2001.11.1(Thr)

ベッドの下には

 珍しく前泊出張が認められた。いつもなら、当日まだ真っ暗闇のうちから起き出して、始発列車で東京に向かわねばならないところが、前日から東京入りである。勝ったも同然といえよう。

 まだ日も高いうちから仕事を終えて、移動にかかる。午後7時過ぎには到着の予定だ。余裕たっぷりのスケジュールのことを思うと、自然に頬がにやけてくる。ここんところずっと例の情報システム部門との軋轢でうんざりすることが多かったが、いい骨休みができそうだ。

 新幹線乗車。私の席は、何かのオフ(オフライン・ミーティング、略してオフ会といろんなところで説明されているが、私が関わってきたところではオフとしか称していなかったのでこれを用いる)の帰りらしい一団の端っこに位置していた。C席が私。A、Bには、十代後半と思しき女の子がそれぞれ収まっている。なんだか落ち着かない。
 着席するなり私は、カバンからさっき買ったばかりの夢枕獏『月に呼ばれて海より如来る』を取り出しむさぼるように読み始めるのだった。

 一時間経過。ふと気がつくと、右肩に何かが触れていた。本から目を上げると、すっかり熟睡した隣の席の子が、きゅぅぅぅぅっと首を倒し込むように私の肩にもたせかけつつあるのがわかった。首が痛くならないのかと心配になってしまったが、この状況ではいかんともしがたい。そのまま読書を続行する。

 女の子の頭は、しばらくしてふいに元の位置に戻っていった。接触センサがやっと作動したかのような、反射的な動作であった。これで一安心。………と思ったのもつかの間、またもやこっくりこっくりにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。

 そんなことを繰り返しているうちに、東京到着。ホテルを目指して地下鉄へと乗り換える。オフの一団は、いずこかへと消えていった。

 ホテルの部屋に、額縁は、なかった。でも、スリッパがベッドの下に離れて置いてあった。な、なぜだ。ベッドの下に、何かが潜んでいそうな……。覗いたらほんとに何かいそうな気がしたので、やめておく。見てないものはいないも同然。ベッドで眠りについたのは、真夜中も過ぎてからのことだった。


2001.11.2(Fri)

とある学会にて

 眠りが浅いまま目覚ましに起こされるより早く、夜明けを迎えてしまった。だが不思議と眠気は残っていない。街がまだ動き出すまえに、ホテルをチェックアウトする。永田町までは地下鉄で一駅だ。駅構内に、やたら目に付く小学生達。へんにふてぶてしい面構えをしたのが多かった。人生舐めきってるような、悟ったつもりみたいな感じの。

 目的地のホテルへは、やはりあっというまに着いてしまった。とある医療系の学会がここで開催されるのだが、私のテリトリーは情報系・電子系・ロボット系といった工学関係が主なので、少々楽しみでもある。何事も違う分野に触れる機会というのは、いつも刺激的であることが多いから。
 受け付けを済ませたあと、無料お持ち帰りOKなボールペンやら袋やらを物色してみた。展示会などではよく見かけるシーンだが、こういう場面ではなんとなく新鮮な感じ。もっとも丈夫そうな布製の手提げとボールペンを1本頂戴しておいた。

 学会発表……これまでの経験では、複数の部屋に分かれ、分野ごとに膨大な発表が行われるものという認識だったのだが、この学会はただ1つの大会議室にて全員がすべての発表を聞くというスタイルだった。しかもスライドを用いることというルールがあって、なにやら懐かしい雰囲気である。不思議なのはタイムキーパーがいなかったようにみえたこと。もちろん司会役の人が質疑応答を適度にうち切ったりはしていたが、発表時間そのものを制御する術がなかったのだ。しかも途中バッファとなるべき休憩時間が昼休みを除いて、一度もない。最初から“かつかつ”のスケジュールなのであった。い、嫌な予感…がする。

 午前中が終了した時点ですでに20分ほど遅れが生じていた。てっきり昼休みを切り上げるかと思ったのだが、それもなし。午後に入ってますます遅れは増大していき、ついに終了時刻になってもまだ1時間以上足りないという事態に陥ってしまっていたのだった。……やはりこうなってしまったか。
 帰りの新幹線はすでに予約してあるので遅らせることはできない。誠に遺憾ながら、途中で切り上げ退席する。面白い発表が多かっただけに、ちょっともったいない気もするが仕方あるまい。

 さて、帰りの車中でむさぼるように読みふけった本は田中啓文『星の国のアリス』。じゅくじゅくな液体がしたたってきそうな感触が全編に溢れまくっている本だった。あぁ乾いたパンが欲しい。


2001.11.3(Sat)

水仙三昧

 玉葱の苗を買いに園芸店へ。
 100本450円の貯蔵性抜群なやつにする。赤玉葱にもちょいと惹かれたが、大量に消費するには無理がありそうだったのでやめておいた。

 秋植え球根が割安(2割引)で並んでいたので、水仙を中心に物色。色カタチに特徴のある水仙5種を選び出す。
 今年度末、みこりんが年少さんに別れを告げるとき、先生達にはこの水仙の花を贈ろうと思う。今から植えてそんなに早く咲くのかどうかはわからないが…

名称 特徴
モンドラゴン 黄色花弁にオレンジカップ
レプレット 白花弁に八重オレンジ&白混合カップ
マンリー レモンイエロー八重咲き
アイスキング 白花弁に八重レモンイエローカップ
セントパトリックスディ 黄色花弁にクリームカップ(逆咲き)

 水仙の他には赤鹿子百合をゲット。これは以前から欲しかったものなので、こういう機会には逃さず買っておいて損はない。


2001.11.4(Sun)

明治村にて

 みこりんは女の子。Licも女。ここに女性がさらに二人加わると、我が家は女4男1という状況になる。昨夜からLicの妹達が訪れているので、ちょうど今そんな具合なのだった。なかなか賑やかでよし。

明治村の蒸気機関車 さて今日は、みんなで明治村へとやって来ている(明治村とは、その名の通り明治時代の建築物を使って、山中に異空間を出現させたものである)。入り口を抜けると、いきなり“しゅっしゅっ”と煙を吹き上げながら黒い列車が目の前を横切っていくのが見えた。蒸気機関車である。じつは生で見るのはこれが初めて。スチームの圧力が予想以上に力強くていい具合である。
 さっそく乗車だ。

 蒸気機関で動いてようが電気だろうが、みこりんは乗り物に乗れればご機嫌である。でもすぐに駅に着いてしまった。ここから先はちんちん電車での移動となる。明治時代の車輌のためかどうか、やたらと狭い(今でもたまに細〜ぃちんちん電車が街中を走ってるのを見かけるが、こいつはそれよりもさらに狭そう)。マッチ箱のようなという形容がずばり当てはまる。
 身動きとれないほどに詰め込まれたマッチ箱は、やがてガタリと動き始めた。紅葉した山の木々なぞ眺めつつ、よろめかないように足裏に意識を集中集中。ふくらはぎが攣りそうだ……

洋館 到着。ふくらはぎは無事だった。ここからは歩きでひたすら来た方向と逆に巡回してゆくことになる。
 静かな山中、のどかな日射し、紅葉に染まる木々、そして落ち葉。古びた日本家屋にはハマりすぎな情景である。もちろん日本家屋だけではなく、洋館もいろいろとある。和洋折衷な風景は、どうやら私の記憶の奥深いところでヒットするものがあるらしい。妙に心が和んでしまう。

 ところで屋外型博物館といえば、着せ替えである。ここ明治村でも、着せ替え可な店が少々ある。むろん矢絣と袴も常備されている……のだが、どうしたことかコスプレしているお姉さん方の姿がない。同様にコスプレ可なリトルワールドではそこここに民族衣装に着替えたお姉さんが見られたものだが、この差はいったいどうしたことか。あとでLicの見解をさり気なく聞いてみたところ、どうも衣装の出来が悪かったみたい。な、なんてこった。

光線欲を楽しむみこりん ステンドグラスから差し込む色とりどりの光が、なんだか懐かしく思える。小さいころ作った色セロファンの水族館を思い出すからかもしれない。みこりんも、この触れない色つき光線にはかなり興味を惹かれたらしく、何度も自分のカラダに映してみては、感触を確かめているようだった。光線浴……ふっとそんな単語が思い浮かんでしまう。

 そうこうするうち、入り口に戻ってきていた。約2kmの散歩コースだ。でも、まだ回ってない箇所も少々ある。一日で回りきるのはやはり無理だったようだ。
 帰りの車中、後席の3人は仲良く毛布にくるまって夢の中。ぬくぬくもこもこと暖かそう。そんな雰囲気を背中に感じていたら、いつのまにか私もナビシートで爆睡していた。皆が眠りこける中、Licだけがただ一人、黙々と運転してくれていたのだった。母モードとお姉ちゃんモードの2つが合わさったLicは、じつに逞しい。


2001.11.5(Mon)

なつかしのコマ

 小学生の頃、コマが流行った時期がある。コマといってもベーゴマではない。木製の胴体に、鉄の輪っかが巻かれた無骨なヤツだ。芯も鉄。この芯をコンクリート釘に打ち換えて、より破壊力を増すのがお約束になっていた。さらに、木製の胴体は剥き出しの木そのままなので、上部には色を塗ったものだ。プラモデル用の塗料を使い、銀やら金やら青竹色やら、そういう光モノ系な色彩が人気であった。

 じつは昨日の明治村で、みこりんにコマを1つ買ってやったのだ。昔なつかしの剣玉やらでんでん太鼓やらが並んでいる中にコマもあって、それを見つけたみこりんがどうしても欲しいと言ったので、つい私も懐かしさに負けてしまった次第。
 さっそく回して見せてと言うみこりんのために、紐を巻き、しゅっとひと投げ!しかもリビングのフローリングの上で。鉄の芯なのに。

 子供の頃覚えた技は、カラダに染みついているらしい。特に意識しなくても自動機械のようにコマを回す手順をトレースし、無事、コマは回転を始めた。手に乗せ“原爆投下”とか、綱渡りとか、次々に披露してやった。みこりんは満足げにその様子を見つめている。そして次は自ら回すことを所望したのだった。よろしい、やってみたまえ。紐と共に渡してやる。
 見よう見まねで紐を巻くみこりん。まぁまぁの出来だが、ちょっと捲きが甘い。やりなおしてやって、持ち方を伝授。なかなか筋はよさそうな。いよいよ投げにかかる。

 ぼた……とコマは落下した。

 いまひとつ勢いが足りないようだ。今度は一緒に投げてみた。ゆっくりと、正確に。
 弱々しく回り始めるコマ。これを何回か繰り返せば、若いみこりんの脳細胞ならすぐにコツを掴むだろう。でも、みこりんは別の楽しみ方を思いついたらしい。私に勢いよくコマを回させておいて、高速回転するコマにストローを当てている。「びぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」という接触音。こ、この音、その仕草、もしや………

 にやりとみこりんが笑う。「はいしゃさん!」やはり、そうだったか。


2001.11.6(Tue)

常時接続環境

 Yahoo!BBに申し込んで約4ヶ月。いっこうに繋がる気配がないうえ、質問メールを出しても2ヶ月は待たされるという状況に、キャンセルを決意したのが先月末。そして改めてフレッツISDNの契約をしたのだった。この時期にフレッツISDNである。フレッツADSLと比較しても料金にしてわずか200円(12月1日からはたったの100円の差)、いったいフレッツISDNにメリットなどあるのか?と思われるに違いない。

 もしもこれが8月とかの早い時期だったなら、今時フレッツISDNなどではなくどこか別のADSLに鞍替えしただろう。だが、すでに4ヶ月も待ったのだ。もう待つのは止めた。待ってる間中、(いつADSLになってもいいように)月払いに変更したプロバイダの割高な料金を支払い続けなければならないし、最近ちょっとは健康的な生活になってきたのでテレホタイムまで待つのが困難になりつつあった。早急に常時接続環境が必要だった。
 我が家はISDN回線なのでフレッツISDNに変更するには数日のタイムラグで済むだろう。その思惑どおり、申し込んでから約6日で、本日フレッツISDN開通である。

 フレッツISDNに対応したプロバイダにはアルファインターネットを選んだ。わずか300円/月という安さが決め手となった。うちのサイトはレンタルサーバを利用しているので、プロバイダにホームページサービスは不要なことも幸いした。これでこれまで利用してきたプロバイダとも手を切れる。テレホも解除できたことだし、差引2000円/月の節約になる。
 いずれ格安なADSLがこの地域にもやってくるか、光が届くまで、これで行こうかと思う。
 あぁそれにしても常時接続はいい。会社でのWeb閲覧がいまだに禁止されている状況では、この素晴らしさはひとしおだ。


2001.11.7(Wed)

人間蒸発

 職場でレイアウト変更が先月あたりから継続して行われているのだが、そろそろフィナーレも近い。おもにマシンルーム(ソフトウェア開発などに使う部屋)が我々の担当だったのだが、かなりがらんとしつつあった。
 もう一息である。残った机やら棚やらを捨てに捨てれば、ほぼ作業は終了となる。

 そんな部屋の中で、私は奇妙なものを見つけていた。ちょうど真ん中付近に、二人分のスチール製のロッカーが放置されているのだが、扉の手前付近にきれいに揃えて置いてあるのは………“女物の黒いショートブーツ”だった。
 聞けば、もうずっと前からそこに置いてあったのだという。いつからあったのかもわからないほどに昔から…。
 奇怪な。

 だいたいうちの会社は女性の比率が極端に低い。特にマシンルームに出入りするような女性エンジニアにいたっては、ここ十年でも片手で足りるほどしかいないのである。そんな場所に、女物の靴とは。現在も現役の女性エンジニアに尋ねてみたが、彼女は知らないといった。いったいこの靴の意味するものは何なのだ。
 忘れ物ならとっくに取りに来ていておかしくない。外見もさほど汚れておらず…というかホコリ1つ付着していないようにさえ見える。…な、なぜだ。他の放置品は触れるのが躊躇われるほどに汚れているというのに、この靴はどうしてピカピカなのだ。まるでついさっき脱ぎ忘れていったかのように。

 Licにこの話を聞かせてみたところ、おもむろにこう答えてくれた。「それはきっと男が履いてきたものに違いない」と。朝の慌ただしい時間、つい間違えて奥さんのものかあるいは彼女のものかを履いてきてしまったのだろうと言う。仕事中に己の過ちに気づいた彼は、バレないようにこっそりとそれを脱いだのである。そっとカバンに詰めようとしたところへ、ちょうど同僚が通りかかってしまった。「あれ?そのブーツ…」と言いかけた同僚に慌てた彼は、自分も今初めて気づいたかのように驚いてみせたにちがいあるまい。……そして、ブーツはそのままそこに残ってしまったのだ。

 さて、真相は如何に。
 ロッカーとブーツ。人間蒸発のシチュエーションとしては、なかなかベタなくらいに小道具が揃ってるのが、いかにも怪しい。誰かの罠が、不発のまますっかり忘れ去られていた……という線も、あるかもしれない。いずれにしてもこのままでは邪魔なことこのうえないので、廃棄物の山のてっぺんに、そっと乗せてやったのだった。
 あぁすっきりした。


2001.11.8(Thr)

獣型ロボ

 今度のAIBOは“マクロス”チック! 近未来デザインの新型が登場

 頭部のちっこい収納式ライトとか、カメラアイとか、メタルカラーとか、電飾とか、いちいち私の心を揺さぶってくれる。やはりロボットといえば、こういうのじゃないとなぁ。
 でもまだちょっと高い。5万円くらいなら衝動買いしそうだが……

 とはいえ、もしもコレが完全防水の全天候型仕様で、さらに自由にユーザーがプログラム開発可で、おまけに赤外線カメラとかも標準で搭載していて、なおかつ飛び道具も装着可能だったとしたら、この値段でも買ってしまうかな。そんな仕様のやつをいったい何に使うかといえば、これしかあるまい。庭のパトロール用だ。『完璧な防壁』をも越えて侵入してくる正体不明の猫を追っ払うには、やはり獣型のロボットが最適だ。あとは飛行形態をとれれば言うこと無し。


2001.11.9(Fri)

最終確認

 先週あたりから、気になっていることがある。毎朝、出かけるときに覗いてゆくのだが、どうも“動いていない”ようなのだ。コクワガタは、やはり逝ってしまったのかもしれない。

 動かなくなる前は、よくひっくり返っているのを目撃した。気がついたときに、すぐ助け起こしていたのだが、すぐにまたひっくりかえっていたりする。そんなある日のこと、前日のままの位置にたたずむ彼女を発見した。少し嫌な予感がした。でも、なぜか確認するのが躊躇われてしまったのだ。もしかすると生きているかもしれないし、そっとしておこう。……そう思って、今日まできてしまった。
 コクワガタは、やっぱりその時の姿のまま動いていない。

 もはや、これまで、か。


2001.11.10(Sat)

球根とドングリ

 悩んでいた水仙の植え場所は、結局、花桃にほど近いガレージ沿いの花壇に決めた。ここは幅30cmに満たない狭い場所なので、横一列にずらっと並べることにした。5種9球(1つ腐ってたので)の揃い咲き……、球根を埋めてしまったあとで、もう少し球状に群生させたほうが美しかったかもと思いついたが、後の祭り。

 赤鹿子百合は同じく花桃の足元、どんぐりの幼苗のそばに埋めた。ここの土は毎年花桃の落ち葉とか、落果した実とかで有機物豊富なはずなのだが、10cmも掘ると、ただの赤土の層があいかわらず広がっていて、まだまだ先は長いことを知る。たかだか6〜7年というのは、大地の時の流れにはまったく足りないらしい。

 ドングリといえば、先週明治村で拾ってきたクヌギの実も植えなくてはなるまい。すでに地上で発根していたので、やたらとひょろ長い根っこが痛々しい。1週間というもの水分を含ませたティッシュで根っこをくるんでいたのだが、毛根の発生が見られない。もしや手遅れだったのかも……とか思いつつ、ティッシュを外してゆく。
 と、いきなり根っこの先端が3mmほど欠けてしまった。無理な力を加えてしまったのか。根っこの生長点は、たしかその欠けたあたりにあったような気もするが……まぁ折れてしまったモノはしょうがない。このまま埋めてやろう。無事生きていれば、来春、再び出会うことが出来るはず。

 ちょっとだけ植え場所に悩んだが、落葉樹でしかもドングリが落ちてくるということで、庭の端っこではなく、ウッドデッキに沿った南西部分に植えてやることにした。ここならば境界線からはかなり離れているので、落ち葉で迷惑はかけないだろう。それにこの位置は真夏の西日をいい具合に遮ってくれるにちがいない。
 みこりんもドングリを拾えるし、樹液に惹かれてやってくるクワガタやらカブトムシやらもウッドデッキの上から捕まえることが出来る。まさに一部の隙もない計画のはずだった。しかしLicは言うのだ。「みこりんはたぶん、今、ドングリが欲しいんだと思う」

 このクヌギが実を成らせるまで、あと何年待てばいいだろう。10年?20年?最悪30年だとしても、そのときみこりんは30代半ばである。まだまだドングリ拾いを楽しんでくれるのではないか……私はかすかにそんなことを思っているのだった。


2001.11.11(Sun)

秋の実り

 秋も深まってきたことだし、みこりんとドングリ拾いに出かけることにした。ところがみこりんはタモ網と虫かご(小さいプラケ)をいそいそと用意し始め、すっかり虫採りの用意を整えてしまったのだった。ドングリよりも、虫の方がいいとは……まだテントウムシ以上の大きさの虫には触れないのに、どうしたことだ。
 とにもかくにも、出発。時刻は午前10時まであとわずかといったところ。お昼ご飯までには戻ってこられるだろう。

 いつもお散歩のときには、三輪車に搭乗して出かけるみこりんが、今日は何も言わずに徒歩でついてきた。日々、保育園でお散歩に出かけているらしいので、その成果が現れているのだろうか。右手にタモ網、左手に虫かごと、思いっきり夏の格好だったが、道ばたの木々はすっかり秋景色。柿の実がちょっと寒そうに風に揺れている。

 団地の入り口付近には、以前から1本ドングリの木が生えている。その下のアスファルトには、パラパラとたくさんのドングリの実が落ちていた。かなり枯れた感じの色彩だった。新鮮なピカピカした輝きがない。ドングリの旬は過ぎ去ったかのようである。枝を見上げてみると、もうほとんど実は残っていなかった。どうやら遅すぎたらしい。
 それでもみこりんは両手一杯のドングリを拾い、私にプレゼントしてくれたのだった。今回のお散歩は、私がドングリ拾い、みこりんが虫採りと、そういう風になっているらしかった。

 さて、虫採りとはいっても、夏ではないのでそうそう見つかるものではない………と思ったが、意外にいるものだ。特にバッタは川辺の草原に無数に見つけることが出来た。保護色で隠れているのでなかなか発見は容易ではないが、歩いてゆくと勝手に跳ねるのでバレバレとなる。ばさっと網をかぶせて、1匹捕獲。みこりんはイナゴだと主張するのだが、私には言い切る自信がない。あとで昆虫図鑑で確認しておこう。
 2匹目、3匹目と、次々に捕まえることが出来た。でもやっぱりみこりんは手で触ることが出来ないので、網をかぶせたあと「おとーさん、つかまえて」とくる。しかも「かまきりがほしい」なんてことも言い出すので、カマキリの餌はなかなか大変なのだと語ってやったのだが、どうもうまく伝わっていないようだ。生きたバッタを食べるというのが、イメージしにくいのだろうか。

 なんとなく気になったので虫かごを確認してみると、さっき捕まえたばかりのバッタが重なり合っているのが見えた。交尾である。さっそくそれかいと思いつつも、この季節、バッタ達も真剣なのだなぁとしみじみ思うのであった。ところでこのバッタ、うまくすれば産卵させることができるだろう。飼うなら土を忘れずに、だ。

 獲物も採れたことだし帰ることにする。行きとは違う山際の道を上っていると、道ばたで紫色した葡萄状の実を発見した。小さい頃、ヤマブドウと我々の間では呼んでいたヤツだ。でもたぶんこれはホンモノのヤマブドウではない。なにしろこれは草の実なのだから。
 でもみこりんはホンモノだろうがニセモノだろうが、葡萄のカタチをしていればよいらしい。嬉々として1房、2房……と摘んでいる。紫のヤマブドウ(自称)だけでなく、山には色彩で溢れていた。赤や青、それに紫に黄色。手を伸ばせば届く範囲の実は、全部試しに摘んでやった。そして匂いをかぎ、つぶして中を確認し、さらに鼻で確かめる。どれもあんまりおいしそうなものはなかったが、みこりんはヤマブドウ(自称)があれば満足らしい。いつのまにかその手には、5房の実がつままれていたのだった。

 帰宅後、さっそくみこりんがヤマブドウ(自称)の実を1つ、房からもいで、洗ってくると言い残し、消えていった。そしてしばらくして戻ってきたみこりんの手から、その実はなくなっていた。どこかでこっそり食べてきたらしい。でも、それならそれで何らかのコメントがありそうなものだが……、ってことはもしや。Licがすかさず質問している。「おいしかった?」みこりんは答える。「おいしかったよ」ならばこの房全部洗ってきてもいいよと言ったのだが、複雑そうな表情をするばかりのみこりん。……やっぱりそうか。

 これでみこりんも、おいしそうなカタチと色に騙されることもなくなるだろう。
 私にも覚えがある。あれは小学生低学年の頃……。通学路を一人で帰っていた私は、山の脇に落ちていた小さな赤い実を見つけたのだった。まるでルビーのような、まん丸で半透明な美しい赤い実だった。いかにも食べたらおいしそうな指触りと、色、カタチ。そのちっちゃな実の誘惑に耐えきれず、ついに私はそれを口へと放り込み……おおいなる期待を込めて噛みしめた。
 「ぷちっ」とはじけたその瞬間。私は悶絶していた。およそ味わったことのない激しい苦みと、表現しようのない嫌な味が、口中にぶわっと瞬時に広がっていたのだ。まるで大人用の薬を間違って噛んでしまったかのような感じだった。
 あれ以来、私は拾い食いにはじつに慎重になったものだ。きっとみこりんも学習してくれたことだろう。

メデューサの芋

 午後は玉葱苗を植えに、市民農園へと出向いた。植え付けの前に、畑の半面を覆い尽くした紅芋をなんとかせねば。
 というわけで、さっそく芋掘りにとりかかる。3人でそれぞれスコップ片手に立ち向かうのだが、なんという土の硬さよ。早々にみこりんが脱落し、応援に回った。

 かなり力を込めてスコップを突き立てるので、芋をあっさりと両断してしまうことしきり。芋は、まるでタンポポの根っこのようにひょろひょろなものが多かった。もう少し太っていれば、切断には至らないと思うのだが、何か育て方を間違ったんだろうか。こんな痩せた芋(というか根っこ)ばかりでは、ふかし芋にもできないではないか。
 などと嘆きつつも、ほどほどに太ったものもぽつぽつと見つかり始め、地上部の蔓を一気にどかして、本格的に掘ろうとしたそのとき…。

 「な、なんじゃぁこりゃぁ!」

 巨大芋であった。まるでメデューサの頭のように禍々しくうねりながら巻いている。しかも半分以上がすでに地上に現れていた。何かの生物が這いだして来つつあるかのような怖さがあった。
 だが、それも一瞬のこと。すぐに笑いの衝動に取り付かれてしまう。みこりんの頭よりもはるかに大きな芋の塊は、グロテスクであると同時に、どこか微笑ましくもある。よくぞここまで大きく育ったものよ。

メデューサの芋

 さて、芋をあらかた掘り尽くしたあとは、畝を新設し、玉葱苗を植える番だ。2つの畝に、私とLicとみこりんとで手分けして植え込み開始。田植えの要領で植えるべしとものの本に書いてあったが、さっき作ったばかりの畝だというのにはや指先では穴を開けられないほどに固く締まりつつあった。とても田植えの要領では無理だ。スコップ片手に、1本1本丁寧に植えてゆく。
 100本の苗だが、さすがに“畑”だと余裕で植えることができた。去年までのような庭に作ったささやかな菜園では、どこに植えるべきか迷いに迷ったあげく、菜園中が玉葱苗に埋め尽くされたものだが、その心配からも開放される。来年からは200本でも300本でも大丈夫そうだ。でも菜園の期限が2年なので、同じ場所が確保できる保証のない状況では、来年玉葱植えるのは無理っぽい。悩ましいことである。

“D”

 『バンパイアハンターD』を観る。てっきり字幕スーパーかと思ったら、日本語でしゃべっていた。どうやら日本語版だったらしい。
 気になるDの声(田中秀幸)だが………思ったほどには違和感がない。絵柄がシャープになったのが幸いしたのかもしれない。

 中身の方は落ち着いた雰囲気で淡々と語られてゆくのが、なかなか心地よく感じた。菊池作品の定番監督川尻さんだけに、盤石だ。ただ、少々時間が短い(約110分)ので、さくっとはしょられた部分もなきにしもあらず。

 ところでエンディングの曲、案の定ミスマッチすぎる。ぜんぜん合ってない。というか雰囲気ぶち壊し。Do As Infinity そのものは嫌いではなかったのだが、この時ばかりは激しく嫌悪感を覚えてしまった。営業的には逆効果もいいとこではなかろうか。エンディングだけ差し替えた完璧版を望む。


2001.11.12(Mon)

虫さされ

 夕方、Licから電話が入る。みこりんの太股に直径9cmくらいの腫れができているらしい。昨日、芋掘りしてるときに何かに刺されたとみこりんは訴えているらしいのだが……と、ここにきて思い出した。そういや朝、目覚めるなりみこりんが太股を掻いてたなぁ。あのときはまだ蚊に刺された程度のものだったはず。薬を塗ってやろうと思いつつ、朝のどさくさに紛れてすっかり忘れてしまっていた。いかんいかん。

 それにしても9cmとは。痛くはないらしいのでブヨでもなさそう。痒みもそれほどひどくはないらしい。いったい何に…
 正体不明な虫さされというと、すぐにツツガムシが連想されてしまうのは、小学生の頃に学級文庫で読んだ、怖い本の影響だろうか。ツツガムシなら症状が現れるまで1週間くらいかかるそうなので、今回は該当しそうにはないが、それでも気になってしまうのであった。

 帰宅後、みこりんの足を点検する。なるほどたしかによぉく腫れている。赤ちゃんの頃のぷくぷくな足を思わせる具合だ。腫れの中央には、針でついたような赤い傷。傷跡が残らないように、念入りに薬を塗って、さらに飲み薬も飲ませて、しばらく様子見。きれいに治りますように。


2001.11.13(Tue)

落ちる飛行機

 何かが膨大な数の生け贄を欲していたりはしないだろうなぁ……
 こうも続くと、だんだん感覚が麻痺していってしまいそうだ。
 魔界都市・新宿じゃないが、魔界都市ニューヨークとか、だんだんしゃれにならない事態になっていくような怖い予感もあり。

 不穏だ。


2001.11.14(Wed)

Text-to-Speech Engine

 ちょいと仕事で“音声合成”…というか“テキスト読み上げ”が必要になったので、Text-to-Speech Engineを試すことにした。
 今回必要なのはアメリカ英語なのだが、11カ国語すべてのエンジンをインストールしてみた。あとは定石に従いC++BuilderでActiveX取り込みの後、テストプログラムをさくさくっと書いて、いざ、発声。

 えらく流暢なおっちゃんの声で、さらさらっと米語がスピーカーから流れてくる。ん、合格。懸案事項の1つがあっさりと片づいた。

 日本語でもしゃべらせてみたが、予想外に滑らかに発声するので驚く。あとは声質の問題だ。誰かの声をサンプリングして、自動でチューニングする機能とかあったら便利そうだが……誰か作ってないかな。


2001.11.15(Thr)

こつこつした作業

 このところ、合間を縫ってはちくちくと編み物をしていたLicである。いったい何を編んでいるのだろうか。数年前から滞ったままだった“私”のマフラーが、ついに再開されたのだろうか。だとすればどえらいことだが、どうも様子がおかしい。マフラーにしては、幅が広すぎる。………やはりそうか。これはみこりんのチョッキか何かだろう。

 いい具合に進んでいたところで、Licの手が止まっていた。網目を間違えたとかなんとか言っている。私の目にはどこも変には見えないのだが、やはり間違えているらしい。で、どうするのかと思っていると、いきなり「ぴーーーーーーーっ」と解いていってしまったのだった。うぉぉ、豪快な。
 間違えた目のところまで戻すだけかと思ったら、最初まで行ってしまった。一瞬で時間が巻き戻されてゆく。……編み物とは、こういうものなのか。あのちっこい目1つ1つ、一箇所でも間違えるとこれなのか。お、おそるべし。すごい集中力が要りそうだ。とてもよう真似できん。

 「ところでマフラーは?」と聞いてみたところ、忘れたなんて言っている。ではせめてセーターを1着所望したいと述べたところ、20年分割でどうかときた。ま、まぁよかろう。20年分割でもいずれ出来上がるのならば。


2001.11.16(Fri)

二足歩行のやつ

 例のザクIIが、発売決定となったらしい。歩行映像を見た限り、二足歩行の出来は期待よりもかなり悪い。膝の関節がほとんど動いていないように見えるのが、特に気になるところ。とはいえ98000円では、このくらいが限界かもしれないが。

 赤いのも出るようだが、そんなことより、こいつのフレームは出さないのか。で、無数の“皮”が登場する、と。
 私だったら、やっぱりガンタンクがいいかな。………あ、足要らないな。


2001.11.17(Sat)

ラベンダーの焚き火

 晩秋というか、初冬の雰囲気漂う庭で、夏の面影が2つほど残っている。1つはラベンダー“スーパーセビリアンブルー”の花殻、もう1つは青い実をたくさんつけたトマト。
 とりあえず今日はラベンダーの方をなんとかしよう。すでに新芽も伸びつつあるのに、このまま枯れた花茎を残していると、来春、整枝するときに面倒なことになってしまうだろう。今年がそうだった。新しい花芽と古い花芽を、無数の枝々の中から選り分けつつハサミで切るのはとてつもない忍耐力が要求される。しまいには新芽も花芽もおかまいなしに、ばさっとやってしまいたくなるのだ。
 やるなら新芽の少ない寒い季節に限る。

 今年の花は、ちょっと少な目だった。だから枯れ枝もそれほどこんがらがってはいない。新芽もまだ下のほうにちょびちょびっとだけだから、作業はそれほど難しくはなかった。
 気になったのは、花茎だけでなく、もっと根幹部分から枯れてしまった枝が多かったこと。ラベンダーは3株植えてあるのだけれど、うち1株が特にひどい有様だった。夏の間中、隣に植わって一大勢力を形成していた紫蘇の影になってしまって、風通しが悪くなっていたのが原因かもしれない。

 結局、軽く一抱えほどの枝がとれた。これをどうするか考えたが、焚き付けの枝はまだズタ袋一杯以上余っているし、土に返そうにもちょっと手間がかかりそうなので、やはり燃やすことにする。ぱりぱりに乾燥しているので、着火マン一発で、ぶわっと燃え上がってくれた。

 いい感じに燃え上がるラベンダー。煙の薫りも、こころなしか落ち着く感じ。枯れてもラベンダーだ。これで焼き芋でもすれば、おいしそうな予感もするが、ちょっと枯れ枝が足りない。
 やがてラベンダーの枯れ枝は、わずかの灰と炭を残して空気に消えていったのだった。

目次の見方

 “身近な生き物”の図鑑を開いて、みこりんが悩んでいる。“うさぎ”が見たいのだが、その探し方を忘れてしまったらしい。そこで改めて目次の見方をおさらいしてやることにした。
 みこりんは平仮名はほとんど読めるので、まず名前でサーチ。おお、そのまえに大見出しで大雑把にあたりをつけるのも忘れずに。“うさぎ”は動物だから……よしよしあったあった。首尾良く“うさぎ”を発見したみこりん。では、そこに書かれた番号をチェックしよう。何番かな?「はち、きゅうばん」うむ、はちじゅうきゅうばんやね。それがわかれば、あとは数字を頼りにページを開けばOKさ。楽勝楽勝。
 ところがみこりん、大きな数は大小関係がわからない。結局、先頭ページから順に数字を探してゆくことになるのであった。
 まだ目次を本当の意味では活用できそうにないが、焦ることはない。じきに慣れることだろう。みこりんの脳細胞は、今が旬なのだから。


2001.11.18(Sun)

紅芋洗い

 窓の外が金色に輝いて見えるような、明るい日曜日の午後のこと。みこりんが庭で紅芋を洗ってくれている。畑で掘ってきたやつは、まだ土がたっぷりとくっついているので、そいつを洗い流す必要があった。
 みこりんのちっこい手に、へなへなの紐みたいな芋は扱いやすいらしい。ちゃきちゃきと作業は進んでゆく。そしてついに大物の登場だ。やはりデカイ。みこりんの足元に、ずどんと置かれたそれは、まるで岩のようであった。

 最初、素手で立ち向かっていたみこりんだったが、やはりタワシの力が必要になったらしい。これでパワーアップしたみこりんは、皮も刮げよとばかりに気合の入った洗いを披露してくれたのだった。じつに丁寧かつ根気よく、みこりんはやってくれた。まぁ幼児の力ゆえ、完璧とは言い難い部分もあるけれど、それはそれ、最後までやり遂げたことを褒めてやろうと思う。

 みこりんがそうやって黙々と芋を洗っている横で、私はといえば、観葉植物の鉢を洗っていた。そろそろ部屋の中に取り込まなければ、今夜あたりとてもヤバイ気がするのだ。
 去年はこうやって鉢を片づけている時に、謎の虫に指先を噛まれたものだが、今回は二度と同じ手は食うまい。慎重に鉢土に生えた雑草を抜いてゆく。と、その時であった。指先で触れた土が突然動いた。な、なにやつ!
 高速で腕を巻き戻し、土表面を凝視する。もぞもぞと乾燥した土が揺れ、やがて現れてきたのは…………カメムシだった。夏、トマトとか茄子とかに無数に群がってたヤツ等の生き残りだった。
 こんなところで越冬するつもりだったのか。カメムシごと部屋の中に持ち込んではたまらんので、ぽいぽいっと撤去する。これでよし。

 今年はほぼすべての鉢を部屋の中に保護してやることにした。去年の冬は、ずっとウッドデッキで耐えさせたのだが、かなりの苦行を強いたことが翌春に判明したので、もうやらない。

 *

 この夜、外の気温はついに5度を割り込んだのだった。

 みこりんの洗ってくれた紅芋をレンジでチンして試食する。甘くなく、濃厚な存在感のある口当たり……まるで山芋に薩摩芋をまぜたような感じだ。まずくもないが、格別うまいというほどでもない…かな?単体で食べるよりも、何かの料理に使ったほうがいいのかも。


2001.11.19(Mon)

緑の光

 時刻は日曜日から月曜日へと移り変わり、気温はますます低下の一途をたどっている。腰にくる寒さだ。

 午前1時過ぎ、庭に出る。星がいつになくよく見える。南にオリオン、東にひときわ明るい惑星が1つ。木星だろう。
 じっと見上げていると、天頂付近に緑の光が、一瞬走った。しばらく光跡が残るほどのやつだった。ぼちぼち始まっているようだ。だがこの姿勢は首がつかれる。ほぼ真上を向いてないといけないのが辛い…。

 ウッドデッキにデッキチェアを広げ、そこに寝そべり夜空を見上げてみる。おぉ、これはいい。ずいぶんとラクだ。毛布にくるまり、もこもこになって星を見るなんてのは、十数年ぶり。ひどく懐かしい感じ。
 そうやってる間にも、散発的に光は流れ、消えてゆく。1つ2つ3つ…途中で数えるのを止める。これは、けっこうすごいことになるかもしれない。

 一端撤退。ピークは午前3時過ぎ。それまで外にいたら凍えてしまう。

 午前3時前。再び庭へ。毛布の隙間ができないように、慎重に椅子に寝そべり、姿勢を楽に。だが剥き出しの顔面が痛い。凍てつく夜空だ。なんという寒さ、なんという暗さよ。すぐそばの街灯の光が、かえって闇を強調しているかのようだ。

 3時ちょうど。Lic参戦。狭いデッキチェアに二人して毛布に丸まって夜空を見上げる。
 オリオンは西に傾き始め、木星は南中をやや過ぎたあたり。獅子座が東上方に昇ってくる。出現の中心がだんだんとはっきりし始める。

 線香花火の“枝垂れ柳”が、夜空いっぱいに広がったような感じだ。たまに光球と呼んでもいいくらいのヤツが、連続して空を横切ったりしてくれるのが心憎い。

 冷え込みと、眠気が重なって、一瞬意識がなくなっていたようだ。起きろ、寝ちゃダメだ。寝たら死ぬぞ。でもなんて心地いいんだろう。この毛布一枚通した寒暖の差が、たまらなく気持ちよい……

 今年の獅子座流星群は、どうやら当たり年だったようだ。


2001.11.20(Tue)

メモリを増やす

 256MBのメモリが2100円。というわけで2枚ほど注文していたのだが、待つこと1週間ちょいで、ようやく届いた。1つは我が家のファイルサーバ兼プロキシサーバとなっているLinuxマシンに、もう1つはWindowsマシンに挿してやる予定で作業開始。
 現在稼働中のPCは、3台。置き場所の関係からすべて縦に積み上げてあるので、こういう本体カバーを開けるなんて作業の時には、なかなか面倒なことになる。まずはもっとも軽量ゆえ最上段に乗っかっているWindowsマシンから。
 これにはもとから128MBのメモリが刺さっているのだが、空きスロットは1つだけといういかにも窮屈そうな内部構成。溜まりに溜まった黒カビみたいなホコリを拭きつつ、いざ、挿さん。……む、固い。おまけに狭すぎて指が攣りそうだ。

 なんとか刺さったものの、ロックしても指で触れるとぐらぐら動く。ふ、不安だ。こんなんで大丈夫なのか。
 剥き出しの本体をケーブルが届く位置まで移動させ、最低限の結線の後、起動。

 「ぴぃぃぃぃぃぃぃ〜っ!」と怒られてしまった。
 何かいけないことをしてしまったらしい。とりあえずさっきのメモリを抜いてみよう……と思ったがやめて、元から刺さっていたメモリを抜いた。で、新しいメモリをその位置に挿し直し、いざ勝負。

 一瞬、「ぴ」とか言いかけたのでどきりとしたが、何事もなく起動した。ふむふむ。
 再びさっき抜いたメモリを、空きスロットに挿してみる。と、またしてもスピーカーが発狂したかのようにがなりたてた。むー、なんとしたことか。もしやここに挿してはダメなのかも、と思い、そいつを抜いた。しょうがあるまい。128のメモリは別件で再利用するとして、256で運用するとしよう。カバーをネジ留め、すべての結線を戻し、定位置へ。

 起動。

 「ぴぃぃぃぃぃぃぃーーーーっ!」

 おぉぉ、なんてこった。さっきは動いたのに。
 もう一度すべての結線を外し、カバーを開け、メモリをいじる。あいかわらずぐらついている。最初から刺さっていたメモリもこんな具合だったので、これはこういうものなのだろう。なんてチープな造りだ。でもまぁあんまり贅沢は言えん。当時でもこいつはかなり安かったのだから。
 何度かメモリを抜き差ししているうちに、突然直った。また不機嫌にならないうちに、カバーを閉める。

 いちおう動いているようだが、何かの拍子にいつまたぴぃぴぃ言い出すかとちょびっと心配。


2001.11.21(Wed)

いきなりの断水

 風呂に湯を張ろうと、昨日の溜め水を抜いていたときである。突然Licが飛び込んできた。両手に泡の状態で。いったい何事か。
 Licの奇怪なゼスチャーを解読するに、どうやらこれは泡を水で流して欲しいらしい。でもなぜこんな場所で?不審顔の私に、Licは告げる。水道が出なくなった、と。
 な、なんですと!?そういや帰り道、家のすぐそばで「緊急水道工事」とか看板をたてて道路を掘り返してたな。もしやそれか。

 風呂の栓を元に戻した。かろうじて溜め水は水深5cmほどで残っている。断水となると、このような水でも貴重品だ。こうしてLicの泡まみれの手もきれいにしてやれたし。
 あぁしかし困った。今、風呂に入りたかったのに。そのために心の準備は完了していたし、ぬくぬくとたっぷりの湯に浸かる状況を想定し、皮膚の準備も万端であったのに。こんな中途半端に待ちを喰らってしまうと、よけいに風呂への執着が強くなってしまうではないか。
 しかし出ないものは出ない。どうにもならん。

 *

 午前2時。いきなりトイレで激しく咳き込むような不気味な音が響き渡った。うっかり水を流してタンクが空になっていたところに、ようやく水道管が導通し始めたらしい。でもまだまだ不十分だ。乾いたくしゃみみたいな具合にしか出てこない。うっとうしいので、元栓を閉める。

 午前2時15分。やっと水道復活。……でも、すっかり睡魔に負けた私は、風呂への執着を残したまま、布団へと倒れ込むのであった。
 明日にしよう。明日に…


2001.11.22(Thr)

その後のバッタ

 今月の11日に、みこりんと捕まえてきたバッタは、じつはまだプラケの中で生きている。最長飼育記録だ。
 これまで“みこりん”が単独でバッタを飼うと、長くても1週間ということになっていたのだが、さすがに毎回それでは“よくない習慣”がついてしまうだろう。なので今回は、少々趣向を変えてみたのだった。

 ポイントは、餌となる草を切らさないようにするという作業を、どうしたらみこりんが忘れずに根気よく続けてくれるかにかかっていた。なにしろみこりんは飽きっぽい。最初のうちは面白がって庭などから草をむしってきてくれるが、数日後にはすっかり忘れてしまうのだ。
 主要な問題は2つある。むしった草が、すぐにひからびてしまうこと。そして、みこりんの興味が長続きしないこと。これらを一気に解決するうまい方法はないだろうか…と考えた結果、今回は『箱庭方式』を採用することにしたのだった。

 『箱庭方式』とは、その名の通り飼育ケース内に自然を再現するのである(たぶん虫を飼ったことのある人なら、一度はやったことがあるのではなかろうか)。夏にちょこっと試そうとして、その時には肝心のバッタをみこりんが捕獲できずに未完に終わった計画を、今こそ実行に移すのだ。

 土を入れ、庭から多種多様な草を根っこごと堀り上げ、移植する。雑草なので逆境にはかなり強い。おまけに水やりを多少忘れても、この季節なので1週間は持つ。毎日は無理なみこりんでも、毎週土曜とかそういう頻度ならば、大丈夫。しかも『箱庭』というのは、シルヴァニアファミリーとかの緻密なお人形セットを好むみこりんのハートに、ぐぐっと食い込むことができたらしい。思う壺である。

 ただ問題が1つあった。バッタの好む草は、細長い葉っぱの柔らかいタイプ。これが我が家の庭にはあまり生えていないということだった。クローバーとかオオバコとか、そういう頑丈な雑草なら山のように生えているのだが、こういうのは虫もあんまり食べないから残ってしまう(Lic談)。なるほど一理ある。
 いずれ庭の草を取り尽くしたら、バッタを捕まえてきた川辺まで降りて、野生のバッタが食べていたのと同じ草を採取してくることになるが、それが必要になるころ、外はすっかり雪景色……なんてことになってそうな…


2001.11.23(Fri)

釣りへの執着

 釣り番組などをTVでやってると、食い入るように画面に釘付けとなるらしい。もちろん、みこりんが、だ。去年初めて川で魚を釣り上げてからというもの、その感触が忘れられないのかもしれない。ここ最近も、みこりんが釣りに行きたいと言ってるのを、直接的間接的に私も何度か耳にした。
 本格的な冬が来る前に、一度釣りに行くのも悪くない。というわけで、今週末は魚釣りだ。そうみこりんと約束していた。

 でもその前に、準備がいる。今回は毛針を使ってみようと思う。そしてみこりんにも釣り竿を準備してやろう。交代で使うのは、なにかと手間がかかるうえに、みこりんが釣ってる間、誰かの手が空いてしまうことになるのももったいない。家族そろって釣り糸を垂れてみようと思う。

 釣具屋で、みこりんサイズでも大丈夫そうな釣り竿を物色する。みこりんは異様にリール付きのやつの執着していた。「こうやってぐりぐりするのがいい〜」と、ちっこい手でリールを巻き上げる動作をみせてくれる。たぶん釣り番組を見てて興味を惹かれたんだろう。でも、まだみこりんには早いような気がしたので、今回はリールなしのやつを選んだ。長さも2mほどと、みこりんの背丈でも十分扱えそう。

 すぐにでも釣り竿をふるいたそうなみこりんだったが、釣り決行は日曜日。いましばらくの辛抱だ。


2001.11.24(Sat)

畳の上に、カマキリとカイガラムシ

 座敷から、かなり慌てたようすでみこりんが駆け出してきた。何事かと思っていると、「おうちのなかに、かまきりがいるよ!」と、ちょこっと口先をとんがらせて、みこりんが言ったのだった。
 カマキリとな!?カマキリとは、あの逆三角形の頭部に鎌のついた両腕、ぼってりとした腹に、トゲトゲの脚をもった、あのカマキリかね?じっとみこりんの顔を見やる。こくりと大きく頷いたみこりんに、私は続けた。「どこにいたのか教えてくれたまえ」

 座敷には、今、庭から取り込んできた観葉植物が数点置いてある。結構大きな鉢物が主体だ。みこりんが指さしてくれたのは、そんな植木鉢と植木鉢の間だった。デュランタと、トックリランに挟まれるように、畳の上にぽそっとおわすのは緑色したハラビロカマキリ。な、なんと立派な…
 きっと観葉植物の鉢植えと一緒に取り込んでしまったのだろう。丸一週間、この座敷にいたのか君は。ぜんっぜん気がつかなかった。でも座敷でよかった。これがリビングとかなら、まずまちがいなくにゃんちくんの餌食となっていたはずだ。

 そっと手の平にすくいあげ、庭へと向かう。さぁ、思う存分、羽ばたくがよい。指先から天空を目指し、カマキリは……ぼてっと地面に落下した。
 幸い、草がクッションになったようで、カマキリは無事だった。あぁ心臓に悪い。

 さて、再び座敷にて。さきほどカマキリを保護した付近に、なにやら薄オレンジ色の物体が畳にぺったりと付着しているのに気がついた。ところどころに蝋のような艶っぽい白いものが混ざっていたりする。……ははぁ、これは“カイガラムシ”の残骸だ。ポインセチアの幹に1つ、かなり大きなやつがくっついていたのを覚えている。そのまま座敷に取り込んでいたのだが、どうやら我が家の知りたがりお嬢さんに見つかってしまったようだ。
 でもいちおう確認してみよう。廊下にいたみこりんに聞いてみる。

 「みこりんがカイガラムシすりつぶしたの?
 ぷるぷると首を左右に振るみこりん。
 質問の仕方を変えよう。
 「みこりんがカイガラムシすりつぶしてくれたの?
 こくっとうなずくみこりん。
 なんてわかりやすいリアクションだ。

 ところでみこりんはカイガラムシをいったい何だと思ったのだろうか。あれは外観に似合わず、やたらと潰れやすい。しかも虫といいつつ、虫とは思えない形状をしている。まるで小さな丸い饅頭だ。そいつが“ぶちっ”と潰れたのだから、さぞや驚いたことだろう。しかも内臓ずるずるだし。
 そのショックで誰にも話せなかったのかもしれない。私の気がついていないみこりんの秘密は、いったいどれほどあるのだろう……

 その後、話してくれたところによれば、みこりんはカイガラムシを“貝”だと認識しているらしいことがわかった。そのまんまやんけ。
 カイガラムシという名称を教えなくてもそう思っていたかどうかは、定かではない。


2001.11.25(Sun)

寒々とした河原にて

 みこりんの釣り竿も忘れずにクルマに積んだし、いざ出発。団地下の川をちょっと木曽川方面よりに下った辺りで釣る予定だったが、急遽場所を変更することにした。名前はわからないのだが、いつも利用するスーパーの横を流れている、川幅30〜50mほど(河川敷含めると100m弱)の川だ。こちらの方が水深はあるし、岩場もあったような気がするし、ポイントのバリエーションは豊富なはず。なにより広いのがいい。

 川辺までクルマで下りる。長良川や木曽川ほどではないが、そこそこに広い河原には、怖いくらいに人の気配がなかった。11月も終わろうかというこの時期に、河原でバーベキューだのスイミングだの日向ぼっこなどをする人はいなくて当たり前か…。そのせいもあり、やたらと風景が寒々しい。大自然のまっただ中というのならそれもアリだが、堤防の向こうには人家もあるし、もっと生活臭さがあっても良さそうなのに、それがない。……古びた墓場があるってのが、その理由だったらちょっと怖い。

 突然、目の前に“人家”が出現した。家とはいっても、簡易型の家、手っ取り早くいうとテントだ。フライシートの代わりに青のビニールシートが掛けられているのが、いかにもらしくてはまっている。ホームレスな方がいらっしゃるのだろうか。そのテントの周辺だけ、生活の痕跡が感じられた。
 なんだか妙な場所だ。

 そして匂い。海辺に来たかのような微妙な腐敗臭というか、塩臭いというか、そんな匂いが漂っていた。あんまりきれいな川ではないのかも…と思いつつも、竿を準備する。3本並べて、仕掛けを装着。まずはフライから。
 水面下では孵化して1ヶ月ほどと思しき稚魚が、無数に群れていた。オイカワだろうか。でも、確認できるのはそんな稚魚ばかりで成魚の姿が見あたらない。はて…

 とにかく糸を垂れてみる。みこりんも見よう見まねでアタックしているのだが、なかなか様になっていた。さすが物覚えのいいお年頃だ。
 ふと足下を見ると、小さな100円玉サイズの小魚が1匹、波打ち際(というのかどうか)に横たわり、打ち上げられつつあるのを発見した。一見して奇妙な魚だった。横縞が入っているのも変わっているし、全身青みががってるのも奇妙だ。そしてやや体高がある。こんな魚、日本にいたっけ?なんだかいかにも熱帯魚風だが…と思ったところで気がついた。ブルーギルの幼魚かもしれないと。
 まぁなんにしても死んでしまっていては面白くないが…。興味を失いかけたとき、みこりんが叫んだ。「うごいたっ」なんと、その魚は生きていたのだ。どうやら失神していただけらしい。さっそくバケツへと移す。尾のあたりが内出血でもしたかのように赤く滲んでいた。石でもぶつけられたのだろうか。

 さっそく魚を1匹ゲットしたが、針にはいっこうにかかる気配がない。もしかすると場所が悪いのかも、と思い、少し下流側に移動することにした。
 途中、橋桁のところが深みになっていたので覗いてみると、いるわいるわ。水槽で飼ったらちょうどいいサイズの魚達がわんさかと。さっそく糸を垂らしてみるが、ここでもヒットせず。
 さらに下ろう、そう思って振り向いた時、みこりんがずぼっと川の中に落ちたのが見えた。両脚の膝下までずっぽりだ。さぞや冷たかろうと思ったが、みこりんは気にすることなくそのままざぶざぶと水の中を自由自在に歩き回り、水を堪能しているようす。これが若さというものか。でも一応Licがすぐそばのスーパーまで、着替えと食料を少々買い出しに出かけた。

 フライではさっぱりヒットしないので(技術の問題も多分に影響してそう)、オランダ仕掛けに変更する。流れがゆるやかなのと、水深が出てきたのでこちらのほうが都合が良さそうだ。その思惑どおり、さっそく手応えがあった。竿を上げると、小さなウグイが1匹かかっていた。飼うには手頃なサイズ。
 それからしばらく当たりが止まった。たまーに体長50cmほどの鯉が横切って行くのが見える。どきりとする。

 少し風が出てきたので、みこりんが寒さを訴え始めた。Licはいまだ戻らず。とりあえず濡れたズボンを脱がし、私がこんなこともあろうかと二枚着込んできていた上着を1枚脱ぎ、それですっぽり全身を覆ってやる。みこりんの背丈ならば、ちょうど足元まで隠れるので具合がよい。それでもなお寒いというので、フリースのジャケットでさらに覆ってやった。ようやく落ち着いた感じのみこりん。Licが着替えを持って帰ってくるまで、しばらく待機のみこりんである。

 魚は、その後、ぽつぽつと釣れた。ウグイが2匹、オイカワが3匹。
 太陽の光が足りず、水の中がほとんど見えない。午後5時前。あたりが薄暗くなってきたので帰ることにする。お昼過ぎから、たっぷり4時間近くいたことになる。今回はみこりんの釣果なし。なのでちょびっと物足りないようすだ。次回は“入れ食い”の長良川あたりで挑戦してみよう。


2001.11.26(Mon)

白いラディッシュ

 木製コンテナにただ1つ残ったラディッシュが、白い肌も露わに、ようやく食べ頃となっていた。ラディッシュ(二十日大根)というと、あの丸くて赤いコカブのようなのが連想されるが、ここに植えてあるのはミニ大根っぽいタイプ。色も形も、大根そっくりだが、サイズがじつに可愛らしい。片手にすっぽり収まるので、みこりんにも簡単に収穫できる。

 前回収穫したときには、根っこの部分は生で丸かじりにしてみた。“こりっ”という歯ごたえはじつに爽快。みこりんも「おいしい!」と顔をほころばせたものだ。
 が、ここに罠があった。ミニ大根ゆえ、やっぱり味も大根っぽいのだ。ピリ辛風味の刺激が徐々に舌に現れてくる。私には心地よい辛みだったが、みこりんにはまだ早すぎたらしい。口直しにお茶を所望するみこりん。でも、運の悪いことにちょうどお茶が切れていた。それを知ったみこりんは、たまらず大泣き。よっぽど辛かったんだろう。でも最初に「おいしい」と言ってしまった手前、吐き出さずに我慢してた…
 お茶の代わりに水を飲まして一件落着。

 生で囓るにしても、マヨネーズを付ければ微妙に甘みが出ておいしくなった。のだが、みこりんは二度と生の根っこを口にすることはなかった。
 でも茹でた葉っぱのほうは、醤油をかけておいしく食べていたようである。私も葉っぱを試してみたが、ブロッコリーの葉っぱみたいな感じの味で、なかなか美味であった。
 冬の間、部屋の中で育ててみてもいいかもしれない。この1本だけ残ったやつは、根っこも茹でてみようと思う。できれば姿煮がいい。それならばみこりんも食べてくれるにちがいあるまい。


2001.11.27(Tue)

意外にはまったもの

 押井守特集とやらで、SkyPerfecTV!のチャンネルNECOでは今月、彼の関係した作品が放送されている。そんな中にはもちろん“うる星やつら”映画版シリーズも入っているのだが、なぜか3作目以降も含まれているのはご愛敬。

 4作目(作品解説については、TKKさんの紹介文がよくまとまっていると思う)を夕方やってたそうなのだが、これにみこりんがはまったらしい。4作目にして初めてはまったというのではなく、たまたま4作目から見始めたら意外にツボにはまったようなのだ。この作品は私的にはエンディングしか評価していないのだが、みこりんにはどういったところが面白く感じたのかぜひとも確認してみたいところだ。…というか、みこりんがこういう映画版クラスの長編作品をじっと見るのは、ディスニー作品以外では初めてのことではなかろうか。

 続けて5作目(同じくTKKさんによる紹介文)に突入。やはりじっと見入っているみこりん。じつは原作も含めてこのエピソードは、やはり私にはあまりヒットしなかったのだが、みこりんは真剣な眼差しである。時折険しい表情を見せることもあり、面白がっているのか訝しがっているのか、だんだんわからなくなってきた。でも、一発芸的な、たとえば錯乱坊が竹馬に乗ってるシーンでは、声をたてて笑ってるので、みこりんによる評価はわりといいのだろう。

 さて、こうなってくると押井守監督作品である1作目(同じくTKKさんによる紹介文)、2作目(同じくTKKさんによる紹介文)を、みこりんに見せてみたくなってくる。果たしてみこりんの反応は如何に。


2001.11.28(Wed)

夢の世界に届く声

 ぐっすり寝入っているみこりんが、布団からはみ出しつつあったので元に戻してやる。寝てるとはいっても、いきなり抱き上げるより、事前に声をかけつつ実況中継しながらのほうがみこりんの夢見はよいことだろう。今夜もそうしながら、そぉっと毛布にくるみ込んでいたのだが、ふと気になったので聞いてみることにした。もちろん寝ているみこりんにだ。

 「お菓子おいしい?」

 寝ているのに答えるわけないやろぅと、普通は思うかもしれない。だが、見よ。みこりんはそのちっこい頭をこくりと頷かせたのである。

 「そうか、そいつはよかった。よかったねぇみこりん」

 頭を撫で撫でしながら毛布を整える。今宵はとても静かな夜であった。


2001.11.29(Thr)

怪しいメール

 “Re:”とだけ書かれたタイトル、そして本文空欄、いかにも怪しげな添付ファイル……。このようなメールを今週に入ってから急に受け取り始めたという人は、きっと多いに違いあるまい。我が家も例外ではなく、ほとんどすべてのメールアドレスに対して、最低でも毎日2通は届いている。ピーク時には一日に6通ほど届いたこともあった。すべて“WORM_BADTRANS.B”である。

 Nimda騒動のときには一通も来なかったのに、今回はなんとまぁ賑やかなことか。もちろん我が家のメールソフトは鶴亀メールであり、OutlookなどはOSをインストールした直後にざっくりとアンインストールしている。だからうっかり添付ファイルをダブルクリックなどしない限りは安全だ。
 でもサービスパックを適用してないOutlook系だとメール“見た”だけでウイルスが活動を開始する。これほどの蔓延を引き起こした原因もそこにあるのだろう。

 ところで、Nimdaがあり、そして今回のWORM_BADTRANS.Bと、これだけMicrosoftのセキュリティホールを突かれ、サービスパックも遅ればせながらも提供された状況にあってなお、私の勤務する会社ではいまだにサービスパックは適用不可能で、 Outlook,IEが社内標準の地位に安住している。まぁさすがにIEについてはやっとNetscapeに切り替えるようアナウンスがあったが、社内WebシステムがIE専用なタコな作りになっているのがあって、完全な移行ができずにいる。しかも現在もなおインターネットへのアクセスが遮断されたままなので、ユーザーが独自にサービスパックを適用しようとしても、できないのである。

 さて、このような状況の中で、日々仕事に使っているPCの入出力装置がすべて封印されることになっている。FDD,CD-ROM,CD-R,CD-RW,DVD,USB,シリアルポートにプリンタポート、ゲームポート、サウンドポート。まさにすべての出入り口を塞ごうというのである。完全に塞いでしまっては困ることもあるだろうと“少し”は思ったのか、特別なPCを用意して、そこからだけデータを外部メディアに保存することが可能となっている。およそ80名のエンジニアあたり1台という割り当ては、まったくもって笑うしかないのだが……
 これの意味するところはデータの不正流出を遮断するということらしい。だが、ここでおそらく勘の鋭い人は気がついただろう。“すべて”といいつつ、無条件に開いているポートがあるじゃないかと。

 そう、ネットワークカードのコネクタはお咎めなしなのだ。社内イントラネットに接続するには、さすがにこいつを封印してはまずいと思ったにちがいない。だが、故意にデータを盗もうというような人間なら、まっさきにここを狙うだろうことは、太陽が明日“東”から昇るくらいには確実だ。携帯型のPCなりPDAなりで直結し、吸い上げ、あとはケータイなりPHSなりで自由自在に転送可能。封印の意味はまったくない。善良な一般社員がえらく不便な思いをするだけである。
 いや、不便だけではすまない。ソフトウェア開発をしていると、仕様でシリアルポートを使った通信が欠かせない場合がわりとあるからだ。封印されては仕事にならない。……ということを訴えても、状況はいっこうに変わる気配なし。

 やはりこういう場合は、実際に契約不履行とかそういう緊迫した状況にならないと駄目なんだろうな。わからない人には、結局、いくら説明しても理解できないということだろう。


2001.11.30(Fri)

コタツ園芸

 コタツ園芸の季節到来。第一陣はサカタのタネから届いた2002年春の花カタログ『家庭園芸』だ。

 まず目に付いたのは“オリジナル野菜苗”のページ。
 「なかなか手に入らない幻のイモ」
 「スーパーでは買えない新野菜。これぞ市民農園のヒーローです」
 「見た目は悪くても、想像できないほどおいしい幻の枝豆」

 こうして徐々に雰囲気を盛り上げておいて、満を持しての登場は“世界のめずらしい野菜苗”。

 「まさにデリシャスなメロンが味わえます」と、世界のメロン4種。
 「刺激的な辛さがクセになります」と、激辛唐辛子3種類。ボリビア、マレーシア、メキシコからの逸品。
 「命の泉と呼ばれる驚異のスーパーキャベツ」と、アフリカキャベツ。
 「低カロリーのきゅうりもユニーク」もはや定番と化したようなレモンキュウリ、それとピクルス向きのリトルリーフ。
 京野菜、世界のトマト、アメリカのカボチャ、食用ホオズキ……なんだかこのへんだけ国華園のカタログから抜粋してきたような雰囲気である。国華園は種中心なのに対して、サカタのタネは苗で勝負してきているかのよう。最近、国華園も珍しい野菜苗も充実しつつあったし、この手の変わった野菜シリーズは市民農園家には受けがいいのかもしれない。

 さて、サカタのタネといえば、忘れてならないのが画家シリーズのヒマワリである。去年はゴッホのヒマワリ、今年はゴーギャンと育ててみたので、来年はモネといこうか。花全体が黄色っぽい色調で、花弁もわりとおとなしい。どことなく楚々とした印象のヒマワリである。こういうのが池の畔や小川のそばに、そっと生えていたらさぞや似合うことだろう。

 その他に注目したいのは“チェリーコスモス”と分類された品種だ。芍薬のように中央がぼわっと盛り上がってる感じに咲くコスモスである。新品種だけに2株1組1200と、そこそこの値段が付いているが、ちょっと揃えたくなる花である。花が派手なだけに、群生させなくても存在感があるし、和風にも洋風にも似合いそうだし、これはなかなかいいかもしれない。

 サカタのタネは、まぁこんなところ。残るはタキイ、国華園、早春園etc...長い冬でも大丈夫。Licからは、普通の野菜も育ててというリクエストが挙がってきているので、それも考慮しつつ、じっくり選ぶとしよう。


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国際サンゴ礁年2008
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田中律子のTalk&Life