2001.3.1(Thr)

ぜひ中継してほしい映像

 ところで今ミールはどこらへんを飛んでるんだろう…と思ったときに開くと幸せになれるページがここ。“Mir Location

 ミールが落下するときのグラフィックがどうなるのかちょっと興味あり。
 でも希望としては、落下の一部始終を映像で中継して欲しいかな。軌道上と、大気圏内の両方から。ずずずっと真っ赤に燃えながら急速落下してくる宇宙ステーションの図とか、かなり迫力ありそう。ペイパービューでもしも見られるとして、そうねぇ、5000円くらいなら出してもいいけどなぁ。


2001.3.2(Fri)

あんな時代もこんな時代も

 あの猛烈な円高時代、為替差損で多大な減収を被った企業のほとんどは、たしか“1ドル100円でも十分利益が出るようにせねば”と誓いの言葉を述べていたように記憶している。当時、円は1ドル80円とかそういうレベルだった。これ以上円が上がり続けることはあっても、まさか100円代に戻ることはなかろう、なんて怖い想像もしてしまうほどの勢いがあった。
 あれから月日は流れ、盛者必衰の理どおりに、円は安くなった。ボーダーラインと言っていた1ドル100円よりも下がり、107円とか108円とか。そんな状況が続いているのに、赤字の言い訳として“円高(対ドル)”なんてのが未だに語られてる状況に遭遇すると、かなり恐い…。他人事でないところが、ますます恐い…。


2001.3.3(Sat)

『完璧な防壁』に、まだ少し

 『完璧な防壁』の続き。今日は南と西側に2段目のネットを張るべく支柱を立てることにする。そのついでに今まで張ってあったネットの点検などもやっていると、大変な抜け穴を見つけてしまったのだった。

 南西の角に、あろうことか大きな隙間ができていた。猫なら余裕で通り抜けられるくらいの穴だ。ネットを柵に固定してる部分で、いぃぃっと口を横方向に拡げるような感じの穴だった。長年の引っ張り力に耐えられなかったらしい。というか昨年の春、ガレージの境界に柵を新調したのに伴ってネットをそこで切断したのがまずかった。強度が落ちてしまっていたのだ。

 さっそく新しいネットで補修する。より頑丈により強く、逞しく。金属製の棚板なども用いて、二度と突破されないように造り替えた。
 その他の部分も入念に再チェックを行う。ちょっとでも怪しいところがあれば、これでもかっというくらいの補修を加えた。なので予定では今日ネットを張り終わるはずだったのだが、支柱を立てただけで夕方を迎えてしまったのだった。明日は荒れ模様の天気らしい。なんとか春までには完成させねば。

春の蛤

 女の子の節句ということで、いつもよりも少し奮発した夕食を、家族で囲む。蛤のお吸い物が、なかなか春っぽくてよい。私はもちろんLicも、貝は好きな食材である。それがみこりんに遺伝していたとしても、まったく不思議ではなかった。

 上手に貝柱をほじくりながらキレイに平らげてしまったみこりんは、まだ足りない風に、おかわりを要求した。でもその時には余ってた蛤全部、私の血となり肉となるべく、体内へと消えたあと。なんともタイミングが悪かった。みこりんはもうお腹一杯なんじゃないかと思ったのが失敗だった。日に日にお腹も大きくなってるんだってことを、つい忘れてしまう。

 それほど貝好きなみこりんでも苦手な貝はあるようで、巻き貝系はちょっと苦くてダメらしい。もっとも、こちらはなかなか食べる機会がないのだけれど。

昔話

 今夜の昔話は『一寸法師』。鬼退治のシーンでは、みこりんに『桃太郎』との共通性を指摘されてしまった。なかなか鋭いみこりんである。
 打ち出の小槌をみこりんが理解できたかどうかはともかく、お話はめでたしめでたしで締めくくられ、朝までの幸せな眠りの中に入ろうかというとき、Licが入ってきた。

 こうして3人揃って眠りにつくのも久しぶりだ。眠りの前の他愛のない会話も心地よい。その中で、Licもみこりんに昔話を語って聞かせている事実が判明した。なんとなくそうなんじゃないかという予感はあったのだが、やはりLicの語るお話は、洋モノであった。これまでに『赤ずきんちゃん』『シンデレラ』とこなしているらしい。ヒロイン系を、ということでそうなったらしい。たしかに日本昔話で女の子が主人公のって、あんまりないような…。『かぐや姫』くらいしか覚えがない。これはちょっと調べてみなければ。


2001.3.4(Sun)

みこりんのヒーロー

 “荒れ模様”と言うには穏やかすぎるお天気だった。この先どんどん晴れてきそうな気配さえある。でも、一晩中降り続いた雨で、庭はすっかりぬかるんでいた。『完璧な防壁』のためにネットを張るには条件が悪すぎる。来週に延期だ。

 午後、みこりんのために録画しておいた『仮面ライダーアギト』を一緒に見る。クウガの時より、みこりんの食いつきはいいようだ。やはり3人もライダーが出てくると、それだけ変身後の姿を見る機会も増えるから退屈しないんだろう。特にベルトからぬぅっと出てくる長大な剣がツボにはまったみたいで、すかさず自分の持ってる“クウガ人形”と“バルタン星人”で遊び始めたのだった。もちろんクウガ人形の手には、付属の“長大な剣−タイタンソード”があったのは言うまでもない。みこりんにとって“クウガ”か“アギト”か“G3”か、はたまた“ギルス”かは特に重要ではないらしい。とにかく“ああいう形態”をしたものは、みんな“仮面ライダー”という1つの存在として認識しているようだ。

 ところで敵の“Unkown”が、みこりんにはちょっと怖かったらしく、しきりと「らいだーのほうがつよい?らいだーいたらやっつけてくれる?」と気にしていた。ここまでみこりんが思い入れたっぷりにライダーを気にするとは少々意外だったが、戦隊ヒーローやウルトラマンよりも、仮面ライダーはリアルに感じられるのだろう。想像するに戦隊ヒーローは数が5人以上と多いうえにラストは巨大ロボットでキメなもんでいまいちのめり込むには難しく(しかも色が全部違うというわかりやすい特徴のため、みこりんでも容易に識別できてしまうのが思わぬ落とし穴といえよう)、ウルトラマンもやっぱり巨大なので身近には感じられず、結局、しっかりした変身プロセスで生身のお兄ちゃんとの同一性をうまく保っている仮面ライダーが、もっともリアリティある存在として感じられるんじゃなかろうか。

 みこりんにはまだライダーの個体識別ができていなさそうだけれども、お父さん的にはギルス”にちょいと注目している。あのアマゾンライダーを彷彿とさせるワイルドさ、荒々しさ、生々しい造形などなどもいいが、なんといってもライダーの口が“ぐわっ”と開くのがたまらん。あれで噛みつき攻撃ってのはじつに説得力あり。最後まで己の肉体のみで攻撃したのもポイント高い。これでバイクが V-MAX タイプの黒いヤツだったらよかったんだが…オーソドックスにオフロードタイプ。今回はアギトとG3のバイクがオンロードの大きめタイプなので、バランス的にはちょっと弱いような。
 来週もみこりんのために、録画しといてやろうと思う。


2001.3.5(Mon)

菜園倍増計画

 啓蟄だというのに朝は一面雪景色。その後もなかなか気温が上がらず冷たい一日だった。冬の最後の抵抗か。いずれにしても1ヶ月後には桜が咲く。コタツ園芸に残された時間もあとわずか。国華園への注文書をまだ出していなかったことに、かなり焦りつつある今日この頃。

 市の公報で菜園の借り主募集があるのをLicに教えられてじっくり読む。30平方メートルで年間3000円。しかも水道設備あり。クルマで15分ほどというのがちょっと気にはなるが、かなり心が動く。これだけの場所があれば、昨年のように苗はできたが植える場所がないなんてことはまずないだろう。最大の問題は、毎週欠かさず通えるか…だが、まぁ何事も始めてみるのが肝要だ。年間の栽培スケジュールを引き直さねばなるまい。


2001.3.6(Tue)

ラストオーダー

 あとは寝るだけという状態まで物事を片づけ終えて、思い残すことなく『国華園』のカタログを改めて開く真夜中のこと。今日こそ注文書を仕上げるつもりで、1つ1つ野菜種の吟味を始める。去年の種がまだ十分残っているので今回はあまり奇抜なものは止めて…たまには普通種を育ててみるのも悪くない。家計の足しになるようなのもちょっとは混ぜておこう……

 で、結局こんな感じに落ち着いた。

野菜の種
種別 品種 個数 単価
大根 F1 早太り時春 1 200
コーン F1 ベビーコーン 1 125
カブ 春蒔白大かぶ 1 100
ブロッコリー グリーントップ 1 150
白菜 F1 春日 1 150
中国野菜 チンゲンサイ
エンサイ
1
1
100
100
雑菜 黒葉小松菜
大葉ニラ
かつお菜
1
1
1
75
100
200
キュウリ F1 なつあじ 1 225
花の種
種別 品種 個数 単価
黄花コスモス 黄花コスモスセット 1 480
ポピー ダブルタンジェリン
(八重のようなちょっと変わったオレンジ色のポピー…らしい)
1 300
あざみ るり玉あざみ ブルーグロウ
(あざみというより、メタリックな玉のような感じのところがいい感じ)
1 250

 “かつお菜”というのがいったいどんな味なのか確かめるのが今回のポイントである。“うどん”に合いそうなところがいかにもうまそう。
 あとはLicのリクエストを残すのみ。


2001.3.7(Wed)

期末

 成果報告書の第一版完成。点検に回す。大幅な修正がなければ、これで今年の仕事は終わったも同然。おぉ、なんという開放感…
 作成すべきソフトウェアも先月末にはすべての作動確認を終了した。あとはただ…、ただ静かに4月1日の大異動を待つだけである。これほど穏やかな期末を迎えた年もない。雪でも降らなきゃいいが……と窓の向こうを見やれば、小雪がちらほら舞ってたりする。まだまだ油断禁物らしい。


2001.3.8(Thr)

コーヒーポットの行方

 “The Trojan Room Coffee Machine”のことを耳にしたのは、もうずっとずっと昔のことだった。といってもせいぜい10年以内の出来事ではあるのだけれど、90年代初頭のことは、昔語りが似合う程度には古い記憶になっている。インターネットが世間にちらほらと紹介され始めた頃だったような気もするが、ハムスターの鼓動ほどに変化の激しいこの世界、あんまり記憶もアテにはならない。でも、コーヒーポットの映像が延々更新されるだけというシンプルさには、なんというか奇妙な興奮を覚えたのを今でも覚えている。

 でもこのコーヒーポットも、もうじき見ることが出来なくなるようだ(『コーヒーポットサイト,閉鎖へ』)。なくなったからといってこれといった実害があるわけではないのだけれど、いつもの通り道から名も知れぬ古びたお店がある日突然なくなってしまう程度には寂しく思う。


2001.3.9(Fri)

指の順番

 みこりんにもやはり悩み事はあったりする。何度か私にも相談を持ちかけられて、その都度、解決への手がかりを示してきたつもりだったが、みこりんは納得できていなかったらしい。今夜もみこりんは“祈り”のポーズで固まっていたのだった。

 “祈りのポーズ”、それは己の手の指を互いに組み合わせることができて初めて成し得る形態である。いったいそれのどこに“悩み”が介在するのだろうか?みこりんに聞いてみよう。「何を悩んでいるのか言ってごらん。」

 ちょこっと渋い表情のみこりんは、手を組み合わせたままその一点を見つめてこう答えてくれた。「このゆびはどこにはいればいいの?」

 みこりんのちっこい指は、みな、うまい具合に組み合わされているように見えて、じつはおかしなところが1つだけあった。右手の薬指だ。なぜかお隣の小指と同じ場所に収まっている。“祈りのポーズ”のためには指を互い違いに組み合わさねばならないってことはみこりんにもわかっているので、この薬指をいったいどこに入れればいいのか迷っているのだった。

 左の親指から順番に組ませてみても、なぜか途中で薬指(たまに別の指だったりもするけど)で順番が狂ってしまう。どうやらみこりんは一番下になる右手の小指が、何かの指にはさまっていないのがダメらしくて、つい小指を優先的に割り込ませた結果、薬指があおりをくらってはみ出してしまうようなのだった。この状態でも左の小指は一番下になっていて他の指に挟まってはいないのだが、これは許可らしい。

 そんなに右手の小指を間に挟みたいならと、親指の組み合わせを右手から始めさせてみた。これならば普通に組んでもちゃんと右の小指は左の小指に挟まれて、具合がいいはず……だったのだが、今度は最初の右手の親指が外に出てるのが気になるようで、やっぱり眉間に皺を寄せて悩んでしまってた。

 果たしてみこりん、4歳になるまでに“祈りのポーズ”を会得することができるだろうか。


2001.3.10(Sat)

いろいろな絵

 「みてみて」というみこりんの声に誘われるままそちらを覗き込むと、落書き帳に上手に円を描いている真っ最中だった。すぅっと線が走ってる感じに勢いがあって、以前のようにふにゃふにゃした乱れがない。いつのまにか円を描くのに必要なノウハウを習得したらしい。

 “円”が加わったことで、みこりんのお絵かきレパートリーは、飛躍的に向上したに違いない。しきりと絵のリクエストしてくれと催促された。
 じゃぁ、まずは手始めに「リンゴ」を描いてもらうことにしよう。私の言葉が終わらぬうちに、すでにみこりんはリンゴの外周を描き終わっていた。そして“へた”も忘れずに描き込み、無事完成。どうやら簡単すぎたようだ。では「バナナ」はどうだ。これは円の応用編ともいえるなめらかな曲線が必要だぞ。うまく描けるかな?……じっと見守るうちにも、みこりんの筆はさっさか滑り、あっというまに“バナナ”を描き終わっていた。“バナナ”の形状が一目見てそれとわかる程度に再現されている。どうやらこれも楽勝だったらしい。
 ふむふむ。では「ミカン」はどうかな。単純すぎて逆に難しいような気もするが、みこりんはどのように「ミカン」を表現してくれるだろう。期待しつつ見ていると、まず円を軽く一筆書きに仕上げ、その内部に無数の縦線を加えるみこりん。いったいこれは……と考え込みそうになって、ひらめいた。これは皮の内部にある小袋だろう。ひょっとすると、その薄皮のさらに内部の小さな粒の1つ1つをも描いているのかもしれない。やがてみこりんは最後の点を打ち終え、こちらを見上げた。完成したようだ。

 その後も、「ぶどう」「さくらんぼ」「イチゴ etc...」と難なくクリアしてゆくみこりん。でも「ナシ」だけは却下されてしまった。たぶん「ナシ」がどんな果物だったか思い出せなかったのだろう。他にどんな果物描いてもらおうかなと悩んだあげく、みこりんもよ〜く知ってるあの果物をリクエストしてみた。うれしそうにさらさら描きあげるみこりん。あっという間に完成だ。もう一目見ただけでわかってしまうその的確な描写には、まったく驚くほかない(すっかり親馬鹿)。

的確な果物の絵

さて何の果物でしょう?

新幹線透視図

新幹線透視図

 果物シリーズをほぼやり尽くしたみこりんは、新たな『お題』を自分で決めたらしい。今、自分で実況中継しながら描いてるのは、“新幹線”。「てーぶる、いす、てーぶる、いす、てーぶる、いす、てーぶる…」と、繰り返し繰り返し細長い四角と、三角みたいな図形が並んでいく。やはりこれも透視図のようだ。座席が左右2列に分かれているところまで再現している。興味深いのは新幹線に特徴的なあの外観(細長いノーズコーンとか、アヒルのくちばしとか、カラーリングなど)には一切言及がなかったことだ。絵にもそのような特徴は表現されていない。メカの美しさとか複雑さというより、あくまでイスとかテーブルとか、そういう内装の細々したアイテムに注目しているらしいことが推測できる。道理で新幹線などの列車のオモチャは、あまり欲しがらないわけだ。

 さて今日みこりんが描いた絵、なくさないように保存しておかねば。

新車登場

 三月も中旬になろうかというのに、外は降り止まぬ雪であっというまに白一色に染まってゆく。寒い土曜日。夕方になって、買い物に出ていたLicとみこりんが戻ってきた。みこりんはすっかり熟睡モードである。

 いつものスーパーが新装オープンしたとかで、いろんなものが安かったらしい。私にはトミカの復刻版ミニカーが4台手渡された。以前、復刻版の第一段を逃して悔しがっていたのを覚えていてくれたのだろう。今度の車種はフェアレディ240ZG(フロントノーズが滑らかなタイプ)、スカイライン2000GT(ケンメリのような)、スバル360(ボンネットが開くのが可愛らしい)、クラウン(古きよき…)だった。このタイプのフェアレディは、もっとも好きな型なので、かなりうれしい。さっそくテーブルに並べて置いた。

 で、ちょっと目を離してるうちにみこりんが起き出し、そのミニカー達ははやくも他のミニカーとぐっちゃぐっちゃに混ぜられていたのだった。まぁ使ってなんぼ、遊んでなんぼのミニカーである。それはそれでいいんだけれど、今度は無くさないようにねみこりん。


2001.3.11(Sun)

朝の光景

 休日の朝は、やっぱりみこりんが一番早起き。私はといえば、明け方にやっと眠りについたばかりなので、いくらみこりんに誘われても瞼がくっついて離れない。仕方がないので目を閉じたまま、とりとめのない会話を楽しんでみたり。
 そのうち目も覚めるだろうと思ったのだが、甘かった。この布団のぬくもりの心地良さといったらどうだ。恐るべき破壊力で私を抱きかかえて放さない。あぁ、あと10分、いや5分でいい、それまでそっと寝かせておいて…とみこりんに言ってもわかってもらえないだろうから、何か別の手を考えねば。

 苦し紛れに「みこりん、先に朝ご飯作っててくれる?目玉焼きとおみそ汁と、作ってくれる?」なんて口走ってしまう。あと8年もすればそういう芸当も可能だろうが、まだ3歳のみこりんにその要求は無謀だろう……そんなことをもう一人の自分が背後で突っ込みながらも、やっぱり目は開かないままだった。眠い、眠すぎる。

 もう少し寝ていられるだけの良い案をさらに考え始めたとき、みこりんが意外な行動に出た。やけに張り切って寝室から出て行ってしまったのだ。「めだまやきつーくろっと!」そんな声が廊下から届いてくる。まさか、本気なのか?本当に朝ご飯作ってくれるのか?(いやそれは無理だと思うけど)でもとにもかくにもこれでしばらくは安眠できる。今一度、至福の眠りの世界へ……

 ダメだ。みこりんの様子が気になって今度は逆に眠れない。いやに静かすぎるのもなんとなく不気味だ。だいたい生卵は冷蔵庫の上の方にある。みこりんに届くはずがないじゃないか。もしガスをつけ損ねて爆発でもしたらどうしよう。などとどんどん悪い方に考えがシフトしていってしまう。

 さすがに寝ている場合じゃないと身体が観念したのか、ぱちっと目が開いた。大急ぎでみこりんの『朝ご飯作り』を覗きに行く。みこりんが寝室から消えて、いったいどれくらいの時間が経っただろうか。1分?いや5分くらいは過ぎたような気がする。目玉焼きならカタ焼きどころか、焦げるかもしれない。

 ドアを開け、キッチンへ。みこりんはそこにいた。ふりひらエプロンを着用し、冷蔵庫を開けて何かを物色中だ。視線の高さがあまり違わないのは、みこりんが梅干し用の瓶に乗っかってるからだと気づいたのは、かなりあとのことだった。その時みこりんは生卵を1つ、手にとっていた。いかにも落としそうで、心臓に悪い。一緒に朝ご飯作ることにして、生卵は私が保護してやった。

 みこりんは本気だった。いつも私やLicが料理してるのを見て手順はだいたい知ってるのだろう。8年後どころか、来年には休日の朝はみこりんの用意した朝ご飯をみんなで囲んでいることになってたりするかもしれない。じつに頼もしいことである。


2001.3.12(Mon)

レンジでチン

 夕餉の準備を始めたLicが、皿を1つ探しているようす。朝、たしかにテーブルの上に出して置いたのに、どこにも見あたらないという。“気迫”さえ感じてしまうほどの執念で、そこら中を物色しているLicの姿に、いったいその皿には何が入っていたのかという興味が猛烈にわいた。よほど美味いものに違いあるまい。

 「沢庵」とLicが答える。先日からこまめに食卓に出されていた即席漬けの大根のことだ。たしかにあれはいい具合に漬かっていた。そいつが忽然と消えたとすれば、確かに一大事である。

 ついついつまみ食いしてしまったとか、何者かが侵入してきて沢庵だけ食っていったとか、1つ1つ可能性を指摘してみたが、どれもいまひとつインパクトに欠ける。沢庵の皿が丸ごと消えるには、もっとこう大胆な仮説が必要なのではあるまいか。さらに頭を捻っていると、何食わぬ顔でLicが『皿』を持って来るではないか。そこにはまさしく沢庵が山のように…。

 電子レンジの中にそれはあったという。みこりんはそもそも皿に手が届かないだろうから除外するとして、やはりLicがそこに置いたのだろう。我が家は三人家族、他に誰がいるというのか。もちろん私ではない。まちがいなく私はついさっき戻ってきたばかりなのだ。むろん白昼に自我喪失で彷徨う癖もない。はたしてLicは沢庵をレンジでチンしてどうするつもりだったのだろう。

 初春、桜の精が目覚め始める季節、人は思わぬ行動をしてしまうものなのかもしれない。


2001.3.13(Tue)

ろれつの回らない時

 寝る前のひととき、みこりんに絵本を読んで聞かせてやる。今夜の絵本はみこりんお気に入りの看護婦さんが登場するやつだ。私の読みにあわせて、みこりんも声に出してついてきてる。でも、どうしても「看護婦さん」が「かんごくさん」になってしまうのだった。

 「か・ん・ご・ふ・さ・ん」
 ためしに一文字ずつ区切ってみたところ、これは大丈夫らしい。念のため、これを数回繰り返す。口が慣れてきたところで、さぁ言ってみよう。

 「かんほふさん」

 へんに意識してしまってますますおかしなことになってしまった。何度か繰り返し正しい言葉を教えてみたものの、どうしても「かんほぐさん」とかそっち方面に行ってしまうみこりん。“なんかへんだ…”、みこりんもそう感じているようで、かなり悔しそう。たぶん頭ではわかってるのに、口がうまく動かないんだろう。私にも覚えがある。ニューラルネットワークが流行始めた今から十数年前のことだ。“バックプロパゲーション”を、つい“バップクロパゲーション”と言ってしまったことが二度三度四度五度…。たしかにあれは口惜しい。

 しばらくはみこりんも苦闘するのだろう。でもいつのまにかすっとしゃべることができるようになっていて、「かんほぐさん」なんて言ってたことすら忘れてしまっていそうである。


2001.3.14(Wed)

言い間違い

 にゃんちくんがリビングのドアをじっと見上げている。その取っ手にぶら下がったみこりんの黄色い縄跳びにじゃれつきたいのか?あるいは、単に廊下に出たいだけなのか。これを見極めるのは、なかなかに難しい。出たいのかと思って開けてやっても、不思議そうな顔で見つめられることはこれまでにもけっこうあった。ドアの隙間からすすす〜っと流入してくる冷たい空気が物悲しい。

 でも今夜は廊下に出たがってるように思えた。しかし一応念のためににゃんちくんには“一言”言っておかねば。

 「開けたらちゃんと廊下に出るんよ、みこりん

 ……あぁ、またやってしまった。


2001.3.15(Thr)

サーバの引っ越し

 今期の集大成たる報告書は、無事点検をパスし、承認される運びとなった。大きな肩の荷が降りた瞬間というのは、じつに気分がいい。これで心おきなく引っ越し準備に取りかかれるというものだ。
 ところで所属はなくなってしまっても、運用していたWebサイトは引き続き公開しなければならないとのお達しがあった。メンバーもバラバラになってしまうし、所属も今とはまったく関係がなくなるので、今後サイトが更新されることはないのだけれど、一応残しておこうということらしい。
 で、この一年面倒見てきた私がその役目を引き受けることになったのだが、せっかく時間もできたことだし、この際思い切ってサーバを移し替えることに決めた。
 これまで運用してきた古びたワークステーションは、私が入社したときからあるような年代物だし、近頃はハードディスクがヘンな音立てるようになったし、空き容量不足でたまにサイトにアクセスできなくなるほどだし…

 新しいサーバは、余ってたPCに TurboLinux Serverをインストールしたもの。Webサーバとして必要な設定は、じつはほとんど終わっている。以前から暇を見つけてはちょこちょこ進めておいた結果だ。今日は一気にカタをつけてしまおう。
 メモを見ながら設定再開。それと並行して、現在のサイト内容をごっそり自分のPCに転送する。デモ用のビデオ映像なども含まれるため、かなりの容量になってしまった。

 設定が終わると、CGI用のCプログラムを修正しつつ動作確認を済ませたのち、改めてさきほど転送し終えたサイト内容をコピーする。新しいサーバ(とはいえこちらもかなり旧型ではあるのだけれど)は、ハードディスクの容量は2GBほどしかなく、その時点ですでに空き容量は黄色信号が点滅中。なんとなく嫌な予感はしたが、やっぱり最後までコピーすることはできなかった。

 最小限度の構成に編成しなおしてお茶を濁すか、それともこの際ハードディスクを増設してしまうか、三秒ほど迷う。で、決めた。増設しよう。自分用のファイルサーバにするのも悪くない。というわけで続きは明日。

卒園・入学シーズン

 3月も中旬を迎え、みこりんの保育園でも卒園・入園準備がそろそろ始まっているらしい。みこりんの話題のふしぶしに登場していた年長の女の子が、春からは小学校に上がってしまうとかで、みこりんも“小学校”について考えるようになってきたようだ。指折り数えて、あと何年すれば小学生になれるのかと聞いてくる。

 でもそれ以上に気になることがみこりんにはあるようだ。小学生になったら待望の“自転車”に乗って通学できる……と、どういうわけか思いこんでるのだった。いったいどこからそのようなデマが。自転車通学は中学生になってからなのに。…ひょっとしてみこりん、小学生と中学生の区別ができてなかったりして。もっとも、みこりんくらいの年齢なら小学生も中学生もさして違いはないのも事実か。
 それはともかく、そろそろ幼児用自転車の練習はやらせてみてもいいかなとは思っている。早いうちに2輪のバランス感覚を養っておけば、いずれ乗ることになるバイクにもなじみやすいだろうから。


2001.3.16(Fri)

変身!

 みこりんが唯一持ってるベルトは、砂漠色のキャンバス地だ。長さを自在に調節可能な作業ベルトタイプなので、満腹時と空腹時に倍ほども胴回りの長さが変化するみこりんには丁度良い。そのベルトはジーンズ用にと買って貰ったものなのに、みこりんは今、ベルトを半纏の上から締めて遊んでいる。

 そのベルトは、ただのベルトではなかった。莫大なエネルギーを生み出す、変身ベルトなのだ。見よう見まねで変身ポーズを決めるみこりんだが、やはりアギトの変身ポーズは今ひとつ盛り上がりに欠ける。キメが両手を左右の腰に当てる姿っていうのは、なんだか萎え萎えなような。まぁみこりんが満足してるならばいいのだけれど。これで一号ライダーとか2号ライダーのビデオを見せてやったらどんな反応を示すのかっていうのは、興味あるところだが。

 これほどライダーにはまってるみこりんならば、驚喜しそうなイベントが二日後にある。いつものスーパーに、アギトがやってくるらしいのだ。そのことを教えてやったのだが、みこりんはいまひとつピンと来てない様子。みこりんが言うには、ライダーは毎週日曜には自分ちのTVの中にやって来てくれるから、わざわざスーパーまで行かなくてもいいんじゃない?ということだった。みこりんがTVをどういう風に解釈してるか、なんとなく理解できたような一瞬だ。

 日曜日、スーパーで実物を見たら納得してくれるにちがいない。


2001.3.17(Sat)

折々

 みこりんにとって折り紙というと、これまでは“くしゃっと丸める”か、私やLicに“折ってもらう”か、“お絵描きのメモ帳代わり”だったのだが、最近は少し様子が違う。自ら“折る”ことに目覚めたようで、今夜も『飛行機』に挑戦中なのだった。

 まず半分に折って。と私が手本を見せてやると、その次は「ひらいて」とみこりんが引き継ぎ、頭を真ん中の線に合わせて三角に…と、かなり覚えてきた手順で飛行機に仕上げていく。そういう作業を5回ほど繰り返すと、私の手を借りずとも、みこりんは自力でなんとかカタチにできるまでになっていた。途中、中心線に合わせて三角に折るところで、先端だけしか合わせられずに苦戦していたが、なんとかなったようだ。

 しかし問題は折り目だった。みこりんは完成を急ぐあまり、きっりち折り目をつけずに次の工程へ移ってしまうため、輪郭がひどく曖昧な飛行機になってしまっている。飛行機というよりロケットのような感じだ。曲面を多用した造形というのも悪くはないけれど、やはり最初は基本を押さえておいた方がいい。改めてみこりんと一緒に手順を繰り返し、鋭角的な翼を持つ飛行機を折りあげる。最後に、みこりんだけで再び挑戦。さきほどよりは幾分ましな形状のものが完成した。そして飛行試験。バランスをとってないので、へなへなと頼りなく落下したが、みこりん的には満足できる結果だったようだ。

 飛行機をものにしたみこりんは、次に選んだターゲットは『手裏剣』。よりによって手裏剣とは…、“鶴”とか“ふくら雀”ならなんとかなるのに、手裏剣では私の手に負えない。以前Licに教えてもらった時には折れたのに、今ではすっかり折り方を忘れている。でもみこりんが折りたいのは手裏剣なのだった。仕方がないのでLicにパスする。が、Licも折り方忘れたなんて言っている。どうやら折り紙の教則本が必要のようだ。

見えない水滴

 ぼん ぼん ぼん ぼん ぼん ぼん ぼん ぼん ……

 風呂場にさっきから異音が響いている。奇妙な反響で発生源をなかなか特定できなかったが、ようやく見つけた。原因もわかった。でも、みこりんは……っと、ようやく気がついたようだ。じっと水道の根元付近を見つめてる。音は、そこから響いているのだった。ちなみにその真上にはシャワーヘッドがある。どこから水が落下しているのかは明白だった。

 でもみこりんはまだ見つめたままだった。音のする場所はわかったのに、どうして音がするのかを考えあぐねているらしい。たしかにちょっと条件が複雑だった。蛇口の根元に入浴剤の小袋が乗っかっていて、そこに水滴が落下することで音は起きているのだけれど、立ちこめる湯気と明るい色彩の袋とが相まって、落下してくる水滴や飛沫がまったく見えていない。ぺたっと袋が貼り付いているので、動きもない。だから、なんにも無いところで“音”がしているように見えてしまう。

 ぼん ぼん ぼん ぼん ぼん ぼん ぼん ぼん ……

 ようやくみこりんに動きがあった。そろぉっと手を伸ばし、入浴剤の袋をどかした。そこがもっとも怪しいと踏んだのだろう。でも、音は止まらなかった。たしかに音の質は金属的な“ぱしぱし”いうものに変化したが、音はやっぱり続いている。
 続いてみこりんは蛇口の上で壁際に立てかけてあった鏡に手を掛けていた。そぉ〜っとどかそうとしている。が、鏡をつかんだ両腕の間に、ちょうどシャワーのホースが入ってしまってて、どうやっても手を抜くことが出来ず(片手を放せばOKなんだが)、鏡の移動を断念。元に戻してる。このとき普通に戻すのではなく、傾斜角を自由に調節できる鏡の利点を活かして、かなり倒した状態で設置してみたところが、みこりんの工夫であった。落下する水滴は、ほぼ水平状態の鏡に当たり、さらに音を弱めている。ひょっとしてみこりん、上から“何か”が落ちてきているってことには気付いたんだろうか。でも一度も頭上を仰ぎ見ることはしなかったので、まぐれなのかもしれないけれど。

 音が小さくなったので、みこりんの興味は失せたらしい。それを確認すると私は、コックをきっちりと締め、“音”の息の根を止めたのだった。


2001.3.18(Sun)

孵化

 先週までの雪と寒風が幻であったかのように一転してぽかぽか陽気の日曜日。久しぶりにサンルームで避難中の観葉植物など観察していたら、Licが西側の天井を指さして「あれはなに!?」と言う。なに?と問われた対象物は、1つではなかった。なんだか小さな物体が無数にガラス面にくっついている。一瞬、背筋がぞわぞわっとしかけたが、すぐに正体が分かって安堵する。それはカマキリの赤ちゃん御一行様だった。卵は夏からずっと掛けてある簾の上の方にくっついていた。そういえばそんなところに卵があったような気もするな…

 さっそくみこりんを連れてくる。急がないと赤ちゃんカマキリは、すぐにちりぢりとなってしまうだろう。肩車で卵近辺に近づけてやると、みこりんにもそれがカマキリの赤ちゃんだというのがわかったようで、うれしがってくれた。みこりんはこういうちっちゃいものとか、赤ちゃんの類にたいそう弱いのだ。

 でもみこりんはカマキリよりもバッタさんの赤ちゃんのほうがいいのだという。さっそく庭に出てバッタの赤ちゃんを探すみこりんだったが、さすがにこの季節、バッタの赤ちゃんはまだ早いような気もしないではない。雑草もほんのまばらにしか生えていない有様なのだ。…でも、今日みたいな気候が続くなら、1週間、いや、2〜3日で雑草は地表面を覆い尽くすだろう。そうすればバッタも出てくるにちがいない。そうでなければせっかく孵化したカマキリ赤ちゃんが餓死してしまう。ただ気になるのはカマキリが孵化したのがサンルーム内だということ。花粉対策で締め切ってるため、昼間なら最高気温は30度近くにまで上がってそうな……。フライングした可能性は大いにある。

 なんてことをぶつぶつ言ってたらみこりんがふいに「かまきりさんはなにをたべるの?」と聞いてきた。なのでつい「バッタさんだよ」と即答してしまった。みこりんは「ばったさんたべるの!?」としばし絶句し、「なんで!?」とさらなる質問を繰り出してくる。そういえば肉食の昆虫のことを、みこりんにはまだ説明してなかったかな。虫といえば、葉っぱを食べるものと思ってるのかもしれない。というか大好きなバッタを、カマキリが食べてしまうという事実に混乱しているのかも。カマキリがバッタだけでなく、虫全般を食べるってのを手始めに、今年の夏は、じっくり食物連鎖についてみこりんに教えてやろうと思う。

 しばらくして赤ちゃんカマキリの様子を見に戻ってみると、半数近くが地表に降りてしまっていた。身軽な動きでさっさか走る。このうちの大半が成虫になることなく命を落とすのだろう。願わくば今年もカメムシやらウリハムシをたくさん食べてくれますように。

 ずっと以前に届いていた黄色い木イチゴ“ワインダーイエロー”を、東側のフェンス沿いにみこりんと植えた。傍に植わっているプラムの枝には、いつのまにやらはちきれんばかりにふくらんだ新芽があって、みこりんと共に今年もたくさん実をつけてくれますようにとお願いしておいた。

 *

 その夜、お風呂で赤ちゃんカマキリのことに話題が及ぶと、みこりんはカマキリさんのお父さんお母さんはどこにいるのかと気にしていた。赤ちゃんがいっぱいいるのに、大きなカマキリがどこにもいないのが心配らしい。ここでもつい「お父さんは死んでしまったんだよ」と答えたところ、じゃぁお母さんは?というので、やっぱりお母さんも死んでしまったのだと答えたところ、みこりん的にはお父さんお母さんがいないのに赤ちゃんがいるっていうのがどうにも納得できないようすだった。それでも、赤ちゃんいっぱいいるから寂しくないんだねなんて自分なりに考えているようだ。
 どうしてお父さんお母さんは死んでしまったのかとも聞かれたが、さすがにお父さんはお母さんに食べられてしまったのだとは言えず、二人とも体力使い果たして死んでしまったんだよと言いかけたのだが、なんとなく二年目もメスは生き残るような記憶が部分的に残っていたので、断定せずに、もしかするとどこかにいるのかもしれないねと付け加える。これでみこりんも少し安心したらしい。赤ちゃんカマキリがわらわらと地面を跳ねて去っていったのは、お母さんを捜しに行ったのだろうと新たなる仮説を立ててみたりしている。でもいずれみこりんも目の当たりにすることになるだろう。交尾を終えたメスが、オスをばりばり食ってしまう現場を。

はじめての『仮面ライダーアギトショー』

 みこりん待望の『仮面ライダーアギトショー』を見せに、近所のスーパーまで出向く。時間まで15分ほどあったが、すでに催事スペースはびっしり人垣で覆われてしまっていた。それほど広くはないので、熱気がこもって暑い暑い。なんとか居場所を見つけて待機するが、こういうときの時間の進み方は、まさにカタツムリの歩みのごとし。人混みはさらに激しさを増しつつあったので、ここはLicにまかせて私は一端撤退することにした。

 みこりんがしきりと“ベルト”をしてきてないのを心配してた様子なんかを思い出しつつ、ちょっと離れた場所からみこりんを観察してみることにした。ステージ方向は立ち見の人垣で、まったく見ることが出来ない状況のまま定刻を迎える。

 お姉さんの前振りが終わり、雄叫びとうめき声が聞こえてきた。ライダーが登場したような気配なのだが、いまいち子供達の声援にメリハリがないような…。いったいステージではどんな状況になってるのだろう。みこりんはといえば、なんだか神妙な表情をしたままだ。謎が謎を呼ぶ展開になってるんだろうか。き、気になる、気になるぞぉ〜と思ってたらLicからケータイに連絡が入る。交代してほしいらしい。花粉対策で厚着してるLicに、この熱気はかなり堪えた様子だ。

 タッチ交代。やっと前方が開ける。ステージ(といっても幅5mほどで、しかもそのうちの1/3を控え室代わりのテントが占めるという狭さ)では、G3が登場していた。みこりんを抱っこして気がついたが、じつはみこりん、食い入るように見入っていたのだった。ちょっと身体の位置をずらしてみると、頭の位置が変わらないように自ら身を乗り出してぐぐぐぃっと体勢をずらすほどの熱中ぶりだ。す、すごい。昨年、やはりここで『おじゃ魔女どれみ』のショーを見たときとは段違い。やはりライダーがいいのかみこりん。

 ステージではやがて、3体のUnkownが出現した。最前列付近では、恐くて泣き出した子も数名出た模様だ。マスクやスーツの造形はかなりリアルそうに見える。でもちょっと動きが……。G3との格闘は、妙に間延びしたような緊迫感のなさが目に付いた。特撮ヒーローものにあるまじき緩慢さだ。いかん、いかんぞこれはぁ。でもみこりんはあいかわらず入れ込んで見入っている。これでいいのか…も。
 それにしてもさっきからG3ばかりで肝心のアギトが出てこないが?と思ってたら、テントからまるで酔っぱらいのようにふらっとアギトが出てきたのだった。そしてかなり白々しい演技で“はっ”と気がつき戦闘に加わった。な、なんじゃこりゃ。ヒーローがこれでいいのか??私の頭は再び疑問符だらけになってしまったが、みこりん的にはこれでもOKらしい。しっかり視線をそらさず見入っている。

 ライダー達が苦戦している。ぼこぼこにされるG3、アギト。そこにギルス登場。颯爽と蹴散らし始める。む、むぅぅ、これではまるでギルスが主役のような…。
 敵をからくも退けたライダー達。だが、アギトは登場したときと同じくらいの唐突さで、またしてもふらりとテントに消え、その後二度と現れることはなかったのである。最後までステージに残っていたのはG3。ん〜、G3>=ギルス>アギトのような扱いだが…。G3とギルスだけでも十分だったような。アギトってこういうキャラなのか……。謎が謎を呼ぶ展開だ。

 でもこれでみこりんはやっとライダーは3人いるのだというのを理解できたらしい。しきりと「3さいくらいおった」と繰り返していた(みこりんが“単位”というものを知るにはもう少しかかりそう)。ちなみにどのライダーが好き?と聞いてみたところ、「じーすりー!」と即答された。今日のステージ内容だとそうなっても当然かなぁ…と思ったけれど、じつはみこりん“青い色”が好きなのでG3というわけらしい。明日からはきっと、ライダーごっこでG3を担当することになるにちがいあるまい。


2001.3.19(Mon)

いるもの、いらないもの

 仕事場では、淡々と引っ越し準備を進める姿があちこちで見られるようになった。私も今のうちから準備しておこうと、昼からは机の中を整理することにした。この部署に移ってきてからはや5年、でも出てくるのはそれ以前の部署で溜め込んでいた資料ばかり。昔は物持ちがよかったらしい。新入社員当時のあらゆる配布物の詰まった紙袋なんかもあったりして、しばし片づけを中断して見入ってしまう。ふんふん、仮装大会の明細書か……何もかもみな懐かしい…。バブルに活況を呈していた幻のようなひととき。春からの事が、ほんの少しだけリアルな現実として感じた一瞬だった。


2001.3.20(Tue)

春の園芸

 絶好の種まき日和。Licとみこりんが買い物に出かけたあと、私は一人サンルームで黙々とプラグトレイの準備を始める。種の袋は3種類。“あまいえんどう(スナックえんどう)”“春蒔絹さやえんどう”“ひなげし”と並べ、袋の裏表を入念にデジカメで激写したのち、開封、中の種を順に手のひらへ。じっくり慈しんでから、これも慎重に撮影する。なにしろ“ひなげし”の種はゴマ粒をさらに三等分したくらいのサイズしかない。うっかりくしゃみでもしようものなら、たちまちどこかへ飛んでいってしまうだろう。時はまさに花粉の季節。くしゃみをこらえるのもラクじゃない。

 どうにか画像を取得し終えたら、次はプラグトレイに土をセッティングする番である。プラグトレイというのは、種まき用のトレイであり、まるでプラグのように小さな縦長の穴が開いている。私が買ってきたのは200穴のタイプだ。これだと1つの穴はだいたい1cm四方、深さで3cmほどという一見ほんとうにこれで苗が育つのかと思うほどの形状をしている。ジフィーポットとかそういう商品と見比べれば、あまりに少ない土の量だ。でもこれでぜんぜん大丈夫らしい。本葉数枚までの幼苗時期には、生長速度が遅く、それほど土を必要としないからという理屈のようである。土が少ない分、根鉢がしっかり出来るので、定植時の植え痛みが少ないのと、ポット上げ(鉢上げ)の必要がないというのが、ものぐさな私向きといえる。去年はポット上げしなくていいだろうと大きめのジフィーポットで苗を育てたが、場所をとるので置き場所に苦労したし、苗用の土だけでもけっこうな量を買ってこなくてはならなかったし、おまけに乾燥しやすく水の加減も面倒だった。それらの欠点をこのプラグトレイはすべて解消してくれそうな気配である。

 200穴でも1つ1つの穴が小さいので60cm×30cmの場所があれば大丈夫。でも、受け皿がちょうどいいサイズのものがなかったので、適当にカッティングして使うことにした。ますますコンパクトでいい感じだ。
 穴が小さいので入れる土には気を配りたい。今回は、いつになく丁寧にフルイにかけたりなんかして。ちゃんとしたフルイがなかったので、台所ネットで代用したけれど、そもそも必要な土の量が少ないのでたいした作業にはならなかった。あっというまに100個分のプラグが用意できてしまったことになる。去年は100個のジフィーポットに土を詰めるだけで、半日仕事になってたような……。えらい違いだ。

 とはいえ今回用意したエンドウ豆みたいに大きな種にはプラグトレイは不向きである。こればかりは去年同様ジフィーポット等を使うしかない。といってもそれぞれ2株づつしか作る予定じゃないので、作業量はさほどでもない。ポットを取りに行ってる間に、みこりん達が買い物から戻ってきた。すかさずみこりんが「これなに??」と寄ってくる。というわけで、種まきはみこりんと一緒にやってみた。ジフィーポットに蒔く豆は、キャプタン剤(殺菌剤)で派手に色づけされているのでみこりんの興味を鷲掴みにしたようだ。特に“あまいえんどう”はピンク色と、“絹さや”の緑色よりも数段派手さに拍車がかかっており、さらに1ポット追加で増えてしまったのであった。Licは絹さやのほうが好きと言っていたが、今年は“あまいえんどう”にも挑戦してもらわねば。

 さていよいよプラグトレイへの播種である。“ひなげし”の種はあつらえたかのように微細だ。これを数粒ずつぱらぱらと20プラグ、みこりんと共に蒔く。小さいものが得意なみこりんだっが、さすがにこれは見失ってしまったようで、「どこ?どこにいったの?」とほとんど直感勝負の世界。もしかすると予想外の場所から芽を出すかもしれない。
 まだ80プラグが残っているので、ついでにキャベツと紫キャベツの種も蒔いてみることにした。はやいうちにとっとと苗を作ってしまって、あとは防虫ネットを被せておけば、去年のように青虫に喰われて全滅なんてことにはならないんじゃ……と期待して。
 蒔き終えたあとは、ティッシュを数枚のっけて、そぉっと上からジョウロで水やり。無事に芽を出しますように。

 *

 午後からはいずれ芽を出す豆達のために、菜園を始動させる。ウッドデッキ外周に沿って軽く耕し直し、有機石灰と堆肥を少々。まだまだ赤土主体だが、なかなかいい感じにほくほくしてきつつもあるような気もする。今年の二大目標である“自家製ボカシ肥”と“自家製堆肥”が期待通りの性能を発揮すれば、この場所も菜園1号2号に負けないくらいの土になってくれることだろう。

 そして花壇。すでに到着していたダリアの球根を植えるべく、こちらも少々耕してみた。さすがに去年大量に培養土を加えただけあって、色が黒っぽく仕上がっている。あんまりほこほこに耕してしまうと猫害が心配になってしまうところだが、いまだ未完成な『完璧な防壁』はそれでもなかなかの威力を発揮しているようで、あれ以来猫どもの侵入した形跡はない(でも3月中には完成させねば…)。

 最後に庭を掃き清めてお仕舞い。雑草の専有面積が倍増以上になっていることを改めて確認した。バッタもそろそろ顔を出しそうな気配だ。

指人形と腹話術

 夕方、寝起きのみこりんは少々ご機嫌斜めのようす。そこで笑わせるのに都合の良いアイテムはないかと部屋を見回してみると、買い物袋の中から透けて見えるオレンジ色の物体が目に留まった。
 そいつを両手に隠すようにしてみこりんの目の前にかざしてみれば、案の定興味を示してくれている。食いつきは十分、あとは一気にこちら側に引き込むだけだ。

 “ぱっ”と手を開くと、中からまろび出てきたのは2体の人形。オレンジ色の“ぞうきち君”とピンク色の“ぞうみちゃん”だ(たぶん正式名称があるような気がするけど、とりあえずここではこのように呼称することとする)。ある製薬メーカーのキャラクターと言えば、その姿が脳裏に描かれたのではなかろうか。

 胴体下部が開口しており、指人形にするにはもってこいだった。私が“ぞうきち君”で、みこりんが“ぞうみちゃん”をそれぞれ指にはめて、遊びは始まった。このときふと思い立って、“ぞうきち君”のしゃべりを出来るだけ口を動かさないようにして発声してみたのだが、これが意外にみこりんのツボにはまったらしい。そんなことあるはずないと思いつつも、みこりんは本当に“ぞうきち君”がしゃべってるんじゃないかとだんだん不安になってきて、ついに私の唇を上下に“にゅぃぃぃぃっ”と開いて確認する始末。その後もちらちらっとこちらを盗み見るように口元を観察しているのがわかったので、いよいよ注意深く唇を動かさないように声を出すことに専念した。その影響で“ぞうみちゃん”という名称は、いつのまにやら“ぞうちゃん”へと変貌を遂げていた。“ぞうりちゃん”、慣れてみると意外にすんなりはまる名前かもしれない。

 みこりんの機嫌はすっかり回復したようである。めでたしめでたし。


2001.3.21(Wed)

密室の怪

 思わず目を疑った。昨日みこりんと準備したエンドウ豆のポットが、2つとも倒れ伏していたのである。無事に見えた絹さやエンドウのポットにも、じつは異変があった。小さな棒のようなもので突き刺したような穴が数カ所開いていて、豆がきれいさっぱり消滅しているのだ。おそるべき正確さで、豆をピンポイントに奪取したかのように…

 ほぼ当時に2つの可能性が思い浮かんでいた。“ヒヨドリ”と“みこりん”だ。しかしサンルームは昨日から締め切ったままで、ヒヨドリの侵入があったとは考えにくい。そんな隙間はどこにもないはずだった。では…みこりん、なのだろうか?ウッドデッキに散乱していたオモチャを片づけるように注意したことを根に持って……。およそあり得ない状況のように思える。みこりんはまれに気性の激しいところを見せる場合もあるが、自分のモノ以外に八つ当たりはしないはずだった。それにみこりんだったら、豆をどこかにやってしまうようなことはすまい。
 でも一応みこりんを呼んできて現場を見せてみた。もしかすると意外な証言が得られるかもしれない。ヒヨドリ以外の何ものかを、みこりんは目撃している可能性はある。昨日、このポット苗にもっとも長く接していたのはみこりんなのだから。

 みこりんは驚いていた。少なくとも昨夜みこりんがサンルームから撤退するまでは、こうはなっていなかったようだ。すると真夜中から朝にかけて、ということになる。豆をねらっている事から、何らかの生物だと思うのだが、このサンルームに侵入できるサイズの生物となると、かなり限定されてしまうのがいやらしい。

 ネズミ…小さな穴の説明が難しい…
 ヘビ…豆は食べないだろうし…
 虫…ポットを倒せるほどの虫っていったい…
 イタチ…やはり小さな穴の説明ができない…
 コウモリ…ん〜草食性のコウモリがこの辺りにいるとは考えにくい…

 いったい何ものが潜んでいるというのか。もしや今もサンルームのどこかにヤツはいて、じっとこちらをうかがっているのではないか。まばゆい太陽の光の下だというのに、素足の表面に軽く怖気が走る。…馬鹿な。空想を断ち切るように、サンルームを出た。とにかく豆は植え直そう。ただでさえ植え時期を逸しつつあるのに、ここでさらに遅れてしまうと、取り返しがつかなくなる。

 新しい豆をポットに蒔き、こぼれていた土を直し、ポットを整列させて、仕事に出かけた。

 そして夜。悪夢の再現。ポットはまたしても倒れていたのだった。豆は、やっぱりなくなっている。締め切られたサンルーム。密室の怪……
 何ものが侵入してくるにせよ、このままでは明日もまた同じ事の繰り返しになることは、夜明けが来るのと同じくらい確実だろう。真剣にビデオカメラを一晩中回しておこうかとも思ったが、豆をこれ以上犠牲にすることもあるまいと考え直す。豆のポットはここから撤退させたほうがいい。再び豆を蒔きなおすと、ポットは部屋の中、座敷へと移動させることにした。これで明日もポットが倒れていたらかなり怖いことになるのだが、果たして…


2001.3.22(Thr)

豆は…

 豆は無事だった。さすがに部屋の中までは侵入できなかったようだ。

 小春日和、されど桜の蕾はまだまだ固く…


2001.3.23(Fri)

前日

 2〜3日とはいえ家を空けるとなると、それなりに準備がいる。特に生き物を飼ってると、なおさらだ。ジャンガリアンハムスターの“ことりさん”には、キュウリを丸ごと1本、適当にカットして放り込んでおき、あちらこちらにヒマワリの種やら固形フードを埋設しておいてやる。これで万一予定が倍に延びて帰還が大幅に遅れたとしても大丈夫。にゃんちくんのほうは乾燥フードを3日分ほど。これまでケージに入りきらずに外置きだった爪研ぎも、Licの工作により無事ケージ内に設置完了しており不安はない。魚達は、1週間程度の断食ならばほとんど心配ないので大丈夫。鉢植えにはたっぷり水をやって、と。

 長距離ドライブになるのでスタッドレスタイヤをノーマルタイヤに交換したりしてるうちに、結局、出発は午後1時をかなり回ってからになってしまった。目指すは四国、瀬戸内方面。天候は申し分ない。1stドライバーはLic。というわけで2ndの私はナビシートでくつろいでるうちに、すっかり熟睡していたらしい。気がつけばすでにクルマは神戸方面へと入っていた。同じく熟睡モードにあったみこりんも、機嫌良く目覚めた模様。ただ、一眠りしてもまだ到着していないことに、少々驚いているようだ。

 それでも高速道路が全線開通した効果は大きく、これまでの平均到着時間を2時間あまり短縮して、無事我々は目的地へとたどり着いていた。
 およそ一年半ぶりの実家には、黒猫が1匹、新しく家族に加わっていたのだが、その図体のでかさは猫というより黒豹の子供といった感じだった。私でもそう感じるほどなので、みこりんにしてみれば、まさに猛獣…さぞや怖がるだろうと見ていたところ、意外に大丈夫らしい。ガタイはいかついものの、鳴き声はじつに愛らしくちっちゃな声で「なー」というのがポイントかもしれない。

 この夜、みこりんはなかなか寝付かなかった。私も同じく寝苦しかった。なにゆえ、これほど枕が固いのか……。次回は“My枕”を持参せねば。


2001.3.24(Sat)

そして当日

 さて本日はお日柄も良く…と定番のスピーチが似合いそうな小春日和だった。婚礼の儀にはじつに申し分ないシチュエーションだ。親父と末の弟は、なにやら残作業を片づけるべく朝から駆り出されており、おそらくは今日の主役である真ん中の弟も今頃は会場で着慣れぬ衣装にぎゅぅぎゅぅと締め上げられていることだろう。
 残った我々も、午後イチで一族と合流して会場へと向かう手はずだった。が、合流予定だった列車が、別の列車事故のあおりを喰らって大幅に遅れてしまうことが判明。急遽、合流ポイントの変更が決定されたのだが、どうやってそれを伝えればよいだろうか。ケータイを持っててくれれば何の問題もない場面だが…。

 どうにかこうにか連絡が付いたのは幸いであった。心おきなく我々も会場へと出発する。もちろん親族御一行様用バスが手配されていたのだが、“乗り物の中でもっとも苦手とするのがバス”という生活を物心ついたときからおくっている私は、自前のクルマで先行する。むろん運転手はLicである。みこりんも一緒だ(みこりんはバス大好きといううらやましい体質を持っているのに、なぜか今回バスを所望しなかったのである)。

 エンプティランプが点灯しそうなのと、めでたい席に汚れまくったクルマで乗り付けるのもどうかということで、途中ガソリンスタンドへと立ち寄る。だが、あいにく洗車機はなかった。しかも悪いことにエンジンオイルが危険レベルまで減少していることが判明してしまい、思わぬタイムロスを食ってしまう。余裕で到着して併設されてるハーブ園でも散策してようという作戦は、こうしてもろくも崩れ去ったのであった。今にして思えば、これら一連の流れは、すべて“前触れ”であったのかもしれない。

 やがて到着した我々が、集合写真を撮るべく会場前の階段に整列しつつあったころ、そいつは唐突にやって来た。大地が小刻みに揺れている。地震だ。まぁこのくらいの揺れならすぐに収まるだろう……震度1くらいか?……でもあっちに停めてるクルマがいやに大きく波打ってるが??と思う間もなく、かなり激しい揺れに襲われた。こいつはデカイ。咄嗟に背後の建物が気になって、無意識に広い方へと駆けだしていた。幸いみこりんの手は離してなかったが、抱き上げるところまで頭が回っていなかった。やはり少々パニくっていたようだ。
 震度5弱という情報がもたらされたのは、式も無事終わったころだった。予想以上の規模だ。どこかの街が壊滅したのでは、という嫌な予感に囚われる。

 ところで今回の結婚式では、みこりんに重大な役どころが与えられていたのを記録しておこうと思う。“リングガール”=新郎新婦の結婚指輪を、式の開始直後に新郎の元まで届ける役である。教会式ではないので、これをヴァージンロードと呼んでいいものかどうか不明だが、新婦がしずしずと歩いて登場してくる部分に敷いてある白くて長い敷物(?)の上を、誰よりも先に歩くというかなり目立つ役柄だった。みこりんもそれを楽しみにしてる風だったのだが……いざ本番となると、その“目立つ”ゆえに“緊張する”という現実を直視してしまい、すっかり怖じ気づいてしまった様子。どのような説得も無駄かと思われたが、みこりんから条件を提示してきたのだった。それは「おとーさんといっしょにあるく」こと。…い、いたしかたあるまい。可能な限り背を低くかがめて、みこりんの左側を歩くことにした。みこりんの小さな手をとり、いざっ………将来この情景がきっとフラッシュバックする時が来そうな予感。それにしてもみこりん、新郎に渡し終わってから“いい笑顔”になるの、もったいなさすぎ。歩いてる最中、ずぅっとしかめっ面なんだものなぁ。

 ガーデンウェディングに参列するのは初めてだったが、たしかに開放感があっていい。天候に思いっきり左右されるという弱点はあるものの、なんだか原初の儀式みたいな素朴なところが記憶を揺さぶる。……末永く続きますように。


2001.3.25(Sun)

眠気

 朝から静かに雨が降る日曜日。テンションは下がりきったまま、なかなか始動せず。帰還を明日に延ばすか、それとも今日にするか、昼まで迷う。高速道路だけでも自動運転が可能ならばこんな悩みもなくなるのに…。そんな夢は当分叶いそうもないので、やっぱり今日帰ることに決めた。

 来たときと同じく1stドライバーはLicだった。途中、Licの実家に立ち寄り晩飯にありつかせていただく。ここがちょうど半分の距離になるので、予定では後半を2ndドライバーの私が運転するはずだったのだが、なぜか強烈な睡魔がしがみついて離れてくれない。どうやら事前に服用していた酔い止めの薬が、ヘンに作用してしまっているようだ。頭の中は大部分が濃厚な霧で覆い尽くされたかのように思考が停滞しきっているというのに、部分的に妙に鋭敏に反応する箇所が残っていて、それがちりちりと奇妙な焦燥感を与えている。そのせいで今にも眠ってしまいそうなのに、完全には落ちられないという非常に嫌な状況が続いているのだった。ノイズの中から時折、人の声が聞こえてくる…という状態のカーラジオもまずい。無理に聞こうとしてつい意識を向けてしまう。

 結局、Licの運転のまま我が家に到着した。なんだかすべてが夢の中の出来事だったような気がしてくる。明日になれば、満載してきた荷物の数々は、きれいさっぱり消えてしまっていたりして……なんてことを思いつつ、今度こそ本当に眠りにつく。やはり布団で長々と横たわれるのは、いい。すみずみから力が抜けて、いつのまにか……


2001.3.26(Mon)

発芽/開花

 本日休業。昨日はまったく運転しなかったというのに、身体の節々が奇妙にだるい。こんな日は、お日様をたっぷり浴びて休養するのが一番。天気もいいし、さっそく庭に出て植物達の変化を見て回る。

 ひなげし発芽!被せていたティッシュをすべて剥がしてやった。
 エンドウ豆発芽直前!さっそくサンルームへと移動。今度はヤツにやられないようにビニールを被せてやる。
 チオノドクサ“ピンクジャイアント”開花!「う…うつくし…」
 コブシ満開!年々花数が多くなっている。でも早くも食害の痕が…
 菜の花(白菜)開花!またしても葉っぱ食べる時期を逸してしまった。
 大根に花芽!なんと今年は根っこが太ってない!

 じきプラムも咲きそうである。それにしても岐阜を通り越して東京に桜の開花宣言とは…、いったいどうなっているのやら。

 夕方、名古屋でようやく桜の開花宣言あり。でもこのあたりはまだまだ。


2001.3.27(Tue)

ま、またしても

 エンドウ豆をやられてしまった…
 夜は部屋の中に取り込んでいたので、昨日の昼間、すでに食われていたのだろう。ビニールをかけていたのですっかり安心していたのだが、敵はかなり“したたか”であるらしい。こうなっては最後の手段……サンルームに置いたままにしていた空っぽのピーコのカゴを、こうやってすっぽり被せてしまえ。これを突破するような生物でないことを祈るのみ、だ。

ザクか…

 例のザクが、歩きを披露したとかいうのでさっそく動画を落としにかかる(『遂に歩いた2足歩行ザク──量産出荷は12月』)

 片脚を踏み出したところまでは分かった、けれど、このあとどう二歩目に移るのかが気になるところ。踏み出し位置と上体の揺れから、なんとなく動歩行も“可”のような…。約10万円というのがちょっと痛い。いずれ荒れ地走行可ってタイプが登場するだろうから、それまで待ってみようかな…


2001.3.28(Wed)

声変わり

 仕事を終え、いつものようにLicとみこりんの待つ門まで急ぐ。でも、今日はまだ二人を乗せたクルマの姿が見えない。そこでケータイで呼び出してみたところ…
 「もしもし」と聞こえてきたのは、聞き慣れぬ“女”の声だった。一瞬言葉に詰まる。が、思い切って「みこりん?」と問うてみると、続いて聞こえてきたのは“いつもの”みこりんの声だった。最初の“もしもし”があまりにオトナびて聞こえただけらしい。……ふぅ…、なんてこった。

当選

 応募していた市の菜園に、めでたく当選した。
 我が家の割り当ては、今年急遽増設された新しい方。じつはまだ現地の準備が完了していないので、実際に作業に入れるのはGWごろらしい。ぎりぎりだかなんとか夏野菜には間に合うだろう。一面コーンというのも豪快でいいなぁ…


2001.3.29(Thr)

最後のデモ

 本日午後、最後のデモ走行を実施。西の果てまで広がった鈍色の空は、昔、北の大地で見たサロマ湖上空の雄大さを彷彿とさせる。雨は結局降らなかった。
 自律移動ロボットは、これが最後の勤めと知ってか知らずか、ノートラブルで周回走行を終えた。客人は某大学の某研究室御一行様。工学系研究室にありがちな、野郎共に女一人という構成だ。ふっと自分が学生だったころを思い出したりなんかしてしまう。春三月、別れの季節。このロボットとも、たぶんこれでお別れ。

 明日は、引っ越しだ。

飼ってるもの

 じつはみこりん、ちょっと変わったものを飼っていた。それは“土”だ。水で練ると団子にしやすいサラ粉を、ちっちゃなプラスティック容器に詰めて、秋頃に密封してた。そしてそのまま、その存在を忘れた……らしい。そうして一冬越して、ようやくその存在を思い出したみこりんは、先日、まるで浦島太郎が玉手箱を開けるかのような慎重さで、“かぱっ”と開封したのだった。

 じっと見入るみこりん。真ん丸目玉が、なにか興味深いものを発見したことを教えてくれた。
 「はながさいてるっ!!」みこりんは、そう叫んでいた。横から覗いてみると、じとっと湿った土の表面に、数本の緑色した小さな葉っぱがにょきにょき生えてきているのが見えた。双葉が開き終えた頃で、じつに愛らしい姿である。土の中に雑草の種が混じっていたのだろう。それにしてもみこりん、これは花じゃなくて葉っぱじゃないの?と突っ込もうとした瞬間、「いかんねぇ」と呟きながらみこりんはその葉っぱをぶちぶち千切り始めたのだった。みこりんにとって飼育対象はあくまで“土”であり、その他余計なものは邪魔物以外の何ものでもないらしい。

 みこりんは“土”に何を見い出したのか。いつか語り合わねばなるまい。


2001.3.30(Fri)

引っ越し当日

 職場の引っ越し当日、いつもより少し早めに出勤してみると、すでに荷物の移動が始まっていた。予定では午後からのはずだったのに、いきなり今朝、そうしてくれと言われたらしい。転入先との話し合いで事前にスケジュール表まで配布し、万全の体勢で臨んだ結果が、この大どんでん返し。まったくもって成り行き任せの出たとこ勝負。あいかわらずダメな管理組織である。

 とにかく段ボールに詰めて詰めて詰めまくり、トラックに積んでもらって、運び出す。大量のコンピュータ類やらキャビネット類も移動させるので、現場はあっというまに廃墟のような様相になってゆく。

 午後、運び出した荷物の搬入。いちおう古巣近辺への帰還ということになるので、見知った顔がそこかしこにあって、まったく知らない場所へ来たという不安はない。

 夜、ささやかに宴会。一杯目のビールが五臓六腑に染み渡る。こんなうまいビールは何年ぶりだろうか。

 同じく何年ぶりかで二次会へ。
 明け方、雪。


2001.3.31(Sat)

最後の未満児クラス

 今日でみこりんは未満児クラスを終える。4月からは晴れて年少クラスへ。庭の外では昨夜の雪がまばらに残っていて、春うららかな陽気とはじつに対照的である。
 1歳になったばかりの頃に入園したみこりんなので、未満児クラスには約3年半在籍していたことになる。3年間といえば、中学生一年生は卒業するし、高校一年生も然り、もしもドワーフハムスターだったりなんかしたらもう大変、天寿を全うしてしまってるだろう……。結構な年月だ。

 朝、保育園に向かう準備をしていると、Licが庭から水仙を切ってきた。4本ある。黄色いラッパ水仙。大輪だ。鱗粉を纏ったかのような黄金の光沢。今年は例年になくデキがいい。
 みこりんのクラスには先生が4人いる。なので一人一本。それでも十分すぎるほどに存在感あり。先日の結婚式でもらってきたリボンを結べば、できあがり。来年もまた、この水仙が役立ってくれることだろう。

 いよいよ保育園に着き、水仙を手にしたみこりんがしずしずと出迎えの先生達のもとへと進んでゆく。その意味するところを察した先生達が、順番に横に並んで、スタンバイOK。
 1本目、2本目、3本目と順調に手渡し終えたみこりんだったが、4本目で動きが止まった。悩んでいるようである。片方の眉が、少しだけ怪訝そうに寄せられていた。じつはみこりんクラスの先生4人のうち、3人は今日で園を去ることが決まっている。それをみこりんは知っていた…。
 でも残った1本と目の前の先生4人とを見比べてみれば、やるべきことはただ1つ。やがてみこりんは4人目の先生にも水仙を手渡してくれた。作戦終了、撤収。

かんごくさんする

 夜、薄いピンク色のカーディガンを羽織ったみこりんが、「かんごくさんする」と訴えている。“かんごくさん”というのが“看護婦さん”というのはすぐに分かったのだが、“看護婦さん”を“する”とはこれ如何に?しばらく悩んだところで、ようやく意味が判明した。名札をカーディガンに付けてくれと、こういうことらしい。昼間、音楽教室の体験コースでもらってきた“名札”を使いたくてしょうがないようである。

 その“名札”には首から下げる紐がついていたのだが、それは外してくれとの要望だったので、そのようにしてやったところ、すっかりみこりんは“看護婦さん”になりきって“手当”を始めてくれた。でも腕の怪我に絆創膏を貼り終えると、看護婦さんごっこは唐突に終了し、今度は先ほど外した紐を輪っかにしてくれと言う。“あやとり”したくなったらしい。最近みこりんは“あやとり”にハマっているのだ(保育園で教えてもらったとのこと)。しかしながらこれは私の守備範囲外のため、いまいち盛りに欠けてしまう。小さい頃、“ほうき”とか“橋”とかを作ったような記憶はあるものの、すっかりやり方を忘れているのだった。
 みこりんは“かがみ”がお気に入りのようで、何度も作っては見せてくれる。あやとりの教則本(っていうのがあるのかどうかさえ知らないのだが)を手に入れねばならないようだ。

『スーパーロボット大戦α外伝』

 をプレイ開始。今回は主人公キャラは出ないらしい。
 サブングルとガンダムX、それにターンAの世界観が融合してる。ターンAは未見ゆえ、特に違和感なし。でもXは…。すでにプルがファンネル攻撃かましてる状況で、改めて人工ニュータイプの驚異を本編どおりに描いてもなぁ…という感想。コース選択が違えば、もっと前にいい具合の絡みがあったのかもしれないけれど、もうちょい捻りがあったらよかったのに。同じ地球人とはいえ、これほど時代が違えばファーストコンタクトものと似たようなもんなんだから。ちょっともったいない。

 でもなかなかはまってしまいそう。


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