いい」とのこと。また、みこりんはこのコトー先生の飄々とした笑顔(というか、情けない表情してるとこ)が、何よりも好きらしい。ふむふむ、みこりんはこういうタイプに弱いのだなと、新たな発見をしてしまった。

 以上、最近買った本の紹介おしまい。


2008.7.11(Fri)

『百鬼夜行抄 (10)』

 帰宅すると、オンライン書店のboobleから、やたらと分厚い宅急便が届いていた。厚さにしておよそ10cmくらいはあるだろうか。
 中身が何なのかは分かっている。みこりんが読みたいといっていた本3冊と、私の文庫本が2冊ほど。みこりんの本は、2冊がハードカバーで、残る1冊も豪華愛蔵版仕様のため、この分厚さになっているのだろう。梱包されたままの状態で手に持ってみると、ずしりと異様に重量感があった。

『百鬼夜行抄 (10)』(作:今 市子) 梱包を開封してみると、文庫本は2冊を縦に並べて厚みは1冊分になっていることがわかった。残りはみこりんの本3冊分。たしかに分厚い。でも今のみこりんなら、このくらいの分量は1日もあれば十分読破してしまえるらしい。
 というわけで、みこりんの机の上に真新しい本を3冊、積み上げておく。

 私が買ったのは、新刊の2冊。『百鬼夜行抄 (10)』(作:今 市子)と、『付喪堂骨董店 ―“不思議”取り扱います (4))』(著:御堂 彰彦)。どちらから先に読むか一瞬迷ったが、やはり金曜の夜となれば、『百鬼夜行抄』の方かなと手にして布団に寝転がる。そろそろ怪談の季節でもあることだし。

 赤い糸が見えてしまう女性の話。赤い糸といえば、運命の赤い糸を連想してしまうし、作中、その女性が子供の頃に、母親からそのように話して聞かされる場面もあるが、彼女に見えているその赤い糸は、そんなロマンティックなものではなく……。
 序盤から、じわりじわりと独特な怖さが滲み出ていて心地よい。一気に読んでしまいたいところだったが、今日は昼間からなんだか体が疲れてしんどかった…。

 お気に入りの『百鬼夜行抄』の、しかも新刊を読み進められないほどとは、さすがに自分でもびっくりしたが、あえて無理はしないでおこう。
 そんなわけで、一晩おあずけ。


2008.6.27(Fri)

イラスト

 『その向こうの向こう側 (6)』のカバーイラストは、主人公である男の子(小学6年生)が描かれている。それが気になっていたらしいみこりんが、「読んでみたいかも」と言っていたので、1巻から6巻まで揃えてリビングに置いてみたところ、さっそく手にとってぱらぱらとめくってみている。ちなみに1巻のカバーイラストにはキアラが描かれているのだが、女の子の方にはあまり興味はないらしい。

 途中、ぷっと吹き出したりなんかしつつ、ある程度まで読み進んだあたりで、みこりんはイラストを描いてみたくなったようだ。何を描くのかなと思っていたら、やはりというか、案の定、魔法使いのベルベルさんだった。

 ベルベルさんは、魔法使いだが獣である。獣といっても、見た目ウサギみたいな可愛い系の獣なので、みこりんの興味を引いたのであろう。
 出来上がりは、まるでトレースしたかのようにバランスよく描かれていたので、驚く。お手本を見ながらの模写なのだが、以前よりも格段の進歩を遂げたようだ。
 1体描き終わると、別のページから可愛いポーズを探し出してきて、追加で描いている。まだこの頃のベルベルさんは、両耳にイヤリングをしている状態だ。みこりんも、大きな玉のイヤリングは気に入ってるみたいで、ハイライトをつけて立体感ある描写に仕上げていた。

 そんなみこりんに、ベルベルさんのイヤリングは、途中から片耳だけになってしまうのだよと教えてやると、さっそく後ろの方の巻から探し出してきて、これもしゃかしゃかと描きあげてしまった。なんか妙に手馴れているな…、と思ったので聞いてみると、今期のクラブ活動では、イラストクラブに入ってるのだと教えてくれた。
 そ、そうだったのか。そういえば、そのような話を4月か5月頃にしていたような気もする。

 というわけで、みこりんの描いたベルベルさんを記念に貼り付けておこう。ぺたぺた。

みこりんが描いたベルベルさん(『その向こうの向こう側』より)


2008.6.20(Fri)

『その向こうの向こう側 (6)』

『その向こうの向こう側 (6)』(作:渡辺 祥智) 『その向こうの向こう側 (6)』(作:渡辺 祥智)、読了。この第6巻をもって、このお話も完結。過剰な演出もなく、じつに心地よい終わり方だった。
 異世界から戻って来た時の“お約束”、異世界での記憶が消えるという黄金のパターンである。でも心のどこかに、何かがひっかかる、みたいな。とても切なく、美しい。

 常世の花、アマランザインのキアラと、彼女を召還したマスターは、その力をもってしてあの世界をどのように変えたのか。語られてはいないが、今生に転生したと思われる“彼”の存在により、明確に語る以上の感慨を与えることに成功している。

 この巻では、キアラの表情が秀逸であることも特筆に価する。
 誰かの願いを叶えるために存在するアマランザイン。でも、自分にも叶えたい願いがあることに気付いて…、というあたりの表情すべてが、哀しくも美しい。
 そして最後の笑顔が最高である。これが見られただけで、生きてて良かったと思えるくらい。あぁ…、心が洗われた。

 ★★★★★


2008.6.17(Tue)

『とある科学の超電磁砲 (2)』

『とある科学の超電磁砲 (2)―とある魔術の禁書目録外伝』(原作:鎌池 和馬 作画:冬川 基) 『とある科学の超電磁砲 (2)―とある魔術の禁書目録外伝』(原作:鎌池 和馬 作画:冬川 基)、読了。
 能力を持たざる者と、持つ者との、悲哀や確執。能力者のレベルを増強する幻想御手(レベルアッパー)の詳細が明らかになった回。というわけで、能力者同士の戦闘が、やや多めに描かれている。
 個人的には、テレポーターである黒子の戦闘場面が、かなりツボ。テレポーターといえば、子供の頃テレビで見た、『テッカマン』で超能力を駆使するアンドロー梅田の戦闘シーンが、今も脳裏に強烈に焼きついている。特に、本人の瞬間移動は多用されていた上に、その描写がかなりかっこよかったので、ことのほか思い入れがあるというのも、ツボにはまった理由かもしれない。小さい頃の刷り込みとは、なかなか侮れないものである。

 学園都市で行われている能力開発には、何か公には出来ないような裏がありそうだというところで、3巻に続く。たぶん原作の小説の方では、このへんの事情もすでに明らかになってるんだと思うのだけれど、私はまだ小説版は読んでないので謎のまま。へたに原作読まない方が、楽しめそうな気もするので、このまま『超電磁砲』の方を追いかけてみることにする。…しかし、まだ脳内では“ちょうでんじほう”と読んでいる自分。どうしても“レールガン”に変換できない…

 ところで1巻では、背景やメカの描写に難ありだったわけだが、今回はこのへんが著しく向上していた。まさに別人のように。メカが得意なアシスタントが入ったのかも?できればこの水準を維持して欲しいところ。


2008.6.5(Thr)

『おたくの娘さん 第四集』

『おたくの娘さん 第四集』(作:すたひろ) 『おたくの娘さん 第四集』(作:すたひろ)、読了。
 築ウン十年と思われるオンボロアパートの住人と、若くて美人な管理人さんの話……、だと、そのまんま『め○ん一刻』になってしまうところだが、この作品の主役は管理人さんではない。アパートの住人の一人、オタクな青年と、そこに突如現れ同居することになったその娘(9歳)の話である。
 オタク青年は、それまで自分に子供がいることは知らなかったため(って、そんなことが有りうるのかという話はとりあえずおいておいて)、初めての我が子、しかも女の子の扱いにとまどいつつも、徐々に父親として自覚してゆくようになる、というのが基本ストーリー。

 第一集、第二集は、ふんふんという感じに軽く流せるものだったので、私の中でもこの作品はさほど重要な位置を占めていたわけではないのだけれど、第三集あたりから、孤独だった女の子にとって、想像していた理想の父親像と現実の父親のギャップの乗り越え、そして新しい血縁者(父親の妹、つまり、叔母)ができたことの安心感等、徐々に読ませる内容になってきたように思う。
 そして第四集、娘、コミケデビュー。といっても、オタクに染まったわけではなく、普通にお父さんと一緒にイベントに参加したというノリなところがベタすぎなくてよい。この父親の方も、職業は漫画アシスタントで、同人活動もそれなりに実績ありだから、『げんしけん』のような初々しい雰囲気はなし。そのあたりも、落ち着いて読める要因だと思われる。

 さらに今作は、同じアシスタント仲間である遥(管理人とは同級生という設定)の、自我の確立の回ともいえる。同人作家として偉大すぎる姉に、自分を見失いただひたすら姉を真似ることで安住の地を得てきたという設定は、使い古されたものではあるが、それなりに説得力はある。
 私的にツボだったのは、遥が初めて創った同人誌(これが唯一、彼女オリジナルな作風)を、今も大切に持っている子がいたというあたり。まさに作家冥利に尽きるというやつだねぇ、うんうん、と激しく同意したりなんかしつつ。

 この作品は、かなり化けるかもしれない。そんな気がする。


2008.4.29(Tue)

『付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います』

『付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います』(著:御堂 彰彦) 『付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います』(著:御堂 彰彦)、読了。
 以前、同じ著者による『12DEMONS』が、ほどよい読後感を与えてくれたので、買ってみたもの。みこりんも、『12DEMONS』の人だということで、興味を惹かれたのか、ぱらぱらと最初の数ページを読んでみていたようだったが、しばらくして本を置き、「ちょっと、びみょー…」と言っていた。確かに、最初の話は、みこりんにはちょい合わないかもなぁ、と思ったりもしつつ。ちなみにこの本は、“付喪堂骨董店”でバイトしている高校生の刻也と咲を話の中心とした、1冊あたり4話の短編構成となっている。

 本の冒頭にも書かれているが、骨董店とはいっても、いわゆる普通の骨董品を扱った話ではなく、“アンティーク”と呼ばれる不思議な力を秘めた品々を巡るストーリーである。
 設定としては、結構ありがちなものではあるのだが、著者が好んで用いる、それぞれの登場人物から見た一人称を交互に織り交ぜて物語を展開する手法が、わりと飽きを感じさせない独特な雰囲気を醸し出すことに成功していることもあって、読むのが楽しかった。もちろん、この手のライトノベルには欠かせない天然系美少女である、骨董店バイトの咲ちゃんの存在も、無視できない要因である。特に第4話『プレゼント』は、咲ちゃんのリアクションが、かなり初々しくてよし。

 というわけで、このシリーズ、現在まで3冊出ているのだが、残りの2冊も、さくっと注文したのであった。


2008.4.19(Sat)

『ARIA』

『ARIA (12)』(作:天野こずえ) 『ARIA (12)』(作:天野こずえ)、読了。
 『AQUA』を読み終わったあと、少しずつ古本メインで買い集め、そろえた全12巻。絵の繊細さ、美しさは言うに及ばず、その話の中身も、終始、一貫して前向きで、膨大なエネルギーを分けてもらったような感じ。自分の中に眠った、遠い記憶を強烈に揺さぶられる力があった。

 『AQUA 1巻』から始まり、『ARIA 12巻』で完結する物語。残り巻数が少なくなるにつれて、このまま永遠に終わりが来なければよいのにと思いもした。終わらせ方は、まさに大団円。まさかゴンドラの水先案内人のお話が、ここまでちゃんとした物語になっているとは、正直、驚いた。いい意味で、予想外な逸品だった。これを読まずに死ねるかといってもよい作品である。天野こずえ、おそるべし。


2008.3.30(Sun)

『碧 水惑星年代記』

 昨日の陽気が幻だったかのように、今日は朝から柔らかな雨が降り続いている。
 それでもあまり肌寒くないのは、いかにも春らしくてほっとする。

『碧 水惑星年代記』(作:大石まさる) というわけで、届いたばかりの『碧 水惑星年代記』(作:大石まさる)を、リビングに寝転び読み進めてみることにした。
 『水惑星年代記』シリーズも5作目となる、今作品。贔屓のシリーズが続くのは、とてもうれしい。

 前々からそうじゃないかな、とは思っていたのだが、大石まさる氏は、けっこうシスコンの気があるのでは…。本作にも、存分にそのテイストがあふれんばかりににじみ出ているような。血の繋がらない姉に恋する弟が、プロポーズのために土星まで宇宙機を飛ばしてしまう第2話“どってん☆”とか、“ちょっとガサツだけど、少年を放っておけずについつい面倒みてしまう第5話“ホシテルムシ”の華(ホア)さんとか、第4話“凪と波”で移民船の最後の生き残りである男の子を一人前に育てるべく奮闘しているホログラム(AI)の女の子(子というのは語弊あるかな)ナミさんとか。
 雰囲気的に、鶴田謙二氏の作風にだぶるところが結構あるのだけれど、大石まさる氏の方は、わりとSFネタは小道具的扱いで、少年少女のピュアな感じを描き出すことに長けているように思う。体はオトナでも、どこか子供っぽいところに重点を当ててみたり。

 ほのぼの、しんみり、どきどき、きゅーん、などという擬音(擬態語もまじってるけど気にしない)が漏れ聞こえてきそうな臨場感。今回の作品も、秀作揃い。基本、短編集だから、どこからでも読めるのがいい感じ。
 心に休息を、そして、明日への活力を、ちょっぴりもらえるような、そんなお話。


2008.3.24(Mon)

『AQUA』

『AQUA (1)』(作:天野こずえ)
『AQUA (2)』(作:天野こずえ)
 先ごろ12巻で完結した『ARIA』(作:天野こずえ)は、じつは読んだことがないのだけれど、ずっと以前から本屋に足を運ぶたび、とてもとても気にはなっていた。独特の透明感あふれる美しい彩色と、繊細なキャラクターデザイン。今となっては、なぜ手に取るのをためらっていたのか思い出せないのだけれど、きっと天邪鬼な自分の悪い癖が出ていたのだと思う。
 しかし、完結ということで、思い切って読んでみることにした。

 ところで『ARIA』には、その第0巻とでも呼ぶべき『AQUA』1,2巻があるというのは知っていたので、まずはこちらから。
 例によって“古本市場”に出品されていたやつを、順次購入。『AQUA』は、出版社を変えて2度世に出されているのだが、古本屋で購入したため、1巻がエニックス版、2巻がマッグガーデン版になってしまった。ちょうどそれしか在庫がなかったのだ。どちらかというと、最初のエニックス版で揃えたかったのだけれど…

 そして本日、2巻目読了。
 買ってよかったと思える、満足な完成度だった。
 舞台はテラフォーミングされ、水の惑星となった、かつて火星と呼ばれた惑星“アクア”。水の惑星ゆえ、船による交通が発達している。船といっても、SFちっくな奴ではなく、情緒あふれるゴンドラ等が使われており、主人公はこのゴンドラを操る水先案内人(ウンディーネ)を目指す女の子(子、よりは大きいけど)。
 人語は話せないが知能はヒト並みという火星猫が、よいアクセントになっている。そして描かれる情景が、じつに穏やかでのどかな雰囲気なのも癒される。おそらく、この時代の地球には、こんな自然はすでに残っていないのだろう。

 “猫の集会”の話で、ひとけのない街並みに、ふと彷徨いこみ、路地に並んだ家の窓から無数の風車が回っているところなど、昔、TV版『うる星やつら』で押井守がちょくちょく描いていた情景に酷似してたりもして、おもわずにやりとしてしまいそうになる(映画版『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』の、風鈴のシーンと言った方が思い出す人は多いかもしれない)。
 緑の大地に立ち並んだ巨大な風車は、『マクロス・プラス』のワンシーンを彷彿とさせ、これもまた懐かしい。

 ツボを刺激されまくりであった。
 というわけで、次は本編『ARIA』1巻に進んでみようかと思っているところである。


2008.3.15(Sat)

悪魔の魂

 クルマの定期点検のため、カーディーラーへと向かう土曜日の朝のこと。いつものようにくっついてきていたみこりんが、私が点検中に読もうと持参した本、『12DEMONS―12の悪魔 (2)』(著:御堂 彰彦)をぱらぱらとめくっている。
 みこりんも、この本はすでに途中までは読んでいるらしい。私はまだ100ページほどしか読んでいないので、みこりんの方が進んでいるかもしれない。

 前作『12DEMONS』を、みこりんは以前、一気に読みきった。それに比べると、続巻となるこの本の読み進みペースは、かなり遅いような気がする。
 あまり面白くなかったんだろうか?気になったので、みこりんに聞いてみたところ、「ちょっと怖くなってきた」というのが真相らしい。でも、やはり続きは気になるようで、どうしたもんかと迷っているところみたい。

 そんなに怖くなってゆくのだろうか。どんな風に怖いんだろう。私はみこりんとは別の意味で、続きが気になってしまった。
 ここでみこりん、ふとページをめくる手を止め、ふいにこんなことを言った。

 「へー、“悪魔の魂”の持ち主って、○○○だったんやね!」

 ………!?
 悪魔の12の部位を保持する生徒の中でも、“悪魔の魂”は、いわゆるこの物語のキーとなる重要な部位。これまで誰がその持ち主か、私が読んだ部分でも、まだ明らかにはなっていなかった…。
 み、みこりん、それ、とーさんも誰が“悪魔の魂”の持ち主か推理しながら読んでたのに。
 こうして、あっさりと真相が分かってしまったのだった。いや、だいたい想像はついてたんだけど…。

 と、とにかく、“誰が”というのは分かってしまったけれど、いまだ“理由”が判明していないので、謎は残っている。みこりんがそれ以上ネタばれしてしまう前に、クルマ屋さんに到着。私は続きを読み進め、みこりんは持参してきていたDSで、何かの続きを始めていた。

 昨日とはうってかわって、春のようなぽかぽか陽気。
 そろそろタイヤをノーマルに戻しておかねば。


2008.3.10(Mon)

宇宙人

 『ドキドキ!宇宙人っているの?』(作:吉川 豊)という本を、みこりんが買いたいといって持ってきた時には、正直ちょっと驚いた。昨日の本屋での出来事だ。『小学五年生 4月号』を買いに行ったついでに、いろいろと棚を物色しているうちにその本に惹かれてしまった模様。
 学校の怪談系や、ドキュメンタリー系というのが、これまでのみこりんの嗜好パターンなので、“宇宙人”との接点となる何かが最近あったのか気になるところだ。

 みこりんの知ってる“宇宙人”の代表格は、ウルトラセブン。いわゆるUFOに乗ってやってくる系のリアルな宇宙人とは、ちょっとタイプが違う。みこりんが買った宇宙人の本は、『ムー』なんかに載ってそうな雰囲気のものだ。
 ただ、最近、UMAに関する話題がちょこちょこみこりんの口から出てくることはあったので、その筋でエリア51とかのキーワードを知り、検索エンジンで調べてみたのかもしれない。ちなみにUMAとの接点は、『ドラえもん』に出てくるツチノコと思われる。

 …と、ここまで書いてきて、ふと思い出したのだけれど、みこりんがはまってた『ブラック・ジャック』に、そういえば怪我した宇宙人を治療する話があったような気がしてきた(『ドラえもん』にも宇宙人は出てくるけれど、あれはちょっと今回のと雰囲気が違いすぎる気が…)。
 みこりんの知りたい宇宙人の秘密とはいったい何なのか。私もちょっとみこりんの買ってきた本を読ませてもらおうかな。こういう系統の本を読むのは、じつに30年ぶりくらいだが、書いてある内容が昔とほとんど変わってない方に、100カノッサ(古っ)。


2008.3.8(Sat)

『BLAME!』

『BLAME!』(作:弐瓶 勉) 『BLAME!』全10巻(作:弐瓶 勉)、読了。
 『バイオメガ(BIOMEGA)』を読み終わった後、“古本市場”にて全10巻セットが安価に出品されていたので、さくっと買っておいたもの。描かれた時期でいうと、こちらが90年代後期ごろなので、たぶんこっちの方が古い。ゆえに、1巻、2巻などの作画はかなりアマチュアっぽい雰囲気が残っている。しかし、巻を重ねるごとに徐々に洗練されてゆくので、作者の成長過程を見られるというマニア的視点では興味深いかもしれない。

 『アバラ(ABARA)』で特に顕著だった、H.R.ギーガーの影響を受けたとみられるデザインは、この頃にも随所に確認することができるが、個人的にはそれよりも、『ファイブスター物語』の永野護的デザイン、『バブルガム・クライシス』におけるアンドロイド“ブーマ”のデザイン、OVA版『吸血姫 美夕』における神魔のデザイン、『アップルシード』の士郎正宗的球体関節メカデザイン、『アキラ』の大友克洋的グロテスクな生体デザイン等、ちょうどこの作品が発行される10年前くらい、OVA全盛期に発表されたコミックやOVA作品群のテイストが、いい具合に渾然一体になってるような感じがして、とても懐かしかった。
 ちなみにこの作品内での重要なアイテムの1つ、重力子放射線射出装置は、『コブラ』のサイコガンを髣髴とさせるものが…。主人公の無口っぷりは、『ボトムズ』のキリコに……。弐瓶 勉氏が1971年生まれということなので、ちょうどいい時期にこれらの作品と接した年頃といえるんじゃなかろうか。と、デザイン方面の話はさておき。

 物語の方は、東亜重工が空間転移してしまう前、全10巻のちょうど中盤くらいまでが個人的にはツボだった。そのあとのストーリー展開とラストシーンは、ちょっと方向が違うかなという印象。どことなく寂しげな、切ない、それでいてなにやら暖かな。悪くは無いのだけれど、やや静か過ぎるかなぁという感じ。しかし、ネットスフィアや、それ以前の時代背景などには謎が多く、とても興味を惹かれる。特に『バイオメガ(BIOMEGA)』にも出てくる東亜重工の存在。今は直接的な関連は示されていないけれど、今後、何らかのつながりが見えてくるのではと期待してしまう。

 これの関連作品『NOISE』は、『BLAME!』の時代よりもずっと以前、ネット端末遺伝子が健在だった頃の話らしいので、一連の世界観を補完する意味でも読んでみなくてはなるまいと思っているところだ。


2008.3.2(Sun)

『リトル・フォレスト』

『リトル・フォレスト (1)』(作:五十嵐 大介)
『リトル・フォレスト (2)』(作:五十嵐 大介)
 『リトル・フォレスト (1)』(作:五十嵐 大介)、『リトル・フォレスト (2)』(作:同じ)、一気に読了。五十嵐大介氏の作品に触れたのは、今回がはじめてだったのだけれど、買おうと思ったきっかけはAmazonのカスタマーレビューを読んでみて、これはなんだかいいかもしれないと思ったからだった。というのが1割で、じつは残りの9割近くは、表紙絵の女の子(というかすでに大人の女性なんだけど)が黒のゴム長を履いているという点。これは、かなりポイント高い。白のワンピースに黒のゴム長というアンバランスさに、とても興味を惹かれたのだった。

 物語は、小森と呼ばれる架空の(でも実在のモデルあり)村で生まれ育った彼女が、いったんは故郷を離れて都会に出たものの、出戻ってきて日々農作業にいそしみ、自然の恵みをいかにおいしく食べるかという状況を克明に、美味そうに綴ってゆくというもの。でも、時には過疎の村に戻ってきて自分はこれからどうするのか、どうしたいのか…、という彼女の悶々とした悩みなどもさらりと語られつつ。

 自然のものを、季節に合わせて調理し、あるいは自然の力を利用して貯蔵して、食糧の尽きる冬をいかに乗り越えるか、というあたり、実際にやってみるとたぶんすごい大変そうなことなんだけど、つい自分も「それやってみたい」と思わせてしまうところがすごい。納豆餅なんて、これまでその存在すら知らなかったのだけれど、もしかしたらとてもとても美味いんではないか、と思ってしまうほどに。

 みこりんが私同様、表紙の女の子の絵に惹かれたらしく、「これ、どんな本?」と言うので、「んー、『鉄腕DASH』でやってる“DASH村”みたいな感じの本かなぁ」と答えたところ、だいたい通じたようだ。地上波のテレビで、唯一、この番組だけは、私は評価しており、時間があれば見るようにしているので、みこりんにも話は通じやすいのだ。

 全2巻というのが、ちょっともったいないくらい。もう少し続いてくれたらなぁと思わずにはいられない。
 大判サイズの本だから、定価も933円と若干高めだけれど、今回私は運良くいつも利用しているネットの古本屋さん“古本市場”でゲットできたため、かなり安く買うことが出来た(作者の人には申し訳ないけど)。次のシリーズは新刊で買おうかなと、思ってるところだ。


2008.2.29(Fri)

『神様のメモ帳 (2)』

『神様のメモ帳 (2)』(著:杉井 光) 『神様のメモ帳 (2)』(著:杉井 光)、ようやく読了。
 前作のような爽快感がなく、やや状況設定というか物語の主軸を見失ったような感じがする。登場人物が前作とはぜんぜん関係の無い、まったく別物の物語というのであれば、それなりに読める作品なのだが、いかんせんニート探偵と、ニート達である必然性がないのが、とても痛い。問題解決の方法を、主人公である高校生が考え付くというのも、今回のはかなり無理があるし…

 2巻目は、なかったことにした方がいいのかも…。


2008.2.24(Sun)

『ブラック・ジャック』

 『ブラック・ジャック』を初めて読んだのは、たしか私が小学校の高学年の頃だったかと思う。友達が漫画を大量に持っていたので、その子の家に遊びに行くたび、順次読み進め、結局、そこにあったものはすべて読破してしまっていた。読んでいる途中は、早く続きが読みたいというある種の魔法にかかったかのような感じになり、しばらく触れていないと禁断症状が出てしまうかと思われたほどだった。

 そして時は流れ…
 今、みこりんがちょうどそんな状態に陥っている。

 我が家にある文庫本は、全部で16巻。秋田書店から発行されたものである。それを一日に多いときで4冊くらい読んでしまっており、もうじきすべての巻を読み終わってしまいそう。
 もともと子供向けの医療関係の本や、ドキュメンタリーには、かなり興味を示していたみこりんだったが、ここまで『ブラック・ジャック』にハマるとは、ちょっと予想外だった。

 そこで、「どんなところが面白い?」と聞いてみたところ、「ピノコがかわいい」のと、いろんな病気やら怪我やらを治してしまうところに興味を引かれているらしい。ちなみに、みこりんお気に入りの小道具は、ブラック・ジャックが手術室以外の場所で手術しなければならない時によく登場する、あの大きくて透明で風船みたいな簡易手術室。たしかにあれは便利そうだ。

 ただ、『ブラック・ジャック』のお話には、ちょっと怖い部分もあるのだが、その辺は大丈夫なのか聞いてみたら、逆に私はどこが怖かったかと問われたので、「人面疽のやつ」と即答したところ、妙に納得していたので、きっとみこりんもあれはちょっと怖かったに違いない。私も最初にあの話を読んだ時には、自分にも“人面疽”が出来てやしないかと、しばらく気になって気になって仕方がなかったことを思い出す。

 みこりんが本の続きはもうないのかと言うので、作者の人が死んでしまっているから、もう新しいお話はないんだよと答えると、心底がっかりした様子だった。私も残念だ(再度調べてみたら文庫本の17巻が出ていたらしい。買い足しておかねばなるまい)。
 代わりといってはなんだけど、OVA版『ブラック・ジャック』を見てみたいと言うので、今度借りてくる予定。


2008.2.23(Sat)

『バイオメガ』

『バイオメガ (3)』(著:弐瓶 勉)
『バイオメガ (4)』(著:弐瓶 勉)
 『バイオメガ (3)』『バイオメガ (4)』(著:弐瓶 勉)、読了。この人の作品は、『アバラ』が初見で、個人的にはかなりツボを突かれまくったため、この『バイオメガ』にも以前から興味はあった。でもなんとなく手を出しがたい雰囲気も五分五分といった感じで、迷っていたりしたのだが、幸いにも先月、1巻2巻を古書店でゲットできたため、一気に読み、どっぷりとはまってしまった。

 物語の背景は、“DRF(技術文化遺産復興財団)”が火星より持ち帰ってきたウイルス“N5SV”によって、地球上の人類が、死してなお蠢くドローン(N5SV感染者)で満たされつつあるという状況。DRFはこの状況下において“人類総改換計画”を発動、その大きな流れの中で、東亜重工製の合成人間“庚 造一”は、その計画の要と思われるN5SV適応者、イオン・グリーンを救出すべく、重バイクとAI“フユ”と共に、闘いに臨んでゆく…。

 作画力の著しい向上と、本来のド迫力な情景描写、アクションなど、絵的に魅せる部分がとても多い。キャラのデザインには、結構好みが分かれそうな気もするが、少なくとも私にとっては『アバラ』よりも、とっつきやすかった。『ヘルレイザー』ばりの黒い装甲服とか、肉職人を思わせる白くて長い前垂れとか、身体改造とか。どっちかというと、ぐちゃぐちゃずるずる系の身体改造なので、これもまた好みが分かれそうな気もするが、私はこっち系も全然OKなので、問題なし。

 続く3巻4巻は、新品で購入(古本屋になかなか出てこなかったというのもあり)。今日すべてを読み終えたわけだが、正直、これはすごいと思った。

 特に4巻。地球を覆いつくした謎のウイルスというか物体が、突如、地球を離れてゆく。誰かの願いを聞き届けたかのように。とてつもなくでかくて長い紐のようなものが、宇宙を奔る。造一は、その紐の末端に重バイクで取り付き、捨て去られる地球から、からくも脱出。そのばかでかい構造物と共に、未知宙域に飛ばされた。

 謎の物体における描写。遠く未知の宇宙空間にて…。その物体のスケールが途方もない。直径100kmというのは、まぁ昨今、それもありかなという感じだが、その全長が48億kmに至ると、もはや私の想像力の限界を超えている。いったい何この物体、というか生物?(ちなみに海王星の軌道半径がだいたい45億km)

 しかもこの超巨大な物体の中にも、DRFの影が…。そして出会った原住民は、おそるべき身体改造の果てに、自ら増殖可能な“人間”となっていた。

 これからどんな展開が待ち受けているのか。次巻にも期待。


2008.2.19(Tue)

『神様のメモ帳』

『神様のメモ帳』(著:杉井 光) 『神様のメモ帳』(著:杉井 光)、読了。
 本を開く前は、帯に書かれた“その冬、僕はニート探偵のアリスと出会った”という一文の、“ニート探偵”という単語に、若干引いてしまった部分はあったのだけれど、冒頭、私のお気に入りの本上位3位以内に20年経った今でもランクされるジェイムス・ティプトリー・ジュニア著『たったひとつの冴えたやりかた』からの引用文が、どどんと輝いており、かなり複雑な思いで読み始めたのだった。思いっきり外しているか、相当な良作か、両極のいずれかになるであろうと予想しつつ。

 文章のテンポがとても上手い。打てば響くような感じに、言葉が紡ぎ出されてくるような具合。しかし、さらさらと読み進められる軽快さに反比例するように、お話の中身は徐々に重い方向へ。でも、これはこれで悪くない。むしろ、意外性があって、個人的には非常にツボをつかれまくりな作品となった。

 危険なドラッグと、彼女の自殺(植物状態)。平凡な一高校生だった少年が、苦悩し、そして“たったひとつの冴えたやりかた”を選択するに至る心理描写、情景描写等、とてもリアルに臨場感溢れるものだった。感情移入というには、私はもう歳が離れすぎているが、それゆえに、少年時代の郷愁もひとしお。…く。目頭がやけに熱い。

 ラスト、絶望の中で、一条の光が天からぱぁっと射し込んできたかのような、思わせぶりな終わり方。そうだった、これ2巻があるのだ。でも、話的には1話完結なので、続きが気になってしょうがない病になってしまうことはない。…けれど、じつはもう2巻目は買ってあるので、あとは読むだけだったりする。

 これは、良作であった。


2008.2.11(Mon)

『12DEMONS』

 この連休の間中、奇妙に微熱が続き、のど飴なしでは喉が痛すぎてどうにもならないという状況だったので、家の中でもマスク常備で昼間も寝て過ごす。しかし、あまりに退屈なので、買い置きしておいた本の中から一番上に乗っかっていたやつを取り出し、布団の中でしばし読んでみた。

 が、寝ながら読むと布団から出した手が猛烈に寒いので、30分ほどで切り上げ。階下からストーブでも持ってくるかな…、などとぼんやり考えているうちに、いつのまにか寝てしまっていたようだ。

 ふと何かの気配を感じて目が覚めた。
 もぞもぞと布団の中で、なにかが動いている。どうやらみこりんが退屈して様子を見に来た模様。
 そっと耳をすませてみると、定期的に“ぱさ… ぱさ…”という音が聞こえる。紙をめくる音。枕元に置いた、私が読みかけの本を、みこりんも読んでみているらしい。
 ふむふむ、特に危険な本じゃないので、大丈夫かな。

『12DEMONS』(著:御堂 彰彦) ちなみに、読んでいた本とは、『12DEMONS』(著:御堂 彰彦)。私もまだ1/3くらいしか読んでないけど、文章はテンポよく回り、情景描写も違和感なし。とても読みやすいと感じた。とはいえ、小学4年生のみこりんに、はたして中高生を主人公としたライトノベルは受け入れられるのだろうか。ちょっとドキドキしながら、雰囲気をそっと窺ってみる。

 12人の悪魔の部位を持つ少年少女が、その日その時、同時に集ったことで異空間へと飛ばされ、無人の学校内で部位の争奪戦を行う…。というのが基本的なストーリー。ゆえに、やや怖い表現なども出てきそうな気もするのだが、みこりんは順調に読み進めている模様。途中、私が睡魔に意識を持っていかれている間も、黙々と読み続けていたらしく、次に私がみこりんに肩を揺すられ目覚めた時には、1冊まるっと読破してしまったあとだった。
 登場人物名が、かなり難解な読みと漢字を使っていたのでそのへん、大丈夫だったかどうか聞いてみたところ、難しくて読めない名前は、AやBに置き換え、脳内変換しつつ読んだらしい。なるほど、別名参照を駆使したのか。私も外国人の長い名前等が出てきた時には、よく使う手だ。
 その他の漢字には、特に問題はなかったようだ。よっぽど難しいやつには、ふりがなも振ってあったから、大丈夫だったのだろう。

 で、感想は、「最後の方がちょっと怖かったけど、面白かった」らしい。
 どうやらみこりん的には、このくらいの本ならば全然大丈夫っぽい。やはり図書室をよく利用しているのは伊達ではなかったということだろうか。

 *

 夜、私も残りを一気に読んでみた。
 ほぅほぅ。徐々に悪魔の部位争奪戦が盛り上がってゆく…、と思ったら、“つづく”だった…。そういえば、これ、全2巻だったな、たしか。1巻目でつまならかった時のために、2巻はまだ買ってない。
 早急に、2巻目も入手せねばなるまい。


2008.2.6(Wed)

『とある科学の超電磁砲 (1)』

『とある科学の超電磁砲 (1)』(原作:鎌池 和馬 作画:冬川 基) みこりん共々、熱が下がりきってなかったので休暇とする。でも昨日よりは体調が回復しつつあるので、買っておいたこの本、『とある科学の超電磁砲 (1)』(原作:鎌池 和馬 作画:冬川 基)を読んでみることに。
 なぜ買おうと思ったかといえば、タイトルに含まれている“超電磁砲”という言葉に尽きてしまう。超電磁とくれば、超電磁ヨーヨーとか速攻で思い浮かべる年代には、あまりに強力すぎるタームである。ちなみに、この本は『とある魔術の禁書目録』の外伝ということになってるらしいのだが、私はそっちの方はまったく読んだことがないので、予備知識ゼロ。だから、超電磁砲を、字面のまま“ちょうでんじほう”と脳内変換していたので、実際は“レールガン”と読ませるのだとわかったときには、少なからずショックを……orz...

 まぁそういう些細な問題はおいといて、本作は、『とある魔術の禁書目録』を知らなくても大丈夫っぽい作りになっているようなので安心だ。もしかすると内輪ネタなどが隠されているのかもしれないけれど、それに気付かずとも話の中身がわからなくなったりしないあたりは、かなり親切な部類に入るのではないかと思う。

 “学園都市230万人の頂点、七人の超能力者(レベル5)の第三位”であるところの、御坂美琴お姉さま(といっても中学生だが)がメインキャストとなっているので、タイトルに彼女の二つ名“レールガン”が入っている、と。
 レールガンつながりでふと思い出したのだが、たしか最近、米海軍だったかが本物のレールガンの試射実験をやってて(参考:“米海軍が実験成功した『レールガン』とは”)、その弾丸の初速が2000m/secを超えていたような…。美琴お姉さまは、初速1030m/secの“弾丸”を撃ち出せるらしい。約半分、それでも十分物騒なことに変わりはないけど。それほどの電流を自在に操れる彼女は、たしかに超能力者に違いあるまい。

 読後感は、とてもよかった。なんかこう、ふっと気持ちがラクになってしまいそうになる感じに。突き抜けた爽快さがある。病気のときには、まさにうってつけ。これで背景の作画と、メカ系のデザインがもうちょっと上手ければ5つ星なんだが、じつに惜しい。人物描写、コマ割り、台詞回しに非凡なるものを感じさせるだけに、よけいに目立つのだなぁ。
 次巻が出たら、間違いなく買い。


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